先に結論:耳硬化症のCT
- 耳硬化症は、内耳を囲む骨(耳嚢)の一部が異常な骨に置きかわる病気で、アブミ骨が動きにくくなり、両側の伝音難聴がゆっくり進みます。主に10〜30歳代で気づかれ、女性に多い病気です。妊娠をきっかけに聞こえの悪化を自覚する人がいます(関係を否定する報告もあります)
- 側頭骨CT(1mm未満の薄いスライス)で、卵円窓の前の縁(fissula ante fenestram)の小さな骨の抜け(低吸収)が特徴で、進むと蝸牛のまわりにも広がり(蝸牛型)、感音難聴を伴います。日本人の手術例でもCTで所見のない耳が39.0%あり(Kiyomizu 2004)、見落としやすいので注意します
- 治療はアブミ骨手術や補聴器で、進行した感音難聴には人工内耳が検討されます
※聞こえにくさがゆっくり進むときは、耳鼻咽喉科を受診してください。
耳硬化症(otosclerosis/otospongiosis)とは?
- 耳硬化症は耳嚢(内耳構造を囲む軟骨嚢)に限局し、軟骨内性骨を侵す骨異形成病変。この部位が血流豊富な海綿状新生骨によって置換される。
- 両側性のことが多く(80-85%)、女性に多い(Purohit 2014)。
- 主に10〜30歳代に難聴などで気づかれる(Purohit 2014)。妊娠中・直後に聞こえの悪化を自覚する人がいる一方(Gristwood 1983)、女性1196人の症例対照研究では妊娠歴と発症・重症度の関係は認められず(Macielak 2021)、議論があります。
- 遺伝的要因が考えられているが不明な部分が多い。孤発的も多い。
- 白人に多く、アジア系人種には少ない。
- 両側進行性の伝音性難聴で発症する場合がほとんどで、進行すると混合性難聴となる。その他、めまい、耳鳴りなどを伴う。耳鳴りをまず訴えることもあり。
- 病変の局在により窓型(fenestral type)と蝸牛型(retrofenestral type)に分類される。窓型が多く、蝸牛型はほとんどが窓型を伴うため、両者は一続きの病態と考えられている(Purohit 2014)。
- 本症の伝音性難聴は気導聴力が悪く、骨導値は正常か2000Hz付近での低下(Carhartの凹み)が認められる。
- 治療はアブミ骨手術が一般的。アブミ骨の一部もしくは全部を切除し、テフロンワイヤーピストンや脂肪鋼線などをキヌタ骨長脚に連結して伝音性難聴を回復する。
- 感音性難聴を来した進行例では人工内耳が考慮される。
(1)窓型 fenestral type
- 卵円窓前部辺縁を中心とした病変が多く、アブミ骨底部の固着による伝音性難聴を来す。蝸牛岬角や顔面神経管が侵される場合もある。
- CTでは卵円窓前部辺縁(fissula ante fenestram)の脱灰様所見(低吸収域)あるいは骨新生を特徴とする。進行すると硬化性変化が加わり、アブミ骨前脚、底板に進展するとアブミ骨の肥厚や卵円窓の狭小化を来す。
- 我が国においては微細な病変が多く、1mm未満のスライスによる観察が有用。手術で確認された日本人の耳硬化症82耳の検討では、CTで所見がなかったのは32耳(39.0%)でした(Kiyomizu 2004)。組織学的に確認された耳硬化症に対するHRCTの感度は約58%、特異度は約95%とするシステマティックレビューがあり、1mm未満の小病変、蝸牛型、硬化の強い病変は見逃されやすいとされる。CTで所見がなくても耳硬化症は否定できない。
卵円窓の解剖
- 内耳は鼓室のさらに奥に存在し、鼓室とは2つの窓で通じている。それが、卵円窓と正円窓。
CT所見(正常例)

症例 70歳代女性 聞こえにくい

両側の卵円窓前部辺縁(fissula ante fenestram)の脱灰様所見(低吸収域)を認めています。
両側の窓型の耳硬化症を疑う所見です。
症例 50歳代 女性 右耳の閉塞感、めまい

右側の卵円窓前部辺縁(fissula ante fenestram)の脱灰様所見(低吸収域)を認めています。
右側の窓型の耳硬化症を疑う所見です。
(2)蝸牛型 retrofenestral(cochlear) type
・蝸牛周囲の耳嚢が障害され、感音性or混合性難聴を来す。窓型の耳硬化症を伴うことが多い。
・CTでは、蝸牛周囲の透亮像(低吸収域)が認められる。進行して石灰化が起こってくると、診断は難しくなる。
・造影MRIで、蝸牛周囲が増強されることがある。
参考)蝸牛の内部構造
・蝸牛の中には内リンパ液を容れた膜迷路があるが、これを蝸牛管ductus cochlearisと呼ぶ。卵円窓(前庭窓)から入った音波は前庭階を進行し、頂上で鼓室階に移行して、蝸牛窓から出て行く。
・内耳は蝸牛、前庭、半規管の3つの部分に分かれるが、内部では互いに交通している。内耳は下の図の様に比較的厚い骨に包まれ、骨迷路bony labyrinthと呼ばれる。
あわせて読みたい:上半規管裂隙症候群の画像診断
参考文献)頭頸部の画像診断
- Kanzara T, Virk JS. Diagnostic performance of high resolution computed tomography in otosclerosis. World J Clin Cases. 2017;5(7):286-291. PubMed
- Purohit B, Hermans R, Op de Beeck K. Imaging in otosclerosis: A pictorial review. Insights Imaging. 2014;5(2):245-252. PubMed
- Kiyomizu K, Tono T, Yang D, et al. Correlation of CT analysis and audiometry in Japanese otosclerosis. Auris Nasus Larynx. 2004;31(2):125-129. PubMed
- Gristwood RE, Venables WN. Pregnancy and otosclerosis. Clin Otolaryngol Allied Sci. 1983;8(3):205-210. PubMed
- Macielak RJ, Marinelli JP, Totten DJ, et al. Pregnancy, Estrogen Exposure, and the Development of Otosclerosis: A Case-Control Study of 1196 Women. Otolaryngol Head Neck Surg. 2021;164(6):1294-1298. PubMed
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