限局性結節性過形成(FNH:focal nodular hyperplasia)
- 肝障害とは無関係(背景肝が正常→周囲肝と原則同信号)
- 異常血管に対する過形成。腫瘍ではないので増大せず、壊死や出血も生じず、「均一である」。血管腫に次いで多い良性腫瘍。治療不要。
- 大きいFNHの2/3、小さいFNHの1/3では特徴的な中心性瘢痕(central scar)。栄養動脈は中心から入り、放射状に末梢に分布する(車軸様血管 spoke wheel appearance)。
- 85%は5cm以下、平均径は3cm。
- 30~40歳代の女性に多い(うち37.8%で経口避妊薬の内服歴。5年の使用でリスクは2.5倍)
- 糖原病Ia型(von Gierke病)との関連が示唆されている。
- 肝右葉:肝左葉=2:1、 単発は80%、多発は20%
- 有茎性は全体の8.8%。
- 80%以上は無症状(50~90%は偶然に発見)
- 多発性のものは他臓器の血管奇形や脳腫瘍との関係あり。
- 予後良好。
- 無症状のものは経過観察、経口避妊薬内服中の場合は中止。
FNHのCT、MRI画像所見
- 画像上境界明瞭な腫瘤、通常被膜を持たない
- 単純CT:低~等吸収。
- MRI:T1、T2強調像ともに均一で肝と同程度の信号強度(T1強調像では等〜低信号、T2強調像では等〜軽度高信号)。中心瘢痕(Central scar)はT1強調像で低信号、T2強調像で高信号。massは均一。著明な早期濃染と濃染の遷延(門脈相〜平衡相で等信号)。ただし中心瘢痕は造影されない。
- 肝細胞相では高信号を呈する(90%)。これは、EOBの肝細胞への取り込みに関与するOATP1B3の発現が周囲肝実質と比較して同等〜増強しているためと考えられている。
- 拡散強調像では80%が高信号で、ADC値も正常肝実質よりも低値。
- CT 、 MRI ともに早期相より均一な強い造影効果。
- 腫瘤内にクッパー細胞が存在(15.4%で減少or欠損)。なので迷ったらSPIOで診断する。
T2WI with superpara magnetic iron oxide(SPIO)造影で低信号
Gd-EOB-DTPA 造影で取り込まれ高信号となることが多い
99mTc コロイドシンチグラフィにて集積あり(約60%)
Gd-EOB-DTPA 造影で取り込まれ高信号となることが多い
99mTc コロイドシンチグラフィにて集積あり(約60%)
- 中心性瘢痕:CTで<3cmの35%、>3cmの65%、MRIで78%にみられる
- 遅延相にて造影効果(+)、MRI T2WIで高信号
- 血管造影:栄養動脈が中心瘢痕から入り、分岐しながら放射状に末梢に分布(spoke-like appearance)、その後肝静脈へ還流
症例 50 歳代の女性。腹部超音波検査にて肝左葉外側区に腫瘤を指摘。
2011年放射線科診断専門医試験問題44より引用。
早期濃染されて、後期相で抜けない。単純およびT2WIにて周囲肝と見分けがつかない。
肝細胞相にてdefectされないし、高信号を呈している。
過形成(FNH)の所見。
症例 30歳代の男性
2018年放射線科専門医試験問題45より引用
肝S7にT2WIにて淡い高信号、早期相で濃染され、肝細胞相で周囲正常肝実質と同程度に染まる結節あり。
FNHを疑う所見です。
症例 30歳代女性 下腹部痛
肝S4にダイナミックCTにおいて早期動脈相から造影され、平衡相では周囲正常肝と等吸収を呈する腫瘤あり。中心部には造影不良なscar(central scar)あり。
SPIO を用いた MRI では腫瘍内部に Kupffer 細胞の存在が認められる。
FNHを疑う所見。
症例 20 歳代の男性。超音波検査で肝腫瘤を指摘された。
(2007年放射線科専門医試験問題47より引用。)
肝右葉に単純CTにて淡い低吸収、造影早期では著明な造影効果を有し、平衡相では周囲肝実質に比して低吸収を呈する。早期動脈相では、中心瘢痕様構造あり。
血管造影では明瞭なspoke-wheel appearanceが認められ典型的なFNHが疑われる。
FNH like lesion
- B・C型肝炎
- アルコール性肝炎(最多)
- 肝血行動態に合併する結節(Budd-Chiari syn、特発性門脈圧亢進症、門脈体循環短絡、門脈形成不全など門脈血流低下を来す病態=anamalous portal tract syndrome)
- 薬剤性、自己免疫性、NASH
がベースにある場合にできる、多血性結節。