先に結論:腸アメーバ症

  • 腸アメーバ症は赤痢アメーバの感染で、粘血便・下痢・右下腹部痛を起こします。日本では性行為による感染が多く、海外渡航歴も手がかりです
  • 好発部位は盲腸・上行結腸と直腸で、CTでは盲腸の全周性の壁肥厚が典型です。アメーバ性肝膿瘍の合併も手がかりになります
  • 潰瘍性大腸炎と間違えてステロイドを使うと劇症化(腸管壊死・穿孔)することがあるため、疑ったら便検査・抗体検査・内視鏡生検で確かめます
  • 大腸アメーバ(Entamoeba coli)は病気を起こさない別の種類で、赤痢アメーバとは便の検査で区別します

腸炎の分布と原因の相関

腸アメーバ症

・赤痢アメーバ(Entamoeba histolytica)による消化器症状を主体とする感染症。

・発展途上国では多くの感染者が存在するが、先進国では男性間の性行為(MSM)による感染例がみられる。

・大腸に寄生し、糞便中に嚢子(cyst)を排泄する。嚢子の経口摂取や性行為により感染する。好発部位は盲腸で、潰瘍を形成し、右下腹部痛や粘血便を伴う下痢などを生じる。

・性行為による感染では、直腸・肛門に好発する。

・診断は、糞便からのアメーバの検出か血清学的方法で行う。

・腹痛や消化器症状を示すことから、ほかの感染性腸炎や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患、大腸癌との鑑別を要する。

・患者背景から本疾患を疑うことが重要である。・劇症型アメーバ性大腸炎とステロイド投与の関連を調べた系統的レビューでは、24例中14例(58%)が炎症性腸疾患などと誤診されてステロイドを投与され急速に悪化しており、全体の25%が死亡していた。

・アメーバの大腸壁への浸潤により腸管全層壊死を来したものを劇症型と分類する。・2000年以降に国内で腸切除を要した劇症型アメーバ症52例の文献検討では、死亡率は28.8%で、入院時にアメーバ症と診断されていたのは9.6%にすぎず、穿孔・壊死の72.9%は入院後に生じていた。抗アメーバ薬が投与されなかった例は全例死亡しており、早期に疑って治療を始めることが重要である。

赤痢アメーバと大腸アメーバの違い(鑑別)

  • 赤痢アメーバ(E. histolytica):腸炎や肝膿瘍を起こす
  • 大腸アメーバ(E. coli):病気を起こさない。便の顕微鏡検査で嚢子の核の数や形から区別する
  • E. dispar:顕微鏡では赤痢アメーバと区別できず、便の抗原検査やPCRで区別する(Fotedar 2007)

アメーバ性腸炎の内視鏡所見

治療前に全大腸内視鏡を受けた40例では、白苔を伴う潰瘍・びらんが盲腸で93%、直腸で45%にみられ、回腸末端にはみられませんでした(Horiki 2015)。

アメーバ性腸炎の画像所見

・CT所見は、盲腸や直腸壁の肥厚がみられ、潰瘍や膿瘍を形成する。ただしこれも非特異的であり、盲腸では憩室炎や虫垂炎、直腸では炎症性腸疾患やほかの感染性腸炎との鑑別は難しい場合が多い。

・壁肥厚は盲腸と直腸に典型的にみられる。肝膿瘍の有無も鑑別に役立つ。

・急性の経過で著明な壁肥厚や壁内ガスを認めた場合は、劇症型を示唆する。

症例 30歳代男性

ameba

盲腸に全周性の粘膜下層の肥厚あり。
回結腸静脈沿いに小リンパ節散見あり。

粘血便や下痢、右下腹部の痛みが続くときは、早めに医療機関を受診してください。

参考文献

  1. Tanaka E, Tashiro Y, Kotake A, et al. Spectrum of CT findings in amebic colitis. Jpn J Radiol. 2021;39(6):558-563. PubMed
  2. Shirley DA, Moonah S. Fulminant Amebic Colitis after Corticosteroid Therapy: A Systematic Review. PLoS Negl Trop Dis. 2016;10(7):e0004879. PubMed
  3. Kubota S, Mihara F, Nakamura M, et al. A Case of Fulminant Amebiasis in a Female Commercial Sex Worker in Japan Requiring Subtotal Colectomy: A Literature Review and Case Report. Surg Case Rep. 2025;11(1). PubMed
  4. Priyadarshi RN, Sherin L, Kumar R, et al. CT of amebic liver abscess: different morphological types with different clinical features. Abdom Radiol (NY). 2021;46(9):4148-4158. PubMed
  5. Fotedar R, Stark D, Beebe N, et al. Laboratory diagnostic techniques for Entamoeba species. Clin Microbiol Rev. 2007;20(3):511-32. PubMed
  6. Horiki N, Furukawa K, Kitade T, et al. Endoscopic findings and lesion distribution in amebic colitis. J Infect Chemother. 2015;21(6):444-8. PubMed

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