息切れの胸部画像 救急で最初に見分ける5つの病気

当直で「息が苦しい」という患者さんが来て、胸部X線を撮りました。どの順番で、何を見ればいいですか?CTはいつ追加するのでしょう。
最初の分かれ目は「感染か、非感染か」です。X線では、気胸・胸水・両側の陰影・片側の陰影の順に拾い、肺水腫・肺炎・間質性肺炎の急性増悪・気胸・肺塞栓を考えます。肺塞栓は単純X線で正常のことも多く、疑ったら造影CT(CT血管造影)が必要になります。画像だけで決めず、検査値や経過と合わせて考える点も整理します。

先に結論:息切れの胸部画像は「感染か非感染か」→「X線で順に拾う」→「肺塞栓は造影CT」の流れで考える

疾患 X線・CTの手がかり 画像だけでは決めない点
肺水腫(心不全) 両側の肺門中心の陰影、胸水、心拡大、気管支周囲の厚み 肺炎と区別が難しい。BNP・心エコー・熱や痰の有無と合わせる
肺炎 区域・葉に沿う浸潤影、気管支透亮像 X線で見えない肺炎がある。炎症反応・症状と合わせる
間質性肺炎の急性増悪 線維化の背景に、両側のすりガラス影・浸潤影が加わる 肺水腫や感染でも似る。元の間質性肺炎の有無を比較する
気胸 臓側胸膜線と、その外側の肺紋理の消失 仰向けのX線では見落としやすい
肺塞栓 X線は正常のことが多い。造影CTで肺動脈の造影欠損 Dダイマーや危険因子などの臨床評価と組み合わせる

息切れ(呼吸困難)とは

呼吸困難(息切れ)は、呼吸が不快だという本人の感じ方で、血液の酸素が低いこととは別の概念です。酸素が低くなる状態は呼吸不全と呼びます。救急で息切れの患者さんが来たときは、原因が肺・心臓・胸膜・血管・気道のどこにあるかを、画像・血液検査・心電図・診察を合わせて絞ります。

この記事は、救急や当直の現場で最初に胸部X線とCTをどう読むかを整理した「読み方の基礎」です。個別の疾患の詳しい所見は、リンク先の記事を参照してください。

最初の分かれ目:感染か、非感染か

息切れをきたす肺の病気は、まず感染症(肺炎など)と非感染症(心不全・間質性肺炎・肺塞栓・気胸など)に分けると整理しやすくなります。画像だけでは決めきれないので、発熱・痰・咳・胸痛・心疾患の既往・炎症反応・BNPなどを一緒に見ます。

両側に新しい陰影が出た110例の検討では、心原性の肺水腫を予測する因子は、BNPが高い、CRPが低い(7 mg/dL未満)、60歳を超えている、心疾患の既往がある、発熱と痰がない、でした(Lee 2013)。画像が似ていても、臨床の情報が手がかりになります。

情報 感染(肺炎)を考える 心原性の肺水腫を考える
症状 発熱、痰、咳 発熱や痰がない。心疾患の既往
血液検査 CRPが高い BNPが高い、CRPは低め
X線の分布 片側・区域・葉に沿う陰影が多い 両側の肺門中心の陰影、胸水

(Lee 2013)。X線の分布は一般的な読影の見方で、どちらも例外があります。

胸部X線で見る順番

救急の胸部X線は、仰向けで撮ることも多く、情報が限られます。次の順番で拾うと、見落としが減ります。

順番 見るところ 考える病気
1 気胸の線(肺の外側の黒い領域、肺紋理の消失) 気胸。緊急の処置が要ることがある
2 胸水(肋骨横隔膜角の鈍化、片側が白い) 心不全、肺炎に伴う胸水、悪性腫瘍など
3 両側か片側か 両側は肺水腫・間質性肺炎・びまん性の感染。片側は肺炎・無気肺など
4 陰影の種類(肺胞性か間質性か) 肺水腫、肺炎、間質性肺炎
5 心臓の大きさと縦隔 心不全、心嚢液
6 肺の血管の太さ・左右差、肺野の透過性の差 肺塞栓。ただしX線は正常のことが多い

肺胞性陰影と間質性陰影の見分けは肺胞性陰影と間質性陰影の記事、片側の肺が白く見えるときの考え方は別の記事で整理しています。気胸に似た線や皮膚のしわで迷うときは気胸に見える線の記事が参考になります。

X線の限界を知っておく

救急受診の500例で胸部X線のあとにCTを撮った検討では、X線とCTの所見が一致したのは49.2%で、X線をもとにした主な診断や方針がCTのあとで変わったのは35.4%でした。肺炎の浸潤影があった205例では、その55%がX線では診断されていませんでした(Gezer 2017)。一方で、肺水腫はX線所見の中で最も特異度(93.3%)も感度(85.4%)も高く、座位(立位)の正面像は、仰向けの前後像よりCTとの一致が高い、とされています(Gezer 2017)。

肺水腫(心不全):両側の陰影と胸水

救急で息切れの原因として多いのが急性心不全です。息切れの救急患者を対象にした研究を集めた総説では、急性心不全の割合は29〜79%と幅がありました。胸部X線での肺水腫の所見は陽性尤度比4.8(95%信頼区間3.6〜6.4)、肺エコーでの肺水腫は7.4でした。BNPが100 pg/mL未満やNT-proBNPが300 pg/mL未満は、心不全を除外する力が高い検査でした(Martindale 2016)。

息切れの救急患者277例の胸部X線の検討では、読影者の総合的な印象が心不全の診断に最も有用で、曲線下面積は仰向けで0.855、立位で0.857でした。BNPと同程度の精度でした。個々の所見では、仰向けでの気管支周囲の厚み(peribronchial cuffing)が0.829と高く、血管茎の幅は0.461で最も低い結果でした(Studler 2008)。

肺水腫の見え方は、肺水腫・心不全の胸部X線・CTの記事に整理しています。

症例 50歳代男性 心原性肺水腫

心原性肺水腫 胸部X線 正面像
引用:Radiopaedia(Cardiogenic pulmonary edema)

両側の肺に広がる陰影があります。症例ページでは、心拡大、左の胸水、Kerley B線があり、心疾患のある患者さんでは心原性肺水腫を考える、肺胞性の陰影があるためgrade IIIの肺水腫に相当する、と記載されています。

肺炎:X線で見えないことがある

肺炎は、区域や葉に沿った浸潤影と、その中の気管支透亮像が典型です。ただし前述のとおり、肺炎の浸潤影がある症例の半分以上がX線では診断されていませんでした(Gezer 2017)。X線で異常がなくても、症状と炎症反応から疑うなら、CTを検討します。

肺炎と心不全は、両方が同時にあることもあります。陰影が心不全なのか肺炎なのか決めきれないときは、治療への反応や経過を見て評価することもあります。

間質性肺炎の急性増悪:背景の線維化が手がかり

もともと間質性肺炎がある人が急に息切れを訴えたら、急性増悪を考えます。24例の検討では、高分解能CTの主な所見は、網状影を背景にした両側のすりガラス影(100%)と浸潤影(71%)でした。分布はびまん性(54%)、多発(21%)、末梢(25%)で、組織像は20例がびまん性肺胞傷害でした。急性期を乗り越えたのは33%でした(Silva 2007)。

2026年に公表された国際作業部会の報告では、線維化を伴う間質性肺炎の急性増悪(AE-fILD)は、「息切れなどの症状が増え、びまん性肺胞傷害(必要に応じて器質化肺炎の合併)に合致する画像・組織所見を伴う急性の呼吸のイベント」と改訂されました。一方で、肺水腫・気管支炎・肺炎など、びまん性肺胞傷害ではない原因による急な悪化は「急性の呼吸の悪化」(acute respiratory worsening)という別の枠組みで扱われ、重い肺炎が急性増悪の引き金になることもある、と整理されています(Khor 2026)。つまり、急性増悪と書く前に、肺水腫や感染でも説明できないかを確認することが大切です。

急性増悪の画像診断は間質性肺炎の急性増悪の記事で詳しく解説しています。

気胸:仰向けのX線で見落とさない

気胸は、臓側胸膜の線(細い線)と、その外側で肺の血管の影が消えた黒い領域が目印です。立位ではわかりやすい一方、救急の仰向けのX線では、空気が胸の前のほうにたまり、線がはっきり見えないことがあります。肋骨横隔膜角が深く黒く見える(deep sulcus sign)ときや、片側の肺が黒く見えるときは、気胸を考えます。迷うときはCTや超音波で確認します。

肺塞栓:X線は正常のことが多く、疑ったら造影CT

肺塞栓は、X線で決められない代表的な病気です。肺塞栓が疑われた1,063例(うち383例が確定)のX線の検討では、肺塞栓の患者さんのX線が正常だったのはわずか12%でした。ただし、無気肺や浸潤影、Westermark徴候(肺野の透過性の増加)、Hampton hump(胸膜に接する楔状の陰影)、胸水などは、肺塞栓があってもなくても見られ、肺塞栓の予測因子としては弱い、と報告されています。X線の主な価値は、肺塞栓と似た症状を起こす他の病気を除外することです(Worsley 1993)。

肺塞栓の診断では、症状・徴候・病歴だけでは正確に診断できないため、造影CTによる肺動脈の評価(CT肺動脈造影)が現在の主な検査です。臨床の危険因子と画像を合わせると、診断の正確さと検査の適切さが上がります。換気血流シンチグラフィ、MRアンギオ、下肢の超音波も、状況によって使われます(ACR 2022)。造影剤を使う検査なので、腎機能やアレルギーなどは検査施設が確認します。詳しい画像所見は肺血栓塞栓症の造影CTの記事を参考にしてください。

症例 30歳代女性 両側肺塞栓(造影CT)

両側肺塞栓 造影CT 肺動脈相 軸位断像
引用:Radiopaedia(Massive bilateral pulmonary embolism)

肺動脈の造影CTです。症例ページでは、肺動脈の本幹の分岐部をまたぐ広範な血栓(saddle embolus)が両側に伸び、血栓の量が左右で大きく異なり、右肺動脈はほぼ閉塞していると記載されています。造影CTでは血栓が「造影される血液の中の欠け(造影欠損)」として見えます。

CTが役立つ場面

状況 CTの役割
X線が仰向けで、画質や情報が限られる X線で見えない肺炎・気胸・胸水を拾う。特に高齢者で一致が低い(Gezer 2017)
肺塞栓を疑う 造影CT(CT肺動脈造影)で肺動脈を直接評価する(ACR 2022)
間質性肺炎が背景にある 線維化の程度と、急性の変化(すりガラス影・浸潤影)を区別する(Silva 2007)
X線で原因が決まらない 分布(びまん性・斑状・末梢)から、感染・水腫・薬剤性などを絞る

画像だけで決めない

  1. バイタル(酸素飽和度、呼吸数、血圧)と、症状が起きた時間の経過
  2. 感染の手がかり:発熱、痰、炎症反応
  3. 心不全の手がかり:BNPまたはNT-proBNP、心電図、心エコー、心疾患の既往
  4. 肺塞栓の手がかり:深部静脈血栓症の症状、長期臥床・手術・がんなどの危険因子、Dダイマー
  5. 基礎疾患:間質性肺炎、COPD、喘息、がん、膠原病
  6. 前回の画像との比較

よくある疑問(Q&A)

Q1. 胸部X線で異常がなければ、息切れの原因は肺ではないのですか?

そうとは限りません。肺塞栓ではX線が正常のことが多く(Worsley 1993)、肺炎もX線で見えないことがあります(Gezer 2017)。症状が強い、続く、悪化する場合は、X線が正常でも追加の検査を考えます。

Q2. 心不全と肺炎は、X線で見分けられますか?

X線の所見(両側・肺門中心の陰影、胸水、心拡大、気管支周囲の厚み)は心不全の手がかりになりますが、似て見えることもあります(Studler 2008)。BNP、CRP、発熱・痰の有無、心エコーを合わせて判断します(Lee 2013)。

Q3. 急に息苦しくなったら、どうすればよいですか?

安静にできない息苦しさ、胸の痛みを伴う息切れ、唇の色が悪い、意識がぼんやりする、といった場合は、救急要請や救急外来の受診を検討してください。気になる症状があれば医療機関へ相談しましょう。

Q4. 造影CTは、息切れのときは誰でも撮りますか?

いいえ。肺塞栓が疑われる場合に、臨床の評価と合わせて検討する検査です(ACR 2022)。造影剤を使えるかどうかは、腎機能や過去のアレルギーの確認が必要です。

参考文献

  1. Martindale JL, Wakai A, Collins SP, et al. Diagnosing Acute Heart Failure in the Emergency Department: A Systematic Review and Meta-analysis. Acad Emerg Med. 2016;23(3):223-42. PubMed
  2. Studler U, Kretzschmar M, Christ M, et al. Accuracy of chest radiographs in the emergency diagnosis of heart failure. Eur Radiol. 2008;18(8):1644-52. PubMed
  3. Gezer NS, Balcı P, Tuna KÇ, et al. Utility of chest CT after a chest X-ray in patients presenting to the ED with non-traumatic thoracic emergencies. Am J Emerg Med. 2017;35(4):623-627. PubMed
  4. Lee YJ, Lee J, Park YS, et al. Predictors of cardiogenic and non-cardiogenic causes in cases with bilateral chest infiltrates. Tuberc Respir Dis (Seoul). 2013;74(1):15-22. PubMed
  5. Silva CI, Müller NL, Fujimoto K, et al. Acute exacerbation of chronic interstitial pneumonia: high-resolution computed tomography and pathologic findings. J Thorac Imaging. 2007;22(3):221-9. PubMed
  6. Khor YH, Luppi F, Adegunsoye A, et al. Acute exacerbation in fibrotic interstitial lung disease: an international working group report. Am J Respir Crit Care Med. 2026;212(10):2358-2385. PubMed
  7. Worsley DF, Alavi A, Aronchick JM, et al. Chest radiographic findings in patients with acute pulmonary embolism: observations from the PIOPED Study. Radiology. 1993;189(1):133-6. PubMed
  8. Expert Panel on Cardiac Imaging, Kirsch J, Wu CC, et al. ACR Appropriateness Criteria® Suspected Pulmonary Embolism: 2022 Update. J Am Coll Radiol. 2022;19(11S):S488-S501. PubMed

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