サイレント副鼻腔症候群(SSS)は、片側上顎洞の換気・排泄障害を背景に上顎洞が「しぼむ」ように容積減少し、眼窩底が下方へ牽引されて無痛性の眼球陥凹(enophthalmos)や下方偏位(hypoglobus)を来す病態。
診断の決め手は画像であり、とくにCTが中心。
サイレント副鼻腔症候群(Silent Sinus Syndrome: SSS)のCT画像所見
- 上顎洞の容積減少:洞壁の内方陥凹(maxillary atelectasis / “implosion”)
- 上顎洞の陰影:粘膜肥厚〜完全混濁(opacification)
- 排泄路閉塞:上顎洞漏斗(infundibulum)閉塞と鈎状突起の外側牽引
- 眼窩の変化:眼窩底下垂(orbital floor descent)と眼窩容積増大
- 随伴所見:翼口蓋窩脂肪/後上顎部の変化、鼻中隔彎曲など
(まとめ表)CT所見のチェックリスト
| 観察ポイント |
典型所見 |
読影メモ |
| 上顎洞容積 |
容積減少+洞壁の内方陥凹 |
“imploded”/atelectasisのニュアンスで記載 |
| 眼窩底 |
下方牽引(しばしば菲薄化) |
冠状断で評価、左右差を明示 |
| 上顎洞陰影 |
部分〜完全混濁 |
単なる上顎洞炎との違いは「容積減少」の有無 |
| 排泄路 |
漏斗閉塞、鈎状突起の外側牽引 |
手術計画に直結するため具体的に |
| 周辺構造 |
中鼻道拡大、翼口蓋窩脂肪の目立ち、鼻中隔彎曲など |
“伴いやすい所見”として追記 |
サイレント副鼻腔症候群(Silent Sinus Syndrome: SSS)の鑑別疾患
- 単純な慢性上顎洞炎:混濁は共通しうるが、SSSでは「容積減少(洞壁の内方陥凹)」と「眼窩底下垂」「排泄路閉塞」がセットで現れる点が重要である。
- 先天性上顎洞低形成:小さい上顎洞そのものは鑑別点になりにくいことがある。SSSでは後天性変形としての“内方陥凹”と排泄路閉塞所見を重視する。
- 外傷後の眼窩底骨折:臨床経過・外傷歴が最重要であり、SSSでは外傷歴なしに進行する点が典型とされる。
- 腫瘍性病変:片側性陰影の原因として常に念頭に置くべきであり、骨破壊パターンや軟部腫瘤、造影効果などで整合性を検討する。疑わしければMRI追加が合理的である。
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