
先に結論:腎リンパ腫は二次性が多く、5つの画像パターンがある。乏血性で均一な腫瘤・血管を巻き込まない・全身の病変が手がかりで、鑑別が難しければ生検
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 頻度 | 原発性は節外性リンパ腫の1%未満と稀。二次性は剖検で多く見つかるが、画像で異常が分かるのは病期診断の3〜8%程度 |
| 画像パターン | 多発結節、単発の腫瘤、後腹膜リンパ節からの直接浸潤、びまん性の腎腫大、腎周囲の軟部影(ほかに腎洞型がごく稀) |
| CT・MRIの特徴 | 腎皮質より造影効果が弱く均一。MRIではT2で等〜低信号、DWIで拡散制限を示す |
| 腎細胞癌との違い | 淡明細胞型は多血性で不均一になりやすいのに対し、リンパ腫は乏血性・均一。ただし乳頭状腎細胞癌などの乏血性腫瘍は似る |
| 生検 | 全身性リンパ腫が背景にない場合など、診断が決まらないときに画像ガイド下生検を考える。治療は化学療法が中心で腎摘除ではない |
腎リンパ腫とは
原発性は稀、二次性が多い
リンパ腫は節外の臓器にも広がり、泌尿生殖器では腎臓がもっとも多く侵される臓器です(Sheth 2006)。ただし、腎臓だけに病変がある原発性腎リンパ腫は、節外性リンパ腫の1%未満と稀です(Nguyen 2022)。0.7%という報告もあります(Bokhari 2020)。
二次性(全身のリンパ腫が腎臓に及ぶもの)は、後腹膜のリンパ節からの直接の広がりや、血流に乗った広がりで起こり、剖検では最大38%に見つかるとされます。ところが画像で腎臓の異常が分かるのは、病期診断のCTを受ける人の3〜8%にとどまります(Nguyen 2022)。腎臓の病変は無症状のことが多く、腎臓の画像所見が病期や治療方針を変える場面も多くはありません。
悪性リンパ増殖性疾患の668人を調べた報告では、腎臓への浸潤は非ホジキンリンパ腫で3.0%(364人中11人)、白血病で4.9%(101人中5人)、多発性骨髄腫で1.2%、ホジキンリンパ腫の41人にはありませんでした(Bach 2012)。
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| 原発性腎リンパ腫 | 腎臓に限られ、広範なリンパ節病変がない。非ホジキンリンパ腫で、きわめて稀(Bokhari 2020) |
| 二次性腎リンパ腫 | 全身のリンパ腫の一部として腎臓に病変がある。後腹膜リンパ節や脾臓など、他の部位に病変があることが多い(Nguyen 2022) |
症状と検査の選び方
多くは症状がありませんが、側腹部痛・血尿・発熱・寝汗が出ることがあります。びまん性に腎臓が侵されると、まれに急性腎障害で見つかることもあります。治療でリンパ腫が改善すると腎機能も良くなりますが、元の状態までは戻らないことが多いとされます(Nguyen 2022)。
検査は、造影CTが検出・診断・病期診断・治療効果の判定の基本で、ヨード造影剤が使えない人ではMRIが役立ちます。超音波はCTやMRIより検出が劣ります(Sheth 2006)。CTでは、腎実質相(ネフログラフィック相)が小さな病変の検出に重要です(Nguyen 2022)。リンパ腫全体の病期診断にはPET/CTが標準で、腎臓の病変も強いFDG集積を示します(Nguyen 2022)。
画像パターン:5つ(+腎洞型)に分けて考える
腎リンパ腫は、(1)多発する腫瘤、(2)単発の腫瘤、(3)後腹膜リンパ節からの直接浸潤、(4)腎周囲の病変、(5)びまん性の腎腫大(nephromegaly)に分けて整理されます。このほかに、腎洞(腎臓の中心の脂肪と腎盂のある部分)を主に侵す腎洞型がありますが、非常に稀です(Nguyen 2022)。パターンの頻度は報告によって異なり、後で示す表はあくまで目安です。
| パターン | 報告された頻度 | 画像の特徴 | 主な鑑別 |
|---|---|---|---|
| 多発する腫瘤 | 約50〜60%(最多) | 両側に多いが片側のこともある。均一な充実性の結節で、造影効果は弱い | 転移(肺・乳腺・胃・メラノーマ)、多発する乳頭状・嫌色素性の腎細胞癌、腎盂腎炎・膿瘍・梗塞、IgG4関連腎臓病 |
| 単発の腫瘤 | 約10〜25% | 低増強の単発腫瘤。後腹膜リンパ節腫大・脾病変があれば手がかり | 乏血性の腎細胞癌、転移、限局性腎盂腎炎・膿瘍 |
| 直接浸潤 | 約25〜30% | 大きな後腹膜腫瘤が腎臓を圧排・浸潤。水腎症になりやすい | 後腹膜肉腫、IgG4関連疾患、後腹膜線維症 |
| びまん性腫大 | 約20% | 腎臓の形を保ったまま大きくなり、皮髄境界が消える。造影は不均一 | 尿路上皮癌、髄質癌、重症の腎盂腎炎 |
| 腎周囲病変 | 10%未満 | ゲロタ筋膜の肥厚、腎周囲脂肪内の結節、腎を取り巻く軟部影 | 肉腫、転移、後腹膜線維症、アミロイドーシス、髄外造血 |
数字は総説のものです(Nguyen 2022)。一方、実際の症例集積では違う割合が報告されています。29人の腎・腎周囲リンパ腫のCTを見た古典的な報告では、59%に両側の腎腫瘤があり、28%は大きな後腹膜リンパ節に連続する単発病変、3人は腎周囲浸潤で、病変は腫瘤を伴わないびまん性の浸潤だけの例はありませんでした(Cohan 1990)。同じ報告で腎浸潤がみられた人の内訳は、孤立性の病変が6人、びまん性の腎腫大が5人、腎周囲病変が4人、直接浸潤が2人で、多発病変は多くありませんでした(Bach 2012)。パターンは1つに決まらず、同じ人に混在するので、型にはめすぎないことが大切です。
症例 多発する腎リンパ腫(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)

引用:Nguyen T, Gupta A, Bhatt S. Insights Imaging 2022;13:131(Figure 1)(CC BY 4.0)
引用した図は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫が既に分かっている人の右腎です。造影CT(a)では、右腎に小さな低増強の腫瘤が複数あり(矢印)、FDG-PET/CTの融合画像(b)で、これらの腫瘤にFDGの集積があり、リンパ腫として矛盾しないと説明されています(Nguyen 2022)。
症例 びまん性に腫大した腎リンパ腫(辺縁帯リンパ腫)

引用:Nguyen T, Gupta A, Bhatt S. Insights Imaging 2022;13:131(Figure 6)(CC BY 4.0)
引用した図は、単純CTの冠状断です。左腎がびまん性に腫大して腫瘍に置き換わっており、腎盂腎杯が巻き込まれて変形しています(矢頭)。病理で辺縁帯リンパ腫と確認されたと説明されています(Nguyen 2022)。
CT・MRIでの特徴:乏血性で均一、血管を巻き込まない
腎リンパ腫の腫瘤は、造影CTで腎皮質より造影効果が弱く、均一なことが多い病変です(Nguyen 2022)。単純CTでは腎実質よりやや高吸収になる傾向があります。MRIでは、T1強調像で低信号、T2強調像で腎皮質と比べて等〜低信号を示し、造影では腎実質より弱く、遅い時相で徐々に染まることがあります(Nguyen 2022)。
DWIでは、拡散制限(ADCマップで低値)を示します。61歳の症例報告では、リンパ腫の病変は軽い造影効果と拡散制限を示しました。ADC値は、とくに造影を使わない撮像で腎の局所病変を見つけるのに役立つ可能性があり、乏血性の腎腫瘤(乳頭状腎細胞癌・嫌色素性腎細胞癌・尿路上皮癌・転移など)の一部を区別できるかもしれませんが、さらなる検討が必要とされています(Nguyen DD 2013)。DWIとADC値は、補助的な情報として使うのが妥当です。
もう1つの手がかりは血管の扱いです。リンパ腫は血管を押しのけることが多く、血管の内部へ浸潤して詰まらせることは少なく、腎静脈や下大静脈の血栓は非典型です。大きな後腹膜病変があっても、腎動脈の血流と太さが保たれることが、リンパ腫に特徴的とされます(Nguyen 2022)。
腎細胞癌との見分け方
腎リンパ腫は腎細胞癌に似ることがあり(Ganeshan 2013)、腎リンパ腫と診断して化学療法を行うか、腎細胞癌として手術をするかで、治療が大きく違います。
| 項目 | 腎リンパ腫 | 淡明細胞型腎細胞癌 | 乳頭状腎細胞癌 |
|---|---|---|---|
| 造影効果 | 乏血性で均一、皮質より弱い | 多血性で不均一(壊死・嚢胞変性・出血) | 乏血性(リンパ腫に似る) |
| 血管への影響 | 血管を圧排・取り囲むが、腎静脈・下大静脈の腫瘍栓は稀 | 腎静脈・下大静脈へ進展しやすい | 総説に比較の記載なし |
| その他の手がかり | 多発、後腹膜リンパ節腫大、脾臓などの他臓器の病変。FDG集積が強い | MRIで逆位相の信号低下(腫瘍内の微小な脂肪が最大約6割) | 乏血性で低増強の腫瘤になり、リンパ腫に似る |
淡明細胞型は腎細胞癌の65〜80%を占め、造影で強く不均一に染まり、腎静脈・下大静脈へ進展しやすいのが特徴で、リンパ腫の均一な低増強とは違います。乳頭状腎細胞癌は腎細胞癌の10〜15%で、低増強の腫瘤となり、リンパ腫に似ます(Nguyen 2022)。それぞれの画像は淡明細胞型腎細胞癌のCT・MRI、乳頭状腎細胞癌のCT・MRIで解説しています。決め手がないときは、次の生検が必要になります。
そのほかの鑑別
多発する腫瘤では、転移(肺・乳腺・胃・メラノーマなど)と、炎症などの良性疾患が問題になります。腎周囲や後腹膜の病変では、後腹膜の腫瘍や線維化との区別も必要です。
| 鑑別 | ポイント |
|---|---|
| 腎盂腎炎・腎膿瘍 | 排尿痛・発熱・尿検査などの臨床情報が決め手。CTで縞状の造影(striated nephrogram)や、リング状に造影される膿瘍。経過で瘢痕化する。急性腎盂腎炎・AFBN・腎膿瘍も参照 |
| IgG4関連腎臓病 | 両側の皮質の楔状・円形の低吸収。膵臓の病変を伴うことがあり、ステロイドで改善する |
| 髄外造血 | 貧血の強い人で、均一な腎の腫瘤が多発。脾腫がヒント。生検で確認 |
| 後腹膜線維症 | 大動脈などを持ち上げずに取り囲み、尿管が内側へ引かれる。リンパ腫は大動脈・下大静脈を前方へ持ち上げやすい。後腹膜線維症のCT・MRIも参照 |
| 尿路上皮癌 | 腎盂を中心に浸潤し、びまん性の腎腫大に見えることがある |
(以上は Nguyen 2022 の整理による。)リンパ腫の画像診断は、他の臓器にも共通する点があります。膵臓の例は膵悪性リンパ腫の画像診断で説明しています。
生検の位置づけ
全身に広がったリンパ腫を背景に腎臓の病変が出た場合を除くと、画像ガイド下の経皮的生検で、リンパ腫を転移、乏血性の腎細胞癌、尿路上皮癌、非典型の感染と区別することが適応とされます。超音波ガイド下が通常用いられます。免疫組織化学染色の進歩で、リンパ腫の診断と分類を正確に行えるようになり、不要な腎摘除を避けられると述べられています(Sheth 2006)。生検を提案するのは画像診断医の役割とされます(Ganeshan 2013)。
リンパ腫の治療は化学療法が中心で、腎摘除ではありません(Nguyen 2022)。確定診断と治療方針は、血液内科・泌尿器科・病理を含めて決めます。
健診などで腎臓に影を指摘されたときは、自己判断せずに、医療機関で精密検査を受けてください。
よくある疑問(Q&A)
Q. 腎リンパ腫は腎臓がんの一種ですか?
A. いいえ、腎臓の細胞のがんではなく、リンパ球のがんである悪性リンパ腫が腎臓に病変を作ったものです。腎細胞癌と画像が似ることはありますが、治療は違います(Nguyen 2022)。
Q. 画像だけで腎リンパ腫と診断できますか?
A. 全身のリンパ腫が分かっていて、典型的な画像であれば、画像で強く疑えます。腎臓だけの病変や、乏血性の腎細胞癌に似る場合は、生検を提案します(Sheth 2006、Ganeshan 2013)。
Q. 腎機能は悪くなりますか?
A. 多くは無症状ですが、びまん性に腎臓が侵されると急性腎障害を起こすことがあります。治療で腎機能が改善する人もいますが、元の状態に戻らないことが多いとされます(Nguyen 2022)。
Q. 原発性と二次性は、どう区別しますか?
A. 腎臓以外に広範なリンパ節病変がないことを病期診断(CT・PET/CTなど)で確認して、原発性とされます(Bokhari 2020)。原発性は非常に稀です。
参考文献
- Sheth S, Ali S, Fishman E. Imaging of renal lymphoma: patterns of disease with pathologic correlation. Radiographics. 2006;26(4):1151-68. PubMed
- Ganeshan D, Iyer R, Devine C, et al. Imaging of primary and secondary renal lymphoma. AJR Am J Roentgenol. 2013;201(5):W712-9. PubMed
- Cohan RH, Dunnick NR, Leder RA, et al. Computed tomography of renal lymphoma. J Comput Assist Tomogr. 1990;14(6):933-8. PubMed
- Bach AG, Behrmann C, Holzhausen HJ, et al. Prevalence and patterns of renal involvement in imaging of malignant lymphoproliferative diseases. Acta Radiol. 2012;53(3):343-8. PubMed
- Nguyen T, Gupta A, Bhatt S. Multimodality imaging of renal lymphoma and its mimics. Insights Imaging. 2022;13(1):131. PubMed
- Nguyen DD, Rakita D. Renal lymphoma: MR appearance with diffusion-weighted imaging. J Comput Assist Tomogr. 2013;37(5):840-2. PubMed
- Bokhari SRA, Inayat F, Bokhari MR, et al. Primary renal lymphoma: a comprehensive review of the pathophysiology, clinical presentation, imaging features, management and prognosis. BMJ Case Rep. 2020;13(6). PubMed
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