IVCフィルター 位置・傾き・脚の突出・血栓を確認

CTやレントゲンで、おなかの中に金属の傘のようなものが写っていました。下大静脈フィルターと書かれていますが、これは何ですか?画像を読むときは、どこを確認すればいいですか?
下大静脈フィルター(IVCフィルター)は、足の静脈にできた血栓が肺へ飛ぶのを防ぐために、おなかの太い静脈(下大静脈)に入れる金属の網のような器具です。見つけたら、位置・傾き・脚の突き抜け・フィルター内の血栓・移動・破損の6点を順に確認します。回収できるタイプなのに、回収されないまま残っている場合の注意点も整理します。

先に結論:フィルターは腎静脈より下にあるのが基本。位置・傾き・脚・血栓・移動・破損を順に見る

項目 ポイント
正常な位置 多くは腎静脈の流入部より下の下大静脈(腎静脈下)に先端を置く
チェック項目 位置・傾き・脚の壁外への突出・フィルター内や下流の血栓・移動・破損
脚の突き抜け CTで見つかることが多く、症状がないことも多い。時間とともに増える報告がある
回収されないまま 回収可能型でも、実際に回収される割合は低い報告がある。医師の確認と経過観察が必要
変異 重複下大静脈・左下大静脈などでは、フィルターが2つ入ることがある

下大静脈フィルターとは

足やおなかの深い静脈(深部静脈)に血栓ができると、それがはがれて血流に乗り、肺の血管を詰まらせる肺血栓塞栓症を起こすことがあります。下大静脈フィルターは、血栓が肺へ飛んでいく途中で網にかけるための器具です。

血栓を予防する基本は、血をさらさらにする治療(抗凝固療法)です。フィルターは、その治療ができない場合などの補助手段と位置づけられています。総説では、急性の近位深部静脈血栓症や肺塞栓症があり、抗凝固療法ができない絶対的な理由がある患者さんには、フィルターが唯一の選択肢とされています。そのうえで、その理由がなくなれば抗凝固療法を再開し、フィルターを抜くことが勧められています。それ以外の目的については、使うことを支える根拠は十分とはいえないとされています(Duffett 2017)。留置の適応や製品の違いは、この記事では詳しく扱いません。

フィルターには、あとで回収できる回収可能型と、そのまま置いておく永久型があります。画像だけでは見分けられないことがあるため、どちらが入っているかは診療記録で確認します。

正常な位置:腎静脈の下

下大静脈フィルターは、多くの場合腎静脈が下大静脈に合流する部分(腎静脈の流入部)の高さの近くで、その下に先端(頂点)を置くのが基本です。腎静脈の合流部は、画像で見つけやすい目印でもあります。ただし実際の留置では、体の形や静脈の状態から、この位置に置けないこともあります。333個の検討では、腎静脈の流入部から2cmを超えて下に置かれていても、脚の突出・移動・傾きに差はありませんでした(Tullius 2018)。

VQI(米国の血管外科の質改善のための登録)の14,784人の検討では、留置時に腎静脈が見えていると、留置時の合併症の確率が50%減りました(調整オッズ比0.50)。また、留置時に合併症があった人では、腎静脈下以外に留置されていた割合が高い傾向でした(7.0%対4.2%)(Ramakrishnan 2023)。

検査 正常位置の見つけ方
CT 冠状断(縦の断面)が見やすい。左右の腎静脈が下大静脈に合流する高さを探し、フィルターの先端がそれより下にあるかを見る。腎静脈の位置は腹部CTの解剖で確認できる
レントゲン(腹部単純) 金属の形は見えるが、腎静脈は見えない。椎骨の高さで見当をつけ、以前の画像と比べて動いていないかを見る

チェック項目:6つを順に見る

項目 何を見るか メモ
1. 位置 先端が腎静脈下か、腎静脈より上か 上や遠くにずれていれば、移動の可能性
2. 傾き フィルターの軸が下大静脈の軸に対して傾いていないか VQIの登録では、留置時に20度超、のちに15度超を合併症の定義とした(Ramakrishnan 2023)
3. 脚の壁外突出 脚の先が下大静脈の壁の外へ出ていないか。周囲の臓器・血管に接していないか CTの冠状断・横断の両方で確認
4. 血栓 フィルターの中や、その下流(足側)の下大静脈・腸骨静脈に血栓がないか フィルター内の血栓は、のちに起こる合併症で最も多かった(1.6%)(Ramakrishnan 2023)
5. 移動 以前の画像と比べて位置が変わっていないか 比較できる画像があることが重要
6. 破損 脚の一部が欠けていないか、体のほかの場所に金属片がないか 欠けた破片は心臓などへ飛ぶことがある

レポートでは「下大静脈フィルター(腎静脈下)あり。傾き・脚の壁外突出・フィルター内血栓・破損なし」のように、確認した項目を短く書きます。比較できる以前の画像がなければ、移動は評価できないと書くのが安全です。

脚の壁外への突出(penetration)

フィルターは、脚(足のような部分)で下大静脈の壁に引っかかって固定されます。その脚が壁を貫いて外に出ることを脚の突出(penetration)といいます。ある回収可能型フィルターを入れた265人のCTを調べた研究では、脚の突出は留置後30日以内で39%、90日以内で80%に見られ、時間とともに増えました。また265個のうち35個(13.2%)で、周囲の臓器に脚が達しており、十二指腸や大動脈などが含まれていました。ほとんどは無症状でした(Zhou 2014)。この数字は特定のフィルターでの結果なので、すべてのフィルターに当てはめることはできません。

症例 30歳代男性 IVCフィルターの脚の大動脈への突出

IVCフィルターの脚が大動脈壁に入り込んだ造影CT動脈相の横断像
引用:Radiopaedia(Penetration of an inferior vena cava filter into the aorta)

動脈相の造影CTで、IVCフィルターの金属の脚が大動脈の右壁のそばに見えます。症例ページでは、フィルターの高さでIVCが細く閉塞しており、脚の1本が大動脈の壁に入り込んで周囲に壁在血栓を伴っていたと記載されています。別の脚は破損して脊椎に達し、さらに別の脚は右腸腰筋に達していたとも記載されています。

フィルター内・下流の血栓

フィルターは血栓を捕らえるため、捕らえた血栓がフィルターの中にたまることがあります。さらに、フィルターの下流の下大静脈や腸骨静脈が血栓で詰まることもあります。CTではフィルター周囲の造影不良や、下流の静脈の拡張、周囲の脂肪のにごりを探します。VQIの検討では、のちに起こる合併症としてはフィルター内の血栓(1.6%)が最も多く、傾き(1.2%)は留置時の合併症として最も多いものでした(Ramakrishnan 2023)。

移動・破損

フィルターが血流や体の動きで動くこと(移動)、脚や本体の一部が折れること(破損)も起こりえます。静脈に入れたステントやフィルターなどの金属の器具が、「ひしゃげる・伸びる・縮む・折れる」といった形の変化を示すと、静脈の高度な狭窄や閉塞を伴っていたという報告があります。ただしこの検討は78人のうちフィルターは13人と少なく、ほとんどはステントでした(Chick 2017)。形の変化を見つけたときは、静脈の流れの異常も合わせて調べます。

回収可能型が回収されないままのとき

回収可能型のフィルターは、血栓の危険が去ったら抜くことを前提にした器具です。しかし実際には、抜かれずに残ることが少なくありません。米国ニューヨーク州で2005〜2014年にフィルターを入れた91,873人の検討では、1年以内に回収されたのは3.5%、フィルターに関係する合併症が起きたのは1.5%でした。米国食品医薬品局(FDA)が2010年に安全性に関する通知を出したあと、回収される割合は高くなりました(ハザード比2.70)(Charalel 2018)。

総説でも、フィルターが残っている患者さんでは、抜く時期を定期的に見直し、合併症がないかを確認することが勧められています(Duffett 2017)。画像を読む側としては、フィルターを見つけたら、次の点をレポートに書いておくと診療に役立ちます。

レポートに書くこと 理由
フィルターがあること、位置 主治医が存在を忘れていることがある
前回との変化(傾き・移動・脚の突出の増加) 回収の難しさや合併症の判断に影響する
血栓・破損・周囲臓器への接触 回収や追加の治療の判断に使われる

気になる症状(足のむくみや痛み、おなかや背中の痛み、息苦しさなど)がある場合や、フィルターが入っているのに主治医から説明を受けた記憶がない場合は、医療機関に相談してください。

下大静脈の変異:重複下大静脈・左下大静脈など

下大静脈には生まれつきの変異があり、フィルターを入れるときに問題になることがあります。下大静脈の変異は人口の3〜5%にあるとされ、フィルターを入れる前に確認することが大切です(Malgor 2011)。重複下大静脈の頻度は1.5%(0.2〜3.0%)と報告されています(Al Hatmi 2021)。

変異 フィルターでの注意
重複下大静脈 左右に下大静脈があり、両方に入れる、腎静脈より上の部分(腎静脈上)に入れる、両側の間をコイルで塞いで片側に入れる、などの方法が報告されている(Al Hatmi 2021)
左下大静脈 左側にあるIVCが左腎静脈に合流する。位置の確認が大切
異常な解剖 留置時の合併症が多いと報告されている(調整オッズ比3.44)(Ramakrishnan 2023)

下大静脈の変異そのものは下大静脈の変異(左下大静脈・重複下大静脈)と重複下大静脈(double IVC)で詳しく説明しています。フィルターが片側にしか見えないときは、もう片側にIVCがないかを確認します。

症例 70歳代女性 重複下大静脈に左右2つのIVCフィルター

重複下大静脈に左右2つのIVCフィルターが入った腹部X線像
引用:Radiopaedia(Duplicated inferior vena cava filter placement)

腹部の単純X線像で、背骨の左右に1つずつ、合計2つのIVCフィルターが見えます。症例ページでは、重複下大静脈に対して、右側と左側の下大静脈のどちらにも、腎静脈より下の位置にフィルターを置いたと記載されています。

見落としやすい点・落とし穴

落とし穴 対策
フィルターを見落とす CTの全体像・スカウト像で金属を探す。腹部CTではまず下大静脈の中を確認する
金属のアーチファクト フィルターの周囲は線状の偽の影が出る。窓幅を変えて確認する
比較する画像がない 移動・傾きの変化は評価できないと書く。過去の画像を探す
脚の突出を見逃す 冠状断と横断を両方見る。大動脈・十二指腸・腸腰筋との位置関係を確認する(Zhou 2014)
血栓と流入の影の区別 造影された血液と造影されていない血液が混ざって、下大静脈内に血栓のような濃淡が出ることがある。造影の相を確認し、遅い相で確かめる
変異を見落とす フィルターが片側だけのときは、反対側のIVCの有無を見る(Malgor 2011)

よくある疑問(Q&A)

Q. 回収されていないフィルターは、すぐに危険なのですか?
A. すぐ危険という意味ではありません。ニューヨーク州の大規模な集計では、1年以内の合併症は1.5%でした(Charalel 2018)。ただし、脚の突出は時間とともに増える報告があり(Zhou 2014)、残している間は定期的に確認し、抜く時期を見直すことが勧められています(Duffett 2017)。

Q. 脚が血管の外に出ていると言われました。症状がなくても治療が必要ですか?
A. 脚の突出は無症状のことが多いと報告されています(Zhou 2014)。ただし周囲の臓器や血管に接している場合は、回収や追加の治療を検討することがあります。画像の所見と症状を合わせて、主治医と相談してください。

Q. フィルターが入っていれば、肺塞栓症にはならないのですか?
A. フィルターが入っていても、肺塞栓症が起きることはあります。ニューヨーク州の集計では、留置の時点までに肺塞栓症がなかった58,176人のうち、1年後までに2.0%が肺塞栓症を起こしました(Charalel 2018)。

Q. 下大静脈が2本あるといわれました。フィルターは2つ必要ですか?
A. 重複下大静脈では、両側に入れる方法のほか、腎静脈より上に入れる方法などが報告されています(Al Hatmi 2021)。どの方法を選ぶかは、静脈の解剖と状況によって主治医が決めます。

参考文献

  1. Duffett L, Carrier M. Inferior vena cava filters. J Thromb Haemost. 2017;15(1):3-12. PubMed
  2. Charalel RA, Durack JC, Mao J, et al. Statewide Inferior Vena Cava Filter Placement, Complications, and Retrievals: Epidemiology and Recent Trends. Med Care. 2018;56(3):260-265. PubMed
  3. Tullius TG Jr, Bos AS, Patel MV, et al. Complications and Retrieval Data of Vena Cava Filters Based on Specific Infrarenal Location. Cardiovasc Intervent Radiol. 2018;41(2):239-244. PubMed
  4. Ramakrishnan G, Willie-Permor D, Yei K, et al. Immediate and delayed complications of inferior vena cava filters. J Vasc Surg Venous Lymphat Disord. 2023;11(3):587-594.e3. PubMed
  5. Zhou D, Moon E, Bullen J, et al. Penetration of Celect inferior vena cava filters: retrospective review of CT scans in 265 patients. AJR Am J Roentgenol. 2014;202(3):643-7. PubMed
  6. Malgor RD, Oropallo A, Wood E, et al. Filter placement for duplicated cava. Vasc Endovascular Surg. 2011;45(3):269-73. PubMed
  7. Al Hatmi A, Al Hajriy M. Inferior Vena Cava Filter Placement in a Duplicated Inferior Vena Cava: A Case Report. Oman Med J. 2021;36(2):e244. PubMed
  8. Chick JFB, Abramowitz SD, Osher ML, et al. Radiographic Findings of Distressed Venous Stents and Inferior Vena Cava Filters: Clinical Implications. AJR Am J Roentgenol. 2017;209(5):1150-1157. PubMed

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