トリプルネガティブ乳癌(Triple negative breast cancer:TNBC)とは?
- 全乳癌の10〜15%。
- 日本人ではその割合が低いとされる。
- 若年発症が多い。
- 乳腺同様、乳がんの6-7割は女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)の影響を受ける。
- 乳がんの組織を取ってきて、エストロゲン受容体やプロゲステロン受容体を持っていれば抗エストロゲン剤(タモキシフェン)や閉経前の女性にはLH-RH拮抗薬、閉経後はアロマターゼ阻害薬が有効。
- また乳がんの2-3割で、ヒト上皮増殖因子受容体を持っており、陽性例には、分子標的薬であるトラスツズマブ(ハーセプチン)が有効。
- トリプルネガティブ乳癌とはこれらのエストロゲン受容体(ER)、プロゲステロン受容体(PgR)、ヒト上皮増殖因子受容体(HER2)の3つすべて陰性の乳がんのこと。
- 3つとも陰性ならば、つまり上に挙げたホルモン療法(内分泌療法)、分子標的治療(抗HER2療法)の効果は期待できない。化学療法しかない。
- 化学療法の感受性は高いが、不十分な場合は予後不良。
- トリプルネガティブ乳がんとBasal like subtypeは厳密にはイコールではない。トリプルネガティブ乳癌のCK5/6(+)は60-80%、Basal like subtypeの約10%がER(+)である。
- 充実腺管癌が多いが、髄様癌など特殊型もある。
- 臨床的にも生物学的にも悪性度が高い。30%の症例は遠隔転移を伴う(高率に内臓、脳転移) 。
- BRCA-1関連乳癌の多くはTNBCの特徴を示す。術前化学療法でのpCR率が高い。
- 術後2−3年の再発が多く、晩期再発は少ない。
- 再発例の予後は不良で、転移・再発後の予後は13ヵ月。
- 浸潤径1cm以上→N0でも化学療法(St.Gallen.)、浸潤径2cm以上でもpCR(20%以上) 。
トリプルネガティブ乳癌のエコー、乳腺MRIの画像所見
- 単発で大きい、円形/楕円形、辺縁平滑傾向にあり。
- エコーでは9割に腫瘤を認める。境界が微細分葉状が4割、不明瞭が3割、境界明瞭が2割の腫瘤。
- 乳管内病変は少ない。
- 内部に壊死を伴う頻度が高い。(Very high intratumoral SI on T2WI)
- MRIのダイナミック造影ではrim enhancement、Persistent enhancement pattern が認められる。
- ADC値はER+群やHER2+群より高い傾向がある。(壊死や浮腫を伴うため。)
- T2WIで高信号を呈するTN乳癌は術前化学療法の効果が不良。
症例 40歳代女性 triple negative cancer
乳腺MRI検査で、右乳腺のC領域に腫瘤性病変を認めています。
ダイナミック造影でRim enhancementという辺縁を中心に造影効果を認めています。
辺縁から徐々に造影されています。
生検にてトリプルネガティブ乳がんと診断されました。
この症例のダイナミック画像を見てみる→トリプルネガティブ乳がんのMRI所見
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