若年性血管線維腫(juvenile angiofibroma)
・同義語:若年性上咽頭血管線維腫(juvenile nasopharyngeal angiofibroma)、線維腫性あるいは血管線維腫性過誤腫。
・きわめて血管に富んだ被膜をもたない非上皮性良性腫瘍である。
・良性腫瘍であるが、局所浸潤性が強く、再発率も高い。
・頭頚部腫瘍の0.05%とまれ。
・10~18歳の男性に好発し、思春期以降は増大傾向に乏しい。
・ほとんどの血管線維腫は、鼻腔の上後方側壁あるいは上咽頭から発生する。鼻咽頭内腔をほとんど埋め、鼻腔内へ進展する。通常は片側性に発育する。
・翼口蓋窩への進展は89%に、鼻咽頭から蝶形骨洞への進展は61%、上顎洞への進展は35%、篩骨洞への進展も35%でみられる。頭蓋内進展は5~25%で、主に中頭蓋窩に進展する。
・鼻閉鼻、出血が主な症状だが、腫瘍の進展に伴って副鼻腔炎、嗅覚異常や顔面変形をきたす。
・富血管性腫瘍であり、安易な生検は大出血をきたし、非常に危険である。 血管造影が診断に有用。
・通常は外科的切除が行なわれる。出血軽減のための術前塞栓療法から完全摘出術。
・放射線治療(術後の補助療法、不完全切除、再発に対して)やホルモン療法も行なわれる。
・まれに自然退縮あり。
・術後局所再発は10-25%程度。大きな病変であったり、頭蓋内進展例で局所再発率は高い。
若年性血管線維腫(juvenile angiofibroma)の画像所見
・術前の画像診断では下眼窩裂、卵円孔、翼口蓋管および上眼窩裂への腫瘍浸潤の有無を正確に診断することが重要。
・単純CTでは、鼻咽頭の軟部腫瘍としてみられる。骨改変(上顎洞後壁の前方への偏位を認める。)や場合によっては骨破壊あり。鼻腔や、翼口蓋窩の片側性拡大あり。
・造影CTではよく増強され、腫瘍内に造影剤の停滞が遅延相でみられる。
・MRIでは、腫瘍はどの画像でも中等度の信号強度(不均一)を呈する。血管が豊富なため、flow voidが腫瘍内にみられることがあり、この腫瘍に極めて特徴的。造影ではよく増強される。
・血管造影では、外頚動脈造影にて、上顎動脈や上行咽頭動脈からの栄養血管がみられ、明瞭な腫瘍濃染を呈する。
参考&引用改変)
・臨床画像2013年10月増刊号 鼻出血 自治医科大学 藤井裕之先生
・頭頸部のCT、MRI 多田 信平先生
・画像診断ポケットガイド 頭頸部Top100診断 尾尻 博也先生