浸潤性小葉癌(Invasive lobular carcinoma)
・乳癌全体の5%を占める。増加傾向。
・浸潤癌のうち、特殊型に分類される。(特殊型では、粘液癌、髄様癌、浸潤性小葉癌が特に重要。)
・閉経後に多い。晩期再発例がある。
・両側性(6~47%)および多発性発生の傾向が強い。
・リンパ節転移を初発症状とする頻度が高い。
・最も浸潤傾向の強い癌。腫瘤を形成しにくい。
・胃、卵巣や腹膜播種へ転移し、スキルス型胃癌との鑑別が必要となる場合がある。また軟髄膜、消化管や女性生殖器へ転移する。
浸潤性小葉癌の病理
・腫瘍細胞同士の接着性が低く(E-cadherin(-))、小型癌細胞が一列に並んでまたは散在性に浸潤する。
・既存構築の間をすり抜ける傾向。
・飛び地的病巣形成。
→そのため、画像では、腫瘤影が明らかではなくFADとしか見えない。構築の乱れとして捉えられることが多く癌病巣の範囲の推定が困難。
構築の乱れ architectural distortion
浸潤性小葉癌と硬癌の違い
・ともにspiculaを呈する。
・浸潤性小葉癌が広い範囲での収縮を伴うspiculated massであるのに対して、硬癌は狭い範囲での収縮を伴うspiculated massである。
画像所見
▶マンモグラフィ所見
・約半数はspiculated mass: 硬癌と類似
・中心濃度があまり高くない。
・明らかな腫瘤として見えにくい。方向によって見え方が異なる。
・乳腺全体が硬化して乳腺の萎縮像をとる。
・周辺を引き込んで構築の乱れを呈する。
・びまん性のため、異常として捉えにくい。
・左右の比較が大切。
・石灰化の頻度は少ない。
・偽陰性率が高い。
▶超音波所見
・硬癌に類似した不明瞭な低エコー腫瘤が多い(約50~60%)
・境界が非常に不明瞭で縦横比が低い。
・びまん性の広がりを示す場合は非腫瘤性低エコー域や構築の乱れを呈する
・時に高エコー腫瘤を呈する。
・まれに境界明瞭な圧排性発育をする腫瘤。
▶MRI所見
・辺縁不整な腫瘤として長く太いspiculaを伴い、硬癌に似た画像を呈する場合と、非腫瘤性の斑状造影域として広く散在する画像を呈する場合がある。
・造影パターンは漸増型(persistent)が主体だが、rapid-washoutを呈することもある。
・T2WIで時に強い低信号を呈する。
・MMGや超音波で検出されない病変(同側32%、対側7%)がMRIで新たに検出される。
・病変の広がりの過大評価はまれ。逆に広がり全てを捉えていない可能性を常に考慮する必要がある。特にDWIでは過小評価をする傾向にある。
・両側性の頻度が高い。
・術前MRIにより再手術率を低下させる。
・MRI施行群 9%、 非施行群 27% オッズ比3.64
-Mann RM, et al: Breast Cancer Res Treat. 119(2):415-22, 2010-