股関節の軟骨がすり減っていき、徐々に骨が変形して痛みをともなう変形性股関節症。
中には手術をするまではないけど、長年痛みを我慢し続けている方も多いのではないでしょうか?
今回は変形性股関節症(英語表記で「Osteoarthritis of the hip」)について
- 症状
- 原因
- 診断
- 治療
などをわかりやすい図や実際のレントゲン画像、CT画像を交えながらご説明したいと思います。
変形性股関節症とは?
股関節の軟骨が徐々にすり減り、変性・変形して、やがて軟骨がなくなり、骨破壊が起こるために関節がしだいに変形していく慢性進行性の疾患です。
一次性股関節症と二次性股関節症とに分けられ、日本では二次性股関節症がほとんどで特に女性に多い特徴があります。
また、この変形性股関節症には分類があります。
変形性股関節症の分類
前期股関節症・初期股関節症・進行期股関節症・末期股関節症とに分けられます。
前期股関節症
自覚症状はほとんどなく、軟骨に軽度のすり減りがある状態。
初期股関節症
軟骨が磨り減り、関節裂隙が狭くなった状態。
進行期股関節症
一部の関節裂隙がなくなり、骨同士がぶつかり合い、骨の硬化や変形が見られます。
末期股関節症
関節裂隙が広範囲に消失し、骨棘状となり、関節が変形した状態。
変形性股関節症の症状は?
前期段階では、ほとんど症状はみられませんが、初期には軽度→進行するにつれ痛みなどの症状が強くなります。
- 股関節の痛み
- 関節可動域制限
- 腰痛
- 跛行
- 膝痛
立ち上がった際・足を上げた際・しゃがんだ際・歩き始めなどに痛みを感じる程度から、進行するにつれ強い痛みが持続するようになります。
また痛みにともない動かしにくくなり、可動域に制限を感じるようになることもあります。
それ以外にも腰痛や跛行(はこう)といって足を引きずるような歩行異常(トレンデレンブルグ徴候)があらわれることもあります。
変形性股関節症の原因は?
一次性股関節症と二次性股関節症とに分けられますので、それぞれ原因をご説明します。
一次性股関節症
明らかな原因はないものの、加齢による変化や、体重増加が要因になると考えられています。
二次性関節症
- 発育性股関節形成不全・・・周産期や出生後の発育過程で起こる股関節の脱臼
- 臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん)・・・骨盤の小さな女性に多く、大腿骨を覆う面積が小さくなっているもの
などに起因します。
また上記以外に、家族歴・肥満・重労働・スポーツなどが危険因子となることもあります。
変形性股関節症の診断は?
単純X線検査や股関節CT検査によって
- 関節の裂隙(読み方は「れつげき」関節を作る骨の隙間)の狭小化
- 軟骨下骨の硬化(軟骨の下の柔らかい骨も硬い骨に変性)
- 骨嚢胞(骨の一部が空洞化)の形成
- 骨棘(骨組織が増殖し、棘状になったもの)の形成
などを確認し、診断されます。
症例 60歳代女性
右股関節レントゲン及びCT検査にて、右股関節に関節裂隙の狭小化、骨嚢胞の形成、骨棘形成を認めています。
変形性股関節症と診断されました。
症例 70歳代女性
左股関節レントゲン及びCT検査にて、左股関節に関節裂隙の狭小化、骨嚢胞の形成、骨棘形成を認めています。
変形性股関節症と診断されました。
変形性股関節症の治療は?
保存療法、もしくは手術を選択することになります。
保存療法
- 体重管理
- 杖の使用
- 運動療法
- 対処法
などが基本で、少しでも股関節への負担を減らす意味があります。
また、運動療法としては筋力維持のため、ストレッチや水中歩行などが効果的とされています。
対処法として、痛み緩和のため、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が有用となります。
手術
- 骨切り術
- 人工股関節全置換術
という方法があります。
骨切り術
骨切り術の中でも以下のような方法があります。
- 棚形成術・・・骨盤の骨を移植して臼蓋の屋根部分を作る
- 寛骨臼回転骨切り術・・・寛骨の一部を切って移動させる
- 内反骨切り術・・・大腿骨の内側の骨の角度を変え、金属でできたプレートやネジで固定
- 外反骨切り術・・・大腿骨の外側の骨の角度を変え、金属でできたプレートやネジで固定
人工股関節全置換術
- セメント固定型・・・インプラントの固定に骨のセメントを用いる
- セメントレス固定型・・・骨のセメントを用いない
という方法があります。
上記2症例の術後のレントゲンです。
ともに人工股関節全置換術にて治療されました。
参考文献:全部見えるスーパービジュアル整形外科疾患 P298・299
参考文献:整形外科疾患ビジュアルブック P362・363
最後に
- 股関節の軟骨が徐々にすり減り、変性・変形して、やがて軟骨がなくなり、骨破壊が起こるために関節がしだいに変形していく慢性進行性の疾患
- 前期股関節症・初期股関節症・進行期股関節症・末期股関節症に分類される
- 股関節の痛み・関節可動域制限・腰痛・跛行・膝痛などの症状が徐々に進行する
- 一次性股関節症と二次性股関節症とに分けられ、それぞれ原因が異なる
- 治療は保存療法もしくは手術という方法がある
長年変形性股関節症を患っているものの、ストレッチなどの運動を続けることによって、症状悪化を防げている方も中にはいらっしゃいます。
また、手術をしてもリハビリが大変重要で、筋力をつけることで歩行も楽になるようになります。