
先に結論:「換気は保たれているのに血流が欠ける区域」=ミスマッチが、肺塞栓症のサイン
| 項目 | ポイント |
|---|---|
| 何を見るか | 血流(肺血流シンチ)と換気(吸入する検査)を比べる。血流の検査だけで行う場合もある |
| 肺塞栓症のサイン | 換気は保たれ、血流だけが区域性(くさび形)に欠ける=ミスマッチ。換気も血流も同じ場所で低下=マッチ(肺の病気を考える) |
| CTとの関係 | 造影CT(CTPA)が使いにくい場合などの選択肢。妊娠中でも、CTPAと同程度に安全で有効とされる |
| CTEPH | スクリーニングに向いた検査で、CTPAより感度が高いとされる |
| 右左シャント | 血流シンチで脳や腎臓が写れば、肺を通らずに血液が流れるシャントを疑う |
換気血流シンチ(V/Qスキャン)とは
肺の機能を、2つの面から調べる核医学検査です。
| 検査 | 方法 | 何がわかるか |
|---|---|---|
| 肺血流シンチ(Q:perfusion) | 腕の静脈から、肺の細い血管(毛細血管)に詰まる粒子(MAA)を注射して撮影 | 肺のどこに血液が流れているか |
| 肺換気シンチ(V:ventilation) | 放射性のガスやエアロゾルを吸入して撮影 | 肺のどこに空気が入っているか |
MAAの粒子は、肺の毛細血管より大きいため、通常は肺に捕まって止まります(Lu 1996)。この性質のおかげで、肺の血流の分布がそのまま画像になります。血流と換気の2つを重ねて、「どちらかだけが悪い場所」を探すのがV/Qスキャンの考え方です。断層撮影のSPECTやSPECT/CTを併用する方法も広まりつつあります(Ha 2024)。
検査を受ける人へ
検査では、横になって、注射と吸入、そして撮影を受けます。順序や所要時間は施設によって異なります。妊娠中・授乳中の方、持病や普段の薬、前に受けた胸部の検査は、事前に伝えてください。検査前の食事などの制限が必要かどうかは、検査施設の案内と主治医の指示に従ってください。息苦しさや胸の痛みが急に強くなったときは、検査を待たずに医療機関を受診してください。
肺塞栓症での読み方:ミスマッチを探す
肺塞栓症(肺血栓塞栓症のCT画像診断)では、血栓で詰まった血管の先には血液が流れません。ところが、その区域の肺胞には空気が入っているため、換気は保たれたまま血流だけが欠けるという画像になります。
| パターン | 見え方 | 考えること |
|---|---|---|
| ミスマッチ(不一致) | 血流の欠損が区域性・くさび形で、同じ場所の換気は保たれる | 肺塞栓症 |
| マッチ(一致) | 同じ場所で、換気も血流も低下 | 肺炎・無気肺・気腫など、肺そのものの病気 |
| stripe sign | 血流欠損と胸膜の間に、薄く血流が残る | その場所の欠損は、塞栓ではない可能性が高い |
| 正常 | 換気も血流も均一 | 肺塞栓症の可能性は低い |
stripe signは、47人の検討で、欠損のある場所に塞栓がないことをきわめて正確に予測したと報告されています(Sostman 1982)。ただし、1か所のstripe signだけで、患者さん全体の肺塞栓症を否定するわけではありません。
確率で表す:PIOPED
V/Qスキャンの結果は、「肺塞栓症の確率」で伝えられるのが古典的な使い方です。米国で行われたPIOPED研究(1990年)では、933人を対象に、肺血管造影と比べました(PIOPED Investigators 1990)。結果は次のとおりです。
- ほとんどの肺塞栓症の患者で、スキャンは「高・中間・低確率」のいずれかの異常でしたが、塞栓症がない人の多くも異常でした(感度98%、特異度10%)。
- 高確率スキャンで血管造影が確定した116人のうち、102人(88%)が肺塞栓症でした。一方、塞栓症のある人で高確率スキャンだった人は少数でした(感度41%、特異度97%)。
- 中間確率のスキャンでは、肺塞栓症は33%でした。低確率スキャンでも、経過を含めると12%に肺塞栓症があったと推定されました。
つまり、臨床の疑いの強さと、スキャンの結果が一致するときに確定・除外しやすい検査です。
その後のPIOPED IIのデータを、「肺塞栓症あり(高確率)」「なし(ごく低確率または正常)」「判定不能(低・中間確率)」に分け直した解析では、高確率の感度は77.4%、「なし」と判定された場合の特異度は97.7%で、約73.5%の人で、はっきりした答えが出せました(Sostman 2008)。
SPECTを使った研究のメタ解析(11研究・4,146人)では、V/Q SPECTの感度は0.94、特異度は0.95でした(Iftikhar 2024)。
症例 20歳代男性 両側の大きなミスマッチ

引用:Radiopaedia(Pulmonary embolism)
換気(VENT)と血流(PERF)を、前面・後面・斜位などの方向で撮影した画像です。症例ページでは、両側に大きなミスマッチの欠損があり、高確率の肺塞栓症に合致すると記載されています。この方は、CT肺動脈造影でも両側の肺動脈に塞栓が認められています。
造影CT(CTPA)との使い分けと、妊娠中の検査
肺塞栓症の画像診断では、造影CT(CTPA)がよく使われます。V/Qスキャンは、PIOPED IIのデータの解析でも、造影CTが不利になる場合に適した検査とされています(Sostman 2008)。
妊娠中の肺塞栓症の診断についての総説では、CTPAとV/Qスキャンの安全性と有効性は同程度とされ、胸部X線の結果や、検査をすぐ受けられるかどうか、緊急度などから選ぶとされています(Hammache 2025)。どちらの検査も、妊娠中に安全に行えると考えられています。妊娠の可能性があるときは、検査の前に早めに医療者へ伝えることが大切です。
肺塞栓症の疑いがあるときは、造影CTを受けるか、V/Qスキャンを受けるかを、症状の緊急度や持病、妊娠、ほかの検査結果、検査の受けやすさを考えて医師が選びます。
CTEPH(慢性血栓塞栓性肺高血圧症)のスクリーニング
肺塞栓症のあと血栓が残り、肺動脈が慢性的に狭くなると、肺高血圧症(CTEPH)になることがあります(CTEPHのCT・肺血流シンチの役割)。V/Qスキャンは、CTEPHのスクリーニングに向いた検査で、CTPAよりも感度が高いとされています(Ha 2024)。
CTEPHが疑われた229人を評価した前向き研究(登録150人、うちCTEPH 51人)では、人ごとの診断は、感度がV/Q SPECT 98%・平面像98%・CTPA 94%、特異度がそれぞれ89%・91%・96%でした。肺区域ごとの比較では、V/Qのほうが感度は高く(V/Q SPECT 85%、CTPA 67%)、特異度は低くなりました(V/Q SPECT 42%、CTPA 60%)(Wang 2020)。見逃しを減らしたい「ふるい分け」にはV/Q、血管の形を詳しく見るにはCTという役割分担です。
肺高血圧症の原因は、肺塞栓症だけではありません。腫瘍細胞による微小血管の閉塞(肺腫瘍血栓性微小血管症(PTTM)とは?)のように、肺塞栓症と区別が必要な病気もあります。また、繰り返す血栓症の背景として、抗リン脂質抗体症候群(APS)が隠れていることもあります。
右左シャントでの脳・腎臓への集積
血流シンチで使うMAAは、肺の毛細血管で止まるはずの粒子です。ところが、心臓や肺の中に右から左へ血液が抜ける通り道(右左シャント)があると、粒子が肺をすり抜けて全身に流れ、脳・腎臓・脾臓などが写ります。
低酸素血症のある6人(肝硬変3人、肺動静脈瘻3人)にMAAの全身撮影を行った報告では、全員で脳・腎臓・脾臓などの肺以外の臓器に有意な集積が見られ、推定されるシャント率は17.8〜52%でした(Lu 1996)。画像のポイントは、肺以外の臓器が写っているかどうかです。肺動静脈瘻や先天性心疾患などが疑われた場合は、造影CTや心エコーなどで、場所と原因を確かめます。
V/Qスキャンの限界と、読むときの注意
| 注意点 | 内容 |
|---|---|
| 判定が難しい結果がある | PIOPEDでは、中間確率スキャンで肺塞栓症があったのは33%でした。結果が中間・低確率のときは、臨床の疑いの強さや他の検査と合わせて考えます(PIOPED Investigators 1990) |
| 血流だけの検査は特異度が下がる | メタ解析では、血流のみのSPECT(Q-SPECT)の特異度は0.86で、換気も撮るV/Q SPECT(0.95)より低めでした(Iftikhar 2024) |
| 急性と慢性で所見が異なる | CTEPHでのV/Qの所見や解釈は、急性の肺塞栓症と異なることがあります(Ha 2024) |
| 肺そのものの病気 | 肺炎や気腫などがあると、換気も血流も乱れて判定が難しくなります。胸部X線やCTとの比較が重要です |
画像だけで結論を出すのではなく、息苦しさや足の腫れなどの症状、血液検査、他の画像検査と合わせて診断します。
よくある疑問(Q&A)
Q. 換気血流シンチで「ミスマッチ」と言われました。肺塞栓症で確定ですか?
A. ミスマッチは肺塞栓症を強く疑う所見ですが、数や形(区域性か)、症状や血液検査、他の画像の所見と合わせて判断します。PIOPEDでは、高確率スキャンの88%が肺塞栓症でした(PIOPED Investigators 1990)。
Q. 妊娠中でも受けられますか?
A. 妊娠中の肺塞栓症の診断では、V/Qスキャンも造影CT(CTPA)も、安全性と有効性は同程度とされています(Hammache 2025)。どちらを受けるかは、症状の緊急度や胸部X線の結果などで医師が相談して決めます。
Q. 血流シンチだけで済むことはありますか?
A. 血流シンチだけを行う場合もあります。ただし、血流の欠損が肺塞栓症によるものか、肺そのものの病気によるものかを区別するには、換気像や胸部X線・CTとの比較が重要です。
Q. 検査の前に、食事や薬の制限はありますか?
A. 施設によって異なります。案内と主治医の指示に従ってください。
あわせて読みたい:核医学検査(シンチ・PET)の種類と読み方まとめ
参考文献
- PIOPED Investigators. Value of the ventilation/perfusion scan in acute pulmonary embolism. Results of the prospective investigation of pulmonary embolism diagnosis (PIOPED). JAMA. 1990;263(20):2753-9. PubMed
- Sostman HD, Stein PD, Gottschalk A, et al. Acute pulmonary embolism: sensitivity and specificity of ventilation-perfusion scintigraphy in PIOPED II study. Radiology. 2008;246(3):941-6. PubMed
- Sostman HD, Gottschalk A. The stripe sign: a new sign for diagnosis of nonembolic defects on pulmonary perfusion scintigraphy. Radiology. 1982;142(3):737-41. PubMed
- Iftikhar IH, Iftikhar NH, Naeem M, et al. SPECT Ventilation/Perfusion Imaging for Acute Pulmonary Embolism: Meta-analysis of Diagnostic Test Accuracy. Acad Radiol. 2024;31(2):706-717. PubMed
- Hammache M, Simard C, Hamel S, et al. Diagnosing Pulmonary Embolism During Pregnancy. Chest. 2025;168(4):1007-1017. PubMed
- Ha S, Han S. The Role of Lung Ventilation/Perfusion Scan in the Management of Chronic Thromboembolic Pulmonary Hypertension. Nucl Med Mol Imaging. 2024;58(7):449-458. PubMed
- Wang M, Wu D, Ma R, et al. Comparison of V/Q SPECT and CT Angiography for the Diagnosis of Chronic Thromboembolic Pulmonary Hypertension. Radiology. 2020;296(2):420-429. PubMed
- Lu G, Shih WJ, Chou C, et al. Tc-99m MAA total-body imaging to detect intrapulmonary right-to-left shunts and to evaluate the therapeutic effect in pulmonary arteriovenous shunts. Clin Nucl Med. 1996;21(3):197-202. PubMed
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