先に結論:肝動注化学療法の血流改変術とは
- 肝動注化学療法(リザーバー動注)は、肝動脈にカテーテルを入れたままにし、皮下に埋めたリザーバー(ポート)から抗がん剤を肝臓の腫瘍に直接流し込む治療です
- そのための準備として、カテーテル1本で肝臓全体に薬が届き、ほかの臓器には流れないように、金属コイルで一部の動脈をふさいで血流を作り変えるのが血流改変術です
- 目的は2つ:①肝動脈を1本にまとめる(上腸間膜動脈から出る右肝動脈・左胃動脈から出る左肝動脈など、肝動脈の走行が標準と異なる人が約4割)、②胃・十二指腸へ薬が流れないようにする(胃十二指腸動脈・右胃動脈の塞栓が特に重要)。薬が胃や十二指腸に流れると潰瘍の原因になります
動注化学療法とは?
動注化学療法とは、セルディンガー法を用いて、カテーテルを選択的に目標とする臓器に持って行き、そこで高濃度の抗がん剤を注入する治療法です。
- ワンショット動注療法:短時間で注入
- 持続動注療法:リザーバー( Aポート)とカテーテルをつないで、皮下に埋め込み時間をかけてゆっくり注入
する2つの方法があります。
肝臓の腫瘍に対して、後者の持続動注療法である肝動注療法をするためには、1本のカテーテルで抗がん剤が腫瘍に届くようにする必要があります。
そのためには
- 血流改変術(金属コイルを留置することによる)
- カテーテルの挿入留置
- リザーバーの接続と留置
というステップを踏まなければなりません。
血流改変術とは?目的は?
コイルを血管に留置することにより、肝臓を栄養する血流の流れを変えることを血流改変術と言います。
血流改変術の目的は
- 複数の肝動脈がある場合、肝動脈を1本化すること
- 抗がん剤が消化管を栄養する血管に入らないように防止すること
の2点あります。
肝動脈を一本化する。
肝動注の候補100例の血管造影では、正常な肝動脈解剖は50%にとどまり、置換・副右肝動脈が20%、置換・副左肝動脈が17%にみられたと報告されています(Kemeny 1986)。600例のDSAを解析したより新しい報告でも、標準的な肝動脈解剖は61.3%にとどまり、左肝動脈の変異が19.8%、右肝動脈の変異が14.8%にみられました(Covey 2002)。
そのうち、頻度が高いものは
- 上腸間膜動脈(SMA)から右肝動脈が分岐する replaced RHA
- 左胃動脈(LGA)から左肝動脈が分岐するreplaced LHA
の2つです。
これを把握するには、腹腔動脈(CA)と上腸間膜動脈(SMA)の良好な血管造影が必要とされます。
肝臓に深く関与する、右胃動脈、右下横隔動脈、胆のう動脈、胃十二指腸動脈、後膵十二指腸動脈、左胃動脈などをチェックします。
カテーテルを留置する肝動脈を残して、残りの肝動脈にはコイルを置いて塞栓します。
消化管への薬剤流入を防止するために塞栓する血管。
肝動注において、抗がん剤が誤って消化管に入ってしまうのを防ぐ上で重要な血管は、
- 胃十二指腸動脈(GDA)
- 右胃動脈(RGA)
の2つが重要です。
それぞれのポイントは以下の通りです。
胃十二指腸動脈(GDA)

後上膵十二指腸動脈(PSPDA)よりも中枢まで塞栓しないとPSPDAから十二指腸に流れてしまうので、PSPDA分岐部とGDA分岐部の間で塞栓する。
右胃動脈(RGA)

通常固有肝動脈から分岐。左肝動脈あるいは胃十二指腸動脈から分岐することもある。ここを塞栓しておかないと胃潰瘍・胃炎などの急性胃粘膜病変を起こす。
合併症
合併症は、抗がん剤が消化管に分布することによる上部消化管の急性粘膜病変、膵炎などがあり、前者は穿孔に至ることもあります。
また肝臓に注入された抗がん剤の影響で、肝機能障害、胆汁漏の形成、肝萎縮、末梢の肝動脈の閉塞などが起こることがあります。
カテーテルを留置することによる合併症としては、中枢の肝動脈閉塞、カテーテルやポート感染などが挙げられます。
参考文献)IVRのキーワード175―画像診断Key Words Index〈2〉P174
- Covey AM, Brody LA, Maluccio MA, et al. Variant hepatic arterial anatomy revisited: digital subtraction angiography performed in 600 patients. Radiology. 2002;224(2):542-547. PubMed
- Tanaka T, Arai Y, Inaba Y, et al. Radiologic placement of side-hole catheter with tip fixation for hepatic arterial infusion chemotherapy. J Vasc Interv Radiol. 2003;14(1):63-68. PubMed
- Kemeny MM, Hogan JM, Goldberg DA, et al. Continuous hepatic artery infusion with an implantable pump: problems with hepatic artery anomalies. Surgery. 1986;99(4):501-504. PubMed
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