距骨(きょこつ)という踵(かかと)の上にある骨を骨折することを、距骨骨折といいます。
踵の上にある骨って?
と・・・ちょっとイメージしにくいかもしれませんが、下腿の脛骨(けいこつ)・腓骨(ひこつ)と連結して足首をつくっている部分です。
では、距骨骨折となった場合、どのような症状が現れ、どのような治療をすることになるのでしょう?
今回は、距骨骨折(読み方は「きょこつこっせつ」英語表記で「Talus fracture」)について
- 症状
- 分類
- 診断
- 治療法
を図や実際のCT画像を用いて解説しました。
先に結論:距骨骨折のCT
- 距骨は、すねの骨とかかとの骨の間にあって足首の関節をつくる骨で、高い所からの転落や交通事故で骨折します。足の骨折の中ではまれで、代表は頸部の骨折です。外側突起・後突起の骨折はレントゲンで見逃されやすく、疑わしければCTで確認します
- 距骨は軟骨に覆われた面が多く血流が乏しいため、骨折のずれが大きいほど骨壊死(無腐性壊死)を起こしやすく、Hawkins分類でずれの程度と壊死のリスクを評価します
- CTは骨折線やずれ、関節面の損傷の評価に役立ちます。ずれのない(軽度の)骨折はギプス固定などの保存療法、ずれがあれば整復・固定手術が基本です。経過中はレントゲンのHawkins signやMRIで骨壊死を確認します
※足首を強くひねったり、高い所から落ちて足首が痛み体重をかけられないときは、すぐに整形外科を受診してください。
距骨(きょこつ)とは?

距骨(きょこつ)は足関節を構成する骨の一つで、踵(かかと)の上にあります。
上の図のように下肢の骨である脛骨と腓骨とも関節を形成します。
MRI(T1強調像、矢状断像)でみた距骨そして距骨だけを取り出した解剖は下のようになります。

つまり距骨の解剖としては、
- 距骨頭
- 距骨頸
- 距骨滑車
- 距骨後突起
- 距骨外側突起
という部位に分けることができます。
距骨と上下、左右の位置関係を動画で見ると次のようになります。
距骨骨折とは?
そしてこの距骨が折れることを距骨骨折と言います。
足に起こる骨折の中では稀なもの(全骨折の1%未満:Melenevsky 2015)で、高エネルギー外傷で起こることが多い骨折です。
距骨骨折の原因
距骨骨折の原因としては高いところからの落下や交通事故などで、足関節の強制背屈や圧迫により発生するものです。
距骨骨折の好発部位

この距骨は、頭部・頸部・体部という部位に分けられ、頸部骨折が代表的です。ただし体部単独の骨折も、従来考えられていたより多い可能性が指摘されています(Melenevsky 2015)。
距骨には軟骨面(関節軟骨)が多く、血管の進入路が限られているため、距骨体部への血流が途絶えることによって、壊死を起こしやすい特徴があります。
距骨骨折の症状は?
踵の上部分に
- 疼痛
- 腫脹
がみられ、それによって歩行に差し支えが出ます。
また、これらの症状があるのにムリに重心をかけ動くと、さらに悪化し変形をきたす場合もあるので厳禁です。
距骨骨折の分類は?
距骨骨折にはHawkins分類とSneppen分類、井口分類があります。
それぞれについて、イラストと共に説明します。Hawkins分類
距骨頸部の骨折で、脱臼ありかなしかによって、Ⅰ〜Ⅳ型に分類されます。
- Ⅰ型・・・脱臼なし
- Ⅱ型・・・距骨下関節脱臼あり(亜脱臼)
- Ⅲ型・・・距骨下及び距腿関節が脱臼(体部が距腿関節窩より脱出)
- Ⅳ型・・・距骨下・距腿・距舟関節全てが脱臼(Ⅳ型は後にCanaleとKellyが追加)

重症度分類が上がるほど、転位も大きく、壊死の発生頻度も上がります。手術例の系統的レビューでは、骨壊死の発生率はHawkins I型0%、II型約16%、III型約39%、IV型55%と報告されています。また外傷後の変形性関節症は全体の約5割にみられ、骨壊死より頻度が高い合併症です(Jordan 2017)。
Sneppen分類
距骨体部の骨折で、骨折の形態や部位により
- 正面の圧迫骨折
- 側面の冠状面剪断骨折
- 正面の矢状面剪断骨折
- 側面の後突起骨折
- 正面の外側突起骨折
- 正面の粉砕骨折
に分類されます。

井口分類
こちらは距骨頸部と体部にまたがる骨折で、距骨底部に着目し、
- 骨折線が距骨溝にあるもの・・・頚部骨折
- 後距骨下関節(後距踵関節)を通るもの・・・体部骨折
- その他のもの・・・頭部骨折・矢状面骨折・外側突起基部骨折・後突起骨折・内側突起骨折
に分類されます。

距骨外側突起骨折・後突起骨折とは?
距骨の外側突起と後突起の骨折はまれですが、レントゲンでは読み取りにくく見逃されやすい骨折です。見逃されると、痛みが続いたり機能が落ちたりする原因になります(Majeed 2018)。
| 外側突起骨折 | 後突起骨折 | |
|---|---|---|
| 主な受傷の仕方 | 足首を強く背屈・内がえしした状態での受傷(スノーボーダー骨折とも呼ばれる) | 強い底屈と内がえしによる圧迫、または後距腓靱帯による剥離 |
| 画像の注意点 | レントゲンで写りにくく、CTで骨片の数と位置を確認 | 内側結節と外側結節の間を長母趾屈筋腱が通る。疑わしければCT |
| 治療の考え方 | 骨片の大きさ・位置・ずれ、軟骨損傷、距骨下関節の不安定性で決める。保存療法は固定と荷重制限、手術は固定または骨片の摘出(Majeed 2018) | |
外側突起骨折は見逃すと二次的な変形性関節症や慢性的な痛み・こわばりの原因となり、診察やレントゲンで疑わしいときはCTが診断の確認に最適とされています(Bonvin 2003)。
距骨骨折の診断は?
X線・CT・MRIなどの画像検査により、骨折線や転位等を確認し、上記で説明した分類に当てはめられ診断されます。
壊死の診断には、MRIが有用です。また、受傷後6〜8週の足関節X線正面像で距骨滑車の軟骨下に帯状の透亮像(Hawkins sign)が見られれば、距骨の血流が保たれており骨壊死を起こす可能性は低いと判断できます。
距骨壊死(骨壊死)の画像診断
- 転位のある距骨骨折の手術例31人の検討では、Hawkins signは受傷後6〜9週に現れ、骨壊死を起こした5人ではいずれもみられませんでした(感度100%、特異度57.7%)。Hawkins signがあれば骨壊死の可能性は低い一方、見えないからといって壊死とは限りません(Tezval 2007)。
- MRIはより早い時期に骨壊死を診断でき、Hawkins signが見えない例、とくに高エネルギー外傷では受傷12週後のMRIが勧められています(Chen 2014)。
- 距骨頸部骨折943例の系統的レビューでは、骨壊死は全体の33%、外傷後の関節症は68%にみられました(Halvorson 2013)。
症例 50歳代男性
右足関節のレントゲンです。

距骨の連続性を認めておらず、距骨頸部での骨折が疑われます。
右足関節のCT画像です。

CTでも同様に距骨が頸部で骨折し、前後方向に離れている様子がわかります。
3D再構成したCT画像です。

立体的に見ると、距骨の骨折の様子がよくわかります。
距骨頸部骨折(Hawkins分類Ⅱ型)と診断されました。
距骨骨折の治療は?
保存療法もしくは、手術を選択することになります。
保存療法
転位がなければ、保存療法が選択され、ギプスによる固定などで回復を待ちます。
手術療法
転位をしている・転位の危険性のある場合、手術療法が選択されます。
血流温存を図り、壊死を避けることが重要です。
転位のある場合には緊急に整復固定し、骨折部を安定させる必要があります。
Hawkins分類では、転位のあるⅡ型以上では手術(整復固定)が選択されるのが一般的です。
手術としては、骨を整復したのち固定する方法がとられます。
また、治療後は徐々にリハビリを開始し、後遺症を残さないよう、完治するまで病院に通院するようにしてください。
全治までの期間は、骨折の部位・ずれの程度・合併症の有無によって大きく異なり、ずれの少ない骨折でも数か月単位の経過観察が必要です。
症例 50歳代男性 上記と同一症例。

距骨頸部骨折(Hawkins分類Ⅱ型)と診断され、固定術が行われました。
距骨骨折でよくある疑問(Q&A)
Q. 軽度の距骨骨折は保存療法で治りますか?
A. ずれ(転位)のない骨折では、ギプスなどで固定し荷重を制限する保存療法が選ばれます。距骨頭の骨折もずれがなければ保存療法が可能ですが、回旋やずれ、頸部への広がりがないかをレントゲンとCTで慎重に確認します(Melenevsky 2015)。
Q. 距骨骨折で注意すべき後遺症は?
A. 骨壊死と、足首や距骨下関節の変形性関節症です。頸部骨折では関節症が骨壊死より多く、変形癒合や偽関節も起こりえます(Halvorson 2013)。痛みが続く、腫れが引かないときは主治医に相談してください。
関連記事:距骨骨折のレントゲン、CT画像所見のポイント、Hawkins分類
参考文献:
整形外科疾患ビジュアルブック P28
全部見えるスーパービジュアル整形外科疾患 P45
100%整形外科 国試マニュアル 改訂第6版P102
骨折の画像診断P229〜233
最後に
足関節を形成する骨の一つである距骨の骨折についてまとめました。
- 踵の上にある距骨の骨が折れることを、距骨骨折という
- 距骨骨折の代表は頸部骨折。外側突起・後突起骨折は見逃されやすい
- 血流が途絶えることによって、壊死を起こしやすい
- 距骨骨折は、Hawkins分類・Sneppen分類・井口分類に分けられる
- 壊死の診断には、MRIが有用
- 転位がなければ、保存療法として固定し回復を待つ
- 転位がある場合
- 転位をしている・転位の危険性のある場合手術が選択される
中には、歩行障害などの後遺症を残すこともあります。
そのため、受傷後すぐに受診し、転位はないか・血流障害はないかなど、正確な診断のもと治療を開始することが重要です。
- Melenevsky Y, Mackey RA, Abrahams RB, et al. Talar Fractures and Dislocations: A Radiologist’s Guide to Timely Diagnosis and Classification. Radiographics. 2015;35(3):765-779. PubMed
- Jordan RK, Bafna KR, Liu J, et al. Complications of Talar Neck Fractures by Hawkins Classification: A Systematic Review. J Foot Ankle Surg. 2017;56(4):817-821. PubMed
- Halvorson JJ, Winter SB, Teasdall RD, et al. Talar neck fractures: a systematic review of the literature. J Foot Ankle Surg. 2013;52(1):56-61. PubMed
- Majeed H, McBride DJ. Talar process fractures: An overview and update of the literature. EFORT Open Rev. 2018;3(3):85-92. PubMed
- Bonvin F, Montet X, Copercini M, et al. Imaging of fractures of the lateral process of the talus, a frequently missed diagnosis. Eur J Radiol. 2003;47(1):64-70. PubMed
- Tezval M, Dumont C, Stürmer KM. Prognostic reliability of the Hawkins sign in fractures of the talus. J Orthop Trauma. 2007;21(8):538-43. PubMed
- Chen H, Liu W, Deng L, et al. The prognostic value of the hawkins sign and diagnostic value of MRI after talar neck fractures. Foot Ankle Int. 2014;35(12):1255-61. PubMed
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