副鼻腔・頸部のX線 Waters法と頸部側面像の見方

副鼻腔のレントゲン(Waters法)や、頸部の軟部X線の画像を渡されました。CTがある時代に、どこを見ればいいのでしょうか?
どちらも短時間で撮れて、見る場所が決まっている検査です。ただし限界もはっきりしています。Waters法では上顎洞と眼窩底、頸部側面像では気道と椎体の前の軟部組織を、決まった順で見るのがコツです。

先に結論:Waters法は「上顎洞の含気と液面、眼窩底」、頸部側面像は「気道と椎前軟部組織、ガスと異物」を見る

項目 ポイント
Waters法で見る所 上顎洞の含気(左右差)、粘膜肥厚、液面形成、眼窩下縁と眼窩底、前頭洞
限界 上顎洞でも感度は約7割。篩骨洞・前頭洞・蝶形骨洞の評価は苦手で、異常があればCTへ
副鼻腔炎の診断 診断基準を満たす急性副鼻腔炎では、合併症や別の病気を疑わない限り画像検査は勧められない
頸部側面像で見る所 気道の幅と偏位、椎体の前の軟部組織の厚み、軟部組織内のガス、異物、椎体の並び
注意 単純X線は「異常を見つける」検査。正常に見えても病気を否定する根拠にはならない

副鼻腔X線は、今どんな位置づけか

副鼻腔の評価の中心はCTとMRIです。米国放射線学会(ACR)の適正使用基準(2021年改訂)では、副鼻腔疾患の初期画像検査の主役はCTとMRIとされ、CTは骨の構造と副鼻腔の炎症、骨びらん、解剖学的変異を正確に示し、MRIは頭蓋内や眼窩内の合併症や腫瘍の進展を評価するのに向くと説明されています(ACR 2022)。

急性副鼻腔炎は診断基準を満たす場合、合併症や別の病気が疑われない限り、画像検査(X線)を撮らないことが推奨されています(Rosenfeld 2015)。診断は症状と診察が中心で、画像は「確認のため」というより、合併症や腫瘍を疑ったときの道具です。それでも救急外来や外来で撮影された副鼻腔X線を読む場面は残っているので、見える範囲と見えない範囲を理解しておくことが大切です。

Waters法で何が見えるか

撮影法と、見える洞・見えない洞

Waters法(後頭顎方向の撮影)は、顔を少し上に向けて撮ることで、上顎洞と眼窩底が頭蓋底の骨と重なりにくいように映す撮影法です。副鼻腔X線は、正面像、Waters法、側面像の組み合わせで見るのが基本です。

撮影 評価しやすい所
正面像(後前方向) 鼻腔、篩骨洞、前頭洞
Waters法 上顎洞、前頭洞、眼窩(眼窩底・眼窩下縁)
側面像 上顎洞、前頭洞、蝶形骨洞。アデノイド、口蓋扁桃、上咽頭・中咽頭の気道も見える

とはいえ、側面像でも副鼻腔の正確な評価は難しいことが多いとされます。

実際の精度:上顎洞はそれなりに、他の洞は不得手

Waters法1枚とCTを比べた134人の研究では、上顎洞の異常を見つける感度は67.7%、特異度87.6%、正確度78.6%でした。前頭洞と篩骨洞の評価は読影者によってばらつきが大きく、他の洞の診断への貢献は非常に低いと結論されています(Konen 2000)。救急外来で急性副鼻腔炎と診断された30人でも、X線の感度は読影者によって48〜67%で、CTで篩骨洞4つ、前頭洞5つ、蝶形骨洞5つに異常があったのに、X線では一つも指摘されませんでした(Burke 1994)。

つまり、上顎洞は「写っていれば参考になる」、篩骨洞・前頭洞・蝶形骨洞は「写っていなくても何も言えない」と考えるのが実際的です。副鼻腔の細かい解剖はCTで見るので、副鼻腔CTの正常解剖と見方を参考にしてください。

Waters法を読む順番

手順 見ること
① 撮影の質 顔が傾いていないか(左右の眼窩・上顎洞の形が対称か)。傾くと洞の左右差が偽物になる
② 上顎洞の含気 左右で黒さを比べる。白く濁る(含気消失)、壁が厚く見える(粘膜肥厚)
③ 液面形成 洞の中に水平な線があるか。座位・立位で撮らないと見えない
④ 骨の輪郭 洞の壁や眼窩下縁が途切れていないか(骨折・骨破壊)
⑤ 前頭洞・鼻腔・鼻中隔 前頭洞の含気、鼻中隔の偏り。ただし評価には限界がある

急性炎症を強く示唆するのは液面形成(air-fluid level)で、透過性の低下や粘膜肥厚だけでは急性か慢性か決められません。慢性副鼻腔炎では単純X線の役割は小さく、治療方針に直結するCTでの評価が優先されます。頭蓋骨の縫合や血管溝を骨折と見間違えないために、頭蓋骨のレントゲンの見方も役立ちます。

症例 40歳代男性 上顎洞の含気消失

Waters法 片側上顎洞の含気消失
引用:Radiopaedia(Opacified maxillary sinus)

Waters法で片側の上顎洞が白く、含気が消失しています。症例ページでは、反対側の上顎洞と前頭洞は含気が保たれ、骨破壊、鼻中隔の偏位、眼窩の骨の異常はないと記載されています。片側だけの上顎洞の含気消失は、副鼻腔炎のほかに粘液嚢胞、ポリープ、腫瘍の浸潤が考えられるため、CTによる精査が必要とされています。

顔面外傷のWaters法:眼窩底を見る

眼窩は顔面外傷で副鼻腔とともに損傷しやすい部位で、吹き抜け骨折では眼窩底(あるいは内側壁)が折れて、眼窩内の組織が上顎洞や篩骨洞に出ます。Waters法では、眼窩底、上顎洞、骨の透過性の変化を丁寧に見ます。上顎洞の混濁(出血)、眼窩下縁の段差、洞内に垂れ下がる軟部組織の陰影が手がかりです。

吹き抜け骨折の92例(手術で確認)では、眼窩の線(眼窩内側壁などの骨の縁を結ぶ線)の乱れを単純写真で見ると、紙様板の骨折53例のうち47例(88.7%)で異常が見えました。眼窩底と内側壁の両方が折れた25例は全例で線の変化がありました。紙様板の骨折のうち単純写真が正常だった4例は、骨折が9mm未満の小さなものでした(Kim 2000)。小さな骨折は単純写真では分からないため、眼球運動の制限や複視があれば、X線が正常でもCTに進みます。CTでは冠状断の再構成が必要です。骨折の種類と画像は顔面骨折の種類と症状・CT画像診断で整理しています。

頸部軟部X線(側面像)の見方

頸部の軟部組織X線は、咽頭・喉頭・気道と、椎体の前の軟部組織(椎前軟部組織)を見る検査です。軟部組織を見る条件で撮影し、正面像と側面像の2方向を撮るのが基本です。側面像は、息を吸ったときに撮れているかを確認することが大切で、呼気や頸を前に曲げた姿勢では軟部組織が厚く見えます。

手順 見ること
① 気道 咽頭から気管の空気の柱が、前に押されたり細くなったりしていないか
② 椎前軟部組織 咽頭の後ろ(咽頭後間隙)から椎体前縁までの厚み。厚くなっていないか
③ 軟部組織のガス 厚くなった軟部組織の中に空気の小さな泡がないか(ガス産生性の膿瘍)
④ 異物 骨片、金属、石灰化した陰影。喉頭軟骨の石灰化との区別
⑤ 椎体の並び 椎体前縁線・後縁線・棘突起椎弓線(spinolaminal line)が連続しているか

椎前軟部組織の厚み

椎前軟部組織の厚みは、膿瘍や血腫を調べる目安になります。正常の人54人で、第5頸椎(C5)の椎体の前後径と比べると、輪状軟骨の後ろの軟部組織は「C5の径×0.7」以下、気管の後ろは「C5の径×1.0」以下でした。これは平均+1標準偏差で決めた目安で、超えたからといって病気と決まるわけではなく、さらに調べるサインとして使います(Chen 1999)。

頸椎のアライメントや、頸椎側面像での見方は頸椎レントゲンの見方で解説しています。

咽後膿瘍:椎前軟部組織の肥厚と気道の前方偏位

咽後膿瘍(咽頭後間隙の感染)は、側面像で椎体前方の軟部組織が厚くなり、気道が前に押されるのが典型で、肥厚した軟部組織の中にガスが見えることもあります。子どもに多い病気ですが、成人でも糖尿病や免疫が下がっている人で起こります。小児の救急外来で疑われた366枚の側面像の検討では、咽頭後間隙の感染に対する感度は84.3%、特異度は93.7%でした(Sao Pedro 2020)。

症例 50歳代女性 咽後膿瘍

咽後膿瘍 頸部側面X線 椎前軟部組織の肥厚とガス
引用:Radiopaedia(Retropharyngeal abscess)

頸部側面像で、椎体の前の軟部組織が大きく厚くなり、内部にガスの小さな泡が見えます。症例ページでは、C2からC7にわたる椎前軟部組織の著明な拡大と、C3-C4レベルの複数のガス像が記載されています。

異物:見える異物と見えにくい異物

咽頭・食道上部の異物が疑われるとき、軟部条件の側面像は、素早く簡単に撮れる検査です。成人では魚骨や鶏骨が多く、救急外来では下咽頭と頸部食道の上部の異物を70〜80%の割合で見つけられるとされます(Castán Senar 2017)。一方で、異物が映らないこともあり、椎前軟部組織の腫れは「放射線を通す異物や合併症があるかもしれない」という間接的な手がかりです。喉頭軟骨の石灰化の仕方は人によって違うため、異物と間違えないようにします(Castán Senar 2017)。

急性喉頭蓋炎やクループなど、小児の上気道の病気は子どもの上気道閉塞のレントゲンで詳しく説明しています。

CT・MRIに進む目安

場面 次に考える検査
眼球突出、複視、視力低下、強い頭痛など、眼窩や頭蓋内の合併症を疑う CT・MRI(MRIは軟部組織や頭蓋内の評価に向く)
片側の副鼻腔の含気消失、骨破壊、腫瘤を疑う CT、必要に応じてMRI
顔面外傷で眼球運動障害、複視、眼窩内の気腫 CT(冠状断の再構成)
頸部で膿瘍や異物の合併症、気道の狭窄が疑われる 臨床判断でCTなどを追加

(ACR 2022、Rosenfeld 2015、Kim 2000、Sao Pedro 2020)

よくある疑問(Q&A)

Q. 副鼻腔のレントゲンが「異常なし」なら、副鼻腔炎ではないのですか?
A. 上顎洞でも感度は約7割で、篩骨洞や前頭洞の病変はほとんど見つけられません(Konen 2000、Burke 1994)。診断は症状と診察で行い、X線が正常でも副鼻腔炎は否定できません。

Q. 副鼻腔炎のとき、レントゲンやCTは撮るべきですか?
A. 診断基準を満たす急性副鼻腔炎では、合併症や別の病気を疑わない限り画像検査は勧められていません(Rosenfeld 2015)。症状が長引く、眼や頭の症状がある、片側だけ悪いなどの場合に、CTやMRIが検討されます。

Q. 喉に魚の骨が刺さったとき、首のレントゲンで分かりますか?
A. 骨が映って見つかることもありますが、映らない場合もあります。のどの痛みや飲み込むときの違和感が続くときは、耳鼻咽喉科などの医療機関に相談してください。

Q. 頸部のX線は、頸椎の骨折の確認にも使えますか?
A. 頸椎側面像では椎体の並びと骨折を確認できますが、外傷後に神経症状などがあるときは、X線が正常に見えてもCTやMRIが検討されます。詳しい見方は頸椎レントゲンの記事を参照してください。

あわせて読みたい:眼窩の画像解剖(CT・MRI)、赤ちゃんの首のしこり(筋性斜頸)のエコー

参考文献

  1. Rosenfeld RM, Piccirillo JF, Chandrasekhar SS, et al. Clinical practice guideline (update): adult sinusitis. Otolaryngol Head Neck Surg. 2015;152(2 Suppl):S1-S39. PubMed
  2. Expert Panel on Neurological Imaging, Hagiwara M, Policeni B, et al. ACR Appropriateness Criteria® Sinonasal Disease: 2021 Update. J Am Coll Radiol. 2022;19(5S):S175-S193. PubMed
  3. Konen E, Faibel M, Kleinbaum Y, et al. The value of the occipitomental (Waters’) view in diagnosis of sinusitis: a comparative study with computed tomography. Clin Radiol. 2000;55(11):856-60. PubMed
  4. Burke TF, Guertler AT, Timmons JH. Comparison of sinus x-rays with computed tomography scans in acute sinusitis. Acad Emerg Med. 1994;1(3):235-9. PubMed
  5. Kim SH, Ahn KJ, Lee JM, et al. The usefulness of orbital lines in detecting blow-out fracture on plain radiography. Br J Radiol. 2000;73(876):1265-9. PubMed
  6. Chen MY, Bohrer SP. Radiographic measurement of prevertebral soft tissue thickness on lateral radiographs of the neck. Skeletal Radiol. 1999;28(8):444-6. PubMed
  7. Castán Senar A, Dinu LE, Artigas JM, et al. Foreign Bodies on Lateral Neck Radiographs in Adults: Imaging Findings and Common Pitfalls. Radiographics. 2017;37(1):323-345. PubMed
  8. Sao Pedro T, Scolnik D, Traubici J, et al. Utility of Soft Tissue Lateral Neck Radiographs in the Emergency Department: The 5-Year Experience of a Large Tertiary Care Pediatric Hospital. Pediatr Emerg Care. 2020;36(5):e254-e257. PubMed

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