肺化膿症(lung abscess)とは?
- 肺炎の中でも中心部に壊死を生じ、膿で満たされた空洞を形成したものを肺化膿症と呼ぶ。肺膿瘍と言ってもよい。
- 誤嚥性肺炎、気管支拡張症、肺癌による気道閉塞などが原因となる。特に、誤嚥性肺炎に続発することが多い。
- 経気道性・血行性に細菌感染する以外に、腹部の膿瘍の波及や、悪性腫瘍(肺癌や食道癌)に続発することがある。
- 発熱、咳嗽、喀痰、喀血、胸膜炎に伴う胸痛を主訴とするが自覚症状が乏しいこともあり。
- 口腔内常在菌であるミレリグループ (Streptococcus milleri group)や嫌気性菌、グラム陰性楳菌、ブドウ球菌などが原因となる。混合感染が多い。
- 既存の嚢胞に周囲の肺炎が及べば、液面形成をし、感染性嚢胞となる。肺化膿症とは別。肺炎治癒後に感染後嚢胞(pneumatocele)を形成することがあるが小児に一般的であり成人では稀。
- 膿胸を合併することがある。
- 肺癌(特に扁平上皮癌)や結核、非結核性抗酸菌症、真菌症、肉芽腫性病変、寄生虫症などとの鑑別が重要。
肺化膿症と膿胸の違いは?
肺化膿症は肺実質に膿を作るのに対して、膿胸は肺実質外である胸腔内に膿を作る。
肺化膿症のCT画像所見は?
- 壊死や空洞を伴う腫瘤-結節として認められる。内面は平滑なことが多い。
- 二ボー像を伴うことがある。
- 周囲にCT halo signを認めることがある。
- 肺癌との鑑別を要する場合、膿胸の合併が疑われる場合は造影CTを施行する。肺化膿症では造影で内面を縁取るような造影効果を呈する(空洞内面を覆う肉芽組織は新生血管が豊富であるため)。
症例 60歳代男性
単純CTにおいて、
- 右上葉に広範な浸潤影あり。
- 中心部に低吸収域が目立つ部位あり。
造影CTにおいて、被膜に造影効果を認める液貯留あり。
肺化膿症+胸膜炎と診断された。ドレナージはされず、保存的に加療されました。
症例 70歳代女性
肺のう胞の中にニボー像あり。嚢胞壁の肥厚あり。抗生剤にて加療にてこれらの所見は消失。嚢胞内感染を疑う所見。
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