下肢静脈瘤のエコー 立位で逆流の入口を探す

足の血管がボコボコしてきたので受診したら、「エコーで静脈の逆流を調べましょう」と言われました。立ったまま検査をすると聞いて驚いたのですが、なぜ立つのですか?血栓を調べるエコーとは違うのでしょうか?
静脈瘤は、静脈の弁が壊れて血液が逆戻り(逆流)することで起こります。逆流は体重がかかる立位で出やすいため、立って調べます。血栓を探す検査は、血管をつぶして調べる別の手順です。検査で何を見ているのか、大伏在静脈と小伏在静脈の違いを含めて整理します。

先に結論:下肢静脈瘤のエコーは「立位で、逆流の有無と場所を調べる」検査

項目 ポイント
目的 どの静脈で、どこから逆流しているかを調べる(治療方針を決めるため)
体位 できるだけ立位。立てなければ頭を高くした逆トレンデレンブルグ位
逆流の目安 表在の静脈で0.5秒以上の逆流。大腿静脈・膝窩静脈など深部は1秒を超える逆流
見る静脈 大伏在静脈(太ももの内側)、小伏在静脈(ふくらはぎの後ろ)、枝、交通枝、深部静脈
血栓との違い 血栓は「つぶれるか」(圧迫法)、静脈瘤は「逆流するか」(立位・ミルキング)を見る

下肢静脈瘤とエコーの役割

下肢静脈瘤は、足の表在静脈が拡張して曲がりくねった状態で、慢性静脈疾患の代表的な病気です(Chung 2024)。静脈には血液を心臓へ向けて流す弁があり、この弁がうまく働かないと血液が下へ逆戻りします。これが静脈逆流です。

血管の拡張や逆流の有無・場所は、診察だけでは決められません。超音波(エコー)は、静脈の大きさ、逆流、閉塞、流れのパターンを表在静脈・深部静脈の両方で調べられる検査で、静脈瘤の診断と治療計画の中心になります(Chung 2024)。静脈瘤の診断は、病歴、診察、デュプレックス(Bモードとドプラを組み合わせたエコー)の3つで進めるのが基本です(Spinedi 2017)。

エコーの基本的な用語はエコー(超音波)検査の基礎で解説しています。

下肢の静脈の構成

種類 名前 メモ
表在静脈 大伏在静脈(GSV)、小伏在静脈(SSV) 筋膜より浅い。静脈瘤の主な舞台
深部静脈 総大腿静脈、大腿静脈、膝窩静脈、下腿の静脈 筋膜より深い。血栓症(DVT)が起こる
交通枝 表在と深部をつなぐ静脈 血液は本来、表在から深部へ流れる

下肢の静脈は、深部静脈・表在静脈・交通枝(穿通枝)の3つに分けられます(Lee 2017)。大伏在静脈は足首の内側から太ももの内側を上がり、鼠径部で総大腿静脈に合流します。この合流部が伏在大腿静脈接合部(SFJ)です。小伏在静脈は足首の外側からふくらはぎの後ろを上がり、膝の裏の伏在膝窩静脈接合部(SPJ)で膝窩静脈に合流します(Lee 2017)。

検査のやり方:体位と測り方

体位と機器

下肢静脈瘤のエコーは、できるだけ立った状態で行うことが勧められています。立てない場合は逆トレンデレンブルグ位(頭を高くした姿勢)でも行えます。検査する脚には体重をかけない状態にします(Lee 2017)。5〜16MHzの高周波リニアプローブが推奨され、検査は鼠径部のSFJのすぐ近くの総大腿静脈から始めます(Chung 2024)。

どの静脈をどの高さで見るか

見る場所 ポイント(Chung 2024)
総大腿静脈・SFJ 逆流の起点。ここから検査を始める
大伏在静脈 太ももの近位部と膝の高さ
前副伏在静脈 大伏在静脈の前外側の枝(AASV)
小伏在静脈・SPJ SPJ、またはふくらはぎの近位部
深部静脈 総大腿静脈、大腿静脈、膝窩静脈

画像は短軸(横断)と長軸(縦断)の両方で撮ります。血管の周囲の構造、径、血栓の有無は短軸で見やすく、逆流を調べるには長軸が適しています。記録には静脈の名前、場所、径(前壁から後壁まで)、逆流などの所見を残します(Chung 2024)。

大伏在静脈の「Egyptian eye」

大伏在静脈は、筋膜(深い側)と伏在筋膜(浅い側)の間にある伏在コンパートメントの中を走ります。短軸像では、エジプトの目のような形に見えるため「Egyptian eye」と呼ばれます。ただし、枝がコンパートメントの外を走ったり、下の方の大伏在静脈が低形成・欠損したりと、バリエーションも多いとされています(Lee 2017)。コンパートメントの中の本幹と、外の太い枝を見間違えないことが、治療の対象を決めるうえで大切です。

逆流の調べ方と判定

逆流は、ミルキング(下腿を手でつかんで締め、離す)や、バルサルバ手技で誘発します。総大腿静脈とSFJにはバルサルバ手技またはミルキング、より遠位の静脈にはミルキングやカフの加圧・解除を使います(Chung 2024)。カラードプラで逆向きの流れを確認したら、スペクトルドプラで波形を計測します。誘発したときの波形(augmentation)と、逆流の波形は、ベースラインの反対側に描かれます(Chung 2024)。

静脈 病的な逆流の目安(Chung 2024)
大伏在・小伏在・副伏在静脈、下腿の静脈、深大腿静脈、交通枝 逆流が500msを超える
総大腿静脈、大腿静脈、膝窩静脈 逆流が1秒を超える
病的な交通枝(静脈瘤のある患者) 外向きの流れが500ms以上かつ径が3.5mmを超える

引用図 大伏在静脈の逆流(スペクトルドプラ)

大伏在静脈の逆流 カラードプラとスペクトルドプラ
引用:Chung JH, Heo S. J Chest Surg 2024;57(2):109-119 (Figure 2)(CC BY-NC 4.0)

右大伏在静脈の中部の長軸像です。カラードプラで逆向きの流れを確認し、スペクトルドプラの波形を計測しています。図の説明では、誘発による波形(augmentation)と逆流の波形が、ベースラインの反対側にはっきり分かれて描かれていると記載されています。

逆流時間と径の落とし穴

逆流時間は、表在静脈で0.5秒を基準とする方法が最もよく使われます。ただし、逆流時間は症状や重症度との相関が弱く、逆流があるかないかを判断する「質的」な指標として使うのが適切とされています(Skoog 2026)。

静脈の径についても同様です。大伏在静脈の径は逆流のある脚で大きい傾向があります。807肢の検討では、逆流を示す径の最適な基準は太ももの近位部で3.8mm、遠位部で2.8mmなどでしたが、ROC曲線下の面積は0.59〜0.69と精度が低く、径だけで逆流の有無を決めてはいけないと結論されています(Panpikoon 2022)。径は、逆流の場所を見つけたあとの補助情報として使います。

大伏在静脈と小伏在静脈の逆流

逆流の「入口」を知ることが、治療を選ぶ前提になります。

見るところ 大伏在静脈(GSV) 小伏在静脈(SSV)
場所 太ももから膝の内側、鼠径部のSFJまで ふくらはぎの後ろ、膝の裏のSPJまで
逆流の入口 SFJの弁の機能不全が代表 SPJからの逆流が多いが、別の入口もある
注意 前副伏在静脈、コンパートメント外の枝との区別 SPJは変異が多い(欠損や低形成も)

症例の見かた 小伏在静脈の画像

小伏在静脈のエコー ふくらはぎ短軸像と伏在膝窩静脈接合部の長軸像
引用:Lee DK, et al. Ultrasonography 2017;36(2):120-130 (Figure 8)(CC BY-NC 3.0)

ふくらはぎの後ろでは、小伏在静脈は腓腹筋の中央付近、筋膜に囲まれた部分に見えます(図B)。長軸像では、小伏在静脈が膝窩静脈に合流する部分を確認します(図C)。図の説明では、この付近はバリエーションが多く、伏在膝窩静脈接合部が欠損または低形成のこともあると記載されています。

小伏在静脈の不全1,142肢を調べた検討では、膝窩静脈から小伏在静脈への逆流が86%でした。一方で、SPJが正常なのに小伏在静脈の頭側への延長部(Giacomini静脈)だけが逆流の原因だったものが10%、側枝や交通枝から広く逆流していたものが3%ありました(Veltman 2023)。小伏在静脈が逆流しているように見えても、「入口がSPJとは限らない」ことを意識して調べます。

治療前に確かめること

静脈瘤の治療には、焼灼(熱や薬剤で静脈をふさぐ方法)や手術があります。どの方法がよいかは、エコーで確認した逆流の範囲と静脈の構造をもとに、血管外科などの専門医が決めます(Skoog 2026)。米国の血管外科学会などの2022年のガイドライン(Part I)は、静脈瘤(CEAPのC2)の評価にデュプレックスを用いることを含めて推奨をまとめています(Gloviczki 2023)。

確認すること なぜ大切か
逆流の入口(SFJ・SPJ・枝・交通枝) どこを治療するか決める
逆流している範囲と本幹の径・走行 治療の対象の選択と計画のため
深部静脈の逆流・閉塞(血栓) 深部の異常があると、表在静脈の役割が変わる
バリエーション(副伏在静脈、欠損、重複) 見落としや誤認を防ぐ

深部静脈血栓症(DVT)の検査との違い

脚の腫れや痛みで受診した場合、DVTの検査と静脈瘤の検査は目的も手技も違います。

項目 静脈瘤(逆流)の検査 DVTの検査
見たいもの 弁の不全による逆流、静脈の径 静脈の中の血栓
体位 立位(逆トレンデレンブルグ位でも可) 仰向けか半座位(逆トレンデレンブルグ位も推奨)。股関節を外旋し膝を軽く曲げて筋の緊張を抜く(Lee 2017)
中心の手技 ミルキング・バルサルバで逆流を誘発 探触子で血管をつぶす圧迫法(3〜4cmごと)
陽性所見 0.5秒(深部は1秒)を超える逆流 つぶれない静脈、内部の血栓

正常な静脈は、探触子で押すとつぶれます(Lee 2017)。DVTの検査では血管を3〜4cmごとに圧迫して調べます(Lee 2017)。DVTが疑われる患者さんでの診断精度は、近位の圧迫エコーで感度90.1%・特異度98.5%、下肢全体のエコーで感度94.0%・特異度97.3%と報告されています(Bhatt 2020)。血栓を探すときと逆流を調べるときでは検査の意図が違うので、依頼箋の目的を確認することが大切です。画像の偽の信号に注意が必要な場面は超音波(エコー)のアーチファクトが参考になります。

太ももの内側や外陰部・臀部の静脈瘤で、伏在静脈に逆流がないときは、骨盤内の静脈が関係していることがあります。骨盤内うっ血症候群も参照してください。足の急な腫れや強い痛みがあるときは、早めに医療機関を受診してください。

よくある疑問(Q&A)

Q. なぜ立った状態で検査するのですか?
A. 静脈の逆流は重力がかかる立位で出やすく、寝ていると見逃すことがあるためです。立てない場合は逆トレンデレンブルグ位でも行えます(Chung 2024)。

Q. 逆流が0.5秒以上あれば、すぐ治療が必要ですか?
A. 0.5秒は逆流の有無を判断する基準で、症状の強さや重症度とは相関が弱いとされています(Skoog 2026)。治療が必要かどうかは、症状、皮膚の変化、逆流の範囲などを合わせて医師が判断します。

Q. 血管が太ければ逆流していますか?
A. 逆流のある静脈は太い傾向にありますが、径だけでは逆流の有無を正確に判断できないと報告されています(Panpikoon 2022)。

Q. 静脈瘤のエコーでDVTも分かりますか?
A. 逆流を調べる検査には深部静脈も含まれますが、血栓の評価には圧迫法が使われます。DVTが疑われるときは、その目的を伝えて検査を受けてください(Bhatt 2020、Lee 2017)。

あわせて読みたい:カテーテル検査後の穿刺部合併症

参考文献

  1. Chung JH, Heo S. Varicose Veins and the Diagnosis of Chronic Venous Disease in the Lower Extremities. J Chest Surg. 2024;57(2):109-119. PubMed
  2. Lee DK, Ahn KS, Kang CH, et al. Ultrasonography of the lower extremity veins: anatomy and basic approach. Ultrasonography. 2017;36(2):120-130. PubMed
  3. Skoog J, Nelzén O, Zachrisson H. Quantitative duplex ultrasound assessment of superficial venous incompetence: A state-of-the-art review. Vasc Med. 2026;31(3):392-399. PubMed
  4. Panpikoon T, Metheekul P, Treesit T, et al. Diameter-reflux relationship of the saphenous vein in the C0-C3 patients of chronic venous disease. Phlebology. 2022;37(6):439-444. PubMed
  5. Veltman HJ, Zollmann P, Zollmann M, et al. Reflux origin of the insufficient small saphenous vein by duplex ultrasound determination and consequences for therapy considering the saphenopopliteal junction type. J Vasc Surg Venous Lymphat Disord. 2023;11(6):1114-1121. PubMed
  6. Bhatt M, Braun C, Patel P, et al. Diagnosis of deep vein thrombosis of the lower extremity: a systematic review and meta-analysis of test accuracy. Blood Adv. 2020;4(7):1250-1264. PubMed
  7. Spinedi L, Broz P, Engelberger RP, et al. Clinical and duplex ultrasound evaluation of lower extremities varicose veins – a practical guideline. Vasa. 2017;46(5):325-336. PubMed
  8. Gloviczki P, Lawrence PF, Wasan SM, et al. The 2022 Society for Vascular Surgery, American Venous Forum, and American Vein and Lymphatic Society clinical practice guidelines for the management of varicose veins of the lower extremities. Part I. Duplex Scanning and Treatment of Superficial Truncal Reflux: Endorsed by the Society for Vascular Medicine and the International Union of Phlebology. J Vasc Surg Venous Lymphat Disord. 2023;11(2):231-261.e6. PubMed

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