腹部CTを読影していると、腹壁から胃内へ連続するチューブ状構造を認めることがあります。

このような所見を見たときにまず考えたいのが、胃瘻デバイスです。臨床では「PEG」と呼ばれることも多いですが、厳密にはPEGは Percutaneous Endoscopic Gastrostomy:経皮内視鏡的胃瘻造設術 という手技名です。

画像上で見えているものは、正確には胃瘻カテーテル、胃瘻チューブ、胃瘻ボタンなどの胃瘻デバイスと表現すると誤解が少なくなります。

今回は、腹部CTで胃瘻デバイスを認めたときに知っておきたい、正常なCT所見、PEGとの用語の違い、鑑別診断、合併症のチェックポイントについて整理します。

胃瘻デバイスとは?

胃瘻デバイスとは、腹壁から胃内へ直接アクセスするために留置される医療デバイスです。

口から十分に食事を摂取できない場合や、嚥下障害により誤嚥のリスクが高い場合などに、栄養剤や薬剤を胃内へ投与する目的で使用されます。

腹部CTでは、腹壁から胃前壁を通過して胃内へ連続する管状構造として認めます。胃内には内固定具、バンパー、バルーン、ボタン型デバイスの一部などが見えることがあります。

単に「腹壁にチューブがある」と見るのではなく、体外・皮下・腹壁・胃壁・胃内腔まで連続しているかを確認することが重要です。

PEGと胃瘻デバイスの違い

日常診療では「PEGが入っている」「PEGチューブがある」と表現されることが多いです。

ただし、正確には以下のように区別できます。

用語 意味
PEG Percutaneous Endoscopic Gastrostomy、経皮内視鏡的胃瘻造設術という手技名
胃瘻 腹壁と胃内腔を交通させる瘻孔そのもの
胃瘻デバイス 胃瘻から胃内へ留置されるチューブ、カテーテル、ボタン型器具など

画像診断レポートでは、所見としては「胃瘻デバイスあり」「胃瘻カテーテルは胃内に留置されています」のように書くと自然です。

一方で、一般的な検索語としては「PEG」「PEGチューブ」「胃瘻チューブ」もよく使われるため、記事タイトルや説明文ではこれらの語も併記すると分かりやすくなります。

胃瘻デバイスはどのような患者で使われるか

胃瘻デバイスは、長期的な経腸栄養が必要な患者で検討されます。

代表的な背景として、以下があります。

  • 脳梗塞後などの嚥下障害
  • 神経変性疾患に伴う摂食・嚥下障害
  • 頭頸部癌や食道狭窄などで経口摂取が困難な状態
  • 長期の経鼻胃管管理が必要な状態
  • 誤嚥性肺炎を繰り返し、経口摂取が困難な状態

経口摂取が難しい患者で、胃腸管が使用可能な場合、経腸栄養のアクセスとして胃瘻が選択されることがあります。

画像診断では、胃瘻デバイスそのものだけでなく、背景として高齢、脳血管障害後、神経疾患、低栄養、誤嚥性肺炎の既往などがあるかも参考になります。

CTでの胃瘻デバイスの見え方

CTで胃瘻デバイスは、腹壁から胃内へ連続する管状構造として描出されます。

典型的には以下のような所見を認めます。

  • 腹壁から胃前壁へ向かうチューブ状構造
  • 皮下・腹壁・胃壁を貫いて胃内へ入る走行
  • 胃内腔に位置する内固定具、バンパー、バルーン様構造
  • 胃壁と腹壁が近接している
  • 周囲に明らかな液体貯留や遊離ガスを伴わない場合は安定した留置状態を示唆

読影で最も重要なのは、デバイスの先端または内固定具が胃内腔にあるかです。

胃瘻デバイスが胃内に正しく留置されていれば、胃内への栄養投与が可能です。一方、胃外へ逸脱している場合や腹腔内へ迷入している場合は、栄養剤の腹腔内漏出や腹膜炎の原因になります。

症例 80歳代女性

体内と体外を交通している管状の構造物を認めています。

体内では胃の中にあることがわかります。

胃瘻チューブ・胃瘻デバイスであることがわかります。

 

胃瘻デバイスの種類とCT所見

胃瘻デバイスには複数のタイプがあります。CTでの見え方も、内固定具の形状により少し異なります。

1. バンパー型

胃内に内部バンパーと呼ばれる固定具を持つタイプです。

CTでは、胃内腔側に円盤状または板状の構造として見えることがあります。バルーン型と異なり、明瞭な液体濃度の球状構造としては見えない場合があります。

2. バルーン型

胃内にバルーンを膨らませて固定するタイプです。

CTでは、胃内に円形から類円形のバルーン構造として認めることがあります。バルーン内の内容や周囲条件により、見え方は変わります。

3. ボタン型

体外部分が短い低背型のデバイスです。

CTでは、腹壁表面から胃内へ短い管状構造として認めます。外から長いチューブが伸びていないため、横断像だけでは見逃しやすいことがあります。

4. 胃空腸瘻チューブ

胃瘻から空腸側へチューブを進めるタイプです。

CTでは、胃内を通って十二指腸から空腸へ向かう細いチューブが見えることがあります。栄養投与先が胃ではなく小腸側である点に注意します。

腹壁から胃内へ向かうチューブの鑑別診断

腹部CTで腹壁から体内へ連続するチューブを認めた場合、胃瘻デバイス以外にも鑑別があります。

1. 胃瘻デバイス

腹壁から胃前壁を通過して胃内へ入る管状構造です。胃内に内固定具を認めることが多く、胃と腹壁が近接しています。

2. 術後ドレーン

術後に留置されるドレーンです。胃内ではなく、手術部位、膿瘍腔、吻合部周囲、肝下面、骨盤腔などに先端が位置することがあります。

3. 経皮的ドレナージチューブ

膿瘍、胆汁漏、膵液漏、血腫などに対して留置されます。チューブ先端が液体貯留腔内に位置することが鑑別のポイントです。

4. 腹膜透析カテーテル

腹膜透析用のカテーテルは、腹壁から腹腔内へ入り、骨盤深部へ向かうことが多いです。胃内へ入る胃瘻デバイスとは先端位置が異なります。

5. 胃空腸瘻・腸瘻チューブ

チューブが胃を越えて十二指腸・空腸へ進む場合は、胃空腸瘻や腸瘻チューブを考えます。チューブ先端の位置を連続的に追うことが重要です。

CTで確認すべき合併症

胃瘻デバイスを認めた場合は、単に存在を記載するだけでなく、合併症の有無も確認します。

1. 胃外迷入・腹腔内逸脱

胃瘻デバイスの先端や内固定具が胃内腔から外れている場合、腹腔内への栄養剤漏出や腹膜炎を来すことがあります。

CTでは、チューブ先端が胃内にあるか、胃外に位置していないか、腹腔内液体貯留や遊離ガスがないかを確認します。

2. 腹膜炎

胃内容物や栄養剤が腹腔内へ漏出すると腹膜炎を来すことがあります。

CTでは、腹水、腹膜肥厚、脂肪織濃度上昇、遊離ガス、液体貯留、膿瘍形成などを確認します。臨床的には腹痛、発熱、炎症反応上昇なども重要です。

3. 腹壁感染・瘻孔周囲感染

胃瘻周囲の皮膚・皮下組織に感染を来すことがあります。

CTでは、腹壁皮下の脂肪織濃度上昇、液体貯留、膿瘍、皮下気腫などを確認します。

4. 出血・血腫

造設時や交換時に、腹壁や胃壁周囲に血腫を形成することがあります。

CTでは、高吸収の液体貯留、造影CTでの造影剤漏出、腹壁内血腫、胃壁周囲血腫を確認します。

5. チューブ閉塞・屈曲

チューブの閉塞や強い屈曲により、栄養剤投与が困難になることがあります。

CTでは、チューブの走行に急峻な折れ曲がりがないか、内腔閉塞を示唆する所見がないかを確認します。ただし、閉塞そのものは画像だけでは分かりにくいこともあります。

6. 腫瘍の瘻孔播種

頭頸部癌や食道癌などでPEGが造設された場合、まれに胃瘻部に腫瘍播種が生じることがあります。

CTでは、胃瘻ルートに沿った軟部腫瘤、皮下腫瘤、腹壁腫瘤、増大傾向を確認します。

埋没バンパー症候群とは?

埋没バンパー症候群は、胃瘻デバイスの内部バンパーが胃壁内へ食い込み、胃内腔から外れてしまう合併症です。

英語では buried bumper syndrome と呼ばれます。

原因として、外部固定具が強く締まりすぎて胃壁が圧迫されることなどが挙げられます。進行すると、チューブ機能不全、疼痛、感染、腹膜炎、出血などを来すことがあります。

CTでは、内部バンパーが胃内腔ではなく胃壁内または腹壁側に位置していないかを確認します。ただし、診断には内視鏡所見が重要になることもあります。

胃瘻デバイスを認めたときは、内固定具が胃内腔にきちんと見えているかを確認することが大切です。

 

出典

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  2. Arvanitakis M, et al. Endoscopic management of enteral tubes in adult patients – Part 1: Definitions and indications. European Society of Gastrointestinal Endoscopy guideline. Endoscopy. 2021.
  3. Boeykens K, Duysburgh I. Prevention and management of major complications in percutaneous endoscopic gastrostomy. BMJ Open Gastroenterology. 2021;8:e000628.
  4. Schrag SP, Sharma R, Jaik NP, et al. Complications related to percutaneous endoscopic gastrostomy tubes. A comprehensive clinical review. Journal of Gastrointestinal and Liver Diseases. 2007;16(4):407-418.
  5. Cosentini EP, et al. Imaging of percutaneous tube gastrostomies. American Journal of Roentgenology. 1995;164(2):375-379.
  6. Covarrubias DA, et al. Radiologic percutaneous gastrostomy: review of potential complications and approach to managing the unexpected outcome. American Journal of Roentgenology. 2013;200(4):921-931.
  7. Bathobakae L, et al. Acute Buried Bumper Syndrome: A Case Report. Cureus. 2023.

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