先に結論:粘液管状紡錘細胞癌

  • 粘液管状紡錘細胞癌は中高年女性に多い、まれな腎細胞癌で、多くは低悪性度で予後良好です
  • 画像では境界明瞭で、造影効果が弱く徐々に染まる腫瘤で、乳頭状腎細胞癌に似ます。乳頭状腎癌はT2で低信号が多いのに対し、本症は粘液を含むためT2で高めの信号になることがあります
  • 「紡錘細胞癌」は一般に予後の悪い肉腫様癌を指すことが多く、名前は似ていても粘液管状紡錘細胞癌とは別ものです
  • 紡錘形の細胞があるため、病理で肉腫様癌や血管筋脂肪腫との区別が問題になります

粘液管状紡錘細胞癌

・中高年女性に好発。

・粘液状間質、紡錘形ないし、管状配列を伴う腫瘍細胞。

・一般にlow grade(ただし、例外あり)

・境界明瞭、造影効果に乏しい。肉眼の断面はチーズの滑面みたい。

・紡錘型細胞→肉腫様癌、血管筋脂肪腫と間違えない。

・遠位ネフロンのimmunophenotype→集合管癌と間違えない。

・AMACR陽性→乳頭癌と間違えない。

・肉眼的には皮質主座。境界明瞭な腫瘤。

・予後は良好。核異型度の高いものでは死亡例も報告されている。

紡錘細胞癌とは?粘液管状紡錘細胞癌との違い

・紡錘細胞(spindle cell)は両端がとがった細長い細胞のことで、良性・悪性どちらの腫瘍にも見られます。
・紡錘細胞癌は、癌の細胞が紡錘形に変わって肉腫のように見えるもので、肉腫様癌(sarcomatoid carcinoma)とほぼ同じ意味です。腎臓ではさまざまな腎細胞癌に肉腫様の変化が起こることがあり、予後は悪く、生存期間の中央値は6〜13か月とされます(Blum 2020)。
・粘液管状紡錘細胞癌は、管状構造・紡錘形細胞・粘液がそろう独立した腎細胞癌の型で、多くは低悪性度です。

画像所見

・漸増性に濃染。11例の超音波・CTの検討では女性が8例と多く、造影CTでは全例が軽度の造影効果にとどまる乏血性腫瘤で、出血・嚢胞変性・壊死はみられなかった。術前診断は難しく、他の乏血性腎腫瘍との鑑別が必要とされる。
・乳頭状腎細胞癌を疑うもT2WIで低信号でないときに疑う。T2強調像で中等度〜高信号を示しながらADCが低いこと、ダイナミックで緩徐に造影されプラトーとなることが本症を示唆する所見とされる。

・22例の検討では、造影CTで腎実質より弱く徐々に染まり、MRIではADCが低く、経過観察中に再発・転移はありませんでした(Xu 2022)。

症例 粘液管状紡錘細胞癌(右腎)

粘液管状紡錘細胞癌 CT
引用:Wang H et al. Front Oncol 2025 (Figure 2)

(A)単純CTで右腎に均一なやや低吸収の腫瘤があります。(B)動脈相と(C)静脈相の造影CTでは、腫瘤は均一で軽度の遅れて現れる造影効果を示しています。(出典:Wang H et al. Front Oncol 2025, Figure 2, CC BY 4.0)

参考文献

  1. Cornelis F, Ambrosetti D, Rocher L, et al. CT and MR imaging features of mucinous tubular and spindle cell carcinoma of the kidneys. A multi-institutional review. Eur Radiol. 2017;27(3):1087-1095. PubMed
  2. Xu X, Zhong J, Zhou X, et al. Mucinous Tubular and Spindle Cell Carcinoma of the Kidney: A Study of Clinical, Imaging Features and Treatment Outcomes. Front Oncol. 2022;12:865263. PubMed
  3. Wang H, Peng X, Li L, et al. A retrospective study of imaging characteristics of mucinous tubular and spindle cell carcinoma in the kidney. Front Oncol. 2025;15:1515569. PubMed
  4. Moch H, Amin MB, Berney DM, et al. The 2022 World Health Organization Classification of Tumours of the Urinary System and Male Genital Organs-Part A: Renal, Penile, and Testicular Tumours. Eur Urol. 2022;82(5):458-468. PubMed
  5. Blum KA, Gupta S, Tickoo SK, et al. Sarcomatoid renal cell carcinoma: biology, natural history and management. Nat Rev Urol. 2020;17(12):659-678. PubMed

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