先に結論:縦隔リンパ管奇形
- リンパ管奇形はリンパ管の先天的な形成異常で、多くは小児の頸部・腋窩に見つかり、一部が縦隔に広がります
- 画像では薄い隔壁を持つ多房性の水のような嚢胞で、血管などの周りの構造を押しのけずにすき間を埋めるように広がるのが特徴です
- 出血や感染で急に大きくなることがあり、治療には手術のほか硬化療法(OK-432など)も行われます(現在はリンパ管奇形とも呼ばれます)
- リンパ管腫(lymphangioma)はリンパ管の形成異常で、手術後などにリンパ液がたまってできるリンパ嚢胞(lymphocele)とは別のものです
縦隔リンパ管奇形(lymphangioma)
・稀な良性の先天奇形のひとつ。
・多房性あるいはスポンジ状に集積した高分化なリンパ組織が局所的に増殖することで形成される。
・2歳くらいまでの小児期に発見されやすく、頸部や腋窩部に生じるのがほとんどであるが、一部は縦隔内へと進展する。
・縦隔(胸部)に限局するリンパ管奇形はまれである。
・リンパ管奇形は以前は単純性(capillary)、海綿状(cavernous)、嚢胞状(cystic)に分けられていたが、現在のISSVA分類では嚢胞の大きさにより大嚢胞型(macrocystic)、小嚢胞型(microcystic)、混合型に分類される。縦隔では嚢胞状リンパ管奇形が最も多い。
・リンパ管奇形の嚢胞壁は薄く、内壁は内皮細胞により被覆されている。また嚢胞壁自体は平滑筋、血管、脂肪、リンパ濾胞や結合組織により構成されている。
画像所見
・境界明瞭な円形から分葉状の嚢胞状腫瘤を呈し、内部に薄い隔壁を伴い単房性〜多房性の構造をとる。
・周囲縦隔構造を置換するというよりはむしろ既存構造に鋳型状に広がったり、これらを包み込むような形態を呈するのが特徴的。
・内部吸収値は通常は水と同等であるが、乳糜や出血により影響される。
・その為、MRIではT1WI low,T2WI highが多いが内部性状により信号強度はさまざまである。・硬化療法の効果は嚢胞の大きさで異なり、頭頸部リンパ管奇形726例のメタ解析では完全治癒率が大嚢胞型53.1%、小嚢胞型35.1%、混合型31.1%であった。治療方針を決めるうえで、画像で大嚢胞型か小嚢胞型かを評価することが重要である。
・超音波では、薄い隔壁で仕切られた無エコーの多房性嚢胞として見える。
・成人の胸部リンパ管腫19例では、最も多いCT像は辺縁平滑な嚢胞性腫瘤で、多くは前縦隔・上縦隔にあった。石灰化や軟部濃度を示す例もあり、画像だけでは診断できないこともある(Shaffer 1994)。成人縦隔の9例では単房性が6例と最も多く、造影されない薄い壁の腫瘤として見えた(Charruau 2000)。
・縦隔の嚢胞性病変では、胸腺嚢胞・気管支原性嚢胞・心膜嚢胞・食道重複嚢胞なども鑑別になり、血管前・臓側・椎体傍のどの区画にあるかで絞り込む(Shah 2023)。
症例 11歳男児 胸痛と呼吸困難

引用:Radiopaedia(Medistinal lymphatic malformation)
前縦隔を中心に左胸腔へ大きく広がる水の濃度の嚢胞性腫瘤があり、内部に薄い隔壁が見られます。上行大動脈や肺動脈を押しつぶさずに、その周りを包み込むように広がっています。
参考文献
- Shaffer K, Rosado-de-Christenson ML, Patz EF, et al. Thoracic lymphangioma in adults: CT and MR imaging features. AJR Am J Roentgenol. 1994;162(2):283-9. PubMed
- Charruau L, Parrens M, Jougon J, et al. Mediastinal lymphangioma in adults: CT and MR imaging features. Eur Radiol. 2000;10(8):1310-4. PubMed
- Wassef M, Blei F, Adams D, et al. Vascular Anomalies Classification: Recommendations From the International Society for the Study of Vascular Anomalies. Pediatrics. 2015;136(1):e203-14. PubMed
- De Maria L, De Sanctis P, Balakrishnan K, et al. Sclerotherapy for lymphatic malformations of head and neck: Systematic review and meta-analysis. J Vasc Surg Venous Lymphat Disord. 2020;8(1):154-164. PubMed
- Shah A, Rojas CA. Imaging modalities (MRI, CT, PET/CT), indications, differential diagnosis and imaging characteristics of cystic mediastinal masses: a review. Mediastinum. 2023;7:3. PubMed
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