動注化学療法とは?
動注化学療法とは、セルディンガー法を用いて、カテーテルを選択的に目標とする臓器に持って行き、そこで高濃度の抗がん剤を注入する治療法です。
- ワンショット動注療法:1時間以内の短時間で注入
- 持続動注療法:リザーバー( Aポート)とカテーテルをつないで、皮下に埋め込み数時間かけてゆっくり注入
する2つの方法があります。
肝臓の腫瘍に対して、後者の持続動注療法である肝動注療法をするためには、1本のカテーテルで抗がん剤が腫瘍に届くようにする必要があります。
そのためには
- 血流改変術(金属コイルを留置することによる)
- カテーテルの挿入留置
- リザーバーの接続と留置
というステップを踏まなければなりません。
血流改変術とは?目的は?
コイルを血管に留置することにより、肝臓を栄養する血流の流れを変えることを血流改変術と言います。
血流改変術の目的は
- 複数の肝動脈がある場合、肝動脈を1本化すること
- 抗がん剤が消化管を栄養する血管に入らないように防止すること
の2点あります。
肝動脈を一本化する。
複数の肝動脈がある割合は、30%程度と報告されています。(Problems with artery anamalies.Surgery 99:501-504,1986)
そのうち、頻度が高いものは
- 上腸間膜動脈(SMA)から右肝動脈が分岐する replaced RHA
- 左胃動脈(LGA)から左肝動脈が分岐するreplaced LHA
の2つです。
これを把握するには、腹腔動脈(CA)と上腸間膜動脈(SMA)の良好な血管造影が必要とされます。
肝臓に深く関与する、右胃動脈、右下横隔動脈、胆のう動脈、胃十二指腸動脈、後膵十二指腸動脈、左胃動脈などをチェックします。
カテーテルを留置する肝動脈を残して、残りの肝動脈にはコイルを置いて塞栓します。
消化管への薬剤流入を防止するために塞栓する血管。
肝動注において、抗がん剤が誤って消化管に入ってしまうのを防ぐ上で重要な血管は、
- 胃十二指腸動脈(GDA)
- 右胃動脈(RGA)
の2つが重要です。
それぞれのポイントは以下の通りです。
胃十二指腸動脈(GDA)
後上膵十二指腸動脈(PSPDA)よりも中枢まで塞栓しないとPSPDAから十二指腸に流れてしまうので、PSPD分岐部とGDA分岐部の間で塞栓する。
右胃動脈(RGA)
通常固有肝動脈から分岐。左肝動脈あるいは胃十二指腸動脈から分岐することもある。ここを塞栓しておかないと胃潰瘍・胃炎などの急性胃粘膜病変を起こす。
合併症
合併症は、抗がん剤が消化管に分布することによる上部消化管の急性粘膜病変、膵炎などがあり、前者は穿孔に至ることもあります。
また肝臓に注入された抗がん剤の影響で、肝機能障害、胆汁漏の形成、肝萎縮、末梢の肝動脈の閉塞などが起こることがあります。
カテーテルを留置することによる合併症としては、中枢の肝動脈閉塞、カテーテルやポート感染などが挙げられます。
参考文献)IVRのキーワード175―画像診断Key Words Index〈2〉P174
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