先に結論:気道の狭窄・石灰化の鑑別
- 気管・気管支の壁が厚く・硬くなる病気では、再発性多発性軟骨炎・アミロイドーシス・骨軟骨形成性気管気管支症・気管気管支軟化症を考えます
- 見分けのポイントは気管の後ろの壁(膜様部)で、軟骨の病気(再発性多発性軟骨炎・骨軟骨形成性気管気管支症)は後壁が保たれ、アミロイドーシスは全周性に侵します。軟化症は呼気CTで評価します
- 気管・気管支の軟骨の石灰化だけなら、高齢者(特に女性)によくある正常の変化です。内腔の中の石灰化は気管支結石症を考えます
気道の狭窄、石灰化を見たら
- 再発性多発性軟骨炎(relapsing polychondritis)
- アミロイドーシス
- 気管気管支軟化症(tracheobronchomalacia)
- 骨軟骨形成性気管気管支症(tracheobronchopathia osteochondroplastica)進行例
を鑑別に挙げる。
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見分けるポイント:気管の後ろの壁(膜様部)が侵されるか
- 気管の軟骨は前と横にしかなく、後ろの壁(膜様部)には軟骨がない。
- 再発性多発性軟骨炎・骨軟骨形成性気管気管支症は軟骨の病気のため、膜様部が保たれる(後壁の肥厚・石灰化がない)のが特徴。再発性多発性軟骨炎は耳介・鼻の軟骨炎を伴い、気道壁の平滑な肥厚と石灰化、呼気での虚脱を示す。骨軟骨形成性気管気管支症は気管内腔へ突出する多発性の小さな石灰化結節が特徴。
- アミロイドーシスは粘膜下にアミロイドが沈着するため、膜様部を含め全周性に壁が肥厚・石灰化する。
- 気管気管支軟化症は、吸気と呼気のCTで、呼気時に気道が大きく(断面積が50%を超えて)つぶれることで診断する。ただし一般的な50%の基準は健常者でも満たすことが多く、この閾値だけで診断すると過剰診断になりうる点に注意が必要です。呼吸器症状のない健常ボランティア81名の強制呼気CTでは、気管断面積の平均虚脱率は54±20%で、男性では年齢とともに虚脱率が大きくなると報告されています。年齢・性別を考慮し、症状や他の所見とあわせて判断することが大切です。
症例 30歳代男性 呼吸困難(呼吸機能検査で閉塞性障害)

引用:Radiopaedia(Relapsing polychondritis)
胸部気管の前壁と側壁が平滑に肥厚し、内腔が狭くなっています。軟骨のない後壁(膜様部)は肥厚がなく保たれており、軟骨の病気である再発性多発性軟骨炎に特徴的な所見です。気管軟骨の吸収値の上昇も指摘されています。
気管・気管支の石灰化の主な原因
| 原因 | 特徴 |
|---|---|
| 加齢(高齢女性に多い) | 軟骨の石灰化のみ。正常の変化 |
| ワルファリンの長期内服 | 気管から末梢まで広範囲 |
| 再発性多発性軟骨炎・骨軟骨形成性気管気管支症 | 前壁・側壁。膜様部は保たれる |
| アミロイドーシス | 膜様部を含む全周性 |
| 気管支結石症 | 内腔の石灰化と、その先の無気肺・粘液栓 |
高齢者の気管・気管支の石灰化はよくある正常所見で、より広範囲のものは長期のワルファリン内服でも報告されています(Thoongsuwan 2003)。気管支結石症の多くは、結核などで石灰化したリンパ節が気管支の中へ出てきたものです(Seo 2002)。
よくある疑問(Q&A)
Q. 気管支結石症はCTでどう見えますか?
A. 気管支の中やすぐそばの石灰化結節に、無気肺・粘液栓などの閉塞所見を伴うときに強く疑います。薄いスライスと気管支に沿った再構成像で確かめます(Seo 2002)。
Q. 気道の狭窄はレントゲンでわかりますか?
A. 気管が細く写ることで気づくことはありますが、範囲や壁の厚さ、膜様部が保たれるかはCTと多断面再構成像で評価します(Moroni 2022)。息苦しさや長引く咳があれば医療機関で相談してください。
参考文献
- Moroni C, Bindi A, Cavigli E, et al. CT findings of non-neoplastic central airways diseases. Jpn J Radiol. 2022;40(2):107-119. PubMed
- Buitrago DH, Wilson JL, Parikh M, et al. Current concepts in severe adult tracheobronchomalacia: evaluation and treatment. J Thorac Dis. 2017;9(1):E57-E66. PubMed
- O’Donnell CR, Litmanovich D, Loring SH, et al. Age and sex dependence of forced expiratory central airway collapse in healthy volunteers. Chest. 2012;142(1):168-174. PubMed
- Kwong JS, Müller NL, Miller RR. Diseases of the trachea and main-stem bronchi: correlation of CT with pathologic findings. Radiographics. 1992;12(4):645-57. PubMed
- Thoongsuwan N, Stern EJ. Warfarin-induced tracheobronchial calcification. J Thorac Imaging. 2003;18(2):110-2. PubMed
- Seo JB, Song KS, Lee JS, et al. Broncholithiasis: review of the causes with radiologic-pathologic correlation. Radiographics. 2002;22 Spec No:S199-213. PubMed
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