クリプトコッカスはアスペルギルスに次いで多い肺真菌症をきたす真菌として知られています。
クリプトコッカスは鳩(はと)の糞から感染することで有名です。
アスペルギルスとの違いとして、アスペルギルスは通常免疫抑制状態の人に発症しますが、クリプトコッカスは健康な人にも感染して症状を起こすことがある点が挙げられます。
そんなクリプトコッカスについて症状、診断、治療について実際のCT画像を交えてまとめました。
クリプトコッカスとは?
クリプトコッカスとはカビ(真菌)の一種です。
クリプトコッカス症は自然界に広く分布するCryptococcus neoformans(読み方は、クリプトコッカス-ネオフォルマンス)が口や鼻を通して経気道的に感染することで発症します。
鳩などの鳥類の糞の中で増殖して、それが乾燥した時に空気中に拡散されます。
クリプトコッカス症の分類〜原発性と続発性〜
クリプトコッカス症は原発性と続発性に分類されます。
- 原発性:健常者に発症するクリプトコッカス症
- 続発性:基礎疾患がある人に発症するクリプトコッカス症
基礎疾患とは、白血病、悪性リンパ腫、糖尿病、AIDSなどが当てはまります。
これ以外に、抗がん剤を使用している人、ステロイドを使用している人、免疫抑制剤を使用している人に発症する場合も続発性に分類されます。
一般的に真菌感染は基礎疾患があったり、免疫機能が低下している人にかかりやすいですが、このクリプトコッカス症は健常人にも発症することがあるので注意が必要です。
クリプトコッカス症の症状は?
肺でクリプトコッカスが増殖して炎症を起こし、症状をきたす状態を肺クリプトコッカス症と言います。
そして、原発性か続発性かで症状が異なります。
原発性肺クリプトコッカス症の症状は?
健常人に発症する原発性のクリプトコッカス症は、通常無症状で、検診などの胸部X線などでたまたま発見されることが多いとされます。
続発性肺クリプトコッカス症の症状は?
一方で、基礎疾患がある人に発症する続発性肺クリプトコッカス症では、
- 発熱
- 全身倦怠感
- 胸痛
- 体重減少
- 呼吸困難
- 咳嗽・血痰
と言った症状をきたします。
肺以外の症状は?
感染が肺にとどまらず、髄膜への播種をひき起こす事があります。
その他、免疫能の低下した人では血液に真菌が入り込み、真菌血症から全身播種をひき起こすことがあります。
特にAIDS患者においては、この傾向が強いと言われています。
クリプトコッカスの診断は?
診断は喀痰からクリプトコッカスを分離・同定することで行います。
肺生検で採取した病変部位の組織をPAS染色やGrocott(グロコット)染色で、病理学的に診断することもあります。
髄膜炎を合併している時は、髄液の墨汁法でクリプトコッカスを検出する(莢膜に包まれた円形の検体として見えます)ことも診断に有用とされます。
クリプトコッカスのCT画像診断は?
肺クリプトコッカス症はCTで、孤立性あるいは多発性の結節として認められることが多く、中でも下葉で同一肺葉内で見られることが多いと言われます。
そのため、肺がんや肺結核との鑑別が問題となることがあります。
続発性肺クリプトコッカス症の場合、結節の中に空洞が見られる割合が原発性よりも高いと言われています。
症例 80歳代男性 咳嗽
胸部CTで左上葉に多発結節あり。
喀痰にて肺クリプトコッカス症と診断されました。
この多発結節のCT画像を動画でチェックする。
症例 60歳代男性
左の下葉内に結節性病変を複数認めています。
喀痰にて肺クリプトコッカス症と診断されました。
症例 80歳代 女性 乳がんの既往あり
こちらの症例も左の下葉内に結節性病変を複数認めています。
乳がんの既往あり、転移の可能性を否定できず、手術となりました。
手術の結果、肺クリプトコッカスと診断されました。
このように同一肺葉内に複数の結節影として認められることが多いのがクリプトコッカスの特徴です。
クリプトコッカスの治療は?
治療薬としては、抗真菌薬が用いられます。
第一選択は、
- フルコナゾール(FLCZ)、
- イトラコナゾール(ITCZ)
ですが、重症例や、続発性クリプトコッカス症の場合は、
- アムホテリシンB
- ボリコナゾール(VRCZ)
が用いられることもあります。