
先に結論:赤ちゃんの背景(早産か満期か)と、肺の膨らみ・陰影の質で整理する
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 最初に確認 | 在胎週数(早産か満期か)・分娩方法・症状が出た時間。画像だけで決めない |
| RDS(呼吸窮迫症候群) | 早産児。肺が小さく(低容積)、びまん性の細かい粒状影とair bronchogram。重いと「白い肺」 |
| TTN(一過性多呼吸) | 満期児。肺は正常〜やや過膨張。肺門周囲の間質影と血管のぼやけ、葉間の少量の胸水。数日で改善 |
| 胎便吸引症候群 | 満期〜過期産。過膨張に粗い不規則な陰影と部分的な無気肺。気胸を合併しやすい |
| 気胸 | どの病気にも合併する。仰向けの撮影では典型的な像にならず、見落としやすい |
新生児の呼吸困難は「いつ生まれたか」から考える
生まれてすぐの赤ちゃんが呼吸の苦しさを示す原因は、病気によって赤ちゃんの背景がかなり違います。そのため、新生児の胸部レントゲンでは、画像を見る前に在胎週数・分娩方法・症状が出た時間・人工呼吸の有無を確認することが勧められています(Lovrenski 2025)。
| 病気 | 多い赤ちゃん | 症状の出方 |
|---|---|---|
| RDS(呼吸窮迫症候群) | 早産児(肺の成熟が不十分) | 生後まもなくから呼吸が速く、陥没呼吸などが出る |
| TTN(一過性多呼吸) | 満期児。帝王切開、母体の糖尿病・肥満が危険因子 | 出生直後〜2時間以内に頻呼吸。通常72時間以内に改善 |
| 胎便吸引症候群(MAS) | 満期〜過期産。羊水の胎便混濁 | 出生時〜数時間以内に呼吸障害 |
| 新生児肺炎 | 早産児・満期児どちらも | 母体の感染や破水の長さなどが手がかり。数時間〜数日で出る |
(Lovrenski 2025)
TTNは満期の赤ちゃんの呼吸障害で最も多く、出生1,000人あたり4〜6人と見積もられています。胎便吸引症候群は出生の0.1〜0.4%と、それよりまれです(Lovrenski 2025)。
読む前の確認:撮影条件とチューブ類
新生児の胸部レントゲンは、多くが集中治療室で、仰向けに前後方向(AP)から撮影されます。読む前に次の3点を見ます。
- 吸気の深さ:小児の撮影では、後ろの肋骨が8本以上横隔膜の上に見えることが吸気の目安とされています(Lovrenski 2025)。吸気が浅いと、肺が白く小さく見えて、RDSと間違えやすくなります。
- 回旋:左右の鎖骨の大きさと肋骨の間隔が左右対称かを確認します(Lovrenski 2025)。
- チューブ・ライン:気管チューブ、胃管、臍帯カテーテルなどの先端位置は、病気の判定とは別に毎回確認します。気管チューブが深いと片肺だけ膨らみ、無気肺や気胸と紛らわしくなります。
新生児の胸部X線は、画像の質や見る環境、読む人の経験が読影の正確さを左右するとされています(Barnes 1999)。成人の胸部レントゲンの確認点は胸部レントゲンの撮影条件の確認にもまとめています。なお、新生児では胸腺(大きな正常の組織)が上縦隔に広がって見えることが多く、病気と区別します。
RDS:肺が小さく、細かい粒と「白い肺」
RDSは、肺の表面活性物質(サーファクタント)が足りない早産児の病気で、肺胞がつぶれやすくなります。診断は、早産という背景と特徴的なレントゲン所見に基づきます(Lovrenski 2025)。
| 程度 | レントゲンの見え方 |
|---|---|
| 軽い | すりガラスのような淡い影。肺は比較的よく膨らみ、air bronchogramは少ない |
| 中等度 | 濃い影になり、air bronchogramが増える。心臓と横隔膜の境界はまだ見える |
| 重い | 粗い粒状の影。心臓・横隔膜の境界が不明瞭になり、肺は膨らみにくい |
| 最重症 | 肺全体が真っ白(white lung)。心臓・横隔膜の境界が消え、air bronchogramが目立つ |
(放射線科医が使う4段階の分類。Lovrenski 2025)
要点は、肺の容積が小さい(低容積)ことと、びまん性に均一な粒状影があることです。人工呼吸を始める前は肺が小さいのが典型です(Lovrenski 2025)。心臓の輪郭がどれだけ見えるかで重症度を表す方法もあります。RDSの合併症として、気胸と間質性肺気腫(PIE)があります(Lovrenski 2025)。
症例 生後4日 女児 RDSに合併した気胸と間質性肺気腫

引用:Radiopaedia(Neonatal pneumothorax)
両側の肺にびまん性で左右対称のうすい曇りがあり、RDSに合致するとされています。右の前内側に少量の気胸があり、右の肺門周囲の血管や細気管支のまわりに空気が見えて、間質性肺気腫と考えられると症例ページに記載されています。左には気胸も間質性肺気腫もありません。
TTN:満期児の「一時的な水の残り」
TTNは、胎児の肺にあった水(羊水)が出生後にうまく吸収されず、一時的に呼吸が速くなる病気です。多くは良性で、自然に軽快します(Lovrenski 2025)。
レントゲンの特徴は、肺の容積が正常か、やや過膨張で、肺門周囲に間質性の陰影が出て、肺の血管の輪郭がぼやけることです。葉間裂(肺葉の境目)に少量の胸水が見えることもあります。所見と症状は48〜72時間で消えていきます(Lovrenski 2025)。
RDSとTTNは画像が似ることがありますが、TTNは肺が正常か膨らみ気味、RDSは肺が小さいという違いがあります。また、TTNは満期児、RDSは早産児の病気です(Lovrenski 2025)。ただし、TTNをレントゲンだけでRDSと誤診することがあると指摘されています(Ma 2022)。
症例 生後0日 男児 一過性多呼吸(TTN)

引用:Radiopaedia(Transient tachypnea of the newborn)
両側の肺に間質の線状の陰影が増え、肺門周囲が優位です。症例ページでは、満期児の呼吸障害の原因として、新生児の感染・TTN・胎便吸引(適切な病歴がある場合)が主な候補と説明されています。胃管の先端は胃の位置にあります。
胎便吸引症候群:過膨張と粗い陰影
胎便吸引症候群は、胎便で汚れた羊水を吸い込んで起こる呼吸障害です。気道が胎便でふさがる、炎症が起こる、感染しやすくなるといった複数の機序で重い呼吸障害につながります(Lovrenski 2025)。
レントゲンでは、過膨張した肺に、粗くて不規則な両側の陰影、部分的な無気肺、肺炎が見られます。軽い場合は過膨張だけのこともあります(Lovrenski 2025)。TTNやRDSと違う点は、「膨らみが強く、陰影が粗い」ことです。個別の疾患の詳しい読み方は胎便吸引症候群(MAS)とは?新生児の胸部レントゲン所見と気胸をご覧ください。
胎便吸引症候群では、気胸が10〜20%に起こりうると報告されています(Lovrenski 2025)。左右の粗い間質性の陰影が両側にあるときは、胎便吸引症候群と新生児肺炎を画像だけで区別することはできないとされています(Lovrenski 2025)。
見分けの早見表
| 観察点 | RDS | TTN | 胎便吸引症候群 |
|---|---|---|---|
| 赤ちゃん | 早産 | 満期(帝王切開など) | 満期〜過期産・羊水の胎便混濁 |
| 肺の容積 | 小さい(低容積) | 正常〜過膨張 | 過膨張 |
| 陰影の質 | びまん性の均一な細かい粒 | 肺門周囲の間質影・血管のぼやけ | 粗い不規則な陰影・無気肺 |
| 胸水 | — | 葉間裂などに少量 | — |
| 経過・合併 | 気胸・間質性肺気腫を合併しうる | 48〜72時間で所見と症状が消える | 気胸が10〜20%に起こりうる |
(Lovrenski 2025の表をもとに整理。「—」は資料に記載がない項目)
気胸:仰向けの写真では典型像にならない
人工呼吸中の早産児や、胎便吸引症候群では、気胸への注意が欠かせません。ところが、新生児の病室の撮影は仰向けのため、空気は胸の前方にたまり、教科書に出てくる「肺の縁と外側の黒い空間」という典型的な像にならないことがあります。
集中治療室の新生児で、気胸が診断されたのは1,375人中39人でした。気胸の赤ちゃんの46%で、臨床的に診断される前に、レントゲン上の潜在性の気胸が見つかったと報告されています(Cizmeci 2013)。サインが出てから臨床診断までの時間は0.5〜27時間と幅がありました。仰向けの写真で肺の縁が見えなくても、「典型的でないサイン」を探すことが早い発見につながります。
横向き(側臥位)で撮影して、胸の中の遊離した空気を確認する方法もあります(Lovrenski 2025)。成人を含む気胸の見え方は胸部レントゲンで片側の肺が黒いにもまとめています。
画像だけでは決めきれないとき
新生児の肺炎は、RDSやTTNに似た像を示すことがあります。病理で確かめた30例では、最も多かった所見は両側の肺胞性の濃い影(77%)で、TTNに似たパターンが17%、RDS(硝子膜症)に似たパターンが13%でした(Haney 1984)。画像に加えて、母体の感染、破水の期間、赤ちゃんの症状と経過を合わせて判断します。
近年は、胸部レントゲンの再現性の限界も論じられています。RDSの診断で、肺エコーでは観察者間の一致度が高い研究が複数ある一方、胸部レントゲンについてはRDS診断の一致度を検討した報告が見つからなかったとされています(Grasso 2025)。TTNの診断でも、肺エコーは感度0.98・特異度0.99(6研究、617人のまとめ)でした(Ma 2022)。そのため、胸部レントゲンだけで決めず、肺エコーなども併用して判断する選択肢が検討されています。
| 状況 | 次に考えること |
|---|---|
| 早産児で、肺が小さく細かい粒状影が一面に出ている | RDSを考えるが、肺炎も区別が難しい。母体の感染や破水などを確認する |
| 満期児で、肺は膨らみ気味、肺門周囲の影が主 | TTNを考える。経過が数日で良くなるかを見る |
| 過期産で粗い陰影と過膨張 | 胎便吸引症候群を考え、気胸を注意して探す |
| 急に状態が悪化した | 気胸・チューブ位置のずれを速やかに確認する |
赤ちゃんの呼吸が速い、胸がへこむ、唇の色が悪いなどの様子があれば、すぐに医療機関に連絡してください。
よくある疑問(Q&A)
Q. RDSとTTNは、レントゲンだけで見分けられますか?
A. 見分ける手がかりはありますが、レントゲンだけでは決めにくいことがあります。TTNは肺が正常か膨らみ気味、RDSは肺が小さいという違いがあり、赤ちゃんが満期か早産かも大切です(Lovrenski 2025)。TTNをRDSと誤診することがあるとの指摘もあります(Ma 2022)。
Q. 胎便吸引症候群とTTNの違いは?
A. どちらも満期近くの赤ちゃんに起こりますが、胎便吸引症候群は羊水の胎便混濁という病歴があり、粗い不規則な陰影・無気肺・過膨張が特徴です。TTNは肺門周囲の間質影と血管のぼやけが中心で、数日で改善します(Lovrenski 2025)。
Q. 気胸は新生児では危険ですか?
A. 気胸はRDSや胎便吸引症候群の合併症として起こり、胎便吸引症候群では10〜20%とされています(Lovrenski 2025)。仰向けの写真では見つけにくく、集中治療室の新生児では潜在性の気胸が多かったと報告されているため、サインに気づくことが大切です(Cizmeci 2013)。
あわせて読みたい:子どもの上気道閉塞のレントゲン、胸部レントゲンの肺胞性陰影と間質性陰影の見分け方
あわせて読みたい:子どもの喘鳴・咳のレントゲン、新生児の腹部レントゲン
参考文献
- Lovrenski J, Raissaki M, Plut D, et al. ESR Essentials: imaging of common paediatric pulmonary diseases-practice recommendations by the European Society of Paediatric Radiology. Eur Radiol. 2025;35(8):5037-5052 PubMed
- Cizmeci MN, Akin K, Kanburoglu MK, et al. The utility of special radiological signs on routinely obtained supine anteroposterior chest radiographs for the early recognition of neonatal pneumothorax. Neonatology. 2013;104(4):305-11 PubMed
- Ma HR, Liu J, Yan WK. Accuracy and Reliability of Lung Ultrasound to Diagnose Transient Tachypnoea of the Newborn: Evidence from a Meta-analysis and Systematic Review. Am J Perinatol. 2022;39(9):973-979 PubMed
- Haney PJ, Bohlman M, Sun CC. Radiographic findings in neonatal pneumonia. AJR Am J Roentgenol. 1984;143(1):23-6 PubMed
- Grasso F, Migliaro F, Veropalumbo C, et al. Are lung ultrasound and chest radiograph equally reliable for neonatal imaging? A scoping review. Eur J Pediatr. 2025;184(7):460 PubMed
- Barnes N, Pilling DW. Interpretation of the neonatal chest X-ray. Hosp Med. 1999;60(11):781-7 PubMed
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