
先に結論:気道の「どこが細いか」と症状で整理する。異物はレントゲンが正常でも否定できない
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| クループ | 吠えるような咳と息を吸うときの喘鳴。正面像で声帯の下の気道が尖塔のように細くなる(steeple sign)。診断は症状が基本 |
| 急性喉頭蓋炎 | 高熱・よだれ・こもった声。側面像で喉頭蓋が親指のように腫れる(thumb sign)。急速に悪化しうる |
| 気道異物 | 突然のむせ込みの病歴が大切。レントゲンは正常のことも多く、片側の空気のとらえ込みが手がかり |
| 注意 | 画像の所見だけで決めない。最初の確認は呼吸の状態と気道の確保 |
子どもの上気道閉塞は「症状」と「気道のどこが細いか」で整理する
子どもは気道が細く、喉頭の向きも大人と違うため、軽い腫れでも呼吸が苦しくなりやすいとされています。症状が似ていて見分けにくいため、医師は画像で診断の手がかりを得ることが多くなります(Darras 2015)。
| 病気 | 症状の特徴 | 画像で細くなる場所 |
|---|---|---|
| クループ(急性喉頭気管気管支炎) | 吠えるような咳、嗄声、息を吸うときの喘鳴。ウイルス感染が多い | 声帯の下(声門下) |
| 急性喉頭蓋炎 | 高熱、よだれ、こもった声(hot potato voice)、息苦しさ | 喉頭蓋とその周囲 |
| 気道異物 | 突然のむせ込み、ゼーゼー、咳 | 異物が詰まった気管・気管支 |
| 咽頭後膿瘍 | 発熱、首が動かしにくい、飲み込みにくい | のどの後ろ(椎前軟部組織)が厚い |
(クループと喉頭蓋炎の症状はSobol 2008、Choi 2026による)
クループは子どもの喘鳴(ゼーゼーいう呼吸音)の原因として最も多い病気で、ほとんどは自然に軽快します(Sobol 2008)。一方、急性喉頭蓋炎は、診断や対応が遅れると急速に悪化することがあります(Sobol 2008)。この「頻度」と「危険度」が逆であることが、見分ける理由の1つです。
撮影の基本:正面と側面、重症なら側面1枚
子どもの急性の気道閉塞では、胸部と上気道(首)のレントゲンを撮るのが基本で、画像診断の多くはレントゲンだけで進められます。呼吸が重く苦しい子では、側面の1枚だけで足りることもあるとされています(Darras 2015)。
| 撮影 | 見るところ |
|---|---|
| 首の正面像 | 声帯の下の気道が細くなっていないか(steeple sign) |
| 首の側面像 | 喉頭蓋の腫れ、下咽頭の広がり、椎前軟部組織の厚さ |
| 胸部 | 気管の細さ、肺の過膨張、肺炎、異物による片側の変化 |
首の側面像を読む順番
- 撮影の条件:首が前に曲がっていたり、息を吐いている途中で撮られたりすると、のどの後ろの軟部組織が見かけ上厚くなります(Choi 2026)。吸気で首をまっすぐにした像かを確認します。
- 喉頭蓋:細くしなやかな舌状の影か、親指のように太く腫れているかを見ます。
- 下咽頭と声門下:下咽頭が広がり、声門下が細くなっていないかを見ます。
- 椎前軟部組織:頸椎の前の厚さを、上の目安と比べます。
- 異物:食道の入口や気道に、金属・骨・硬貨のような濃い影がないかを探します。
クループ:正面像のsteeple sign
クループは、乳幼児に多いウイルス性の上気道感染で、パラインフルエンザウイルスなどが原因です。吠えるような咳と、息を吸うときの喘鳴が特徴です(Choi 2026)。
画像では、正面像で声帯の下の気道が先細りに狭くなり、尖塔(steeple)の形に見えるのが典型です。側面像では、下咽頭(のどの下の部分)が広がって見えます(Choi 2026)。
ただし、クループの診断は症状などの臨床の基準に基づいて行うものとされています(Mazurek 2019)。レントゲンは確定のためではなく、喉頭蓋炎や異物など他の病気を考える必要があるときに使われます。steeple signはクループ以外でも見られることがあると報告されており(Huang 2012)、「尖塔=クループ」と決めつけないことも大切です。
症例 2歳男児 クループ

引用:Radiopaedia(Croup – steeple sign)
首から胸の正面像で、声帯の下の気道が先細りに狭くなり、尖塔のように見えます。症例ページでは、クループを疑う状況での正面像で、上部気管の特徴的な先細り(steeple sign)があると記載されています。
クループに似た「細菌性気管炎」
クループの経過のあとに、細菌が二次感染して起こる細菌性気管炎という病気があります。高熱、強い呼吸困難、ぐったりした様子が特徴で、通常のクループの治療でも良くなりません。画像では、気管の壁の不規則な肥厚や内腔の狭小化、剥がれた粘膜による内腔の軟部組織影が見られ、肺炎を伴うことが多いとされています(Choi 2026)。
急性喉頭蓋炎:側面像のthumb sign
急性喉頭蓋炎は、喉頭蓋とその周囲が腫れて気道をふさぐ病気です。以前は、小児ではインフルエンザ菌b型(Hib)が最も多い原因でしたが、ワクチンの普及で発症が大きく減り、現在は相対的に大人に多くなっています(Choi 2026)。先進国では子どもの喉頭蓋炎はまれになったものの、見逃すと急速に命にかかわります(Sobol 2008)。
症状は、高熱、よだれ、こもった声(hot potato voice)、息苦しさです。側面の首のレントゲンでは、腫れた喉頭蓋が親指の先のように見える「thumb sign(thumbprint sign)」が特徴です(Choi 2026)。詳しい所見は急性喉頭蓋炎の画像所見|サムサイン(thumb sign)とは?をご覧ください。
症例 生後20か月 男児 急性喉頭蓋炎
首の側面像です。症例ページでは、喉頭蓋の境界の不明瞭な肥厚があり、浮腫と炎症を反映した典型的な「thumbprint sign」が見られると記載されています。同じ症例の正面像では、上部気道の狭小化があると説明されています。
喉頭蓋炎では、レントゲンで見える喉頭蓋や披裂喉頭蓋ひだ(喉頭蓋から続くひだ)の幅を、第3頸椎の幅と比べて判定する方法も提案されています。31人(7か月〜61歳)の検討で、子どもでは喉頭蓋の幅が第3頸椎の幅の0.5を超えると、感度は100%、特異度は87%でした(Rothrock 1990)。ただし、少数例の予備的な結果です。
喉頭蓋炎が疑われる子どもでは、画像検査のために気道の確保が遅れることがないよう、診察した医療者が優先順位を判断します。
咽頭後膿瘍との違い
のどの後ろにある咽頭後間隙の感染も、首の側面像で見分けます。子どもでは、第1〜4頸椎の高さで約7mm、第5〜7頸椎の高さで約14mmを超える椎前軟部組織の厚さがあると、咽頭後の軟部組織の腫れが疑われます。ただし、首の屈曲や呼気で撮影された場合の見かけ上の厚みを除く必要があります(Choi 2026)。
気道異物:画像が正常でも否定できない
子どもの気道異物は、ナッツ類や種の破片が約半数(49%)を占め(Sink 2016)、咳、ゼーゼー、突然のむせ込みで疑われます。画像では空気のとらえ込み(air trapping)や片側の透過性の変化が手がかりです。詳しい所見は気管支異物とは?症状・原因・レントゲン画像と、胸部レントゲンで片側の肺が黒いも参考にしてください。
ここで大切なのは、レントゲンが正常でも異物を否定できないことです。気道異物が確認された265人の検討では、気管支鏡の時点でレントゲンが正常と判断されたのが110人でした(Zerella 1998)。異物の疑いで内視鏡を受けた102人では、68%に異物があり、最も多い異常所見は空気のとらえ込み(33%)でした。レントゲンの感度は61%、特異度は77%でした(Sink 2016)。
そのため、むせ込みの目撃があって、その後に咳や喘鳴が続く子どもでは、レントゲンが正常でも気管支鏡による確認を考えるべきだとされています(Zerella 1998)。
見分けの早見表
| 観察点 | クループ | 急性喉頭蓋炎 | 気道異物 |
|---|---|---|---|
| 経過 | 風邪症状のあと、夜に吠える咳 | 高熱・よだれが急に | 突然のむせ込み |
| 首の正面像 | 声帯の下が先細り(steeple sign) | 上部気道の狭小化 | 異常なしのことも |
| 首の側面像 | 下咽頭の拡張 | 喉頭蓋の腫れ(thumb sign) | 異物が写ることもある |
| 胸部 | 目立たないことが多い | 目立たないことが多い | 片側の空気のとらえ込みなど |
| 診断の中心 | 症状(臨床基準) | 症状と画像、診察 | 病歴と気管支鏡 |
(Choi 2026、Mazurek 2019、Zerella 1998をもとに整理)
お子さんが、よだれで飲み込めない、ぐったりしている、唇の色が悪い、息を吸うたびに胸がへこむなどの様子があるときは、すぐに医療機関に連絡してください。
よくある疑問(Q&A)
Q. steeple signがあればクループと診断できますか?
A. クループの診断は臨床の基準に基づくもので、レントゲンはそれを補う位置づけです(Mazurek 2019)。steeple signはクループ以外でも見られることがあると報告されています(Huang 2012)。
Q. 喉頭蓋炎は今の子どもにもありますか?
A. Hibワクチンの普及で、子どもの急性喉頭蓋炎は大きく減りました(Choi 2026)。それでもまれには起こり、急速に悪化することがあるため、疑ったときは速やかな対応が必要です(Sobol 2008)。
Q. 異物を飲み込んだ様子はないのに、咳が続いています。異物のことはありますか?
A. むせ込みが目撃されていなくても、異物のことはあります。異物が確認された265人のうち、むせ込みの記録があったのは228人でした(Zerella 1998)。レントゲンが正常のことも多く(Sink 2016)、咳や喘鳴が続くときは医療機関で相談してください。
あわせて読みたい:新生児の胸部レントゲン
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参考文献
- Choi G, Je BK. Imaging for Pediatric Head and Neck Emergencies: Critical Insights. J Korean Soc Radiol. 2026;87(3):416-434 PubMed
- Darras KE, Roston AT, Yewchuk LK. Imaging Acute Airway Obstruction in Infants and Children. Radiographics. 2015;35(7):2064-79 PubMed
- Mazurek H, Bręborowicz A, Doniec Z, et al. Acute subglottic laryngitis. Etiology, epidemiology, pathogenesis and clinical picture. Adv Respir Med. 2019;87(5):308-316 PubMed
- Sobol SE, Zapata S. Epiglottitis and croup. Otolaryngol Clin North Am. 2008;41(3):551-66, ix PubMed
- Rothrock SG, Pignatiello GA, Howard RM. Radiologic diagnosis of epiglottitis: objective criteria for all ages. Ann Emerg Med. 1990;19(9):978-82 PubMed
- Zerella JT, Dimler M, McGill LC, et al. Foreign body aspiration in children: value of radiography and complications of bronchoscopy. J Pediatr Surg. 1998;33(11):1651-4 PubMed
- Sink JR, Kitsko DJ, Georg MW, et al. Predictors of Foreign Body Aspiration in Children. Otolaryngol Head Neck Surg. 2016;155(3):501-7 PubMed
- Huang CT. Steeple sign: not specific for croup. J Emerg Med. 2012;43(5):e333-4 PubMed
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