頭蓋骨梗塞 鎌状赤血球症の頭痛と硬膜外血腫

鎌状赤血球症の10歳代の患者さんが、強い頭痛と頭皮の腫れで来院しました。外傷はありません。頭部MRIで頭蓋骨の骨髄の信号がおかしく、その内側に凸レンズ形の液体貯留があります。骨髄炎と硬膜外膿瘍でしょうか?
鎌状赤血球症では、血管閉塞発作(クリーゼ)のときに頭蓋冠(頭蓋骨の円蓋部)に骨梗塞が起こり、その外側に帽状腱膜下血腫、内側に硬膜外血腫を伴うことがあります。外傷のない硬膜外血腫として報告されている合併症です。骨髄炎との区別は画像だけでは難しいこともあるので、文献で整理します。

先に結論:鎌状赤血球症の頭蓋冠梗塞は、頭痛・頭皮の腫れで見つかり、MRIで骨髄の信号変化と隣の硬膜外血腫・帽状腱膜下血腫が手がかり。骨髄炎との区別は臨床所見と合わせて考える

項目 ポイント
どんな合併症か 骨梗塞はふつう長管骨に起こるが、頭蓋骨にも起こる(Arends 2011)
画像の手がかり 頭蓋冠の骨髄の信号変化と、隣接する硬膜外血腫・帽状腱膜下血腫(Shenouda 2024)
初回CT CTが正常で、数日後のMRIで梗塞と血腫が分かった報告がある(Arends 2011)
治療の方向 神経症状がなければ保存的な管理の報告が多い。局所の神経症状や圧迫があれば手術を考える(Shenouda 2024)
骨髄炎との区別 大きな骨膜下の液体(深さ4mm以上)と炎症反応・白血球の上昇は骨髄炎を考える材料。脂肪抑制T1の信号は評価が分かれる(Sato 2025)

鎌状赤血球症と頭蓋冠の梗塞

鎌状赤血球症(sickle cell disease、SCD)は、異常なヘモグロビン(HbS)をもつ遺伝性の病気です。酸素が少なくなると赤血球が鎌の形に変わり、細い血管を詰まらせます。臨床の問題は、血管の閉塞(vaso-occlusion)、慢性の溶血性貧血、脾臓の機能低下による感染症の3つに集約されます(Arends 2011)。

骨や筋肉の合併症は、2つの流れで整理されています。1つは溶血と貧血によるもので、骨髄の過形成や髄外造血が起こります。もう1つは血管の閉塞によるもので、骨壊死・骨梗塞、筋肉の壊死、感染(骨髄炎・化膿性関節炎)が起こります(Sato 2025)。頭蓋冠の梗塞は後者に入ります。

血管の閉塞による骨梗塞は、鎌状赤血球症の骨の合併症としてよく知られています。ただし起こる場所はふつう長管骨で、頭蓋骨の梗塞はまれです(Arends 2011)。頭蓋冠の板間層(内板と外板のあいだ)にも骨髄があり、ここに梗塞が起こります。

骨髄の中で何が起きているか

急性の骨梗塞については、骨髄の中に赤血球がたまる(sequestration)ことが原因だとする研究があります。濃厚赤血球の容器と健康な人の膝を一緒に撮像した実験と、74人・86検査の後ろ向きの検討で、脂肪抑制T1強調像の信号を筋肉と比べると、濃厚赤血球は2.1、骨梗塞は1.7、急性骨髄炎は1.0、正常の骨髄は0.9でした(Jain 2008)。骨梗塞の骨髄が脂肪抑制T1で明るく見えるのは、たまった赤血球の影響と考えられています(Jain 2008)。

臨床像:頭痛と頭皮の腫れ

頭蓋冠の梗塞は、血管閉塞発作のさなかの強い頭痛や頭皮の腫れで見つかります。外傷がないのに頭皮が腫れる場合、骨の外側の帽状腱膜下血腫が見つかることがあります(Shenouda 2024)。代表的な報告を表にまとめます。

報告 患者と症状 画像 経過
Resar 1996 14歳男性(HbSS)。腰痛・股関節痛・頭痛・発熱 骨シンチで頭蓋骨の多発する取り込み低下。CTで前頭骨の輪郭の変形と硬膜外の血液。MRIで両側前頭と左頭頂の亜急性硬膜外血腫 手術なしで管理
Arends 2011 19歳男性(HbSC)。片側の前頭側頭部の強い頭痛 初回の頭部CTは正常。8日後のMRIで頭頂骨の梗塞と小さな硬膜外血腫 1か月後のMRIで血腫は消失
Shenouda 2024 13歳男性。頭全体の強い頭痛と胸痛 CTで硬膜外血腫と帽状腱膜下血腫。造影MRIで右頭頂骨と前頭骨に梗塞を示す低信号、上矢状静脈洞の圧排 MR静脈撮影で静脈洞の開存を確認し、保存的に管理

Arends(2011)の報告では、最初の頭痛は骨梗塞そのもの、8日後の頭痛の再燃は硬膜外血腫ができたことによると考えられています。初回のCTが正常でも、頭痛が続けば時間をおいてMRIで見直す、という教訓になります。

画像所見

CT

CTでは、骨の輪郭の変形(Resar 1996)や、骨に接する硬膜外・帽状腱膜下の血腫(Shenouda 2024)が見えます。一方で、ごく早い時期の梗塞はCTで分からないことがあります(Arends 2011)。硬膜外血腫の形や、外傷性の硬膜外血腫との違いは急性硬膜外血腫の記事で説明しています。

MRI:骨髄の信号変化

MRIは、骨髄の信号変化と、骨の内外の血腫を一度に評価できます。Resar(1996)は、頭蓋骨梗塞の診断にMRIが役立ったと述べています。報告では、梗塞した頭蓋冠が造影後のT1強調像で低信号に見え、その内側と外側に血腫が接していました(Shenouda 2024)。血腫が上矢状静脈洞を外から押すこともあり、静脈洞の開存はMR静脈撮影で確認されています(Shenouda 2024)。

急性の骨梗塞では、造影前の脂肪抑制T1強調像で骨髄が高信号になることがあり、骨髄炎との区別に使えるという報告があります(Jain 2008)。ただし、小児31人の検討ではこの信号で骨梗塞と骨髄炎を区別できませんでした(Delgado 2015)。この点は後の節でまとめます。

骨シンチ

骨シンチでは、急性の梗塞が取り込みの低下として見えることがあります。Resar(1996)の症例では、診察で異常が出る前に、頭蓋骨の多発する取り込み低下が見つかりました。

症例 10歳代男性 鎌状赤血球症の頭蓋冠梗塞と硬膜外血腫

鎌状赤血球症 頭蓋冠梗塞 造影MRI 矢状断と冠状断 硬膜外血腫
引用:Shenouda M, et al. Subgaleal and Epidural Hematomas Secondary to Calvarial Infarcts: An Uncommon Presentation of Sickle Cell Disease. Cureus 2024;16(4):e57961 (Figure 2). CC BY 4.0。PMC11086025

造影後の矢状断(A)と冠状断(B)のMRIです。右頭頂骨と前頭骨の頭蓋冠に低信号の領域があり、骨梗塞を示しています(丸印)。その隣に血腫があります(矢印)(Shenouda 2024)。

硬膜外血腫・帽状腱膜下血腫

外傷のない硬膜外血腫は、鎌状赤血球症のまれな合併症です。文献をまとめた2つの報告を表にします。

報告 対象 主な結果
Aljohani 2024 鎌状赤血球症の非外傷性硬膜外血腫の既報40例 男性82.5%、平均年齢15.3歳。両側前頭が最多(20%)、症状は頭痛が最多(47.5%)。97.5%はすでに鎌状赤血球症と分かっていた。治療を受けた人の77.5%が生存
Patel 2025 自験4例と、1970〜2024年の既報71例 頭蓋骨梗塞がある例は、ない例に比べて死亡のオッズが88%低い。播種性血管内凝固(DIC)があると57%が死亡し、死亡のオッズは7.56倍

Patel(2025)の結果は、頭蓋骨梗塞に伴う血腫と、それ以外の原因(凝固異常など)による血腫とで経過が違う可能性を示しています。凝固の状態の確認は、画像と並んで欠かせない情報です。

Aljohani(2024)の症例は、最初に帽状腱膜下血腫と両側の硬膜外血腫がありながら脳神経外科の診察なしに帰宅し、2年後に意識障害と左半身の脱力で再来して、拡大した血腫に緊急の開頭術を受けました。硬膜外血腫が見つかったら、大きさと圧迫の程度を記載し、経過を追う必要があります。

治療は、神経症状がなければ鎮痛と保存的な管理が中心で、局所の神経症状や神経・血管の圧迫があれば手術を考えると報告されています(Shenouda 2024)。治療方針は主治医・脳神経外科の判断になります。

骨髄炎との区別

鎌状赤血球症では骨髄炎も起こりやすく、痛み・発熱・腫れという症状は骨梗塞と重なります。画像だけで区別するのは難しく、多職種で考えるべき問題とされています(Sato 2025)。

手がかり 文献の結果
骨膜下の液体 大きな骨膜下の液体(深さ4mm以上)は、炎症反応・白血球の上昇と合わせて骨髄炎を考える材料(Sato 2025)
造影前の脂肪抑制T1 骨梗塞は高信号、骨髄炎は低めで差があった(Jain 2008)。小児31人(骨髄炎5人・骨梗塞26人)では差がなかった(P=0.56)(Delgado 2015)
造影 造影は急性骨髄炎の診断に役立つ(Jain 2008)
今後の手法 DIXON法による骨髄の脂肪の割合の評価が研究されている(Sato 2025)

頭蓋冠の病変でも考え方は同じです。骨の内外の液体が血腫の信号なのか、膿瘍のように拡散が制限された液体なのか、炎症反応や血液培養はどうかを合わせて判断します。骨髄炎そのもののMRI所見は骨髄炎のMRIの記事、感染巣を探す核医学検査は白血球シンチの記事で説明しています。

読影のポイント

鎌状赤血球症の人の頭痛・頭皮の腫れでは、頭蓋冠の骨髄の信号と、骨の内側・外側の液体を確認します。硬膜外血腫があれば、厚さ、正中偏位、静脈洞の圧排の有無を書きます。骨の溶けたような変化があっても、鎌状赤血球症では腫瘍や転移だけでなく梗塞を考えます。頭蓋骨の溶骨性病変の一般的な鑑別は頭蓋骨腫瘍の鑑別の記事にまとめています。

強い頭痛、意識の変化、手足の動かしにくさ、けいれんがある場合は、急いで医療機関で診てもらう必要があります。

よくある疑問(Q&A)

Q. 頭部CTが正常なら、頭蓋骨梗塞は否定できますか?
A. 否定できません。初回のCTが正常で、8日後のMRIで頭頂骨の梗塞と硬膜外血腫が見つかった報告があります(Arends 2011)。

Q. 硬膜外血腫があれば、すぐに手術ですか?
A. 報告では、神経症状がなければ保存的に管理された例が多く、局所の神経症状や圧迫があれば手術が考えられています(Shenouda 2024)。判断は主治医・脳神経外科が行います。

Q. 脂肪抑制T1で骨髄が明るければ、骨梗塞と言い切れますか?
A. 言い切れません。骨梗塞で高信号になるという報告(Jain 2008)がある一方、小児の検討では骨髄炎と区別できませんでした(Delgado 2015)。

Q. 頭蓋骨梗塞がある血腫は、予後が悪いのですか?
A. 75例の解析では、頭蓋骨梗塞がある例のほうが死亡のオッズは低く、DICがある例で死亡が多くなっていました(Patel 2025)。

参考文献

  1. Shenouda M, Paidisetty PS, Nguyen PD. Subgaleal and Epidural Hematomas Secondary to Calvarial Infarcts: An Uncommon Presentation of Sickle Cell Disease. Cureus. 2024;16(4):e57961. PubMed
  2. Arends S, Coebergh JA, Kerkhoffs JL, et al. Severe unilateral headache caused by skull bone infarction with epidural haematoma in a patient with sickle cell disease. Cephalalgia. 2011;31(12):1325-8. PubMed
  3. Resar LM, Oliva MM, Casella JF. Skull infarction and epidural hematomas in a patient with sickle cell anemia. J Pediatr Hematol Oncol. 1996;18(4):413-5. PubMed
  4. Aljohani OI, Almustafa RN, Almalki BT, et al. Non-traumatic bilateral epidural hematoma in a child with sickle cell anemia: A case report and a review of the literature. Childs Nerv Syst. 2024;40(3):925-931. PubMed
  5. Patel R, Reisert H, Keymakh M, et al. Management of Spontaneous Epidural Hematoma in the Setting of Vaso-occlusive Crisis Among Pediatric Patients With Sickle Cell Disease: A Case Series and Scoping Literature Review. J Pediatr Hematol Oncol. 2025;47(1):38-46. PubMed
  6. Jain R, Sawhney S, Rizvi SG. Acute bone crises in sickle cell disease: the T1 fat-saturated sequence in differentiation of acute bone infarcts from acute osteomyelitis. Clin Radiol. 2008;63(1):59-70. PubMed
  7. Delgado J, Bedoya MA, Green AM, et al. Utility of unenhanced fat-suppressed T1-weighted MRI in children with sickle cell disease — can it differentiate bone infarcts from acute osteomyelitis? Pediatr Radiol. 2015;45(13):1981-7. PubMed
  8. Sato VN, Moriwaki TL, Tsuji LK, et al. Musculoskeletal manifestations of sickle cell disease: an imaging perspective. Skeletal Radiol. 2025;54(12):2607-2623. PubMed

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