気管支喘息、喘息発作への救急治療(吸入、ステロイド点滴、ボスミン筋注)

喘息発作への初期対応

研修医
喘息発作患者への初期対応を教えてください。
指導医
基本は以下のようになります。
【検査】胸部レントゲンで肺炎の合併ないかチェック。
【治療】基本は①吸入→②点滴、+酸素投与

 

β2ネブライザー吸入
メプチン® (ベネトリン®)0.3~0.5cc+生食 3-5cc

(HR<130/分を維持しつつ15~20分の間隔で3,4回繰り返す。)

痰あるならビソルボン®(アレベール®)2ccを加えてtotal 3-5ccくらいに。
心機能低下、高齢者ではメプチンを0.3ccにする。β2刺激作用なので。

②ステロイド点滴

・β刺激薬を1回吸入しても軽快しない場合投与。

  • ソルメドロール®125mg
  • コンクライトMg®(20ml) 1A
  • 生食 100ml を30分くらいかけて落とす。

※アスピリン喘息があるか、不明の場合は、ソルメドの代わりに、リンデロン®2mg/A を2A合計4mg+生食100mlをいく。

(参考)
1)・プレドニゾロン(プレドニン®)経口1mg/kg(20~80mg)
・メチルプレドニゾロン(ソルメドロール®)をゆっくり静注or点滴2mg/kg(通常125mg。40~125mg)
・ハイドロコルチゾン(ソル・コーテフ®)をゆっくり静注or点滴(5~10mg/kg、100~500mg)
2)コハク酸エステルステロイド(メチルプレドニゾロンやハイドロコルチゾン)にアレルギーがある場合は、デキサメサゾン(デカドロン®)やベタメサゾン(リンデロン®)を使用。

0.1%エピネフリン(ボスミン®)筋注
大発作には、ボスミン®0.3ccを筋注or静注

ルートあるなら静注のほうが良い。ただし、この場合1回0.1ccずつ。0.3ccを3回くらいまでしか使ってはダメ。
※ボスミン®(エピネフリン)はαβ刺激→血圧上昇、気管支拡張、強心作用ゆえ、血圧高い人にはダメSBP>160、HR>30ならば、ペルジピンなどで血圧を落としてから使う。
※ボスミン使ってもダメならラシックス(2A(4cc))の吸入が効くことがある。
挿管するならケタミン®1~2mg/kgを静注し鎮静。気管拡張作用あり。名人がやる。無理せず、バッグマスクで補助換気して応援を呼べ。
コンクライトMgは気管支拡張作用あり。1日1~2A腎障害あるならMg↑→イレウスなるので×
※ネオフィリン®(アミノフィリン)はどっちでもよい。中毒:嘔気、頭痛、頻脈。loadingするときは注意(1Aに30分以上かける)
・普段内服してる人→飲んで12時間以上なら1A、12時間未満なら1/2A
・維持投与は1~2A/dayを持続投与 とややこしいので使わない方が無難か。

アスピリン喘息について

  • 成人発症喘息の10%
  • 発症は20-50歳台(特に30-40台)に多い。
  • 発症経過:上気道炎様症状→鼻茸副鼻腔炎→慢性喘息
  • コハク酸エステル型のステロイド(ソルメドロール、ソルコーテフ、サクシゾン、ハイドロコートン)は喘息症状の増悪を引き起こす可能性があるので原則禁忌リンデロン、デカドロンを使用する。

以下の4項目のうち2項目を満たせば否定的(確実ではないが)

  • 強いアトピー体質
  • 小児期からの喘息
  • 嗅覚が正常
  • 軽症喘息(ただしアスピリン喘息のうち1割は軽症)

喘息患者を帰す時の注意点

【帰すときの注意】
・治療により喘鳴が消失し、最後に気管支拡張薬を使用してから60分経っても安定しており、会話や体動で呼吸困難やSpO2低下がなければ帰宅可能である。

・他疾患(肺炎、心不全、気胸、縦隔気腫など)の合併を否定する。

・喫煙者には禁煙を指導する。

【処方について】
・吸入ステロイド剤を確認し、かかりつけ医から処方がなければ、アドエア250を処方する。
・短時間作用型β刺激吸入剤を確認し、かかりつけ医から処方がなければ、処方する。

・スペーサーと一緒に、

  • 吸入β刺激薬サルブタモール®吸入とかメプチン®吸入
  • 吸入ステロイドアドエア250®(吸入ステロイド・β2刺激配合剤)

※ただし、吸入β刺激薬は発作時のみ使用吸入ステロイドはβ刺激薬をより効きやすくup regulationするので毎日使用する。
※中等度以上の発作なら経口プレドニン®1mg/kg(30~80mg、(30mg)分1~2)も3~5日処方し、次の日に呼吸器内科受診をすすめる。

入院or転送の適応

  • 中等度症状で来院し、ネブライザーとステロイド点滴を2回繰り返しても改善不十分の場合
  • 高度症状では1時間以内に改善しない場合
  • 心不全・肺炎・気胸・縦隔皮下気腫・COPDなどを合併している場合
  • 高齢者
  • 喘息発作で挿管の既往がある場合
  • 救急受信までの発作持続時間が数日~1週間と長く、ステロイド使用にも反応が悪い場合

喘息の人工呼吸器の適応

  • 高濃度酸素吸入下でPaO2<50Torr
  • 意識障害
  • 心停止・呼吸停止の場合
  • 明らかな呼吸筋疲労
  • 急激なPaCO2上昇(PaCO2>60mmHgあるいは1時間に5mmHg以上上昇)

喘息大発作における挿管→人工呼吸器の初期設定

  • FiO2:1.0
  • 1回換気量:5~8ml/kg
  • I/E(吸気/呼気)比=1:3以上
  • 最高気道内圧<50cmH2O
  • 平均気道内圧<20~25cmH2O
  • PEEP 0

※PaO2 80mmHg前後を目標にFiO2下げる。
※PaCO2は50~80mmHgであっても許容し、PaO2の維持と圧外傷の防止を重視する。
※気道分泌物の除去には気管支鏡下に気道内吸引洗浄が有用な場合がある。

関連記事)人工呼吸器の適応、種類、設定、モード(VIPAP、NPPV、IPPV、看護)

喘息発作の強度に応じた管理法

発作強度 治療 治療の場所・入院の適応
喘鳴・息苦しい β2刺激薬吸入 帰宅
軽度(小発作) β2刺激薬吸入 帰宅
中等度(中発作) β2刺激薬ネブライザー吸入反復ステロイド薬点滴静注エピネフリン筋注酸素吸入(目標PaO2>80Torr) 1時間で症状改善したら帰宅。それ以外は入院。
高度(大発作) エピネフリン筋注ステロイド薬点滴静注反復酸素吸入(目標PaO2>80Torr) 1時間で症状改善したら帰宅。それ以外は入院。
重篤 上記治療継続人工呼吸・NPPV気管支洗浄全身麻酔 を考慮 ICU入院

急性発作の強度判定基準

発作強度 呼吸困難 SpO2 PaO2 PaCO2
喘鳴・息苦しい 安静時には苦しくないが、急いだり走ったりすると苦しくなる状態 96%以上 正常 45Torr未満
軽度(小発作) 苦しいが横になれる状態 96%以上 正常 45Torr未満
中等度(中発作) 苦しくて横になれず、会話や日常的な動作に困難を感じる 91~95% 60Torr超 45Torr未満
高度(大発作) 苦しくて動けず、話すくとも歩くこともできない。時にチアノーゼが見られることもある。 90%以下 60Torr以下 45Torr以下
重篤 呼吸が減弱または停止し、意識障害やチアノーゼが見られるなど危険状態 90%以下 60Torr以下 45Torr以上
研修医
なるほど!よくわかりました。

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