胸部CTで貧血があることを示唆する所見は?

貧血は多くの病態と関連するため、その診断や評価において胸部CTが役立つ場合がある。

胸部CTで貧血を示唆する所見について以下にまとめます。

1. 大動脈・心臓(心腔内)の低吸収(low attenuation)(CT値の低下)

  • 単純CTで胸腹部大動脈や心腔内のCT値が低下している場合、血液の希釈を反映している可能性がある。特に、心腔内のCT値の低下は相対的に心室壁の心筋が心腔内よりも高吸収に見えることで視覚的にも判断することができる。
  • 特に急性出血性貧血や大量輸液後に観察されることがある。

症例 90歳代男性 高度貧血あり。

心筋と比較すると心腔内および大動脈内の低吸収が目立ち、貧血を示唆する所見です。

2. 心臓の拡大

  • 貧血により心拍出量が増加するため、心臓が拡大して見えることがあります(高拍出性心不全の初期段階)。

3. 肺血管陰影の増強

  • 貧血では血液の酸素運搬能力が低下するため、代償的に肺血流量が増加し、肺血管陰影が目立つことがあります。

4. 右心負荷の兆候

  • 貧血が重度の場合、肺循環の負担が増加し、右心系の拡大や肺高血圧の所見が認められる場合があります。

5. 骨髄増生の兆候

  • 胸骨や肋骨の骨髄で増生が亢進している場合、CT上で骨髄の密度が低下することがあります。
  • 慢性貧血や溶血性貧血で顕著になることがあります。

6. 胸水や心嚢液貯留

  • 重度の貧血に伴い低アルブミン血症が生じる場合、胸水や心嚢液が貯留することがあります。

7. 間接的な貧血の原因の評価

  • 貧血を引き起こす基礎疾患がCTで確認できる場合があります。
    • 出血の徴候:胸腔内や肺内の出血影。
    • 腫瘍:造血器腫瘍や転移性腫瘍による骨髄抑制。
    • 炎症性疾患:慢性疾患に伴う二次性貧血(例:感染症や膠原病)。

まとめ

胸部CTは、貧血の直接的・間接的な所見を視覚的に捉えることができる有用な検査です。特に非造影CTにおいては、心腔内や大動脈内の血液のCT値とヘモグロビン濃度の相関が複数の研究で示されており、臨床判断の一助となります。

引用文献:

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