先に結論:膵管癒合不全(pancreas divisum)とは

  • 胎児期に2つに分かれていた膵臓の管(背側膵管と腹側膵管)がつながらずに残った生まれつきの変異です。膵液の多くが細い副乳頭から出ることになります
  • 大部分は無症状で、検査で偶然見つかります。一部の人では、副乳頭で膵液の流れが滞ってくり返す膵炎・腹痛の原因になり、特に原因不明の再発性膵炎や子どもの膵炎では考えるべき病態です
  • 診断はMRCPが最も簡便で、背側膵管が総胆管と交わらずに上の副乳頭へ向かう様子で確認します。症状がある場合は内視鏡で副乳頭を広げる治療を検討します

膵管癒合不全(pancreas divisum/unfused pancreatic duct system)とは?

  • 膵の発生異常の一つで腹側膵原基と背側膵原基の癒合不全。膵液の大部分を流す背側膵管(Santorini管)が主乳頭(Vater乳頭)ではなく副乳頭に開口する変異。
  • 背側膵管と腹側膵管との間にまったく交通がない完全型と細い交通枝を有する不完全型がある。腹側膵管は細く短い。不完全型にはvariationが多い。交通枝のない型が約70%を占めるとされる(Gutta 2019)。
  • 膵胆管合流異常や先天性胆道拡張症との合併も報告されているが、多くは症例報告である(Gutta 2019)。
  • 欧米では約10%(剖検・画像・内視鏡の報告で6〜10%)に見られるが、アジア人では1〜2%と低い(Gutta 2019)。
  • 大部分は無症状だが、腹痛や膵炎の原因となることがある(95%以上は症状がなく、偶然見つかる。Gutta 2019)。
  • MRCPで検討した研究では、原因不明の膵炎での頻度(5%)は膵疾患のない対照(7%)と差がなく、CFTR遺伝子変異に関連する膵炎で47%と高かった(Bertin 2012)。単独では膵炎の原因にならず、遺伝的素因と重なって発症にかかわると考えられている。
  • 小児の膵炎では考慮する。
  • 飲酒・薬剤・外傷など他の膵炎の原因が加わったときに、膵炎を起こしやすくする可能性が指摘されている(Gutta 2019)。
  • 背側膵管を流れる膵液を小さな副乳頭が処理しきれないため特に背側膵領域に膵炎を起こしやすい。一方の膵管系のみに膵炎(Isolated pancreatitis)。
  • divisumやdominant dorsal ductの場合、膵頭部の腫瘍によって腹側膵管が閉塞していても主膵管の拡張が見られないことがある。
  • 治療法としては内視鏡的な副乳頭切開・形成術を考慮。

膵の発生の過程で膵管の解剖は次のようになります。

この後、副膵管は退縮します。

divism1

その結果膵液は主膵管からVater乳頭へ流れます。
divism3

ところが副膵管の退縮がうまくいかなかったり、副膵管と主膵管が癒合しなかったとき、膵管癒合不全が起こります。

特に、副膵管と主膵管が癒合しない場合、膵液の流れは次のようになります。divism4副膵管は細いのにたくさんの膵液が流れてしまうと、膵液がうっ滞してしまいますね。

その結果、閉塞性膵炎を引き起こすことになります。

divisumの画像診断

  • CT所見は、主膵管、副膵管の非連続性を再構成像も含めて確認するか、dominant dorsal duct sign(副膵管の径>主膵管の径)を見つければよい。内視鏡的膵管造影を基準にした多列CTの検討では、この方法で感度90%だった(Soto 2005)。
  • MRCPでも確認できるが、メタ解析では通常のMRCPの感度は52%(特異度97%)にとどまり、セクレチン負荷MRCPでは感度86%に上がる(Rustagi 2014)。セクレチン負荷MRCPでは背側膵管が拡張して描出が良くなり、膵管癒合不全の検出率が5%から9%に上がったと報告されています。santoriniceleの検出にも有用で、膵管癒合不全14例中、通常のMRCPでは3例、セクレチン負荷後には7例で見つかりました(Manfredi 2000)。
  • 腹側膵と背側膵の間に存在する脂肪層の裂隙(fat cleft)が診断に有用とされるが、確定診断には至らない。
  • 太い背側膵管が総胆管の腹側を走行し、小乳頭に向かう。背側膵管の遠位末端に嚢状の拡張を認めることがあり、santoriniceleと呼ばれる。
症例 66歳男性 アルコール性肝障害 スクリーニング

pancreas divisum mri findings1

MRIのT2強調像において、主膵管のほか、副膵管の描出を認めています。

pancreas divisum mri findings2

MIP像において、背側膵管(副膵管)と腹側膵管(主膵管)との間に細い交通枝を認めています。

不完全型の膵管癒合不全(divisum)を疑う所見です。

膵炎を疑う所見などは認めません。

この症例を動画で連続性を見てみる(解説はなし)

症例 60歳代男性 スクリーニング

MRIのT2強調像です。

divisum1

副膵管が副乳頭に開口しております。

主膵管との連続性は認めず、完全型の膵管癒合不全(divisum)です。

divisum2

MRCPのMIP像においても同様です。

副膵管と主膵管の連続性を認めません。

完全型の膵管癒合不全(divisum)です。

この症例を動画でチェックする。

関連記事:輪状膵(annular pancreas)とは?CT・MRI・MRCP画像所見

参考文献

  1. Gutta A, Fogel E, Sherman S. Identification and management of pancreas divisum. Expert Rev Gastroenterol Hepatol. 2019;13(11):1089-1105. PubMed
  2. Soto JA, Lucey BC, Stuhlfaut JW. Pancreas divisum: depiction with multi-detector row CT. Radiology. 2005;235(2):503-508. PubMed
  3. Manfredi R, Costamagna G, Brizi MG, et al. Pancreas divisum and “santorinicele”: diagnosis with dynamic MR cholangiopancreatography with secretin stimulation. Radiology. 2000;217(2):403-408. PubMed
  4. Rustagi T, Njei B. Magnetic resonance cholangiopancreatography in the diagnosis of pancreas divisum: a systematic review and meta-analysis. Pancreas. 2014;43(6):823-8. PubMed
  5. Bertin C, Pelletier AL, Vullierme MP, et al. Pancreas divisum is not a cause of pancreatitis by itself but acts as a partner of genetic mutations. Am J Gastroenterol. 2012;107(2):311-7. PubMed

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