腹部CTや腹部MRIの検査をする際に
「撮影4時間前以降は絶食にしてください」
「午前に検査がある場合は、朝食は食べないでください」
「午後に検査がある場合は、昼食は食べないでください」
などと言われることがあります。
腹部CT、MRI検査でこのような食事制限があるのはなぜでしょうか?
今回は、腹部CTで食事制限(絶食)がある理由についてまとめました。
先に結論:CT・MRI検査の前の食事
| よくある疑問 | 答え(目安) |
|---|---|
| なぜ食べてはいけない? | 食べると胆嚢が縮み、胃や十二指腸に食べ物が残って胆嚢・胃・膵臓などが見えにくくなるため。造影CTでは吐き気が出たときの誤嚥予防として絶食を指示する施設もありますが、欧州(ESUR)・米国(ACR)の指針では通常の造影剤静注前の絶食は推奨されていません |
| 何時間前から? | 一般的には検査の4時間前から(施設により2〜4時間前や前日夜から)。午前の検査なら朝食、午後なら昼食を抜く指示が多いです |
| 水・お茶は? | 水や無糖のお茶は少量なら飲んでよいことが多い。牛乳・ジュース・砂糖入りコーヒーは食事と同じ扱い |
| 薬は? | いつもの薬は少量の水で飲んでよいことが多い。糖尿病の薬(メトホルミン・SU薬・インスリン)は事前に確認 |
| 食事してしまったら? | 自己判断せず、検査の前に病院へ連絡。時間をずらす・日を変えるなどの指示があります |
| 単純CTと造影CTで違う? | 食事制限の主な理由は「胆嚢・胃を見やすくするため」なので、部位(腹部かどうか)で決まることが多いです。腹部は単純CTでも造影CTでも食事制限があるのが一般的です |
| MRIの前に食べてしまったら? | 頭・脊椎・関節のMRIは食事の影響をほとんど受けません。腹部MRI・MRCPは胆嚢や胆管が見えにくくなるため、CTと同じく病院へ連絡を |
| 頭や胸のCTは? | 造影しない頭部・胸部CTは食事制限がないことが多いです。腹部のMRI(肝臓・膵臓・MRCP)も腹部CTと同じ考え方です |
※最終的には検査を受ける医療機関の指示に従ってください。
腹部CTで食事制限(絶食)がある理由
それはずばり、食事を摂ることによって
- 腹部臓器の一つである胆嚢(たんのう)が収縮して胆嚢を観察しにくくなる
- 胃や十二指腸など腸管に食事が残っていると腸管の観察がしにくくなる
ということです。
また、十二指腸にも食べたもの(残渣)があると膵臓(すいぞう)の評価が難しくなることもあります。
これはCTに限らず腹部のMRI検査である、肝臓MRIや膵臓MRI、MRCPなどでも同様です。
「どんな感じで胆嚢が収縮するの?」
「食事を食べて腹部CTを撮影したら、どんな感じで胃が写るの?」
という疑問をお持ちの方のために、絶食をせずに検査前に食事を摂取するとどのようなCT画像になるのかをお見せしましょう。
まず正常の胆嚢の腹部CT画像です。

胆嚢は丸く膨らんでいますね。
収縮していない状態です。
次に、絶食で腹部CTした場合の胃の画像です。

胃の中には少量の水分がある程度で、胃壁の様子もよくわかります。
では、次に、腹部CT検査の前に食事を摂ってしまった場合のCT画像です。

胃の中は食べ物でいっぱいです。
これでは、胃の評価は難しいです。
続いて、胆嚢と胃が一緒に写っているCT画像です。

胆嚢は収縮してぺしゃんこになっていますね。
これでは胆嚢の評価は厳しいです。
食事制限の具体的なルール
絶食時間の目安
腹部CT検査では、一般的に検査の4時間前からの絶食が目安とされています。ただし施設によって2〜4時間前と異なる場合があるため、事前に受診する医療機関の指示を確認するのが確実です。
午前に検査がある場合は朝食を食べない、午後の場合は昼食を食べないという指示が多いですが、施設によっては前日夜からの絶食を求める場合もあります。
水分(水・お茶)は飲んでよいですか?
水や無糖のお茶などの無色透明な飲み物は、少量であれば飲んでよいケースが多いです。水分は胆嚢の収縮や腸管内への影響が少なく、絶食中でも許可される施設が多いです。
ただし、以下のものは食事と同じ扱いになる場合があります。
- 牛乳・乳製品
- ジュース・スポーツドリンク
- コーヒー・砂糖入り飲料
- プロテインドリンク・栄養補助飲料
造影CTの場合は、造影剤の副作用として悪心(吐き気)が起こることがあるため、施設の指示をより厳密に守ることが重要です。不安な場合は検査施設に事前に問い合わせてください。
薬は飲んでよいですか?
多くの場合、少量の水で服用するのであれば問題ないとされています。持病の薬を毎日飲んでいる場合、基本的には検査当日も服用して問題ないケースが多いです。
ただし、以下の薬については事前に主治医・施設スタッフに確認することをお勧めします。
- 糖尿病薬(ビグアナイド系薬など):造影剤で腎機能が悪化した場合に乳酸アシドーシスを起こすおそれがあるため、腎機能が低下している方では一時的に服用を中止するよう指示されることがあります
- 血糖を下げるSU薬・インスリン:絶食中の低血糖リスクがあるため、服用・投与タイミングを要確認です
造影CTと食事制限の関係
造影CTでも絶食は必要?
造影CTでは造影剤(ヨード造影剤)を静脈から注射します。この造影剤の副作用として、一部の方に悪心(吐き気)や嘔吐が起こることがあります。
食後に嘔吐すると胃の内容物を気道に吸い込む誤嚥(ごえん)につながるおそれがあるため、以前から造影CTの前には絶食が指示されてきました。ただし、造影CT前に絶食した群としなかった群を比べた約2,000人のランダム化試験では、誤嚥性肺炎は両群とも0件で、吐き気・嘔吐の頻度にも差がなかったと報告されており、造影剤の副作用対策としての絶食は必ずしも必要ないという考え方が広がっています。10研究・約30万8千人を統合したメタ解析でも誤嚥性肺炎は1例もなく、吐き気の頻度は絶食群・非絶食群ともに4.6%、嘔吐は2.1%と2.5%で、絶食の有無による差はみられませんでした。欧州泌尿生殖放射線学会(ESUR)ガイドラインv10.0と米国放射線医学会(ACR)の2021年版マニュアルも、通常の造影剤静注前の絶食を推奨していません。腹部CTで胆嚢や胃を見やすくするための食事制限とは分けて考え、検査を受ける医療機関の指示に従ってください。
また、造影剤は腎臓から排出されるため、腎機能に関わる状態(糖尿病薬の服用など)についても事前確認が必要です。
食事制限を守れなかった場合・緊急時の対応
食べてしまった場合はすぐに病院へ連絡を
誤って食事をしてしまった場合は、自己判断でそのまま受診したり、無断でキャンセルしたりせず、まず検査を予約している医療機関に電話で連絡してください。
食事の内容・量・摂取した時間帯によっては、検査の延期・変更を提案される場合があります。医療スタッフが状況を聞いたうえで判断しますので、正直に伝えることが大切です。
緊急CTの場合はどうなりますか?
救急での腹痛評価など、緊急性が高い場合は食後の状態でも腹部CTを撮影することがあります。これは、「早急に診断を下す必要性」が「絶食できていないデメリット」を上回るためです。
食後の腹部CTでは胆嚢が収縮していたり胃に内容物が残っていたりしますが、腹痛の主な原因となる腸閉塞・腹膜炎・出血・腎尿管結石などは評価できることが多く、緊急の診断に支障が出ないケースがほとんどです。読影医は食後の状態であることを踏まえたうえで画像を解釈します。
単純CT・造影CTで食事のルールはどう違う?
「造影CTだから食事制限がある」と思われがちですが、腹部の検査で食事制限がある一番の理由は、胆嚢の収縮と胃・十二指腸の食べ物の残りを避けることです。そのため、ルールは「造影するかどうか」よりも「どこを撮るか」で変わることが多いです。
一般的な目安をまとめると次のようになります(最終的には施設の指示が優先です)。
| 検査 | 単純CT(造影剤なし) | 造影CT |
|---|---|---|
| 腹部・骨盤 | 食事制限ありが多い(胆嚢・胃・膵臓を見やすくするため) | 食事制限ありが多い(同じ理由。施設によっては吐き気対策も兼ねる) |
| 胸部 | 食事制限なしが多い | 施設によって食事制限を指示されることがある |
| 頭部 | 食事制限なしが多い | 施設によって食事制限を指示されることがある |
つまり、腹部の単純CTでも「食べないで」と言われるのは珍しくありません。一方、胸部や頭部の造影CTで食事制限があるかどうかは施設の方針によって分かれます。上で紹介したように、造影剤の副作用対策としての絶食は欧米の指針では推奨されていないため、絶食を求めない施設も増えています。
MRI検査の前に食事してしまったら?
頭部・脊椎・関節のMRI
頭部、脊椎(首・腰)、膝や肩などの関節のMRIは、食事の影響をほとんど受けないため、食事制限がないことが多いです。
腹部MRI・MRCP(肝臓・胆道・膵臓)
腹部のMRI、特に胆管や膵管を写すMRCP(MR胆管膵管撮影)では、食事の影響が大きくなります。
- 食後は胆嚢が収縮して、胆嚢や胆嚢の中の結石・ポリープが評価しにくくなる
- MRCPは水分を白く写す撮影法なので、胃や十二指腸に残った水分・食べ物も白く写り、胆管や膵管に重なって見えにくくなる
胃や十二指腸の水分が胆管・膵管に重なる問題は以前から知られており、施設によっては検査の直前にパイナップルジュースなど、MRIで水分の信号を弱める飲み物をあえて飲んでもらうことがあります。パイナップルジュース250mLを飲んでからMRCPを撮った50人の検討では、十二指腸の信号が弱まり、総胆管が見やすくなったと報告されています(Mohabir 2020)。このように「何を飲むか」まで施設ごとに決まっていることがあるので、自己判断で飲食せず、指示どおりにしてください。
腹部MRIの前に食事をしてしまった場合も、腹部CTと同じく検査の前に予約先の医療機関へ連絡して、検査時間をずらすか日を改めるかの指示を受けましょう。
胸部CTや頭部CT検査では絶食は必要ない?
胸部や頭部のCT検査の場合は、食事を摂取していても影響はないため、絶食の必要はありません。
腹部CTについてよくある質問(FAQ)
Q. 腹部CTの前は何時間前から絶食が必要ですか?
一般的には検査の4時間前からの絶食が目安とされています。ただし施設によって2〜4時間前と異なる場合があるため、検査前に受診先の医療機関に確認するのが確実です。
Q. 腹部CTの前に水やお茶は飲んでいいですか?
水や無糖のお茶などの無色透明な飲み物は、少量であれば飲んでよいケースが多いです。ただし牛乳・ジュース・コーヒー・スポーツドリンクなどは食事と同じ扱いになる場合があります。造影CTの場合は特に施設の指示に従ってください。
Q. 腹部CTの前に薬は飲んでいいですか?
多くの場合、少量の水で服用すれば問題ないとされています。ただし糖尿病の薬(特にビグアナイド系薬)は造影剤との関係で服用を一時中止するよう指示されることがあります。服用中の薬がある場合は事前に医師・スタッフに相談してください。
Q. 腹部CT当日に食事をしてしまった場合はどうすればいいですか?
まず検査を予約している医療機関に速やかに電話で連絡してください。食事の内容・時間によっては撮影を延期・変更する場合があります。自己判断でそのまま受診したり、無断でキャンセルしたりしないことが大切です。
Q. 造影CTの場合も食事制限は必要ですか?
造影剤の副作用(吐き気・嘔吐)による誤嚥を防ぐ目的で絶食が指示されることがありますが、絶食しなくても誤嚥や嘔吐は増えなかったというランダム化試験があり、この目的での絶食は見直されつつあります。ただし腹部の造影CTでは、胆嚢や胃を見やすくするための食事制限があるので、施設の指示に従ってください。
Q. 胸部CTや頭部CTでも絶食は必要ですか?
造影剤を使用しない単純CTであれば、胸部・頭部CTでは食事の影響を受けないため、絶食の必要はありません。造影CTの場合は、施設によって食事制限が指示されることがあります。
Q. 緊急の腹部CTでも絶食は必要ですか?
救急での腹痛評価など、緊急性が高い場合は食後でも腹部CTを撮影することがあります。早急に診断する必要性が絶食できていないデメリットを上回る場合に行われます。
Q. 腹部CTと腹部MRIで食事制限は同じですか?
基本的に同じです。腹部MRI(肝臓MRI・膵臓MRI・MRCPなど)でも食後は胆嚢が収縮して評価が困難になるため、腹部CTと同様の食事制限が設けられることが多いです。
Q. 検査が終わったら、すぐに食事をしてよいですか?
特別な指示がなければ、検査後は普段どおり食事をしてよいことがほとんどです。造影剤を使った場合は、腎臓から造影剤が出ていくのを助けるため、検査後に水分を多めにとるよう案内されることがあります。腎臓や心臓の病気で水分を制限されている方は、主治医の指示を優先してください。
Q. 腹部の単純CT(造影剤なし)でも食事制限はありますか?
あることが多いです。腹部の食事制限の主な目的は、胆嚢の収縮や胃・十二指腸に残った食べ物で臓器が見えにくくなるのを防ぐことなので、造影剤を使わない単純CTでも同じ理由で食事を控えるよう指示されます。
最後に
腹部CT検査前に絶食が必要な理由おわかりいただけましたか?
CT検査は被曝を伴うため、せっかく受けたのに見えにくいという結果は避けたいものです。
腹部CT検査前には食事制限(絶食)をしましょう。
参考文献
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- Mohabir S, Pitcher RD, Perumal R, et al. The efficacy of pineapple juice as a negative oral contrast agent in magnetic resonance cholangiopancreatography. SA J Radiol. 2020;24(1):1875. PubMed
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