人間ドックなどの主に脳MRIや頭部CTで主に指摘される正常変異に、
- ベルガ腔(Verga腔)
- 透明中隔腔
- 脳室間腔(中間帆腔)
があります。
これらはいずれも脳の正中部分(真ん中の部分)に認める脳脊髄液腔の嚢胞状拡張で、合わせて正中過剰症とも呼ばれます。
いずれも乳児期に多く認めますが、加齢とともに退縮してなくなります。
ただし、正常変異として遺残することがあり、その場合は成人の頭部の画像でたまたま発見されるということです。
これらは、通常無症状で治療の対象にもなりません。
とはいうものの、人間ドックなどで
「ベルガ腔を認めます。」
「透明中隔腔あり。」
などと記載されるとどんなものなのか気になるものです。
そこで今回は、このベルガ腔、透明中隔腔、脳室間腔(中間帆腔)についてイラストや実際のMRI画像を交えてまとめました。
透明中隔腔とは?
ベルガ腔の前に透明中隔腔(読み方は「とうめいちゅうかくくう」英語ではcavus septum pellucidum)から見ていきましょう。
透明中隔腔とは、脳梁と脳弓の間の膜構造で、潜在的な空間です。
胎児では嚢胞状の構造として認めます。
通常胎生6ヶ月で閉鎖が始まり、生まれた時には、通常は消失しています。
ただし、先ほど申し上げたように、正常変異として遺残することがあり、それが頭部の画像診断で発見されます。
成人では1~15(20)%に見られると報告されています。
透明中隔腔の症状は?
通常無症状ですが、大きくなると、
- 視力障害
- 行動異常
- 自律神経症状
をきたすことがあります。
透明中隔腔の画像所見は?
脳梁の下方かつ脳弓の上方で、両側の側脳室を分けるように正中に板状に存在する構造です。
脳室の交通はあることとないことがあります。
症例 いずれもMRIのFLAIR像 横断像
2症例とも透明中隔腔を認めています。
右側の症例では陳旧性ラクナ梗塞も認めています。
症例 いずれもMRIのFLAIR像 横断像
側脳室を分けるように正中部にスリット状の髄液と同じ信号強度の空間を認めています。
透明中隔腔を疑う所見です。
では引き続き、ベルガ腔を見てみましょう。
ベルガ腔(Verga腔)とは?
ベルガ腔(英語では、cavum Vergae)は、その透明中隔腔が後ろ側へ進展してきたものです。
ですので、ベルガ腔は通常、透明中隔腔と交通を認めます。
中でもMonro孔(モンロー孔)もしくは脳弓柱を超えて後ろ側へ進展したものを指します。
ベルガ腔が見つかる頻度は文献により様々で剖検例の3-30%と報告されています。
また透明中隔腔を第5脳室、ベルガ腔を第6脳室と呼ぶこともあります。
- Monro孔(モンロー孔)より前方:透明中隔腔
- Monro孔(モンロー孔)より後方:ベルガ腔
ベルガ腔(Verga腔)の画像診断は?
側脳室体部を真ん中で分けて、横断像では台形のような形状を示します。
内部は脳脊髄液と同じ信号を示します。
脳室の交通はあることとないことがあります。
症例 いずれもMRIのFLAIR像 横断像
いずれの症例も側脳室を分けるように正中部に前後方向に伸びる髄液と同じ信号強度の嚢胞性病変を認めています。
Verga腔及び前方は透明中隔腔を疑う所見です。
最後に脳室間腔を見てみましょう。
脳室間腔とは?
ベルガ腔や透明中隔腔ほど有名ではありませんが、同じように脳の正中部分に嚢胞性病変として認める正常変異に脳室間腔(英語では、cyst of the velum interposition)があります。
終脳胞が間脳に覆いかぶさって脳梁と第3脳室との間に形成される腔、すなわち中間帆(英語では、velum interpositum)が退化せずに残ったものであり、そのため、中間帆腔とそのまま呼ばれることもあります。
10歳以下では約30%の頻度で見られますが、加齢とともに減少します。(Neuroradiology,10:215-220,1976)。
病的な意義はありません。
脳室間腔のCT、MRI画像診断は?
両側の側脳室体部の間に位置した正中で、Monro孔のよりも後方の位置(Monro孔よりも前方へは進展しないのが特徴です。)に、三角形(おむすび形)の髄液貯留嚢胞構造として認めます。
症例 40歳代男性
脳梁膨大部の腹側に三角形(おむすび形)の髄液と等吸収を示す嚢胞性病変あり。
脳室間腔を疑う所見です。
症例 いずれもMRIのFLAIR像 横断像
脳梁膨大部の腹側に三角形(おむすび形)の髄液と等信号を示す嚢胞性病変あり。
脳室間腔を疑う所見です。
同じように脳ドックのMRI検査でしばしば指摘されることがある慢性虚血性変化・深部白質変性についてこちらにまとめました。→脳MRIの慢性虚血性変化とは?イラストと画像でわかりやすく解説!
まとめ
脳の正中部分(真ん中)に認める正常変異である3つの嚢胞性病変についてまとめました。
これらは通常無症状であり、病的意義がないことがほとんどですので、これらをCTやMRIの画像で認めても、指摘しないことさえあります。
指摘された場合も、よくある変異であり、ほとんど問題になることはありませんし、経過観察の必要も通常はありません。
ただし、ごく稀に症状を伴うことがあるので、症状がある場合は、過去の画像と比較することが重要です。
参考文献:
ケースレビュー脳の画像診断 P62
診誤りやすい 正・異常の境界画像 P13
臨床画像 Vol.27,No.1,2011 P6-7
寝ぼけた頭で、ベルーガ馬を思い浮かべて間違えてしまいました汗
そうでしたか。レポートに書かないのですね。
勉強になります。
コメントありがとうございます。
寝ぼけてコメント書くところ間違えていないですか(^_^;)
ベルーガ「馬」は表舞台には出てこないです。