
先に結論:急性腎皮質壊死は、皮質への血流が途絶えて皮質だけが壊死する病気。造影CTでは皮質が染まらず髄質が染まる「reverse rim sign」が手がかりになる
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| どんな病気か | 産科合併症・敗血症・溶血性尿毒症症候群などを背景に起こる、まれだが重い急性腎障害。無尿で発症することが多い(Chugh 1994) |
| 造影CT | 皮質が造影されず、髄質は造影される(reverse rim sign)。被膜直下の薄い皮質が残って染まることもある |
| 腎梗塞との違い | 腎梗塞は区域性(くさび形)の非造影域が典型で、全体が梗塞したときは被膜下の皮質だけが染まる cortical rim sign が出ることがある(Wong 1984) |
| ATNとの違い | ATNは皮質の非造影ではなく、造影剤の残る「遷延する腎実質像(nephrogram)」として見えることがある(Saunders 1995) |
| 経過 | びまん性の壊死は腎機能が戻りにくい。後には皮質の石灰化・線維化が残る(Jeong 2002) |
急性腎皮質壊死とは
急性腎皮質壊死(acute renal cortical necrosis)は、腎臓の皮質への血流が途絶えて、皮質が広く壊死する病気です。髄質や、腎被膜の直下のごく薄い皮質は、別の血管から血流を受けるため残ることがあります。急性腎障害のなかでは少ない原因ですが、腎機能が戻りにくい点で重要です。
インド北部の施設で28年間に透析を要した急性腎不全2,986人を見直した研究では、113人(3.8%)が急性腎皮質壊死でした。原因は産科的なものが56.6%、それ以外が43.4%で、産科では妊娠後期の合併症や敗血症性流産、産科以外ではヘビ咬傷、溶血性尿毒症症候群、移植腎の拒絶反応、急性胃腸炎、急性膵炎、敗血症などが挙がっています。無尿(total anuria)が78.8%で最も多い症状でした(Chugh 1994)。
病理では、皮質が全体に壊死する「びまん性」と、斑状に壊死する「巣状(patchy)」に分けられます。同じ研究では、びまん性が62.8%、巣状が37.2%で、透析から離脱できたのは巣状の19人でした(Chugh 1994)。
近年の産後の腎皮質壊死
産後に透析を要した急性腎障害88人のうち25人が腎皮質壊死と診断された報告(2025年、インド)では、23人は腎生検、2人は造影CTで診断されています。原因は産褥敗血症、非典型溶血性尿毒症症候群(aHUS)、常位胎盤早期剥離、産後出血、ループス腎炎でした。生検の52.2%に血栓性微小血管症(TMA)の所見があり、退院時に部分的な回復が見られたのは4人だけでした(Kumar 2025)。
| 背景 | 文献に挙がる例 |
|---|---|
| 産科 | 常位胎盤早期剥離、産後出血、産褥敗血症、敗血症性流産、妊娠関連のaHUS(Chugh 1994、Kumar 2025) |
| 感染・ショック | 敗血症、播種性血管内凝固(DIC)を伴う重症感染(Chugh 1994、Amacher 2021) |
| その他 | ヘビ咬傷、溶血性尿毒症症候群、移植腎の拒絶反応、急性胃腸炎、急性膵炎(Chugh 1994) |
造影CTの所見:reverse rim sign
急性腎皮質壊死の造影CTでいちばんの手がかりは、皮質が造影されず、髄質が造影されるという逆転した染まり方です。正常の腎臓では、早い時相で皮質が先に強く染まり(皮髄相)、そのあと髄質も染まっていきます。皮質壊死では外側の皮質が低吸収の帯として残り、その内側の髄質は染まるため、「reverse rim sign」と呼ばれます(Amacher 2021)。
被膜直下のごく薄い皮質や、髄質に接する皮質(傍髄質)の一部が染まって見えることがあります。被膜下の皮質は被膜の血管(被膜動脈)から血流を受けるためと考えられています。腎臓は腫れて大きく見えることがあります。
インドの113人の研究では、CTが撮られた5人全員で特徴的な所見が見られ、著者らは腎臓のCTが早い診断に役立つとしています(Chugh 1994)。ただし症例数は少なく、CTだけで診断が確定するわけではありません。
造影剤を使うかどうか
急性腎皮質壊死の人は、多くが乏尿・無尿の急性腎障害の状態にあります。造影CTを撮るかどうかは、診断で得られるものと腎臓への負担を考えて、主治医と放射線科で判断します。後述する造影超音波や、造影剤を使わないMRIも選択肢として報告されています。
症例 40歳代女性 犬咬傷後の敗血症に伴う両側急性腎皮質壊死

引用:Amacher SA, et al. Bilateral acute renal cortical necrosis after a dog bite: case report. BMC Infect Dis 2021;21(1):231 (Fig. 1). CC BY 4.0。PMC7913388
造影CTの冠状断で、両側の腎皮質が造影されず(低吸収)、髄質は十分に造影されています(reverse rim sign)。著者らはこの所見を急性腎皮質壊死に特徴的と述べています。小さな犬咬傷のあと、敗血症性ショックと播種性血管内凝固を起こした、脾機能が低下した人の症例です(Amacher 2021)。
腎梗塞との違い:rim sign の向きが逆
腎梗塞(腎動脈の塞栓・血栓・解離・外傷など)では、閉塞した動脈の支配域が造影されません。典型はくさび形の区域性の非造影域で、腎臓全体が梗塞すると腎全体が染まらなくなります。CTの造影の総説でも、区域性の造影欠損の多くは動脈の塞栓による梗塞とされています(Saunders 1995)。
Wongらの12人の検討では、塞栓は両側の多発性の梗塞、外傷は片側の腎全体の梗塞を起こしやすく、梗塞の47%にcortical rim signが見られました。腫瘤のような効果が11%、被膜下の液体貯留が21%、腎筋膜の肥厚が6%でした(Wong 1984)。
cortical rim sign は、腎全体が梗塞しても被膜の直下の皮質だけが細い帯として染まる所見です。被膜の側副血行で保たれると考えられています。外傷後の腎梗塞20人の検討では、rim signは早くても受傷8時間後から見え(中央値は7日)、1週以降のCTでは全員に見られました。受傷から10時間以内のCTでは見えないことがありました(Kamel 1996)。つまり、受傷直後や発症直後は rim sign がなくても梗塞は否定できません。
| 所見 | 急性腎皮質壊死 | 腎梗塞(全体) |
|---|---|---|
| 造影されない部分 | 皮質の大部分 | 腎実質の全体(皮質も髄質も) |
| 造影される部分 | 髄質(と被膜直下の薄い皮質) | 被膜直下の薄い皮質のみ(cortical rim sign) |
| 左右 | 両側のことが多い | 外傷は片側、塞栓は両側多発が多い(Wong 1984) |
| 背景 | 産科合併症、敗血症、DIC、TMAなど | 心房細動などの塞栓源、外傷、動脈解離 |
要するに、皮質壊死では「外が死んで中が生きている」、腎梗塞では「全部が死んで一番外の薄い皮だけ生きている」と考えると整理しやすくなります。腎動脈の走行や分枝の数は腎動脈の解剖と過剰腎動脈の記事にまとめています。
急性尿細管壊死(ATN)との違い
急性尿細管壊死は、ショックや腎毒性物質で尿細管が傷つく、急性腎障害の多い原因です。皮質壊死とは違い、皮質への血流そのものが途絶えるわけではないので、造影CTで皮質が帯状に抜ける形にはなりません。
CTの造影の様子(CT nephrogram)を整理した総説では、両側の遷延する腎実質像(global persistence)の原因として全身の低血圧、尿細管内の閉塞、尿細管機能の異常が挙げられています。また rim pattern は多くが腎梗塞に伴い、まれに急性尿細管壊死や腎静脈血栓症でも見られるとされています(Saunders 1995)。
| 病態 | 造影CTで考えたい形 |
|---|---|
| 急性腎皮質壊死 | 皮質が染まらず髄質が染まる(reverse rim sign) |
| 腎梗塞 | くさび形の非造影域、全体なら cortical rim sign(Wong 1984) |
| 急性尿細管壊死・低血圧 | 両側の遷延する腎実質像(Saunders 1995) |
| 腎盂腎炎・尿路閉塞 | 線条(striated)の腎実質像(Saunders 1995) |
腎盂腎炎の線条の造影や、腎臓のCTの見方の全体は腹部CTの腎臓の読影ポイントと急性腎盂腎炎・AFBN・腎膿瘍のCTの記事で説明しています。
超音波とMRIの所見
超音波:B-modeの低エコー帯は少数
腎皮質壊死12人を調べた研究では、造影超音波(CEUS)で12人全員に reverse rim sign が見られましたが、通常のB-modeで被膜下の低エコー帯が見えたのは4人だけでした。抵抗係数(RI)は測れた10人ですべて1未満で、腎静脈血栓症との区別に役立ったとしています(Spiesecke 2021)。造影超音波は腎毒性のない造影剤をベッドサイドで使える点が利点として挙げられています。
このように、B-modeで低エコーの帯が見えないことは、皮質壊死を否定する根拠にはなりません。
MRI:内側の皮質の低信号帯
MRIでは、腫れた腎臓の内側の皮質とベルタン柱に沿ってT2強調像・T1強調像で低信号の帯が見られ、T2強調像でより目立ちます。造影すると病変は造影されず、正常な実質と区別できます。経過を追うと低信号の帯は厚くなり、石灰化や線維化であることがわかりました(Jeong 2002)。
経過と予後
びまん性の皮質壊死は腎機能の回復が乏しく、巣状の壊死では透析から離脱できる人がいます(Chugh 1994)。産後の報告でも、びまん性の壊死、無尿の持続、退院時の透析依存などが回復しないことと関連していました(Kumar 2025)。慢性期には皮質が薄くなり、石灰化が残ることがあります(Jeong 2002)。
画像で皮質壊死を疑ったときは、原因になる病態(産科合併症、敗血症、DIC、TMAなど)の評価と治療が並行して進みます。治療や透析の方針は腎臓内科・産科・集中治療の主治医が決めます。気になる症状がある一般の方は、医療機関にご相談ください。尿がほとんど出ない、強い腹痛や腰の痛みに発熱を伴う、出産後に尿が出にくいといったときは、急いで受診してください。
よくある疑問(Q&A)
Q. reverse rim sign があれば急性腎皮質壊死と決まりますか?
A. 強く疑う所見ですが、臨床経過と合わせて判断します。確定には腎生検が行われることもあります。産後の報告では25人中23人が腎生検、2人が造影CTで診断されていました(Kumar 2025)。
Q. 腎梗塞の cortical rim sign とどう見分けますか?
A. 皮質壊死では髄質が染まり、皮質の大部分が染まりません。腎全体の梗塞では髄質も含めて染まらず、被膜下の薄い皮質だけが帯状に染まります。cortical rim sign は発症早期には出ないことがあります(Kamel 1996)。
Q. 急性尿細管壊死でも rim のような造影になりますか?
A. CTの造影の総説では、rim pattern は多くが腎梗塞に伴い、まれに急性尿細管壊死や腎静脈血栓症でも見られるとされています(Saunders 1995)。形だけで決めず、背景の病態と経過を合わせて読みます。
Q. 造影剤が使えないときは?
A. 造影剤を使わないMRIで内側皮質の低信号帯を見る方法(Jeong 2002)や、造影超音波(Spiesecke 2021)が報告されています。どの検査を選ぶかは主治医と相談してください。
参考文献
- Chugh KS, Jha V, Sakhuja V, et al. Acute renal cortical necrosis–a study of 113 patients. Ren Fail. 1994;16(1):37-47. PubMed
- Kumar A, Rajput M, Kumar R, et al. Postpartum renal cortical necrosis: experience from a tertiary care center in India. J Nephrol. 2025;38(6):1609-1618. PubMed
- Amacher SA, Søgaard KK, Nkoulou C, et al. Bilateral acute renal cortical necrosis after a dog bite: case report. BMC Infect Dis. 2021;21(1):231. PubMed
- Wong WS, Moss AA, Federle MP, et al. Renal infarction: CT diagnosis and correlation between CT findings and etiologies. Radiology. 1984;150(1):201-5. PubMed
- Kamel IR, Berkowitz JF. Assessment of the cortical rim sign in posttraumatic renal infarction. J Comput Assist Tomogr. 1996;20(5):803-6. PubMed
- Saunders HS, Dyer RB, Shifrin RY, et al. The CT nephrogram: implications for evaluation of urinary tract disease. Radiographics. 1995;15(5):1069-85; discussion 1086-8. PubMed
- Spiesecke P, Münch F, Fischer T, et al. Multiparametric ultrasound findings in acute kidney failure due to rare renal cortical necrosis. Sci Rep. 2021;11(1):2060. PubMed
- Jeong JY, Kim SH, Sim JS, et al. MR findings of renal cortical necrosis. J Comput Assist Tomogr. 2002;26(2):232-6. PubMed
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