長管骨の端の骨折を見た際の表現方法として、
- 体幹に近い方の端→●●骨近位端骨折
- 体幹に遠い方の端→●●骨遠位端骨折
と表現しておけばとりあえず通じるのですが、骨によっては整形外科的には一般的でないことがあります。
そこで、長管骨の近位部、遠位部の端の骨折の呼び方をまとめました。
上腕骨
- 近位:上腕骨近位部骨折
- 遠位:上腕骨遠位端骨折(多くは上腕骨顆上骨折)
まず上腕骨ですが、近位は「近位部」骨折、遠位は「遠位端」骨折でよいのですが、遠位の場合は多くは小児の骨折が多く、上腕骨顆上骨折と呼ばれます。
橈骨
- 近位:橈骨頭骨折
- 遠位:橈骨遠位端骨折
次に橈骨ですが、まず遠位の橈骨遠位端骨折は日常臨床でもしばしば遭遇する高齢者の脆弱性骨折として有名です。(小児でも見られる骨折ですが)
一方で近位の場合は、橈骨近位端骨折ではなく、橈骨頭骨折と呼ばれます。
尺骨
- 近位:肘頭骨折
- 遠位:茎状突起骨折
次に尺骨ですが、近位も遠位も名前が異なります。
近位は肘頭骨折(あるいは尺骨肘頭骨折)といいます。一方遠位は、茎状突起で骨折を伴いやすく茎状突起骨折といいます。
なお、茎状突起骨折は橈骨遠位端骨折に合併しやすい骨折として知られています。
大腿骨
- 近位:大腿骨頸部骨折・大腿骨転子部骨折
- 遠位:大腿骨遠位端骨折
次に大腿骨ですが、遠位はそのままですが、近位は大腿骨近位部骨折ということもあるのですが、それには頸部骨折と転子部骨折を含んでおり、治療方針の観点からも両者を鑑別するべきだと言われています。
ですので、できるだけ大腿骨近位部骨折とは言わずに、頸部骨折なのか、転子部骨折なのかを鑑別してから表現する方が好ましいです。
脛骨
- 近位:脛骨高原骨折
- 遠位:足関節内果骨折
次に脛骨ですが、これも近位も遠位も名前が異なります。
近位の場合は、脛骨高原骨折といい、遠位の場合は足関節内果骨折といいます。
腓骨
- 近位:あまり使われない
- 遠位:足関節外果骨折または腓骨遠位端骨折
最後に腓骨ですが、近位部の骨折はあまり使われません。
一方で、遠位はそのまま腓骨遠位端骨折と言うこともありますが、足関節外果骨折と呼ばれることもあります。
参考文献:骨折ハンター P132
いつも、新しい視点で学習する機会を与えていただき、ありがとうございます。改めて呼び名を並べてみると、確かに、名称は統一されていない感じです。
ちなみに、腓骨近位部は、歩行時に車に衝突された際にバンパーが当たるとしばしば骨折する場所で、「腓骨頭骨折」という用語を使っていたように思います。同部の骨折の頻度が少ないとも思えないのですが、画像診断カフェ参加者に整形外科の方がいれば、腓骨近位部骨折にどういう名称を用いているのかご意見伺いたいです。
コメントありがとうございます。
腓骨頭骨折で検索してみましたが、あまり出てこないので一般的ではないのではないかと思われます。
脛骨遠位端骨折に、腓骨近位部骨折を合併することがあり、Maisonnerve骨折という名前がついているようです。
ただし、腓骨骨折については脛骨骨折と合併していても脛骨のみ手術(内固定)され、腓骨はそのままのことが多い様な気がいます。