目次
肺分画症(Bronchopulmonary Sequestration)
- 正常気管支や肺動脈と交通のない、正常肺から分離した分画肺が存在する先天性奇形。
- 発生学的には正常と異なる前腸からの副肺芽が原因と考えられている。
- 正常肺と胸膜を共有する肺葉内分画症と、共有しない肺葉外分画症がある。
- 栄養動脈は大動脈あるいはその分枝。
- ただし静脈還流は異なり、肺葉内分画症は肺静脈あるいは左房、肺葉外分画症は奇静脈や下大静脈、門脈に流入する。
- 好発部位はともに左で、肺葉内分画症は中でも左S10に好発する。
- 肺葉内分画症は合併感染で発見されることが多く、肺葉外分画症は合併奇形が多い。
- 合併奇形には横隔膜ヘルニア、bronchogenic cyst、気管支閉鎖、CPAM、scimitar症候群など。
- 自然退縮することもある。
肺葉内分画症と肺葉外分画症の違いのポイント
肺葉内分画症 | 肺葉外分画症 | |
内:外の頻度 | 3 | 1 |
左右差 | 左 | 左 |
最も多いのはどこか。 | 左S10 | – |
栄養動脈 | 大動脈あるいはその分枝 | 大動脈あるいはその分枝 |
還流静脈 | 肺静脈 | 奇静脈 |
独自の胸膜を持つ? | × | ○ |
合併感染 | ○ | × |
合併奇形 | × | ○ |
いつ発見される? | 半数は大人。 | 新生児発見が多い。 |
肺分画症の画像所見
- 肺底部に多房性嚢胞〜充実腫瘤として認められる。
- 大動脈から分岐する異常血管を見つけることが診断に有用。
症例 10 歳代後半の女子。持続する咳嗽を主訴に来院した。
2016年放射線科診断専門医試験問題23より引用
左下葉に気腫性変化あり。中心部には大動脈から連続する血管構造あり。肺葉内肺分画症を疑う所見。
症例 72 歳の男性。胸部異常影を主訴に来院。
2005年放射線科診断専門医試験問題24より引用。
左肺下葉縦隔側に接して分葉状で境界明瞭な腫瘤あり。その周囲は低吸収値を示す過膨張肺を伴っている。造影CTでは、大動脈から分岐していると思われる血管構造あり。この血管が腫瘤に関与していると考えられる。肺葉内肺分画症を疑う所見。
症例 20 歳代の女性。検診にて異常影を指摘された。気管支鏡にて病変部との気管支の連続性は確認できなかった。
2006年放射線科診断専門医試験問題35より引用。
左肺S10に造影効果の乏しい低吸収値の腫瘤が認められ、肺野条件では周囲に炎症性変化あり。大動脈から分岐する異常血管が連続しており、気管支鏡で病変部との気管支の連続性は確認できなかった点からも、肺内型分画症と考えられる。
症例 3 カ月の乳児。出生時の胸部単純 X 線写真で異常を指摘された。
造影CTにて大動脈側から伸びる脈管構造あり、肺分画症を疑う所見。
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