肋骨骨折は、外傷患者の約10%にみられる、大変頻度の多い骨折です(Ziegler 1994)。
しかし、どんな体勢でも痛みを伴い、自然とよくなるまで我慢するしかないと思っていませんか?
中には、合併症を伴うこともあります。
痛みを我慢せずに、病院を受診し、正確な診断を受けて治療することはとても大切なことです。
そこで今回は、肋骨骨折(「ろっこつこっせつ」英語表記で「Rib fracture」)について
- 症状
- 原因
- 合併症
- 診断
- 治療
など、詳しくお話し致します。
先に結論:肋骨骨折(ろっこつこっせつ)とは
- 胸を打った・転んだなどで肋骨が折れたりひびが入ったりした状態で、外傷患者の約1割にみられます。強い咳のくり返しや骨粗しょう症でも起こり、第4〜7肋骨の横〜背中寄りに多いと報告されています
- 症状は、折れた所の押すと痛い・深呼吸や咳・くしゃみで痛むなど。ずれのない骨折(ひび)はレントゲンに写らないこともあり、日をおいて撮ったレントゲンで骨のつき始め(仮骨)が見えてわかることもあります。CTのほうが細かい骨折まで見つけやすい検査です
- 多くは痛み止めとバストバンドなどで自然に治りますが、気胸・血胸・肺挫傷を合併することがあり、息苦しさがあるときは要注意です。隣り合う3本以上の肋骨がそれぞれ2か所以上で折れると、呼吸に合わせて胸がへこむフレイルチェストになります
※息苦しい・痛みが強くなる・血を吐くときはすぐに受診してください。
肋骨骨折とは?
肋骨とは、「ろっこつ」とも「あばらぼね」とも呼ばれますが、内臓(主に肺や心臓)を守るように存在し、左右に12対あります。
その肋骨が何らかの原因により折れてしまうことを、肋骨骨折と言います。

肋骨骨折の好発部位は?
好発部位は、肋骨の中でも中ほどの第4〜7肋骨で、特に胸の横(側方)〜背中寄り(後側方)に多いと報告されています(Liebsch 2019)。原因によって偏りがあり、心肺蘇生(胸骨圧迫)による骨折は前側方に多くみられました(Liebsch 2019)。
肋骨骨折の原因は?
胸部に、直達もしくは介達外力が加わることによって起こります。
例を挙げると、
- 転倒
- 交通事故
- スポーツ(ボールが当たった)
- 日常生活(タンスの角でぶつけた)
など、胸部を打撲したことによって起こることもありますが、中には
- 同一作業の繰り返し
- 咳
といった、疲労骨折や何気ない動作で起こることもあります。
骨粗鬆症や加齢によるものも原因となります。
肋骨骨折の症状は?
- 局所の疼痛
- 圧痛(押すと痛い)
- 運動時痛
この他、咳やくしゃみをした際に痛みが増強されるという特徴があります。
また、腫脹・皮下出血などの所見を確認できることもあります。
肋骨骨折の合併症は?
中には、上記の症状では済まない場合もあります。
一般的な合併症としては、
- 気胸
- 血胸
- 肺挫傷
- 皮下気腫
- flail chest
などが挙げられます。
flail chest(フレイルチェスト)とは?
肋骨骨折の中でも
- 隣り合う3本以上の肋骨が、
- それぞれ2か所以上で折れている(骨折した部分が胸壁から浮いた状態になる)
の場合は、このflail chest(フレイルチェスト)の可能性があり、注意が必要です。

自発呼吸で上のように「2箇所以上の骨折により動く部位(動揺部)が吸気時に陥凹して、呼気時に膨張する」奇異呼吸と呼ばれる呼吸が起こるのが特徴です。
普通は息を吸う(吸気)ときには胸郭は大きくなり、息を吐く(呼気)ときには胸郭は小さくなります。
それと逆であるため奇異呼吸と呼ばれます。
そのため、診断には胸郭の奇異性運動の確認が必要です。
flail chest(フレイルチェスト)の治療には、
- 陽圧呼吸管理
- 疼痛コントロール
が基本となります。
疼痛コントロールとして、静脈麻酔や硬膜外麻酔、NSAIDsなどが用いられます。
そのほか、プレートなどで骨折部を固定する手術(肋骨固定術)が行われることもあります。米国東部外傷外科学会(EAST)のガイドラインでは、成人のフレイルチェストに対し肋骨固定術を条件付きで推奨しています。死亡率の低下、人工呼吸期間・ICU滞在の短縮、肺炎・気管切開の減少が示されています。
さらに骨折部位によって起こりうる合併症にも注意が必要です。
骨折する部位により注意すべき肋骨骨折の合併症
さらに、骨折する部位により、
- 上位肋骨骨折(特に第1・2肋骨)では大血管損傷(大血管を損傷し、出血が見られる状態)、気管損傷、頸椎髄損傷、肺挫傷
- 下位肋骨骨折(第9~12肋骨)では腹部臓器損傷(特に右の場合は肝損傷・胆道損傷、左の場合は脾損傷など)
を生じることがあるので注意が必要です。

特に若年者の場合は、骨が柔軟であるため、骨折はないのに臓器損傷はあるということがあるので注意が必要です。
また、折れた肋骨の本数が多いほど、合併症や死亡が増えます(Talbot 2017)。65歳以上の人では、骨折が1本増えるごとに死亡率が19%、肺炎のリスクが27%上がると報告されています(Bulger 2000)。
肋骨骨折の診断は?
胸部単純X線(胸部レントゲン)・CT検査・MRI検査・核医学検査などを行い診断します。
それぞれについてご説明します。
胸部単純X線(胸部レントゲン)検査
胸部単純X線(胸部レントゲン)検査により、骨折の場所を確認できます。
この検査で肋骨に骨折を確認できると、肋骨骨折となります。
ただし、骨折した骨の転位が少ない場合は胸部X線の正面像のみでは、骨折線の指摘が困難なことも多くあります。
そのために、必要に応じてCT検査も有用となります。CTで1本以上の肋骨骨折があった388人のうち、最初の胸部レントゲンで「肋骨骨折なし」と読まれていたのは208人(54%)でした(Livingston 2008)。
肋骨骨折のレントゲンの撮り方と見方
- 撮り方:胸部レントゲン(正面)に加え、痛む場所を中心に2方向から撮る肋骨撮影を行うことがあります(Sano 2018)。
- 見方:肋骨を1本ずつ、背中側から脇、前へとたどり、骨の輪郭(皮質)の途切れ・段差・ずれを探します。左右を比べるとわかりやすくなります。
- 見落としやすい所:肋骨撮影でも217本中43本の骨折が写らず、原因は心臓や腹部臓器との重なり、ずれの小さい骨折、撮影範囲の外でした(Sano 2018)。
- あわせて見る所:気胸(肺の縁の線)・血胸(肋骨横隔膜角の鈍化)・皮下気腫・肺挫傷がないかを確認します。
症例 50歳代 男性 脚立から左側に転落

胸部単純X線(胸部レントゲン)において、左の第4~6肋骨の骨折を確認することができます。
ただし、CTで精査したところ、実際は左3-9肋骨で骨折があり、レントゲンでは全ての骨折は把握できないことがわかります。
CT検査
X線では写りにくい骨折を、CTで確認できることもあります。
また、肺野条件と骨条件で撮影すると、合併症である血気胸や、大血管陰影、縦隔陰影をチェックすることができます。
症例 50歳代 男性 上と同一症例


上のように胸部CTの骨条件では、肋骨骨折を明瞭に把握することができます。
新しい骨折(新鮮骨折)は骨皮質の硬化などを認めずに鋭い骨折線となるのが一般的です。
一方で古い陳旧性の骨折は骨硬化を伴うことが多いです。
| 新しい骨折(新鮮骨折) | 古い骨折(陳旧性骨折) | |
|---|---|---|
| 骨折線 | 鋭くはっきりしている | ぼやける・消えている |
| 骨のまわり | 骨硬化なし、周囲に血腫・軟部の腫れ | 仮骨(こぶ状のふくらみ)・骨硬化・変形 |
| 症状 | 押すと痛む・呼吸で痛む | 多くは痛みがない |
CTでも見落としはあり、肋骨と平行な向き(水平方向)の骨折や、ずれの小さい骨折、息止めが不十分な場合に見逃されやすいと報告されています(Sano 2018)。横断像だけでなく、斜め・縦方向に作り直した画像もあわせて確認します。
この胸部CTの骨を取り出して3D再構成するとさらに骨折の全体像が明瞭になります。

胸部の外傷では、胸部CTの骨条件と3D再構成像を組み合わせて診断することで見落としが少なくなります。
ちなみにこの症例では左の鎖骨骨折を伴っています。
症例 40歳代 男性 検診で左肺結節を指摘された。

胸部レントゲンにて左中肺野の外側に高吸収な結節を認めています。

CTによる精査で左7肋骨に骨の肥厚及び骨硬化を認めています。
陳旧性(古い)の肋骨骨折を疑う所見で、これがレントゲンでの結節の正体であることがわかります。
MRI検査
骨折により内臓を傷つけていないかを見るために、稀ですがMRIを用いた検査をすることもあります。
核医学検査
少量の薬(ガンマ線を放射する)を静脈注射し、体の内部の様子を撮影する方法(シンチグラム)です。
核医学検査をすることによって、X線では難しい疲労骨折や骨粗鬆症による骨折なのか、などを診断することができます。
肋骨骨折の治療は?
基本的には、
- 薬物療法(痛み止め・湿布薬)
- 胸部をコルセットで固定
- 局所安静(無理な姿勢、負荷をかけない)
などで、小さな骨折(ヒビ程度)ならば安静にしているうちに痛みは少しずつ和らぎ、状態を確認しながら日常の動作を戻していきます。
しかし、骨折の状態や患者の年齢によっても完治までの期間は大きく異なります。
合併症を伴う場合はまた異なります。
血気胸や肺の損傷がある場合には、胸腔ドレナージを行い治療します。
肋骨骨折の画像でよくある疑問(Q&A)
Q. ひび(ずれのない骨折)はレントゲンに写りますか?
A. 写らないことが少なくありません。CTで骨折が確認された人の半数以上で、最初の胸部レントゲンでは骨折が指摘されていませんでした(Livingston 2008)。痛みが続くときは、日をおいたレントゲンやCTで確かめます。
Q. 陳旧性肋骨骨折とは何ですか?
A. 以前に折れて、すでについた(治った)肋骨の骨折のことです。CTでは仮骨による骨のふくらみや骨硬化として見え、本人が覚えていないことも多くあります。上の症例のように、レントゲンで肺の結節のように見えることがあります。
Q. 肋骨骨折のCT画像はどこを見ますか?
A. 骨条件で肋骨を1本ずつ追って骨折の場所と本数を数え、肺野条件で気胸・血胸・肺挫傷、さらに上位肋骨なら大血管、下位肋骨なら肝臓・脾臓・腎臓の損傷がないかを確認します(Talbot 2017)。
胸を打ったあとに痛みが続く、息苦しいなど気になる症状があれば医療機関を受診してください。
参考文献:
すぐ役立つ救急のCT・MRI P127
Emergency Radiology 救急の画像診断とIVR P208
整形外科疾患ビジュアルブック P172〜175
全部見えるスーパービジュアル整形外科疾患 P346
- Talbot BS, Gange CP, Chaturvedi A, et al. Traumatic Rib Injury: Patterns, Imaging Pitfalls, Complications, and Treatment. Radiographics. 2017;37(2):628-651. PubMed
- Kasotakis G, Hasenboehler EA, Streib EW, et al. Operative fixation of rib fractures after blunt trauma: A practice management guideline from the Eastern Association for the Surgery of Trauma. J Trauma Acute Care Surg. 2017;82(3):618-626. PubMed
- Ziegler DW, Agarwal NN. The morbidity and mortality of rib fractures. J Trauma. 1994;37(6):975-9. PubMed
- Liebsch C, Seiffert T, Vlcek M, et al. Patterns of serial rib fractures after blunt chest trauma: An analysis of 380 cases. PLoS One. 2019;14(12):e0224105. PubMed
- Livingston DH, Shogan B, John P, et al. CT diagnosis of Rib fractures and the prediction of acute respiratory failure. J Trauma. 2008;64(4):905-11. PubMed
- Sano A. Rib Radiography versus Chest Computed Tomography in the Diagnosis of Rib Fractures. Thorac Cardiovasc Surg. 2018;66(8):693-696. PubMed
- Bulger EM, Arneson MA, Mock CN, et al. Rib fractures in the elderly. J Trauma. 2000;48(6):1040-6. PubMed
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こまっちこと、こまっちゃんは手術受けたり、疼痛に悩まされついに 仕事休んで休養中です。
胸部シリーズに参加しましたが、回答ができず はじめに戻って読んでいます。
この骨折の説明は驚くほど 懇切丁寧で研修医にはありがたいシリーズと思います。
コメントありがとうございます。
手術や疼痛、大変だったと思います。まずはご自身の体を最優先に、ゆっくり休んでください。
胸部シリーズへのご参加も感謝しております。無理のないペースで読み進めていただければ大丈夫です。骨折の解説がお役に立てたようで何よりです。
お大事になさってください。