先に結論:鼓室型グロムス腫瘍(傍神経節腫)

  • 鼓室型グロムス腫瘍は中耳(蝸牛岬角)にできる傍神経節腫で、中年女性に多く、拍動性耳鳴・難聴で見つかり、鼓膜の奥に赤い腫瘤が見えます
  • CTでは蝸牛岬角に接する小さな軟部腫瘤で、下の骨(頸静脈球との間)が保たれるのが特徴です。骨破壊があれば頸静脈型グロムス腫瘍を考えます
  • MRIでは強い造影と、大きいものではsalt and pepper appearanceが見られます。血流が多いため、治療前に塞栓術を行うことがあります

鼓室グロムス腫瘍(glomus tympanicum)

「グロムス腫瘍」という名前は、2つの別の病気に使われるので注意が必要です。この記事は頭頸部の傍神経節腫です。指先の爪の下などにできる「グロムス腫瘍(glomus tumor)」は、血管の周りのグロムス小体から生じる別の腫瘍で、まれに胃にもできます。

  • グロムス腫瘍(傍神経節腫:paraganglioma)は、グロムス小体(傍神経節)より発生する腫瘍。頭頸部では、部位により分類される。

▶︎頭頸部のグロムス腫瘍

  • 頸動脈小体腫瘍(carotid body tumor)
  • 鼓室型グロムス腫瘍(glomus tympanicum)
  • 頸静脈型グロムス腫瘍(glomus jugulare)
  • 迷走神経小体腫瘍(glomus vagale)傍神経節腫は3分の1以上が遺伝性とされ、頭頸部の傍神経節腫の多くは遺伝子の分類上「偽低酸素(pseudohypoxia)クラスター」に属する。SDHx遺伝子変異の保因者では頭頸部傍神経節腫が多発しやすく、頸動脈小体や迷走神経の病変が多いため、多発例や家族歴のある例では他部位も検索する。

 

  • 好発年齢は40-60歳代。
  • 男女比は1:5で女性に多い。
  • 一般的に発育は緩徐。
  • 拍動性耳鳴をきたす疾患として重要。他、伝音性難聴、耳痛、顔面神経麻痺など。
  • 耳鏡で、鼓膜後方の拍動性赤色腫瘤が特徴的。
  • 脈に合わせて「ザッザッ」と聞こえる耳鳴りや、片側の聞こえにくさが続くときは、耳鼻咽喉科で相談してください。
  • 局在から、Jacobson神経(Ⅸの鼓室枝)に発生する鼓室内グロムス腫瘍(glomus tympanicum)、Arnold神経(Ⅹの耳介枝)に発生する頸静脈グロムス腫瘍(glomus jugulare)に分類される。
  • 頸静脈孔(jugular foramen)は、下のように小さな前内側部(神経部)と頸静脈が通る後外側部(血管部)に分けられる。ⅨからJacobson神経が出て、ⅩからArnold神経が分枝する。

jugular foramen1

  • 治療は、外科的切除。血流の多い腫瘤であり、手術前に塞栓術を施行することあり。

鼓室グロムス腫瘍の画像所見

  • 蝸牛岬角に接した軟部腫瘤。骨破壊や周囲への浸潤はなし。
    ※頸静脈型グロムス腫瘍では、鼓室底に浸潤性骨破壊を認める。頸静脈孔周囲骨の虫食い状破壊性変化を伴うことが多い。
  • 造影CTやMRで強い造影効果を認める。
  • T2WIで、腫瘤周囲の拡張した血流の早い血管が低信号のflow voidとして認める。
  • 一方T1WIでは、亜急性期の出血、血流の遅い血管を点状の高信号を呈して、salt and pepper appearanceとよばれる。

鼓室型と頸静脈型の見分け方(CT・MRI)

鼓室型(glomus tympanicum) 頸静脈型(glomus jugulare)
できる場所 中耳の蝸牛岬角 頸静脈孔(頸静脈球の周り)
CT 鼓室内の小さな軟部腫瘤。頸静脈球との間の骨は保たれる 頸静脈孔の周りの骨が虫食い状に壊れ、鼓室の底へ広がる
MRI 小さく、強く造影される結節 flow voidやsalt and pepper appearanceが目立つ。頭蓋内や頸部へ広がることがある

鼓膜の奥の赤い腫瘤には、異所性内頸動脈や高位・裂開した頸静脈球のような血管の変異もあります。生検すると大出血の危険があるため、処置の前にCTで除外します。

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参考文献

  1. Rao AB, Koeller KK, Adair CF. From the archives of the AFIP. Paragangliomas of the head and neck: radiologic-pathologic correlation. Radiographics. 1999;19(6):1605-32. PubMed
  2. Weissman JL, Hirsch BE. Imaging of tinnitus: a review. Radiology. 2000;216(2):342-9. PubMed
  3. Lin EP, Chin BB, Fishbein L, et al. Head and Neck Paragangliomas: An Update on the Molecular Classification, State-of-the-Art Imaging, and Management Recommendations. Radiol Imaging Cancer. 2022;4(3):e210088. PubMed
  4. Michałowska I, Lewczuk A, Ćwikła J, et al. Evaluation of Head and Neck Paragangliomas by Computed Tomography in Patients with Pheochromocytoma-Paraganglioma Syndromes. Pol J Radiol. 2016;81:510-518. PubMed

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