ESPRESSO腹部救急画像診断 復習症例9

症例9

【症例】90歳代 女性
【主訴】嘔吐
【身体所見】意識清明、BT 36.5℃、HR 85、BP 115/41mmHg、SpO2 95%、腹部:膨満、軟、全体に圧痛あり、腸蠕動音減弱、反跳痛なし。
【データ】WBC 12000、CRP 0.57

画像はこちら

腸管の拡張像およびニボー像を認めています。

拡張しているのは、小腸だけではなく、結腸も広範に拡張しています。

閉塞機転の有無を考えるのですが、結腸も拡張しているということは、閉塞機転は拡張した結腸よりも肛門側であることが推測されます。

拡張した結腸を肛門側に追っていくと、下行結腸から直腸にかけて著明な便貯留を認めています。

これが閉塞機転となって大腸腸閉塞(および小腸腸閉塞)を起こしていることがわかります。

大腸腸閉塞の原因で最も多いものは、腫瘍ですが、このように宿便によって腸閉塞を起こすこともあるので覚えておきましょう。

診断:宿便による大腸腸閉塞

※保存的に加療されました。

関連:大腸イレウスのCT画像診断のポイントは?原因、治療は?

その他所見:

  • 食道の拡張および液貯留あり。
  • 動脈硬化がやや目立つ。
  • Douglas窩に腹水貯留もしくは、腹膜貯留嚢胞(封入嚢胞)あり。

 

症例9の動画解説

お疲れ様でした。

今日は以上です。

今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。


過去のコメント
  1. axialの下から5枚目くらいのスライスの直腸部に楕円形の構造が見えるのですが、
    こういうものでしたっけ?
    腫瘍と思ってしまい、なかなかに大きいので
    既知のものがwatchされていたのか、と勘違いしてしまいました。

    腹膜貯留嚢胞、は頭にありませんでした。偏移していますもんね。

    またお願いします(^^♪

    1. アウトプットありがとうございます。

      >axialの下から5枚目くらいのスライスの直腸部に楕円形の構造が見えるのですが、
      こういうものでしたっけ?

      単純でちょっと構造がわかりにくいですが、こんなものだと思います。

      >腹膜貯留嚢胞、は頭にありませんでした。偏移していますもんね。

      ですね。その可能性がありますね。

  2. 大腸の拡張が強いので,小腸が圧排されおり,小腸の拡張がわかりづらいですね.
    本来なら造影CTが欲しいですが,高齢であり腎機能低下があったのでしょうか.

    1. アウトプットありがとうございます。

      >大腸の拡張が強いので,小腸が圧排されおり,小腸の拡張がわかりづらいですね

      大腸の拡張が強い+小腸の拡張もある→大腸に閉塞機転があるのではないか!と気づけるかがポイントですね。

  3. これだけ著明な腸閉塞があれば腹水があってもおかしくないだろうと思い込み、腹膜貯留嚢胞を鑑別にあげられませんでした。
    また食道の拡張を見落としました。
    些末な事ですが症例データのCRPの「.」が「,」になっています。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >腹膜貯留嚢胞を鑑別にあげられませんでした。
      また食道の拡張を見落としました。

      ともに副所見ですね。

      >些末な事ですが症例データのCRPの「.」が「,」になっています。

      ありがとうございます。修正しました。

  4. 便の詰まり方が普段と違うことに気づくことはできたため閉塞機転が便かなと疑えました。小腸イレウスと大腸イレウスの画像所見で区別をつけることができなかたので復習したいと思います。

    1. 返信遅くなり申し訳ありません。

      大腸の方が拡張径がかなり大きいという点でも鑑別できますね。
      確実なのは直腸から口側に追うことですが。

  5. 便秘から大腸イレウスは想像できました。

    あと
    スライス65〜69辺りの丸い石灰化を
    腹膜ネズミと思ったのですが
    憩室内部に高吸収な物が
    存在しているだけでしょうか?

    よろしくお願いします。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >憩室内部に高吸収な物が
      存在しているだけでしょうか?

      そうですね。憩室の糞石か硬化したものだと思います。

  6. 高齢者の排便コントロール大事ですね。
    定期内服としては、基本的にはいわゆる「非刺激性」onlyでいいと思うんですけど、
    センノシドのような刺激剤を定期処方されている方が意外と多いな、と感じています。
    難渋された結果なんだと思います。かなり便秘薬は増えてきていますが、それでもやっぱり難しいですね(/_;)

    1. アウトプットありがとうございます。

      便秘薬については全く詳しくありませんで恐縮です(^_^;

      >かなり便秘薬は増えてきていますが、それでもやっぱり難しいですね(/_;)

      そうですね。便秘で治療されているのに、こないだのCTと変わってない!!ということもよくありますね。

  7. おはようございます。
    閉塞起点がないことと、聴診で腸雑音がないことから麻痺性イレウスと考えてしまいました…
    腹膜貯留嚢胞(封入嚢胞)は初めて知りました…
    これではいけませんね…これまでの腸閉塞の講義内容を復習しておきます!

    1. アウトプットありがとうございます。

      まずは拡張しているのが小腸なのか結腸なのかですね。
      今回は結腸ですのでかなり拡張した腸管の径が大きくなっています。
      小腸にしては径が目立つ(大きい)な!と気づけるかですね。

      腹膜貯留嚢胞(封入嚢胞)はそれほど頻度が多くないですが、たまに見られますので、
      腹水としては分布がおかしいというときや腹腔に沿った分布をしているときには意識してみてください。

  8. 直腸から腸管を追っていくトレーニングをしてもらったお陰で、正解の到達できました。
    便秘は腹痛、嘔吐も来しますが、老人では不機嫌になったり、急に人格が変わってしまったように変容することもありますので、しっかり診断したいものです。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >直腸から腸管を追っていくトレーニングをしてもらったお陰で、正解の到達できました。

      素晴らしいです。大腸の腸閉塞であることに気づくことが最初重要ですね。

      >便秘は腹痛、嘔吐も来しますが、老人では不機嫌になったり、急に人格が変わってしまったように変容することもありますので、しっかり診断したいものです。

      画像を撮影しても主訴の原因がはっきりしないこともしばしばありますが、原因が判明することもありますので、しっかり診断したいところですね。

  9. 症例ありがとうございます。’腹膜貯留嚢胞(封入嚢胞)’を知らなかったので、「外側が嘴状になっていてちょっと形が変かな」と思いつつも左卵巣嚢腫としてしまいました。腹膜貯留嚢胞(封入嚢胞)と卵巣嚢胞の鑑別方法を教えてください。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >腹膜貯留嚢胞(封入嚢胞)と卵巣嚢胞の鑑別方法を教えてください。

      動画でも申し上げているように腹壁に沿った液貯留の場合は、腹膜貯留嚢胞(封入嚢胞)を疑います。

      1. すみません、まだ理解が追いつきません。卵巣嚢胞が大きくなって「腹壁に接した」画像と、「腹壁に沿う」画像との違いは何でしょうか。嚢胞性病変の緊満度でしょうか(卵巣嚢胞>封入嚢胞?)。

        1. >卵巣嚢胞が大きくなって「腹壁に接した」画像と、「腹壁に沿う」画像との違いは何でしょうか。

          「腹壁に接した」と「腹壁に沿う」は意味合いは同じです。

          卵巣嚢胞が大きくなって腹壁に接する場合、腹壁に沿った形には通常ならず、球形を保ったまま、接していても腹壁から遠ざかる方向に移動すると思われます。
          安易に変形しないのが卵巣嚢胞、安易に腹壁に沿った形に分布するのが封入嚢胞です。

          そういう意味でおっしゃるように緊満度が卵巣嚢胞>封入嚢胞と言えますね。

  10. いつもありがとうございます。
    単純CTだと大腸癌による大腸閉塞を否定するのは難しいように感じました。
    本症例だと宿便によるものだとは思いましたが、直腸付近に癌がある可能性もあるか、、というところで迷いました。
    宿便が明らかに詰まっていれば宿便によるものの可能性が高いとして、良いものでしょうか。

    もう一点。今回は保存的に加療されたようですが、大腸癌による閉塞でのステント留置のように宿便での大腸閉塞でも何かしらの緊急処置を有する場面というのはあるのでしょうか。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >宿便が明らかに詰まっていれば宿便によるものの可能性が高いとして、良いものでしょうか。

      今回は宿便のみによると考えられますが、おっしゃるように単純CT(造影CTでも)で大腸癌は否定できません。
      排便後に内視鏡検査を勧めるのもアリだと思います。

      >今回は保存的に加療されたようですが、大腸癌による閉塞でのステント留置のように宿便での大腸閉塞でも何かしらの緊急処置を有する場面というのはあるのでしょうか。

      減圧は必要ですので、浣腸や下剤、場合によっては経肛門的なイレウス管は必要ですね。保存的というのはそういったものを含みます。