先に結論:肺化膿症(肺膿瘍)とは

  • 肺炎の一部が壊死して、肺の中に膿のたまった空洞ができた状態です(肺に膿がたまる病気)。肺化膿症と肺膿瘍はほぼ同じ意味で使われます
  • 原因は誤嚥性肺炎に続くものが最も多く、ほかに気管支拡張症、肺癌などで気道がふさがった場合、血流にのった感染などがあります。口の中の常在菌や嫌気性菌などの混合感染が多いです
  • 症状は発熱・咳・痰(においの強い痰のことも)・血痰・胸の痛み。CTでは壁のある空洞の中に液面(ニボー)が見え、造影で内側のふちが造影されます。肺癌・結核などとの区別が大切です
  • 治療は抗菌薬の長期投与が基本で、改善しないときはドレナージなどを検討します。胸腔に膿がたまる膿胸とは別の病気です(合併することはあります)
  • 壊死性肺炎は肺炎の中に小さな壊死・空洞が多数できる状態で、それが1つの膿のたまりにまとまったものが肺化膿症と考えると整理しやすいです(下の比較表)

肺化膿症/肺膿瘍(lung abscess)とは?

  • 肺炎の中でも中心部に壊死を生じ、膿で満たされた空洞を形成したものを肺化膿症と呼ぶ。肺膿瘍と言ってもよい。
  • 誤嚥性肺炎、気管支拡張症、肺癌による気道閉塞などが原因となる。特に、誤嚥性肺炎に続発することが多い。
  • 経気道性・血行性に細菌感染する以外に、腹部の膿瘍の波及や、悪性腫瘍(肺癌や食道癌)に続発することがある。
  • 発熱、咳嗽、喀痰、喀血、胸膜炎に伴う胸痛を主訴とするが自覚症状が乏しいこともあり。
  • 口腔内常在菌であるStreptococcus anginosus group(SAG、旧称ミレリグループ:Streptococcus milleri group)や嫌気性菌、グラム陰性桿菌、ブドウ球菌などが原因となる。混合感染が多い。
  • 既存の嚢胞に周囲の肺炎が及べば、液面形成をし、感染性嚢胞となる。肺化膿症とは別。肺炎治癒後に感染後嚢胞(pneumatocele)を形成することがあるが小児に一般的であり成人では稀。
  • 膿胸を合併することがある。
  • 肺癌(特に扁平上皮癌)や結核、非結核性抗酸菌症、真菌症、肉芽腫性病変、寄生虫症などとの鑑別が重要。発熱・咳嗽があり、造影CTで右上葉にリング状に造影される腫瘤を示したため肺化膿症が疑われたが、術中迅速病理で肺多形癌と診断された報告もある。リング状に造影される腫瘤では、肺化膿症と悪性腫瘍の両方を念頭に置く必要がある。

肺化膿症/肺膿瘍と膿胸の違いは?

肺化膿症は肺実質に膿を作るのに対して、膿胸は肺実質外である胸腔内に膿を作る。CTでの鑑別には、壁の性状(肺化膿症は厚く不整)、臓側・壁側胸膜の分離(膿胸ではsplit pleura sign)、周囲肺の圧排(膿胸で見られる)が最も信頼できる所見とされる。

関連記事:Split Pleura Signとは?膿胸診断の要となるCT所見と鑑別戦略

肺化膿症/肺膿瘍のCT画像所見は?

  • 壊死や空洞を伴う腫瘤-結節として認められる。内面は平滑なことが多い。
  • ニボー像を伴うことがある。
  • 空洞の壁の厚さは肺癌との区別の参考になる。孤立性空洞65例では、壁のいちばん厚い部分が4mm以下なら92%が良性、15mmを超えると95%が悪性であった(Woodring 1980)。
  • 肺癌との鑑別を要する場合、膿胸の合併が疑われる場合は造影CTを施行する。肺化膿症/肺膿瘍では造影で内面を縁取るような造影効果を呈する(空洞内面を覆う肉芽組織は新生血管が豊富であるため)。
症例 60歳代男性

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単純CTにおいて、

  • 右上葉に広範な浸潤影あり。
  • 中心部に低吸収域が目立つ部位あり。

lung-abscess-ct-findings-002

造影CTにおいて、被膜に造影効果を認める液貯留あり。

肺化膿症/肺膿瘍+胸膜炎と診断された。ドレナージはされず、保存的に加療されました。

症例 70歳代女性

lungabscess

肺のう胞の中にニボー像あり。嚢胞壁の肥厚あり。抗生剤にて加療にてこれらの所見は消失。嚢胞内感染を疑う所見。

肺化膿症・壊死性肺炎・膿胸・空洞を作る肺癌の違い

肺化膿症 壊死性肺炎 膿胸 空洞を作る肺癌
場所 肺の中の1つの空洞 浸潤影の中の多数の小さな空洞 肺の外(胸腔) 腫瘍の中心の壊死
壁 厚く不整、内面は比較的平滑 はっきりした壁がない 薄く均一、split pleura sign 厚く、内面が凸凹
周りの肺 浸潤影を伴う 広い浸潤影 押しつぶされる 肺炎がないことも多い

治りますか?ドレナージが必要になるのは?

多くは抗菌薬で治ります。入院して抗菌薬で治療を始めた肺膿瘍109例では、院内死亡・ドレナージ・手術のいずれかになったのは15.6%で、膿瘍が大きいことと多房性であることが関係していました(Kawakami 2025)。

大きな肺膿瘍と膿胸を見分けるCTの手がかり

  • 胸壁に接する大きな肺膿瘍と膿胸は、どちらも液体やガスを含み、ふちが染まる病変に見えるため、見分けにくいことがあります。古典的な検討では、CTで最も頼りになるのは壁の性状、胸膜の分離(split pleura sign)、周りの肺が押しつぶされているかで、病変の大きさ・形・胸壁となす角度はあまり役に立たなかったとされます(Stark 1983)。
  • 膿胸35例の検討では、造影CTを行った例の96%で壁側胸膜の造影がみられ、86%で壁側胸膜の肥厚、60%で胸膜外の肋骨下組織の肥厚、35%で胸膜外脂肪の濃度上昇がみられました。漏出性胸水20例ではいずれもみられませんでしたが、癌性胸水では27%に似た変化がありました(Waite 1990)。
  • 別の検討でも、膿胸18例中13例で胸膜外の組織の濃度が上がっており、漏出性胸水ではみられませんでした(Takasugi 1991)。
  • 肺炎随伴性胸水83例の検討では、split pleura signと胸水の厚さ30mm以上が、ドレナージが必要な複雑性肺炎随伴性胸水・膿胸を示す独立した因子でした(Tsujimoto 2015)。
  • 読影のコツ:病変の外側で、造影される胸膜が2枚に分かれて液体をはさんでいないか、胸膜の外の脂肪がにごっていないか、周りの肺が押しつぶされていないかを見ます。これらがあれば膿胸を、肺の中にあって周りに浸潤影を伴えば肺膿瘍を考えます。

発熱や咳、においの強い痰・血痰が続くなど、気になる症状があれば医療機関を受診してください。

参考文献

  1. Kuhajda I, Zarogoulidis K, Tsirgogianni K, et al. Lung abscess-etiology, diagnostic and treatment options. Ann Transl Med. 2015;3(13):183. PubMed
  2. Stark DD, Federle MP, Goodman PC, et al. Differentiating lung abscess and empyema: radiography and computed tomography. AJR Am J Roentgenol. 1983;141(1):163-7. PubMed
  3. Gadkowski LB, Stout JE. Cavitary pulmonary disease. Clin Microbiol Rev. 2008;21(2):305-33. PubMed
  4. Taira N, Kawabata T, Gabe A, et al. Lung cancer mimicking lung abscess formation on CT images. Am J Case Rep. 2014;15:243-5. PubMed
  5. Woodring JH, Fried AM, Chuang VP. Solitary cavities of the lung: diagnostic implications of cavity wall thickness. AJR Am J Roentgenol. 1980;135(6):1269-71. PubMed
  6. Kawakami H, Matsui H, Yamaji S, et al. Prognostic factors of lung abscess: a single-center retrospective cohort study. BMC Pulm Med. 2025;25(1):519. PubMed
  7. Waite RJ, Carbonneau RJ, Balikian JP, et al. Parietal pleural changes in empyema: appearances at CT. Radiology. 1990;175(1):145-50. PubMed
  8. Takasugi JE, Godwin JD, Teefey SA. The extrapleural fat in empyema: CT appearance. Br J Radiol. 1991;64(763):580-3. PubMed
  9. Tsujimoto N, Saraya T, Light RW, et al. A Simple Method for Differentiating Complicated Parapneumonic Effusion/Empyema from Parapneumonic Effusion Using the Split Pleura Sign and the Amount of Pleural Effusion on Thoracic CT. PLoS One. 2015;10(6):e0130141. PubMed

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