下垂体卒中(pituitary apoplexy)とは?
- 下垂体の血管障害にて、突然の頭痛、視力障害、眼痛、眼筋麻痺、意識障害などを来す症候群。
- 出血のみならず、梗塞も含まれる。
- 下垂体卒中を来しやすい基礎疾患として、下垂体腺腫(最多)、妊娠中、分娩後、高血圧、易出血性などがある。
- 負荷試験が発症を誘発することがある。特にLH-RH,TRH,インスリン負荷試験での報告例が多い。
- 治療は、手術で速やかに出血、梗塞部位を摘出する。特に視神経障害が進行する場合は手術を考慮。
下垂体卒中の画像所見のポイントは?
- CTやMRIでの吸収値や信号は出血の有無や出血の時期によってさまざま。
- 造影されないことが特徴である。造影されても周囲の被膜のみ。
- ただし、単純CTでは指摘できないこともあり、疑う場合にはMRの撮影が必要。
- 早期よりDWIにて高信号、ADCにて信号低下ありと報告あり。Pituitary Apoplexy: Early Detection with Diffusion-Weighted MR Imaging,AJNR 2002 23: 1240-1245
- 出血成分の検出にはT2*WIも有用。
- 出血による二ボーを認めることもある。
症例 30歳代女性 眼窩痛を伴う激しい頭痛の悪化
引用:radiopedia
中心部に出血を示唆する高吸収を示す鞍内塊を認めています。
MRIでは、T1WIでトルコ鞍を取り囲むような異常高信号あり、T2*WIでは中心部に出血を示唆する無信号あり、T2WIでは無信号を含む不均一な信号を認めています。病変は鞍部を拡大しており、鞍部上への進展があります。
下垂体卒中と診断されました。
症例 57歳男性 右目の視野狭窄
Pituitary Apoplexy: Early Detection with Diffusion-Weighted MR Imaging,AJNR 2002 23: 1240-1245より引用。DWIが有用な症例。