先に結論:踵骨骨折の画像診断
- 踵骨骨折は高い所から落ちてかかとから着地したときに起こる足根骨で最も多い骨折で、腰椎の骨折や反対側の踵骨骨折を合併しやすいため、あわせて確認します
- レントゲン側面像でベーラー(Böhler)角(骨折のない人の平均は約29°)が小さくなっていれば骨折を疑います。距骨との関節面(後距踵関節)に骨折が及ぶかどうかが治療と予後に大切で、レントゲンではEssex-Lopresti分類(舌状型・関節陥没型)を使います
- 関節面の割れ方はCT(冠状断)で評価し、Sanders分類で手術方針を決めます
- 踵骨骨折の分類は、レントゲンで見るEssex-Lopresti分類とCTで見るSanders分類の2つを押さえれば、まず困りません(下の比較表)
※高い所から落ちてかかとが痛く体重をかけられないときは、すぐに受診してください。
踵骨骨折
- 足根骨で最も多い骨折で、全骨折の約2%を占める。踵骨骨折の70〜75%は関節内骨折、25〜30%は関節外骨折である(Daftary 2005)。
- ほとんどが高所から踵で着地するという受傷機転による高エネルギー外傷。
- そのため他の部位の損傷を合併することが多く、脊椎骨折や反対側の踵骨骨折を認めることがある。外傷性脊椎骨折358例のうち43例に踵骨骨折を合併し、その72.09%で腰椎が骨折していた(Boruah 2022)。
踵骨骨折の画像所見
- 踵骨は体重維持のため豊富な海綿骨で形成されており、皮質が薄いため、卵の殻を割ったように骨折し、多くは粉砕骨折の形態として認める。
- 踵骨は距骨との3つの関節面(前関節面、中関節面、後関節面)を有し、特に後関節面(後距踵関節)は体重支持の最も重要な役割を担う。
- 画像診断においても後関節面(後距踵関節)の評価が治療や予後に大きく関わり、ここに骨折が及ぶかどうかで関節外骨折もしくは関節内骨折に分けている。
- レントゲンではEssex-Lopresti分類、CTではSanders分類がある。
- 踵骨骨折の診断にはレントゲンの側面像でベーラー(Böhler)角を測定することも有用。
- 踵骨は複雑な解剖学的構造を有し、これに外傷が加わるとレントゲンでは損傷の形態を立体的に把握することは難しいため、CTが有用。
Essex-Lopresti分類
- 関節内骨折を舌状型と関節陥没型に分類する。それ以外に関節外骨折と分類する。
- 舌状型は骨片が後関節面(後距踵関節)を含め踵骨体部より後外側からなる。骨片にアキレス腱が付着しているため、その牽引により骨片の前面が体部の骨内に突き刺さるように転位脱臼する。
- 関節陥没型は後関節面(後距踵関節)が一塊となって陥没したタイプ。
- 術式決定のために有用。

ベーラー(Böhler)角
- レントゲンの側面像で骨折の有無を判定する角度。
- 踵骨前方突起から後距踵関節最上部に引いた線と、踵骨隆起から後距踵関節最上部に引いた線でできる角度のこと。
- 骨折のない424例を含む検討では、骨折のない例の平均は29.4°で、性別・左右・年齢による差はなかった。これより小さいと骨折を疑う(Isaacs 2013)。
- 25°未満では感度100%・特異度82%、21°未満では感度99%・特異度99%と報告されており、20°以下が最も診断精度が高いとされる(Isaacs 2013)。

正常例でベーラー角を測定すると上のようになり、30°程度なので正常範囲であり、骨折はなしと診断できる。
Sanders分類
- 後距踵関節の損傷度に注目した分類。CTで横断像と冠状断像を撮影し、冠状断像で後距踵関節が最大幅となるスライスを用い、骨折線の部位を外側からA,B,Cと定義する。

- TypeⅠ:骨折線の数と関係なく骨片転位なし。→保存的加療
- TypeⅡ:1本の骨折線。→手術
- TypeⅢ:2本の骨折線。→手術
- TypeⅣ:3本の骨折線。粉砕骨折。→手術
TypeⅡ・Ⅲは、骨折線の位置(外側からA・B・C)を付けてⅡA・ⅡB・ⅡC、ⅢAB・ⅢAC・ⅢBCのように細かく表します。
原著では、手術したTypeⅡ79例・Ⅲ30例・Ⅳ11例で、関節面が解剖学的に整復できたのはそれぞれ86%・60%・0%、臨床成績が優・良だったのは73%・70%・9%で、骨折線が増えるほど成績が下がりました(Sanders 1993)。
Essex-Lopresti分類とSanders分類の違い(比較表)
| Essex-Lopresti分類 | Sanders分類 | |
|---|---|---|
| 使う画像 | レントゲン(側面像) | CT(冠状断・横断) |
| 何を見るか | 後距踵関節を含む骨片の形(舌状型か関節陥没型か) | 後距踵関節面が何本の骨折線で、何個に割れているか |
| 分け方 | 関節外骨折/関節内骨折(舌状型・関節陥没型) | TypeⅠ〜Ⅳ(+骨折線の位置A・B・C) |
| 主な役割 | 骨片の形から術式を考える | 関節面の割れ方から手術の適応と予後を考える(Sanders 1993) |

踵骨骨折でよくある疑問(Q&A)
Q. ベーラー角とは何ですか?何度なら骨折ですか?
A. レントゲン側面像で、踵骨の前方突起と踵骨隆起からそれぞれ後距踵関節の最上部へ引いた2本の線がなす角度です。骨折で後距踵関節が沈むと小さくなります。20°以下が最も診断精度が高いと報告されています(Isaacs 2013)。
Q. 踵骨骨折はレントゲンだけでわかりますか?
A. 側面像のベーラー角や骨片の形で骨折に気づけることが多いですが、関節面の割れ方は立体的に把握しにくいため、関節内骨折ではCTで評価します(Daftary 2005)。
Q. 舌状型(tongue type)と関節陥没型の違いは?
A. 舌状型は後距踵関節面を含む骨片が踵骨隆起の後方までひと続きになった型で、アキレス腱に引かれて転位します。関節陥没型は後距踵関節面だけが一塊になって沈み込む型です。
あわせて読みたい:踵骨骨折のレントゲン・CT画像所見
参考文献:
- 骨折ハンター P308-311
- 足の画像診断(第2版) P110-115
- レジデントノート Vol.21 No.17(増刊)2020 P214-217
- Isaacs JD, Baba M, Huang P, et al. The diagnostic accuracy of Böhler’s angle in fractures of the calcaneus. J Emerg Med. 2013;45(6):879-84. PubMed
- Sanders R, Fortin P, DiPasquale T, et al. Operative treatment in 120 displaced intraarticular calcaneal fractures. Results using a prognostic computed tomography scan classification. Clin Orthop Relat Res. 1993;(290):87-95. PubMed
- Daftary A, Haims AH, Baumgaertner MR. Fractures of the calcaneus: a review with emphasis on CT. Radiographics. 2005;25(5):1215-26. PubMed
- Boruah T, Sareen A, Sreenivasan R, et al. Concomitant spine and calcaneum fractures: a possible indication of less extensive injury. Spinal Cord Ser Cases. 2022;8(1):1. PubMed
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