傍腫瘍性神経症候群(PNS:paraneoplastic neurological syndrome)/自己免疫性脳炎
- 担癌患者において、腫瘍自体や転移による直接的神経障害、癌の治療や癌に随伴する栄養障害に基づかない精神・神経症状。
- 免疫学的な記事が考えられている。
- 肺癌(特に小細胞癌)、乳癌に多い。他、精巣胚細胞腫瘍、ホジキン病、子宮・卵巣癌、卵巣成熟嚢胞性奇形腫など。
- 約60−70%は悪性腫瘍が発見される前に精神・神経症状が出現する。
- 頻度は癌全体の1%。
- 小脳神経症、視神経症、Eaton-Lambert筋無力症、辺縁系脳炎などが知られているが、稀に脊髄炎を来すことがある。
- 症状は、記憶障害、進行性認知症、気分の変調、けいれんなど。
傍腫瘍性神経症候群の分類
抗体 | 頻度の高い腫瘍 | 障害部位 | |
辺縁系脳炎PLE | 抗Hu抗体(ANNA-1)抗Ma2抗体 | 小細胞癌 精巣腫瘍 | |
小脳変性症PCD | 抗Yo抗体(PCA-1)抗Hu抗体抗Tr抗体 | 卵巣癌、卵管癌、乳癌小細胞癌ホジキン病 | |
傍腫瘍性オプソクローヌスミオクローヌス症候群POM | 抗Ri抗体(ANNA-2) | 乳癌 | |
亜急性感覚性ニューロパチーSSN | 抗Hu抗体 | 小細胞癌 | 脊髄後根神経節細胞 |
Lambert-Eaton筋無力症候群 | 抗VGCC抗体 | 小細胞癌 | 神経筋接合部 |
※PCD、POM、SSN、LEMSは悪性腫瘍の発見に先行することが多い
※LEMSは下肢筋力低下にて発症(MGは眼瞼下垂や複視で発症)
- 自己免疫性脳炎とは細胞内や細胞表面の抗原に対する自己抗体が関与して中枢神経が障害される疾患のこと。
- 現在は約40種類の抗体が知られており、上記のように傍腫瘍性に発症することがある。
診断基準
- 典型的な神経症候群が存在し、神経障害の診断後、5年以内に癌が検出された場合。
- 非典型的な神経症候群でも、癌治療により自然寛解とは考えられない神経症状の改善や消失が認められた場合。
- 腫瘍神経抗体を有した非典型的な神経症候群で、神経障害が診断されて5年以内に癌が検出された場合。
- 癌が確認されなくても、本症によく出現する特徴的な腫瘍神経抗体を認めた神経症候群。
傍腫瘍性神経症候群(PNS)の代表的な病型
▶中枢神経系(画像的には何でもあり)
- 脳脊髄炎(PEM: encephalomyelitis)
- 小脳変性症(PCD: paraneoplastic cerebellar degeneration)
- 辺縁系脳炎(PLE: limbic encephalitis):HSV-Ⅰと比較して、海馬・扁桃体に限局する傾向。
- オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群(POSM:opsoclonus myoclonus syndrome)
▶末梢神経系:感覚神経障害
▶神経筋接合部:Lambart Eaton症候群
傍腫瘍性小脳変性症(PCD: paraneoplastic cerebellar degeneration)
- 悪性腫瘍に伴い、急性〜亜急性の発症様式で小脳症状を呈する疾患。
- 婦人科癌を背景として起こる事が多い。なので女性に多い。
- 小脳が選択的に障害されるが、他の神経症状も頻度は少ないが認められる。
- 髄液検査では単核球優位の細胞増多、IgG増加、オリゴクローナルバンドが認められる。
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