先に結論:喘息発作の救急治療(医療者向けメモ)
- 喘息発作の治療の基本は、酸素投与+短時間作用型β2刺激薬の反復吸入と全身性ステロイドで、改善しなければアドレナリン皮下/筋注・マグネシウムなどを検討し、呼吸不全なら気管挿管・人工呼吸に進みます
- アスピリン喘息(NSAIDs過敏喘息)では、コハク酸エステル型ステロイド(ソル・メドロール、ソル・コーテフなど)の急速静注で悪化することがあるため、リン酸エステル型(デキサメタゾン・ベタメタゾン)を選びます
- 帰宅時は吸入ステロイドを中心とした長期管理につなぐことが大切です。薬の量・投与法は喘息予防・管理ガイドラインの現行版と添付文書で確認してください
※息が苦しくて話せない・横になれない・唇が紫色になるときは、すぐに救急車を呼んでください。
気管支喘息、喘息発作への救急治療(吸入、ステロイド点滴、ボスミン筋注)
喘息発作への初期対応
【治療】基本は①吸入→②点滴、+酸素投与
①β2ネブライザー吸入
(脈拍の上がりすぎに注意しながら、効果を見て繰り返す。)
※この記事では薬の量は記載していません。量・回数は喘息予防・管理ガイドラインと添付文書で確認してください。
※痰が多いときは去痰薬(ビソルボン®など)を加えることがある。
※心機能低下や高齢者では頻脈・不整脈に注意する。β2刺激作用があるため。
②ステロイド点滴
・β刺激薬を1回吸入しても軽快しない場合投与。
・救急外来に着いて1時間以内に全身性ステロイドを使うと入院が減り(オッズ比0.40)、8人に使うと1人の入院を防げると推定されている(Rowe 2001)。
- 全身性ステロイド(ソル・メドロール®など)
- 硫酸マグネシウム(コンクライトMg®)を併用することもある
- 生理食塩水に溶かして点滴で投与する。
※アスピリン喘息がある、または否定できない場合は、ソル・メドロールの代わりに、リン酸エステル型のリンデロン®(ベタメタゾン)やデカドロン®(デキサメタゾン)を生理食塩水に溶かして点滴する。
(参考)
1)全身性ステロイドには、内服(プレドニゾロン)と、ゆっくり静注または点滴で使う注射薬(メチルプレドニゾロン、ヒドロコルチゾンなど)がある。量は体重や重症度で変わるため、ガイドラインと添付文書で確認する。
2)コハク酸エステルステロイド(メチルプレドニゾロンやハイドロコルチゾン)にアレルギーがある場合は、デキサメサゾン(デカドロン®)やベタメサゾン(リンデロン®)を使用。
③エピネフリン(ボスミン®)筋注
※静注は不整脈や血圧上昇の危険が大きいため、使う場合は慎重に行う。量と回数は添付文書・ガイドラインで確認する。
※ボスミン®(エピネフリン)はαβ刺激→血圧上昇、気管支拡張、強心作用があるため、血圧上昇・頻脈に注意して使う。
※挿管時の鎮静にはケタミン®が選ばれることがある(気管支拡張作用がある)。挿管は熟練者が行い、無理せずバッグマスクで補助換気して応援を呼ぶ。
※コンクライトMgは気管支拡張作用あり。腎障害があると高マグネシウム血症になりやすいので避ける。※救急外来の成人喘息発作を対象としたコクランレビュー(14試験)では、酸素・β2刺激薬吸入・ステロイド静注に加えた硫酸マグネシウムの単回静注で入院が減り(オッズ比0.75)、100人あたり約7人の入院を防げると推定された(Kew 2014)。
※ネオフィリン®(アミノフィリン)の点滴:成人の救急外来での検討では、β2刺激薬吸入に加えても入院や呼吸機能は有意に改善せず、100人あたり嘔吐が20人、動悸・不整脈が15人多く起こった(Nair 2012)。中毒(嘔気、頭痛、頻脈)に注意が必要で、ふだんテオフィリンを内服している人では特に慎重にする。使わない方が無難か。
アスピリン喘息(NSAIDs過敏喘息、AERD)について
- 成人喘息の約7%(メタ解析)
- 発症は成人になってからが多い。
- 発症経過:上気道炎様症状→鼻茸副鼻腔炎→慢性喘息。メタ解析では、重症喘息患者でのAERDの有病率は約15%と、一般の成人喘息(約7%)の約2倍でした。
- コハク酸エステル型のステロイド(ソルメドロール、ソルコーテフ、サクシゾン)は喘息症状の増悪を引き起こす可能性があるので原則禁忌→リンデロン、デカドロンを使用する。
以下のような特徴があればアスピリン喘息らしさは下がる(確実ではない)
- 強いアトピー体質
- 小児期からの喘息
- 嗅覚が正常
- 軽症喘息(ただし軽症のアスピリン喘息もある)
喘息患者を帰す時の注意点
【帰すときの注意】
・治療により喘鳴が消失し、最後に気管支拡張薬を使用してからしばらく経過を見ても安定しており、会話や体動で呼吸困難やSpO2低下がなければ帰宅可能である。
・他疾患(肺炎、心不全、気胸、縦隔気腫など)の合併を否定する。
・喫煙者には禁煙を指導する。
【処方について】
・吸入ステロイド剤を確認し、かかりつけ医から処方がなければ、吸入ステロイド(配合剤を含む)を処方する。
・短時間作用型β刺激吸入剤を確認し、かかりつけ医から処方がなければ、処方する。
・スペーサーと一緒に、
- 吸入β刺激薬→サルブタモール®吸入とかメプチン®吸入
- 吸入ステロイド→アドエア®など(吸入ステロイド・β2刺激配合剤)
※ただし、吸入β刺激薬は発作時のみ使用。吸入ステロイドはβ刺激薬をより効きやすくup regulationするので毎日使用する。
※中等度以上の発作なら経口ステロイドを数日間処方し、早めの呼吸器内科受診をすすめる。
入院or転送の適応
- 中等度症状で来院し、ネブライザーとステロイド点滴を2回繰り返しても改善不十分の場合
- 高度症状で、治療を始めても早く改善しない場合
- 心不全・肺炎・気胸・縦隔皮下気腫・COPDなどを合併している場合
- 高齢者
- 喘息発作で挿管の既往がある場合
- 救急受診までの発作持続時間が数日~1週間と長く、ステロイド使用にも反応が悪い場合
喘息の人工呼吸器の適応
- 高濃度の酸素を吸入しても低酸素血症が改善しない
- 意識障害
- 心停止・呼吸停止の場合
- 明らかな呼吸筋疲労
- PaCO2の急激な上昇
喘息大発作における挿管→人工呼吸器の初期設定
- 高濃度の酸素から始める
- 1回換気量は少なめにする
- 呼気の時間を長くとる(吸気に対して呼気を長く)
- プラトー圧の上昇に注意する(上昇は動的過膨張を示す)
- PEEPは内因性PEEPを超えない範囲で低めに設定
※酸素化を見ながらFiO2を下げる。
※PaCO2の上昇はある程度許容し(permissive hypercapnia)、酸素化の維持と圧外傷の防止を重視する。
※気道分泌物の除去には気管支鏡下に気道内吸引洗浄が有用な場合がある。
関連記事)人工呼吸器の適応、種類、設定、モード(VIPAP、NPPV、IPPV、看護)
喘息発作の強さと対応の目安
- 喘鳴・息苦しい、軽い発作(苦しいが横になれる):β2刺激薬の吸入。改善すれば帰宅。
- 中等度の発作(苦しくて横になれず、会話や動作がつらい):β2刺激薬吸入の反復、ステロイドの点滴、酸素投与、アドレナリン筋注の検討。早く改善しなければ入院。
- 高度の発作(苦しくて動けず、話すことも歩くこともできない。チアノーゼを伴うこともある):上記の治療を行い、入院を考慮。
- 重篤(呼吸が弱まる・止まる、意識障害):人工呼吸・NPPVなどを考慮し、ICUで管理。
※発作の強さの判定に使うSpO2や血液ガスの具体的な基準は、喘息予防・管理ガイドラインで確認してください。
喘息発作の点滴・吸入でよくある疑問(Q&A)
Q. 喘息発作でリンデロン(ベタメタゾン)の点滴が使われるのはなぜですか?
A. アスピリン喘息では、ソル・メドロールなどのコハク酸エステル型ステロイドで発作が悪くなることがあるため、アスピリン喘息を否定できないときにリン酸エステル型のリンデロンやデカドロンが選ばれます。いずれも生理食塩水などに溶かして点滴します。
Q. ボスミン(アドレナリン)をネブライザーで吸入することはありますか?
A. 吸入のアドレナリンとβ2刺激薬(サルブタモールなど)を比べた6試験のメタ解析では、アドレナリン吸入に呼吸機能の明らかな上乗せ効果はありませんでした(Rodrigo 2006)。吸入の第一選択はβ2刺激薬です。
Q. 発作のときに吸入ステロイドを使う意味はありますか?
A. 救急外来で吸入ステロイドを使った研究のまとめでは、入院が100人あたり32人から17人に減りました(Edmonds 2012)。ただし、全身性ステロイドの代わりになるという根拠は不十分とされています。
参考文献
- Nakamura Y, Tamaoki J, Nagase H, et al. Japanese guidelines for adult asthma 2020. Allergol Int. 2020;69(4):519-548. PubMed
- Niimi A, Fukunaga K, Taniguchi M, et al. Executive summary: Japanese guidelines for adult asthma (JGL) 2021. Allergol Int. 2023;72(2):207-226. PubMed
- Rajan JP, Wineinger NE, Stevenson DD, et al. Prevalence of aspirin-exacerbated respiratory disease among asthmatic patients: A meta-analysis of the literature. J Allergy Clin Immunol. 2015;135(3):676-681.e1. PubMed
- Kew KM, Kirtchuk L, Michell CI. Intravenous magnesium sulfate for treating adults with acute asthma in the emergency department. Cochrane Database Syst Rev. 2014;2014(5):CD010909. PubMed
- Rowe BH, Spooner C, Ducharme FM, et al. Early emergency department treatment of acute asthma with systemic corticosteroids. Cochrane Database Syst Rev. 2001;(1):CD002178. PubMed
- Nair P, Milan SJ, Rowe BH. Addition of intravenous aminophylline to inhaled beta(2)-agonists in adults with acute asthma. Cochrane Database Syst Rev. 2012;12(12):CD002742. PubMed
- Rodrigo GJ, Nannini LJ. Comparison between nebulized adrenaline and beta2 agonists for the treatment of acute asthma. A meta-analysis of randomized trials. Am J Emerg Med. 2006;24(2):217-22. PubMed
- Edmonds ML, Milan SJ, Camargo CA Jr, et al. Early use of inhaled corticosteroids in the emergency department treatment of acute asthma. Cochrane Database Syst Rev. 2012;12(12):CD002308. PubMed
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