喀血の出血源となる血管
- 肺動脈性出血
- 気管支動脈性出血:喀血の大部分を占める。気管支動脈の拡張、血管増生が生じて、肺動脈との生理的吻合である、気管支-肺動脈短路を形成し、破綻しやすくなる。
- 体循環-肺動脈吻合出血
気管支出血の原因
- 感染症:気管支拡張症、慢性気管支炎、肺結核、肺真菌症(アスペルギルスなど)、肺炎、肺化膿症
- 新生物:肺がん、気管支腫瘍(肺がん、転移、気管支原発)
- 心血管異常:僧帽弁狭窄症、肺梗塞、大動脈瘤、心不全、気管支動脈瘤、肺動脈瘤、肺動静脈瘻、高安動脈炎
- その他:外傷、異物、凝固異常、Goodpasture症候群、Wegener肉芽腫症
気管支動脈塞栓症(BAE(bronchial artery embolization))の適応と禁忌
- 喀血の緊急処置であり、繰り返す喀血で、内科的治療でコントロールできないもので外科的治療の適応がないものが対象となる。1日300mlを超えるもの。
- ただし気管支鏡検査により限局的出血であることが確認されているもの。
- 禁忌は塞栓する動脈から脊髄枝(前脊髄動脈)が明らかに描出されている場合。
喀血の責任血管
気管支動脈(最多)
- 気管支動脈の起始部は、右鎖骨下動脈とその枝、左鎖骨下動脈とその枝、大動脈性右肋間動脈(肋間気管支動脈)、大動脈弓、胸部大動脈。
- 気管支動脈は通常大動脈から直接分枝することが多い。胸部下行大動脈前面→大動脈弓下壁→右肋間動脈の1-3枝基部→左鎖骨下動脈を検索。
- 気管支動脈は1本とは限らない。左右共通していることも、別々のこともある。
- 右は第3肋間動脈などと共通幹を有する例が多数あり。この場合、胸部大動脈の右側壁から分岐する。
気管支動脈の分岐部の高さは?
- 高さは、Th5-6の間で分布し、ほぼ気管分岐下部に相当。左は右と比べて広い範囲で分布。左は右気管支動脈開口部よりやや上側・前壁より分岐することが多い。
- 造影で、前脊髄動脈が造影されないかをチェックする。塞栓術を開始した後で造影されることもあるので注意。前脊髄動脈が造影された場合、子カテで脊髄根動脈を越えた位置で塞栓する。
気管支動脈以外
鎖骨下動脈分枝
- 上葉からの出血。
- 肺尖部から上葉に慢性炎症がある場合。
- 外側胸動脈、内胸動脈などが拡張して、肺動脈間にシャントを作ることがある
肋間動脈、内胸動脈
- 中葉〜下葉からの出血。
- 胸膜肥厚を伴った喀血の場合、肋間動脈が関与することが多いとされる。
- 肋間動脈は右は大動脈右背側、左は大動脈背側〜やや右背側から分枝する。
- 右4-7肋間動脈、右気管支動脈・肋間動脈共通幹では、脊髄動脈を分枝することが多いので注意。
- 炎症が前壁にも及んでいる場合は、内胸動脈が出血源の場合もある。
下横隔動脈
- 下葉からの出血。
- 肺底部に胸膜肥厚がある場合。
- 起始部である、腹腔動脈の起始部から造影する。
血管造影の手順
- 大腿動脈からアプローチする。
- 胸部大動脈造影:全例ではおこなわない。気管支動脈が描出できるとは限らないから。4Frあるいは5Frのピッグテールカテーテルを用いる。
- 気管支動脈造影:5Frシェファードフックなどのスワンネック型のカテーテルを用いる。左主気管支が胸部下行大動脈を横切るレベルを中心に探す。
- 気管支動脈塞栓術には、ゼラチンスポンジ、金属コイルなどを用いる。
症例 70歳代男性 喀血
右上葉に慢性壊死性アスペルギルス症疑い。喀血を認め、右上葉からの出血が疑われる。
右気管支動脈は気管分岐部レベルの右側にあるはず!この辺りを探りながら血管造影。
すると右気管支動脈の描出に成功。上に向かうのは肋間枝(肋間動脈)。気管支動脈と共通幹を作っている。頸部への栄養もあり。
気管支動脈をselectし、小カテを進めて造影。右気管支動脈から上方へ向かうモヤモヤな血管あり。同部位からの出血が疑われた。
同部位から、セレスキュー®少量を注入。その後、2/3mmコイルを2つ留置。その後、気管支動脈から上方に向かう血管の描出がないことを確認して終了。
症例 70歳代 男性 喀血(右肺門部に既知の肺がん(扁平上皮癌))
こちらの症例はBAE施行前の胸部CTAにて右の気管支動脈が同定できた症例です。
CTAにおいて胸部下行大動脈から分岐して、腫瘍内を走行する右気管支動脈を同定できます。
動画でチェックする。
アンギオ
CTと同様に気管分岐部レベルよりやや頭側に右気管支動脈の起始部を認めていました。
右気管支動脈をセレスキュー®を用いれ塞栓、その後起始部にコイルを3つ留置。
関連記事)セレスキューの特徴、保険点数とは?
気管支動脈塞栓症の副作用、合併症
- 脊髄損傷
- 気管支壊死
- 末梢塞栓
- 血管損傷
- 空気塞栓:脳梗塞など
- 肺梗塞