先に結論:心臓血管肉腫
- 心臓血管肉腫は成人の原発性悪性心臓腫瘍で最も多く、右房に好発し、進行が速く予後不良です
- 画像では右房の不整な腫瘤で、心膜への浸潤・心嚢水(血性)を伴うことが多く、出血・壊死のため不均一に造影されます
- 診断時に肺転移がよく見られ、肺転移は出血しやすく(周囲のすりガラス影)・気胸を起こすことがあります
心臓血管肉腫とは?
- 心臓腫瘍はほとんどが転移性であり、心臓原発腫瘍自体非常に稀な疾患である。
- 原発性心臓腫瘍の最大90%は良性で、転移性の心臓腫瘍は原発性の22〜132倍多いとされる(Tyebally 2020)。
- 悪性の中で最多なのがこの心臓血管肉腫である。
- 症状は、右心不全、血性心嚢水による息切れ、上室性不整脈による動悸など(Tyebally 2020)。息切れやむくみ、動悸が続くときは医療機関を受診してください。
- 米国SEERの168例では診断時の平均年齢44.4歳で、男性に多かった(Zhang 2019)。
- 心膜浸潤すると心囊水が貯留し心タンポナーデになることもある。
- 治療は外科的切除が原則。
- 遠隔転移を生じた症例については化学療法が行われる。162例をまとめたシステマティックレビューでは、全生存期間の中央値は手術単独で6か月、術後化学療法を加えると13か月、化学放射線療法を加えると27か月で、手術に化学療法・放射線療法を組み合わせる集学的治療で生存が延びていた。
- 予後は不良で、心臓血管肉腫168例のSEER解析では疾患特異的生存期間の中央値は約7か月、5年生存率は約10%と報告されている。
- 進行が早く、診断時に遠隔転移を認めることも多い。
- 転移は47〜89%に生じ、肺が最も多い(Tyebally 2020)。出血・壊死傾向が強いため肺出血や血気胸を生じる。
心臓血管肉腫の画像所見
- 右心系(特に右心房)に発生することが最多で、約75%が右房から発生する(Tyebally 2020)。
- 造影CTでは、造影されない壊死が散在するため不均一に造影される。
- MRIにおいて、T1WIで等信号(出血を反映して高信号域が混在することが多い)。T2WIの信号はさまざま。造影で不均一な造影効果をしめす(Araoz 1999、Tyebally 2020)。
- T1WIで等信号の中に多数の結節状の高信号域が混じる様子は、カリフラワー状と表現される。
- 右房を埋めるように広がり、心膜・三尖弁・右室・右冠動脈へ浸潤する。心膜浸潤はシート状の肥厚として見え、遅延造影で腫瘍の血管に沿って放射状に強く造影される様子は「sunray」と表現される(Tyebally 2020)。
症例 40歳代男性 息切れ

引用:Radiopaedia(Right atrial angiosarcoma)
造影CTの横断像です。右房に不整形で内部が不均一に造影される大きな腫瘤を認めます。この症例では腫瘤は約9cmで、心膜への浸潤と、周囲にすりガラス影を伴う両肺の多発小結節(出血性の転移が疑われる)もみられました。
心臓の原発性悪性腫瘍の見分け方
| 腫瘍 | 画像・臨床の特徴 |
|---|---|
| 血管肉腫 | 最も多い。右房に好発し、心膜に浸潤。出血のためT1強調像で高信号域を伴うことが多い |
| 未分化肉腫 | 左房に多い。所見はさまざま |
| 横紋筋肉腫 | 小児で最も多い原発性悪性心臓腫瘍。弁を巻き込みやすい |
| 骨肉腫 | ほぼ左房に発生し、石灰化を伴うことが多い |
| 平滑筋肉腫 | 左房に多く、肺静脈・僧帽弁に浸潤しやすい |
| 悪性リンパ腫 | 免疫不全の人に多く、心膜を巻き込みやすい。化学療法が効くことがある |
表はAraozら(1999)のCT・MRIの総説によります。右房の腫瘤で心膜への浸潤を伴えば、まず血管肉腫を考えます。
心臓血管肉腫でよくある疑問(Q&A)
Q. どのくらいの大きさで見つかりますか?
A. 162例を集めたシステマティックレビューでは、腫瘍径の中央値は6cmで、年齢の中央値は45歳、男性は女性の1.5倍でした(Stergioula 2023)。
Q. 左房の腫瘤なら血管肉腫は考えにくいですか?
A. 血管肉腫は右房に多く、左房には未分化肉腫・骨肉腫・平滑筋肉腫などが多いとされます(Araoz 1999)。左房の骨肉腫では、付着部が広い・心房中隔以外から発生するといった所見が粘液腫との区別に役立つとされます。
あわせて読みたい:心臓粘液腫とは?CT画像診断のポイントは?
参考文献
- Araoz PA, Eklund HE, Welch TJ, et al. CT and MR imaging of primary cardiac malignancies. Radiographics. 1999;19(6):1421-34. PubMed
- Garcia Brás P, Branco LM, Galrinho A, et al. Malignant Primary and Metastatic Cardiac Tumors: A Single-Center 27-Year Case Review. Oncology. 2023;101(5):292-302. PubMed
- Tyebally S, Chen D, Bhattacharyya S, et al. Cardiac Tumors: JACC CardioOncology State-of-the-Art Review. JACC CardioOncol. 2020;2(2):293-311. PubMed
- Zhang C, Huang C, Zhang X, et al. Clinical characteristics associated with primary cardiac angiosarcoma outcomes: a surveillance, epidemiology and end result analysis. Eur J Med Res. 2019;24(1):29. PubMed
- Stergioula A, Kokkali S, Pantelis E. Multimodality treatment of primary cardiac angiosarcoma: A systematic literature review. Cancer Treat Rev. 2023;120:102617. PubMed
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