腹部救急画像診断 症例16

症例16

【症例】70歳代女性
【主訴】4日前より続く下腹部痛、次第に増強あり。
【身体所見】SBP60台、下腹部圧痛あり。
【データ】WBC 11000、CRP 49

画像はこちら

肝表など上腹部に腹腔内遊離ガス(free air)を大量に認めています。

とくに肝鎌状間膜両側のairは目立ちますね。
消化管穿孔を疑う所見です。

消化管穿孔を見たら、どこで穿孔を起こしているのか

  • 上部消化管(胃、十二指腸)
  • 下部消化管(小腸、結腸)

どちらなのかを見極める必要があります。

下腹部を見てみると、下腹部にも腹腔内遊離ガス(free air)を認めていることがわかります。

  • 上部のみ→上部消化管穿孔
  • 下部のみ→下部消化管穿孔

と推測できますが、今回のように両方に認めている場合は、両方の可能性があります。

free airと穿孔部位の大まかな関係は、

  • 大量→胃十二指腸、大腸
  • 上腹部腹腔内のみ→胃、十二指腸球部
  • 後腹膜→十二指腸下行〜水平脚
  • 腸間膜内→結腸、小腸
  • 骨盤内に限局→結腸、小腸

の穿孔という傾向があります。(あくまで傾向です。)

今回、かなり大量のガスを認めていますので、胃十二指腸、大腸が好発部位として考えられます。(つまり上部も下部も可能性として残ります(;゚ロ゚))

上部消化管の場合は、症例6にあったように十二指腸球部などが潰瘍からの穿孔の好発部位となります。

穿孔している腸管と周囲の特徴としては、

  • 腸管壁の肥厚・造影効果増強、壁の欠損。
  • 周囲脂肪織濃度上昇。
  • 消化管内容物の逸脱。(特に結腸からの便塊(dirty mass sign))

といったものがあります。

今回は単純CTですので、造影効果はわかりません。

今回は結腸を直腸から上に追っていくと、

S状結腸のところで、腸管外に逸脱する構造(便を疑う陰影とその上に空気)を発見できます。

これはここで消化管穿孔が起こり、便が逸脱していることを意味します。
この結腸における便の逸脱所見をdirty mass signと言います。

結腸を丁寧に追っていくことが重要です。

また腸間膜の脂肪織濃度上昇を広範に認めており、広範な腹膜炎が疑われます。

Douglas窩には高吸収な液貯留を認めており、便汁や膿瘍が疑われます。

診断:(特発性)S状結腸穿孔(下部消化管穿孔)

※当然外科コンサルトして緊急手術となります。

関連:消化管穿孔のCT画像のポイントは?

その他所見:

  • 開胸術後。
  • 腎嚢胞あり。
  • Th12、L1に圧迫骨折あり。
症例16の動画解説

消化管穿孔について

症例16のQ&A
穿孔部位の同定がうまくできませんでした。
便塊が連続しているので、一見腸管内にもあるように見えますね。
dirty mass sign重要な所見ですので、覚えておいてください。
free air・・・上部に大量にあったのと、なんとなく十二指腸球部から連続するair?が見えた気がしたのですが・・・
dirty mass signはそれとは気づかず、S状結腸大きいなぁなんて見てしまいました。
そこまで気付いたらあと一歩ですね。dirty mass sign覚えておいてください。
他の方と同じで、やはり穿孔部位の特定が意識しても難しいです。何かコツの様なものがあるのでしょうか。分布からの推測は確かに大事だと思いますが。今後も精進していきたいと思います。
上の解説にもあるように、部位を類推して、探していくしかないですね。
ただし今回はおそらく発症から結構時間が経過しているのでそれで余計わかりにくくなっています。
S状結腸捻転かと思いましたが、少しオーバーだったかもしれません。
捻転ならば、捻れているS状結腸がありますので、今回は違いますね。
穿孔にまずは気付けるようにしましょう。
free air が大量すぎて、これはほんとにairか?と逆に不安になりました。
わかります。でもこれで大量のfree airを経験出来ましたね!
穿孔とはわかったもののdirty mass signに気づけず、穿孔部位を正しく同定できませんでした
上部でそれらしきところがなければ、結腸を追う習慣をつけてください。
前回に引き続き、今回もfree airを見逃しました。反省します。
次は見つけられるように反省してください(^▽^)
フリーエアーは分かったのですがやはり穿孔部位が同定できなかったです。空気の位置によって穿孔部位がおおよそ分かるようにまとめていただいているものを有効活用したいです。
dirty mass sign覚えておいてください。
穿孔部位の同定がやはりとても難しく感じます。今回も違う部位を穿孔部位にしてしまいました。
難しいですね。いくら探してもわからないこともあります。
とくに下部は上部と異なり、穿孔部位の壁肥厚が来しにくいので難しいですね。
子宮を同定できず子宮摘出後?と思ったのですが、スライス76の膀胱の背側にあるのが子宮ですか?
そうですね。70歳代ですので子宮はかなり萎縮していますが、おっしゃるように膀胱の背側に子宮があると思われます。
子宮の同定には今回はありませんが、矢状断像を作って貰えばわかりやすいことが多いです。
腹腔内ガス像を認めていて腸管穿孔をどこかできたしているとは思ったのですが、部位の同定にまでいたりませんでした。また、肝前面の大きな遊離ガス像なのですが、大きすぎたせいか、見逃してしまったのでとても悔しいです。dirty mass signは知りませんでした。腸管の連続性を丹念に追う癖をつけたいです!症例16で質問が2つあります。
・冠状断で腰椎に骨折?線があるようなきがしたのですがこれは骨折ですか?
・右のS10領域肺表面に肝と同じ濃度の結節影が認められるような気がするのですが、これは何でしょうか?
>肝前面の大きな遊離ガス像なのですが、大きすぎたせいか、見逃してしまったのでとても悔しいです。

次回はまずここで違和感を覚えてください。肝表には通常airは認めませんので。

>・冠状断で腰椎に骨折?線があるようなきがしたのですがこれは骨折ですか?

ありがとうございます!おっしゃるように骨折(圧迫骨折)ですね。追記します。
Th12、L1にありますね。

>右のS10領域肺表面に肝と同じ濃度の結節影が認められるような気がするのですが、これは何でしょうか?

これは古い炎症後の変化を見ていると思われます。
過去画像との比較が大事ですが、陳旧性炎症性瘢痕・器質化肺炎などと表現されることもあります。

全体に炎症が強いと下から腸管を追うだけでも難しく感じます(;_;)
右肺底部背側に影がありますが、含気不良でよろしいでしょうか?(少し見慣れない形でした)。
含気不良
もしくは陳旧性炎症性瘢痕(器質化肺炎)だと思われます。過去画像との比較が大事ですね。
活動性の肺炎や腫瘍ではなさそうです。
free airとの連続性から小腸穿孔と読んでしまいました。S状結腸のDirty mass signは確かに、追っていくとS状結腸とは別の構造物でなるほどと思いました。
一見腸管内のように見えますが、よくみると腸管外でdirty mass signは間違い探しみたいな感じですね。
結腸を丁寧に追っていくことが重要です。
十二指腸球部は一部壁が見にくくなっていて,FreeAirと交通しているように見えるのですが,確かに炎症所見がなく,総合的な判断が重要だなと思わされました.
上部の場合は、壁肥厚や周囲脂肪織濃度上昇を伴うことが多い
下部の場合は、それらを伴わないことが多い(なので難しい)という点も覚えておいてください。
消化管穿孔+腹膜炎まではわかったのですが、穿孔部位が指摘できませんでした。dirty mass sign覚えておきます。
穿孔部位はわからないこともありますが、今回のように上部で疑わしいところがない場合は、結腸を肛門側から追うようにしましょう。
お疲れ様でした。

今日は以上です。

今回の気づきや感想などを下のコメント欄にお願いします。

過去のコメント
  1. 今回は分かりませんでした。糞便が外に出ているサインとは、、、腸管を丹念に追うことの重要性を改めて教えられました、、

    1. アウトプットありがとうございます。

      上部消化管に怪しい穿孔部位がない場合
      腹腔内遊離ガスの分布から下部が怪しい場合

      は、追える腸管である結腸は全部追って穿孔してそうな部位がないかをチェックしましょう。
      もちろん追えない小腸の場合はわからないこともありますが(^_^;

  2. dirty mass signと一塊になっている腸管外air はなんとなく「まとまり感」があって、free な感じがしなかったので、後腹膜腔への穿孔だと思ってしまいました。冷静に見ると、腸骨筋動静脈や腸腰筋の間には一層脂肪がありますね。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >後腹膜腔への穿孔だと思ってしまいました。

      後腹膜腔への穿孔だとしてもfree airや腹膜炎を疑う所見がありますので、腹腔内にも穿孔していますね。

  3. 骨盤内がごちゃごちゃしていて考えるのを放棄してしまいそうになりましたが、とりあえず虫垂同定ブートキャンプで学んだ「結腸追跡」をしてみたところ、S状結腸の左側に糞便様の陰影が突出して存在していることに気付けました。
    読影力が上がっているのが実感できちょっと嬉しくなりました。
    サンキューごろ~さん。 サンキューブートキャンプ。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >骨盤内がごちゃごちゃしていて考えるのを放棄してしまいそうになりました

      わかります。先日の虫垂炎穿孔膿瘍形成と同様、同じような感想を持たれる方も多いと思います。

      >とりあえず虫垂同定ブートキャンプで学んだ「結腸追跡」をしてみたところ、S状結腸の左側に糞便様の陰影が突出して存在していることに気付けました。
      読影力が上がっているのが実感できちょっと嬉しくなりました。

      良かったです!

      >サンキューごろ~さん。 サンキューブートキャンプ。

      やはりブートキャンプ大事ですね。基本ですが、繰り返すことで、腸管アレルギーがなくなりますね。
      こちらこそ嬉しい報告ありがとうございます!

  4. 結腸を追うだけで満足し、周囲のdirty mass signをスルーしてしまいました(反省)。
    上行結腸→横行結腸へと追ってみると、横行結腸(肝彎曲あたり)に限局して腸管拡張がいきなり現れているのが気になったのですが(axial120→104と上行結腸→横行結腸を追う時)、汎発性腹膜炎によって麻痺性イレウスが起こっているからなのでしょうか?
    後腹膜に固定されていない部分(横行結腸)は腸管拡張をきたしやすいのか、汎発性腹膜炎による麻痺性イレウスは部位によらずボコボコと腸管拡張/正常部位が現れるものなのかがわかりませんでした…

    1. アウトプットありがとうございます。

      >横行結腸(肝彎曲あたり)に限局して腸管拡張がいきなり現れているのが気になったのですが(axial120→104と上行結腸→横行結腸を追う時)、汎発性腹膜炎によって麻痺性イレウスが起こっているからなのでしょうか?

      おっしゃるようにここの部分の結腸の拡張はやや目立ちますが、特に有意ではないのかなと思います。

      >後腹膜に固定されていない部分(横行結腸)は腸管拡張をきたしやすいのか、

      というわけではありません。
      閉塞機転がないのがイレウスですので、閉塞機転がある腸閉塞と異なり、そこまで腸管は拡張しない印象です。拡張した腸管を追えるというものではありません。
      今回もそれほど腸管拡張は認めませんが、一部で拡張をしニボー像を認めており、左の下腹部などは麻痺性イレウスの状態といってもよいと考えます。

  5. 十二指腸上行部周囲の脂肪織濃度が特に上昇していると考えそこからの穿孔と答えてしまいました。これは穿孔を示唆するdirty fat signではなく汎発性腹膜炎による腸間膜脂肪織濃度上昇の一つだったということでしょうか?

    1. アウトプットありがとうございます。

      >これは穿孔を示唆するdirty fat signではなく汎発性腹膜炎による腸間膜脂肪織濃度上昇の一つだったということでしょうか?

      そうですね。下腹部でより目立ちますが、腹膜炎による変化と考えられます。

  6. 穿孔部位とdirty mass signは分かったのですが、腸間膜の脂肪織濃度上昇が最初違和感を感じたにも関わらず、広範だったのでこの人はこんなものなのかな?と思ってしまいました。広範な腹膜炎を反映していたのですね。勉強になりました。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >腸間膜の脂肪織濃度上昇が最初違和感を感じたにも関わらず、広範だったのでこの人はこんなものなのかな?と思ってしまいました。

      確かに広範に腸間膜の脂肪織濃度上昇を認めていますので全身浮腫の状態と思われるかもしれません。腸間膜間に広範に便汁が移行していると考えられます。

  7. 初歩的な質問で恐縮なのですが、SBPが低いのは何を反映しているのでしょうか?

    1. アウトプットありがとうございます。

      敗血症性ショックの状態なのかもしれませんが、詳細はわかりません。

  8. 私も十二指腸水平脚付近のdirty fat signから上部消化管穿孔としてしまいました。
    ちなみに、axialの68〜72/170では直腸がtarget waterを示しているように見えましたが、S状結腸穿孔部からの炎症波及を反映した所見でしょうか?

    1. アウトプットありがとうございます。

      >axialの68〜72/170では直腸がtarget waterを示しているように見えましたが、S状結腸穿孔部からの炎症波及を反映した所見でしょうか?

      これは確かに3層構造の粘膜下層が低吸収に見えますが、waterではなく、脂肪濃度とほぼ同様で、target fatパターンと言われるもので、肥満患者などで見られます。

      こちら確認ください。4分25秒あたりからこのパターンの説明をしています。

      1. 解説動画ありがとうございます。
        ちなみに、Grayパターン/Whiteパターンの濃度の比較対象になる静脈は平衡相での静脈濃度でよろしいでしょうか?

  9. 前回の症例があったので、初めて見ましたが、これが例の便塊が外に漏れ出ているというやつか、とわかりました。ありがとうございます。
    回盲部から虫垂のように小さく丸いairをもった構造がダグラス窩の方に続いているのは腹水と穿孔のairでしょうか?

    1. アウトプットありがとうございます。

      >回盲部から虫垂のように小さく丸いairをもった構造がダグラス窩の方に続いているのは腹水と穿孔のairでしょうか?

      そうですね。便汁とfree airをここにも認めています。

  10. 腸間膜への穿通と腹腔内への穿孔の鑑別は、free airの有無の他に見分け方はありますでしょうか。穿孔でfree airなしで膿瘍のみできることもありますか。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >穿孔でfree airなしで膿瘍のみできることもありますか。

      先日の症例の虫垂炎からの膿瘍がこのパターンでした。

      >腸間膜への穿通と腹腔内への穿孔の鑑別は、free airの有無の他に見分け方はありますでしょうか。

      airや膿瘍がないとそもそも引っかけることができません。
      airが限局している場合は穿通の可能性がありますが、その腸管がどういった腸管なのか(後腹膜に固定されている腸管なのか否か)も鑑別には重要ですね。

  11. まるでS状結腸の様に見えますが、そこを「ん!」を見抜くところがすごいです。腸などで被覆されると、膿瘍腔も腸管のような格好になるのかもしれません。膿瘍腔を追っていくと追えなくなるのですが、腸と思い込んでいるので、何となくここにつながっているのかなとミスを重ねて行きやすいです。初めの思い込みに縛られないようにしたいものです。

    1. アウトプットありがとうございます。

      >腸などで被覆されると、膿瘍腔も腸管のような格好になるのかもしれません。

      確かに大きかったら一見分かりにくいですね。擬態のようなものですね(^^)

      >腸と思い込んでいるので、何となくここにつながっているのかなとミスを重ねて行きやすいです。

      結腸を追う訓練をしていれば今回は結腸とは繋がらない大きな腔があり、ここにこんなに拡張した小腸があってもおかしいですし上下にスクロールすると腸管外であることに気づくという流れです。今回繋がっているとしたらS状結腸ということになりますが、そうするとS状結腸と繋がる腔が2つあっておかしいということになりますね。

    1. アウトプットありがとうございます。

      そうですね。症例によっては非常に追いにくいこともしばしばあります。その場合は肛門側からだけでなく、後腹膜に固定されている下行結腸を同定して、口側から肛門側に追うということをすることもあります。