
先に結論:金属の「周りの黒い線」と「位置の変化」を、過去画像と比べて見る
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| ゆるみのサイン | 金属と骨の境の透亮帯(黒い線)が広がる・連続する、金属の沈み込み・傾き・移動 |
| 感染との区別 | 画像だけでは分けにくい。感染でも透亮帯の拡大・骨溶解・ゆるみが出る |
| 周囲骨折 | 金属周囲の骨折は、ステムがゆるんでいるかどうかで治療が変わる |
| 金属の破損 | 骨がくっつかない(偽関節)状態が続くと、金属に負担がかかって折れることがある |
| CT・MRI | 金属のアーチファクトを減らす撮り方がある。MRIは入っている金属の安全性の確認が先 |
まず見るもの:レントゲンで金属の周りを順に見る
人工関節や骨折の固定に使うプレート・スクリュー・髄内釘(骨の中に入れる棒)などは、術後の経過を単純X線写真(レントゲン)で繰り返し撮って確かめるのが基本です。連続して撮った画像が評価の中心で、人工股関節では、金属の周りの骨と軟部組織について骨折・骨膜反応・骨吸収や骨溶解・金属の磨耗粉などを見ます。金属の移動・沈み込み・ゆるみは、過去の画像と比べることで最もよく確認できるとされます(Chang 2015)。
| 見る場所 | 確認すること |
|---|---|
| 金属と骨の境 | 透亮帯(黒い線)の有無・幅・連続性、前の画像より広がっていないか |
| 金属の位置・向き | 沈み込み・傾き・ずれ。スクリューの抜け出し・折れ |
| 金属自体 | ステム・プレート・スクリュー・釘に折れや亀裂がないか |
| 周囲の骨 | 骨折、骨溶解(骨が溶ける)、骨膜反応、骨がやせていないか |
| 骨折部(固定の場合) | 骨癒合が進んでいるか、骨折線が残っていないか |
| 関節の位置 | 脱臼、ライナー・骨頭の位置のずれ |
骨折そのものの見方は骨のレントゲンの見方に、脊椎術後の金属の合併症は脊椎術後の画像診断にまとめています。
ゆるみ:透亮帯の広がりと位置の変化
人工関節のゆるみ(loosening)は、金属と骨がしっかり固定されなくなった状態です。X線では、金属と骨(またはセメント)の間の透亮帯が広がる・連続する、金属が沈み込む・傾く・移動するといった所見で疑います。股関節では、大腿骨側をGruenの7つの区域、臼蓋側をDeLeeとCharnleyの3つの区域に分けて、どの区域に透亮帯があるかを記載します。
ここで注意が必要なのは、透亮帯があるだけでは異常と言えないことです。膝の人工関節の透亮帯をまとめた総説では、透亮帯は手術直後や早い時期から見られることがあり、進行せず症状もないことが多い一方、経過で徐々に広がり痛みを伴うものはゆるみにつながり得るとされています。症状のない透亮帯は、原因を考えながら、適切な画像で慎重に経過をみるとされています(Wautier 2020)。1枚の画像の黒い線ではなく、「広がっているか」「連続しているか」「痛みがあるか」で判断します。
| 見え方 | 考え方 |
|---|---|
| 細い透亮帯が一部のみ、以前から変わらない | 経過観察のことが多い。前の画像と比べる |
| 透亮帯が広がっている、複数の区域に連続している | ゆるみを疑う |
| 金属の沈み込み・傾き・移動がある | ゆるみを強く疑う。過去の画像で確かめる |
| 痛み・可動域の悪化を伴う | 画像の所見と合わせて精査(CTなど) |
痛みのある人工股関節49例の研究では、2mmを超える透亮帯が2区域以上にあるものを「ゆるみ」の診断基準として手術で確認しました。ゆるみは21例で、レントゲンの感度は33.3〜51.5%(2人の読影者)にとどまり、金属アーチファクトを減らしたCT(CT-MAR)は84.85%でした。特異度は、レントゲンもCT-MARも約95%以上と高く、読影者間の一致度はレントゲンが低く(κ=0.39)、CT-MARが高い(κ=0.84)という結果でした(Gillet 2019)。つまり、レントゲンで「ゆるみなし」と言われても、症状が強ければCTで確認する価値があります。
症例 男性 人工股関節のゆるみ

引用:Radiopaedia(Aseptic loosening of right hip implant)
右の人工股関節のステム周囲に、連続する透亮帯が見えます。症例ページでは、大腿骨ステムの4つのGruen区域に沿った連続する透亮帯があり、アセプティックなゆるみ(感染ではないゆるみ)として再置換術を受けたと記載されています。画像には各部位の幅(1.5〜2.2mm)が書き込まれています。
感染とゆるみは、画像だけでは分けにくい
人工関節周囲感染でも、ゆるみとよく似た所見が出ます。人工股関節の周囲感染のX線所見を整理した総説では、典型的な異常として骨膜反応、セメントまたは金属と骨の境の広い透亮帯、斑状の骨溶解、ゆるみ、金属周囲の骨吸収、骨皮質を貫く瘻孔が挙げられていますが、それぞれの頻度は十分に分かっていません。最近の合意会議では、感染が疑われる股関節のレントゲンは、感染以外の診断を除くために重要と位置づけられています(Hofmann 2024)。また、早期の感染や粒子病、金属への反応などは、レントゲンでは診断しにくいとされています(Chang 2015)。
| 疑う状況 | 画像の手がかり | 追加で行うこと |
|---|---|---|
| ゆるみ(感染ではない) | 透亮帯の拡大・沈み込み | CT、経過の比較 |
| 感染 | 骨膜反応、広い透亮帯、斑状の骨溶解、瘻孔。早期は画像で分かりにくい | 血液検査・関節液検査・核医学検査など(主治医の判断) |
| 摩耗粉による骨溶解(粒子病) | 金属周囲の骨溶解 | CTで範囲を確認 |
画像で決められない場合の追加検査(血液検査・関節液検査・核医学検査など)は、整形外科の主治医と検査施設が状況に応じて決めます。熱・腫れ・赤み・創部の排膿があれば、早めに受診してください。
人工関節周囲骨折
人工関節の周りに骨折が起こることがあります。大腿骨側の周囲骨折はVancouver分類(部位で大腿骨転子部A・ステム周囲B・ステムより先C、Bはさらにステムがゆるんでいるかどうかで分ける)がよく使われます。治療の方針はステムがゆるんでいるかどうかで変わりますが、ゆるんだステムが見逃されて、うまくいかない治療になることがあるため、病歴・ステムの種類・レントゲンから判断する流れが提案されています(Stoffel 2020)。骨折線だけでなく、ステム周囲の透亮帯や沈み込みを併せて見ることが大切です。
金属の破損:プレート・スクリュー・釘が折れるとき
骨折の固定に使った金属は、骨がうまくつながらない状態が続くと、繰り返しの負担(金属疲労)で折れることがあります。大腿骨近位部骨折に使った髄内釘の折損はまれ(1,246例中11例、0.88%)で、手術から平均約11か月で見つかり、すべての例で骨折部の癒合不全と進行する股関節痛を伴っていました。折れた場所は、釘の近位のスクリュー孔が7例、頸部へ入れるスクリューが3例、遠位のスクリュー孔が1例でした。不安定な骨折で骨癒合が遅れた例に起こり得るとされています(Cruz-Sánchez 2015)。
| 所見 | 意味 |
|---|---|
| スクリューの折れ・抜け | 固定の緩み・骨癒合の遅れ。プレートと骨の接触が失われることも |
| プレートの浮き上がり・ずれ | 固定性の低下 |
| 釘のスクリュー孔付近の亀裂 | 折損しやすい場所。骨癒合の状況を確認 |
| 骨折線が残る・広がる | 骨癒合不全(偽関節) |
症例 40歳代男性 遠位脛骨プレート固定後の固定不全

引用:Radiopaedia(Distal tibial fixation failure)
遠位脛骨にプレートと複数のスクリューが入っています。症例ページでは、遠位のスクリューが数本折れ、プレートの遠位部が骨の表面から離れており、プレートと骨の接触が失われて固定のゆるみまたは部分的な破損が疑われる、骨折部は部分的に癒合している、と記載されています。
過去画像との比較が決め手
金属の周囲の変化は、1枚の画像だけでは正常範囲か異常か決められないことが少なくありません。透亮帯の幅、金属の位置、骨折線を過去の画像と並べて比べると、ゆるみや沈み込みがはっきりします(Chang 2015)。比べるときは、撮影する向き・角度・拡大率がそろっているかを確認してください。比較のコツは比較読影とはで解説しています。
CTとMRI:金属アーチファクトと安全性
レントゲンで分からないときにCTやMRIを使いますが、金属はアーチファクト(偽の影や欠損)を作ります。CTでは、金属アーチファクト低減(MAR)のアルゴリズムや、デュアルエナジーCTの仮想単色X線像などで影を減らせます。MRIでも、金属周囲に使う専用の撮像法(MARS、SEMAC、MAVRICなど)があります(Khodarahmi 2019)。CTのアーチファクトの基本はCTのアーチファクトをご覧ください。
MRIでは、体内の金属の安全性の確認が先です。多くの体内に入れる受動的な(電気を使わない)整形外科インプラントはMRIを受けられるとされますが、主な心配は高周波による発熱と、磁力によるねじれや移動です(Milby 2020)。MRIを受けられるかどうかは、入っている金属の種類で決まります。手術を受けた病院・施設の記録やインプラントカードを持参し、検査施設の指示に従ってください。
よくある疑問(Q&A)
Q. 人工関節の周りに黒い線があると言われました。ゆるんでいるのですか?
A. 透亮帯は、手術後早い時期から見られることもあり、進行せず症状もないことが多いとされます(Wautier 2020)。広がっている、連続している、痛みがあるときに、ゆるみを疑います。過去の画像と比べて判断します。
Q. レントゲンでゆるみなしと言われても、痛みが続いています。
A. レントゲンのゆるみの感度は33〜52%という報告があり、CTのほうが高い感度でした(Gillet 2019)。痛みが続くときは、主治医に相談してください。
Q. 感染かゆるみか、画像で分かりますか?
A. 画像だけで分けるのは難しく、血液検査や関節液検査などと合わせて判断します。感染のX線所見は頻度が十分に分かっていません(Hofmann 2024)。
Q. プレートやスクリューが入っていると、MRIは受けられませんか?
A. 多くの整形外科インプラントはMRIを受けられるとされますが、金属の種類によります(Milby 2020)。手術を受けた病院の記録やインプラントカードを確認し、検査施設に伝えてください。
参考文献
- Chang CY, Huang AJ, Palmer WE. Radiographic evaluation of hip implants. Semin Musculoskelet Radiol. 2015;19(1):12-20. PubMed
- Gillet R, Teixeira P, Bonarelli C, et al. Comparison of radiographs, tomosynthesis and CT with metal artifact reduction for the detection of hip prosthetic loosening. Eur Radiol. 2019;29(3):1258-1266. PubMed
- Hofmann UK, Eleftherakis G, Migliorini F, et al. Diagnostic and prognostic relevance of plain radiographs for periprosthetic joint infections of the hip: a literature review. Eur J Med Res. 2024;29(1):314. PubMed
- Wautier D, Ftaïta S, Thienpont E. Radiolucent lines around knee arthroplasty components : a narrative review. Acta Orthop Belg. 2020;86(1):82-94. PubMed
- Stoffel K, Horn T, Zagra L, et al. Periprosthetic fractures of the proximal femur: beyond the Vancouver classification. EFORT Open Rev. 2020;5(7):449-456. PubMed
- Cruz-Sánchez M, Torres-Claramunt R, Alier-Fabregó A, et al. Salvage for nail breakage in femoral intramedullary nailing. Injury. 2015;46(4):729-33. PubMed
- Khodarahmi I, Isaac A, Fishman EK, et al. Metal About the Hip and Artifact Reduction Techniques: From Basic Concepts to Advanced Imaging. Semin Musculoskelet Radiol. 2019;23(3):e68-e81. PubMed
- Milby JN, Bible JE, Mosher TJ, et al. External Orthopaedic Implants in the Magnetic Resonance Environment: Current Concepts and Controversies. J Am Acad Orthop Surg. 2020;28(4):e139-e144. PubMed
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