TFCCとは?
TFCC(三角線維軟骨複合体:triangular fibrocartilage complex)とは、手関節尺側に位置する線維軟骨複合体を指す。
手関節の回内と回外における安定に重要な役割を果たしている。また、尺骨と手根骨の間のクッションとしての役割を果たしている。
その構成体は、
- 関節円板(articular discまたはTFC)
- メニスカス類似体(meniscus homologue:MH)
- 三角靭帯(triangular ligament)
- 尺骨三角骨靭帯(ulnotriquetral ligament)
- 尺骨月状骨靭帯(ulnolunate ligament)
- 掌側および背側橈尺靭帯(volar/dorsal radioulnar ligament)
- 尺側側副靭帯(ulnar collateral ligament)
です。
簡単には、TFCC=TFC+MH+周辺の靭帯や腱鞘
(ただし、TFC=関節円板(articular disk, disk proper)+背側橈尺靭帯+掌側橈尺靭帯という定義もあり。
JOURNAL OF MAGNETIC RESONANCE IMAGING 35:764–778 (2012)
mmm先生ありがとうございます!)
症例 40歳代女性 正常例
T2*強調像冠状断像です。
関節円板、三角靱帯、メニスカス類似体の様子がわかります。
尺骨三角骨靭帯の様子がわかります。
参考)
TFCC損傷とは?
TFCC損傷の原因には、外傷性のものと変性によるものがあり、後者の頻度高い。
高齢者では無症状でも画像上しばしば認められるため、臨床所見と合わせて考える。
TFCC損傷のMRI画像所見は?
TFCCのキモであるTFCとMHの信号をチェックする。
①TFC:
線維性軟骨は均一な低信号を示す。断裂や変性を来すと靭帯の不連続性や高信号化として現れる。
※外傷性の断裂は橈骨付着部に、変性は中心部に多い。
※尺骨との結合部は血管に富む結合織からでき、T2*強調像で軽度高信号を呈し、索状の形態を呈する。
②MH:
密で不規則に配列した結合織からできており、このため、MRIでMHがTFCよりも信号強度が高い。
症例1 30歳代女性
動画で学ぶTFCC損傷
症例2 20歳代女性 バスケット中に転倒で手関節捻挫あり。
TFCCの尺骨付着に断裂を疑う高信号域あり。
TFCC損傷 Palmer分類
外傷による損傷
ⅠA:中央部の穿孔
ⅠB:尺骨付着部の剥離
ⅠC:遠位側付着部の剥離
ⅠD:橈骨付着部の剥離
変性による損傷
ⅡA:TFC断裂
ⅡB:TFC断裂に、月状骨や尺骨の軟骨軟化巣を伴うもの。
ⅡC:TFC穿孔に、月状骨や尺骨の軟骨軟化巣を伴うもの。
ⅡD:TFC穿孔に、月状骨や尺骨の軟骨軟化巣、月状三角骨靭帯穿孔を伴うもの。
ⅡE:TFC穿孔に、月状骨や尺骨の軟骨軟化巣、月状三角骨靭帯穿孔、尺骨手根関節症を伴うもの。
先生の記事には大変お世話になっております。TFCCの定義は諸説あります。骨軟部疾患の画像診断第2版p.218にはたしかにTFCは線維軟骨(関節円板)と記載があります。しかし、TFC=関節円板(articular disk, disk proper)+背側橈尺靭帯+掌側橈尺靭帯という定義もあります。混乱しやすいところだと思いますので、こちらの定義も紹介していただけませんでしょうか。以下は吉岡先生の論文からの引用です。The TFC is the largest component of the TFCC. It is composed of the fibrocartilage disc and the dorsal and volar radioulnar ligaments (Magn Reson Med Sci 2017; 16; 3–15) また、尺骨三角「骨」靭帯が、尺骨三角靭帯と誤記がありました。先生の記事は絶大な影響力があります。どうぞよろしくお願い申し上げます。
mmm先生
コメントありがとうございます。
TFCCについては勉強し直さないとと思っていたのですが、なかなか時間が取れずにいます。
以前学会でTFCCの講義があり、メモで、
・関節円板を挟む背側及び掌側の橈尺靭帯が重要である点。
・その背側及び掌側の区別が重要である点。
の記載がありますが、早すぎてついていけませんでした・・・。
今回ご指摘いただいた箇所だと思われます。