
先に結論:びらん性変形性関節症は、DIP・PIP関節に出て、MCP関節が保たれ、関節の中央がくぼむ「中央びらん」(gull-wing)を示す。関節リウマチ、乾癬性関節炎、痛風、CPPD(偽痛風)とは、罹患する関節の分布と骨変化の種類で見分ける
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| どんな病気か | 手の変形性関節症(手OA)のうち、炎症と関節破壊が強い型。中高年の女性に多い(Favero 2022) |
| 分布 | DIP・PIP関節に多く、MCP関節は保たれやすい(Favero 2022) |
| X線の特徴 | 中央びらん、gull-wing(カモメの翼)、saw-tooth(のこぎり歯)。まれに強直(Favero 2022) |
| 見分けたい病気 | 関節リウマチ(PIP・MCP・手首)、乾癬性関節炎(DIP優位)、痛風、CPPD(MCP・手首) |
| 画像検査の使い分け | 診断はX線が基本。MRIや超音波は、炎症(滑膜炎・骨髄浮腫)を調べたいときや、鑑別に迷うときに使う |
手の変形性関節症の基本
変形性関節症(OA)は、関節の軟骨がすり減るだけの病気ではなく、軟骨下の骨、滑膜、靱帯、関節包を含む関節全体の病気と考えられています。そのため、骨が出っ張る骨棘や、関節のすき間(関節裂隙)の狭さ、軟骨下の骨が硬くなる硬化、軟骨下のくぼみ(嚢胞)といった変化がX線に現れます。OAは基本的に、症状と診察で診断する病気で、画像は補助の役割です。画像が必要になるのは、症状が急に進んだとき、夜間や安静時にも痛むとき、全身の症状を伴うとき、ほかの病気が疑われるときなどです。
手OAは、3つの型に分けられます。びらん性手OA、結節性手OA(非びらん性)、そして母指の付け根(第1CM関節)のOAです(Favero 2022)。結節性手OAでは、DIP関節のヘバーデン結節、PIP関節のブシャール結節として、関節がこぶのように腫れます。
びらん性手OAとは
びらん性手OA(erosive hand OA、EHOA)は、主に女性にみられ、手OAのなかで最も進行が速い型です。疼痛・腫れ・赤みが急に現れ、関節が壊れて、機能障害や生活の質の低下につながります(Favero 2022)。結節性手OAに比べて、発症年齢が早い傾向があります(Addimanda 2012)。
米国の大規模コホート(Osteoarthritis Initiative)では、研究の定義として、「少なくとも2本の指のIP関節でKellgren-Lawrence(K/L)分類2度以上、かつ少なくとも1つの関節に中央びらん」がある場合をびらん性手OAとしました。この定義で、ベースラインでびらん性手OAのなかった3,365人のうち、86人(2.6%)が48か月間に新たに発症しています。危険因子は、高齢、女性(相対危険2.47)、OAの重症度、皮質骨の薄さでした(McAlindon 2021)。
K/L分類は、骨棘、関節裂隙の狭小化、軟骨下の硬化、変形の有無で、関節を0〜4度に分けるX線の分類です。研究では、この分類を組み合わせた基準でびらん性手OAを定義します。ただし、K/L分類は「病期」のすべてを表す基準ではなく、画像の重症度と症状の強さは一致しないことがあります。
X線で見るびらん性OAの所見
中央びらん、gull-wing、saw-tooth
びらん性手OAの代表的なX線所見は、関節の中央がへこむ中央びらん(central erosion)です。関節の両端に骨棘が残る一方で、関節面の中央が削れるため、「カモメの翼(gull-wing)」のような形になります。PIP関節ではのこぎり歯状(saw-tooth)になることもあります(Favero 2022)。446人の手OAの検討では、中央びらんはPIP関節よりDIP関節に多く、gull-wing型はDIP関節に、saw-tooth型はPIP関節に多くみられました(Addimanda 2012)。
ごくまれに、関節がくっついて動かなくなる強直(ankylosis)に至ることがあります(Favero 2022)。
引用元の図 びらん性変化と修復(リモデリング)の経過

引用:Verbruggen G, et al. Ann Rheum Dis 2010;69(5):862-867 (Figure 1). CC BY-NC・PMC2925149
図:びらん性手OAの指節間関節(IP関節)6関節を、6か月ごとに撮ったX線像です。A:びらん性変化の進み方で、1は関節のすき間の消失、2は軟骨下骨の板(皮質)の破壊と、その縁の不整、3は軟骨下の骨に生じた溶けた領域、4は軟骨下骨板の破壊と溶けた領域により、不整な縁をもつ広い偽関節ができた状態です。Bは、その後の修復(リモデリング)を示します。
手の関節炎を分布と骨変化で見分ける
手の関節炎の鑑別は、「どの関節に」「どんな骨変化が」出ているかが基本です。X線で関節裂隙が狭いときは、まず炎症性の関節炎か、変性(OA)かを区別します。骨棘、骨硬化、軟骨下嚢胞があり、びらんがなければOAを示唆します。反対に、骨びらん、骨粗鬆化(骨が薄くなる)、軟部組織の腫れ、関節裂隙の均一な消失は炎症性の関節炎の特徴です(Jacobson 2008)。炎症性の関節炎のうち、手の近位(手首・MCP・PIP)に複数の関節炎があり骨の増殖がなければ関節リウマチ、遠位(DIP)に骨の増殖を伴えば乾癬性関節炎などの脊椎関節炎を考えます(Jacobson 2008)。
| 病気 | 好発する関節(教科書的な分布) | 骨変化の特徴 |
|---|---|---|
| びらん性OA | DIP・PIP。MCPは保たれる | 中央びらん(gull-wing)、骨棘、関節裂隙の狭小化 |
| 関節リウマチ(RA) | PIP・MCP・手首。DIPは保たれる。左右対称 | 関節の縁(辺縁)のびらん、関節周囲の骨粗鬆化、均一な関節裂隙の狭小化 |
| 乾癬性関節炎(PsA) | DIP優位。非対称。同じ指の複数関節(ray) | 骨びらんと骨増殖が併存、骨膜炎、付着部炎。「pencil-in-cup」 |
| 痛風 | 関節ごとに不規則(足の第1MTP関節が典型だが手にも出る) | 関節裂隙・骨密度が保たれた、関節近傍のびらん(縁が張り出す)、痛風結節 |
| CPPD | MCP(とくに2・3指)・手首 | 軟骨石灰化、鉤状の骨棘(hook osteophyte)、軟骨下嚢胞 |
表のうち痛風とCPPDの欄は教科書的な整理で、下の図の説明も合わせて確認してください。痛風については、既存記事の痛風性関節炎・痛風結節の画像診断も参考にしてください。
引用元の図 びらん性OAの罹患部位(Radiopaedia)

引用:Radiopaedia(Hand arthropathies distribution diagram)
図:Radiopaedia「Hand arthropathies distribution diagram」のうち、びらん性OAの図です。手のX線像に重ねた青い印が、DIP関節、PIP関節、母指のIP関節、第1CM関節を示しています。MCP関節には印がありません。
引用元の図 関節炎ごとの特徴(Radiopaedia)

引用:Radiopaedia(Salient features in different arthropathies – illustration)
図:Radiopaedia「Salient features in different arthropathies」の説明図です。痛風(腫瘤状の沈着・関節近傍のびらん・張り出した縁)、CPPD(軟骨石灰化・鉤状骨棘・軟骨下嚢胞)、乾癬性関節炎(骨膜炎・付着部炎・pencil in cup)、関節リウマチ(パンヌス・辺縁のびらん)、OA(骨硬化・骨棘・軟骨下嚢胞)、びらん性OA(中央びらん・gull-wing)の違いが並べて描かれています。
引用元の図 gull-wingを示すびらん性OAの症例(Radiopaedia)

引用:Radiopaedia(Gull-wing appearance in erosive osteoarthritis)
図:Radiopaedia症例「Gull-wing appearance, erosive osteoarthritis」の手のX線(正面像)です。症例ページの所見と合わせて、DIP・PIP関節の変化と、MCP関節の保たれ方を確認します。
MRI・超音波でわかること
びらん性手OAでも、診断の基本はX線です。MRIや超音波は、炎症の程度を調べたいときや、乾癬性関節炎やRAとの鑑別に迷うときに使われます。
55人のびらん性手OAを0.3TのMRIで調べた研究では、X線(Verbruggen-Veys分類)と比べて、MRIはびらん性病変をより多く見つけました(33.5%対20.2%)。また、滑膜炎や骨髄浮腫(bone marrow lesion)は、びらんと骨棘を併せもつ病変や、関節破壊と有意に関連していました(Allado 2020)。
超音波では、手OA 55人(51%がびらん性)の検討で、関節液の貯留と、パワードプラの信号が、非びらん性OAよりびらん性OAに多く認められました。びらんのある関節だけでなく、びらんのない関節にも炎症の徴候が多かったことから、全身性の背景を示唆する可能性が指摘されています(Kortekaas 2013)。
MRIだけで鑑別できるわけではありません。高解像度MRIで69人の手足の関節炎を調べた研究では、画像診断が臨床診断と一致したのは、OAで80%、RAで67%、PsAで50%でした。骨膜炎(PsA 45%、OA 40%、RA 0%)や骨炎(PsA 79%、OA 80%、RA 42%)は、PsAとOAで同じように見え、この2つの区別が難しいことが示されました(Braum 2013)。画像だけでなく、分布、症状、血液検査と合わせて診断します。
よくある疑問(Q&A)
Q. びらん性OAは関節リウマチに変わりますか。
A. びらん性OAは変形性関節症の仲間で、関節リウマチとは別の病気です。ただし、見た目が似ることがあるため、血液検査や、関節の分布、症状の経過を合わせて鑑別します。RAのMRIは関節リウマチ(RA)のMRI画像診断で説明しています。
Q. 指先の関節が赤く腫れて痛いのは、いつまで続きますか。
A. びらん性手OAは、痛み・腫れ・赤みが急に現れ、関節の障害が進みやすい型とされています(Favero 2022)。経過は人により異なります。痛みが強い、腫れが続くときは、整形外科やリウマチ科で相談してください。
Q. 「ヘバーデン結節」と同じですか。
A. ヘバーデン結節は、DIP関節にできる骨のこぶで、結節性手OAの代表的な所見です。びらん性手OAは、炎症と骨の破壊(びらん)を伴う、より進行の速い型を指します(Favero 2022)。
Q. X線の変化が強ければ、痛みも強いのですか。
A. 画像の重症度と症状の強さは、一致しないことがあります。画像は診断の補助で、治療は症状と生活への影響を含めて考えます。
あわせて読みたい:関節炎のレントゲンの見方|関節リウマチ・変形性関節症・痛風・乾癬性関節炎を分布と骨で見分ける(ABCDS)
あわせて読みたい:乾癬性関節炎のレントゲン・MRI|関節リウマチとの違い(付着部炎・骨増殖・DIP関節)と脊椎関節炎
指の関節の痛みや腫れが続くときは、医療機関にご相談ください。
参考文献
- Favero M, Belluzzi E, Ortolan A, et al. Erosive hand osteoarthritis: latest findings and outlook. Nat Rev Rheumatol. 2022;18(3):171-183. PubMed
- McAlindon TE, Driban JB, Roberts MB, et al. Erosive Hand Osteoarthritis: Incidence and Predictive Characteristics Among Participants in the Osteoarthritis Initiative. Arthritis Rheumatol. 2021;73(11):2015-2024. PubMed
- Addimanda O, Mancarella L, Dolzani P, et al. Clinical and radiographic distribution of structural damage in erosive and nonerosive hand osteoarthritis. Arthritis Care Res (Hoboken). 2012;64(7):1046-53. PubMed
- Kortekaas MC, Kwok WY, Reijnierse M, et al. In erosive hand osteoarthritis more inflammatory signs on ultrasound are found than in the rest of hand osteoarthritis. Ann Rheum Dis. 2013;72(6):930-4. PubMed
- Allado E, Wittoek R, Ferrero S, et al. Assessment of structural lesions, synovitis and bone marrow lesions in erosive hand osteoarthritis on MRI (0.3T) compared to the radiographic anatomical Verbruggen-Veys score. PLoS One. 2020;15(6):e0234972. PubMed
- Braum LS, McGonagle D, Bruns A, et al. Characterisation of hand small joints arthropathy using high-resolution MRI–limited discrimination between osteoarthritis and psoriatic arthritis. Eur Radiol. 2013;23(6):1686-93. PubMed
- Jacobson JA, Girish G, Jiang Y, et al. Radiographic evaluation of arthritis: inflammatory conditions. Radiology. 2008;248(2):378-89. PubMed
- Jacobson JA, Girish G, Jiang Y, et al. Radiographic evaluation of arthritis: degenerative joint disease and variations. Radiology. 2008;248(3):737-47. PubMed
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