先に結論:尿膜管遺残
- 尿膜管は胎児期に膀胱のてっぺんとへそをつなぐ管で、生まれる頃には閉じて正中臍索になります。これが残ると開存・臍側の洞・膀胱側の憩室・途中の嚢胞の4型の尿膜管遺残になります
- へそからの膿・液体、へその下の痛みや腫れ(感染)で見つかることが多く、CT・MRI・超音波でへそと膀胱の間の正中の管状・嚢胞状の構造を確認します
- 大人では尿膜管癌(膀胱頂部の正中の腫瘤で石灰化を伴うことが多い。Thali-Schwab 2005)が発生することがあり注意が必要です
- 感染した尿膜管の腫瘤は癌と見分けにくいことがあり、腫瘤内の線状の高吸収は魚の骨などの異物のヒントになりえます(Para 2026)
※へそから膿や液が出る・へその下が腫れて痛むときは、泌尿器科や外科を受診してください。
尿膜管遺残
・尿膜管は胎生期の尿膜(allantois)に由来し、膀胱頂部と臍をつなぐ管である。出生前に閉鎖するが、正常でも膀胱頂部から尿膜管の遺残があり、正中臍索(線維性の索状構造)として臍に向かう。
・しかし、出生時以降も尿膜管が残存することがあり、開存している部位により、
- 尿膜管開存(patent urachus)、
- 尿膜管洞(umbilical urachal sinus)、
- 尿膜管憩室(vesicourachal diverticulum)、
- 尿膜管嚢胞(urachal cyst)
の4つに分けられる。

・いずれも感染を併発しうる(特に尿膜管嚢胞・尿膜管洞)が、症状の有無は膀胱、臍との交通の有無にもよる。
・膀胱と交通している→膀胱炎症状、
・臍と交通している→臍からの膿流出など臍炎。
・交通のない場合は、下腹部痛、有痛性腫瘤、発熱などを主訴とする。
・成人では膀胱頂部に発生する尿膜管癌の発生に注意する。・小児721例の検討では、画像で見つかる尿膜管遺残は小児の約1.03%とまれではなく、大半(667例)は偶然発見であった。無症状の小児を予防的に切除しても、成人の尿膜管腺癌1例を防ぐのに5,721例の切除が必要と試算され、無症状例の予防的切除の利益は乏しいとされる。
・尿膜管膿瘍(感染した尿膜管嚢胞・洞)は、超音波で内部のエコー上昇、CTで壁の厚い嚢胞や混合した濃度の腫瘤として見える。感染した嚢胞と尿膜管癌はどちらも似た見え方をして区別が難しく、穿刺吸引や生検が必要になることがある(Yu 2001)。
尿膜管癌の画像所見と、癌に見える感染・異物
尿膜管癌の画像は、「正中にある」「膀胱の外側(膀胱上)に主体がある」「石灰化する」が手がかりです。手術で確かめた尿膜管腺癌25例のCT所見では、次の結果でした(Thali-Schwab 2005)。
- 腫瘍の大きさは平均6cm。25例中21例(84%)が嚢胞と充実部分が混じる腫瘤、4例(16%)が充実性
- 石灰化は25例中18例(72%)にあり、辺縁が11例、中心のみが3例、両方が4例
- 腫瘤の主体が膀胱の外にあったのは22例(88%)、膀胱内腔に突出する腫瘤として見えたのは13例(52%)
10例の報告でも、腫瘍は尿膜管の走行に沿って腹壁のすぐ後ろの正中にあり、8例で主体が膀胱上にあったとされています(Brick 1988)。
一方で、感染した嚢胞や膿瘍も、壁の厚い腫瘤として尿膜管の走行上に見えます。魚の骨が腸管から尿膜管へ移動して腫瘤をつくった39歳男性の報告では、膀胱頂部から臍に伸びる腫瘤が、造影CTで不整な造影効果と壊死、中心の細い線状の石灰化を示し、尿膜管の悪性腫瘍が疑われて切除されました。切除標本の中央に長い魚の骨が見つかっています(Para 2026)。魚の骨による尿膜管膿瘍を腹腔鏡で切除した報告もあります(Okada 2019)。
| 尿膜管癌 | 感染・異物による腫瘤 | |
|---|---|---|
| 場所 | 尿膜管の走行上の正中。膀胱上が主体のことが多い | 同じく尿膜管の走行上 |
| 石灰化 | 72%にみられ、辺縁に多い。中心のみの例もある | 異物があれば線状の高吸収 |
| 手がかり | 血尿、粘液、腫瘤 | 発熱、痛み、へその発赤・排膿、誤飲の既往 |
| 確定 | 画像だけでは区別が難しい場合は、穿刺吸引・生検や切除標本の病理で決める | |
線状の高吸収が1本あるだけで異物と決めつけず、腫瘤の主体の位置、周囲脂肪織の変化、膀胱壁との関係をあわせて読みます。
症例 30歳代男性 尿膜管洞への膿瘍形成

症例 尿膜管洞への膿瘍形成

動画で学ぶ尿膜管洞
尿膜管遺残でよくある疑問(Q&A)
Q. 正中臍索とは何ですか?
A. 尿膜管が閉じたあとに残る線維性のひもで、膀胱のてっぺんから臍へ腹壁の裏の正中を走る正常な構造です。
Q. 大人で偶然見つかった尿膜管遺残は治療が必要ですか?
A. 尿膜管の異常を指摘された成人245例の検討では、無症状の92例で膀胱の悪性腫瘍(低悪性度の乳頭状腫瘍を含む)は0例、症状のある153例では14例(9.2%)で、特に肉眼的血尿があると多くみられました(Blomqvist 2026)。血尿などの症状があれば泌尿器科で精密検査を受けてください。
Q. 尿膜管癌はCTでどんな特徴がありますか?
A. 膀胱頂部から臍へ向かう正中の線上にできる腫瘤で、膀胱の外側に主体があり、嚢胞と充実部分が混じり、石灰化を伴う例が多いとされます。手術で確かめた25例では、石灰化が72%、膀胱外に主体のあるものが88%でした(Thali-Schwab 2005)。
Q. 魚の骨を飲み込んで尿膜管に膿瘍ができることはありますか?
A. まれですが報告があります。腸管から移動した魚の骨が尿膜管内に入り、腫瘤をつくった症例が報告されています(Para 2026、Okada 2019)。造影CTで悪性腫瘍に見えた例もあり、腫瘤内の線状の高吸収と誤飲の既往が手がかりになります。
Q. 血尿が出たら何科を受診すればよいですか?
A. 肉眼で見える血尿があれば泌尿器科を受診してください。尿膜管の異常を指摘された成人では、肉眼的血尿のある人で膀胱の腫瘍が多くみられました(Blomqvist 2026)。
参考文献
- Yu JS, Kim KW, Lee HJ, et al. Urachal remnant diseases: spectrum of CT and US findings. Radiographics. 2001;21(2):451-61. PubMed
- Parada Villavicencio C, Adam SZ, Nikolaidis P, et al. Imaging of the Urachus: Anomalies, Complications, and Mimics. Radiographics. 2016;36(7):2049-2063. PubMed
- Gleason JM, Bowlin PR, Bagli DJ, et al. A comprehensive review of pediatric urachal anomalies and predictive analysis for adult urachal adenocarcinoma. J Urol. 2015;193(2):632-6. PubMed
- Sah A, Triveni GS, Chandrashekhara SH. Case series of urachal adenocarcinoma: Imaging features. J Cancer Res Ther. 2024;20(3):1057-1060. PubMed
- Blomqvist P, Joulhay Ian L, Holmin E, et al. Malignancy yield and clinical predictors in radiologically detected adult urachal anomalies: A retrospective cohort study. BJUI Compass. 2026;7(10):e70284. PubMed
- Thali-Schwab CM, Woodward PJ, Wagner BJ. Computed tomographic appearance of urachal adenocarcinomas: review of 25 cases.. Eur Radiol. 2005;15(1):79-84. PubMed
- Brick SH, Friedman AC, Pollack HM, et al. Urachal carcinoma: CT findings.. Radiology. 1988;169(2):377-81. PubMed
- Para SA, Khan TA, Khawaja AR, et al. Fish bone migration into urachus mimicking urachal malignancy: A rare case report.. Radiol Case Rep. 2026;21(2):622-625. PubMed
- Okada M, Emoto S, Kaneko M, et al. Laparoscopic resection of an urachal abscess caused by migration of a fish bone: a case report.. ANZ J Surg. 2019;89(11):E536-E537. PubMed
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