
先に結論:癌肉腫は「大きく不均一で強く染まる部分をもつ内膜腫瘤」、腺肉腫は「頸管へ突出する嚢胞を含むポリープ状腫瘤」
| 項目 | 癌肉腫(carcinosarcoma) | 腺肉腫(adenosarcoma) |
|---|---|---|
| 組織 | 癌腫成分+肉腫成分(単一クローン由来) | 良性上皮+肉腫性間質の二相性 |
| 位置づけ | 子宮体癌の高リスク型 | 多くは低悪性度。肉腫成分過剰増殖(SO)は予後不良 |
| MRIの特徴 | 大きく外向性・不均一、強く造影される部分、壊死・出血、子宮口からの脱出(tumor delivery) | ポリープ状、頸管への突出、嚢胞、出血、不均一な造影 |
| 主な鑑別 | 子宮体癌(類内膜癌) | 大きな内膜ポリープ |
どちらも画像だけで確定はできず、診断は病理です。閉経後の出血など気になる症状があれば婦人科を受診してください。
子宮癌肉腫とは
子宮癌肉腫は子宮悪性腫瘍の5%未満のまれな腫瘍で、以前は悪性ミュラー管混合腫瘍(MMMT)と呼ばれていました。癌腫成分と肉腫成分をもちますが、単一の悪性クローンから生じた脱分化した癌と考えられ、疫学・危険因子・臨床経過が子宮肉腫より子宮体癌に近いことから、子宮体癌の高リスク型として扱われます(Denschlag 2018)。
そのため病期や筋層浸潤の評価の考え方は子宮体癌と共通です。子宮体癌のMRIは子宮体癌のMRI画像診断|筋層浸潤の評価で解説しています。
癌肉腫のMRI所見
3T MRIで癌肉腫12例と子宮体癌38例を比べた研究では、大きく外向性で不均一な内膜腫瘤で、強く造影される部分を含み、子宮口から腫瘍が脱出するtumor deliveryを示しうることが癌肉腫を示唆するとされました。MRスペクトロスコピーでは壊死を反映した高い脂質ピークを癌肉腫の91%(子宮体癌は24%)に認めました(Takeuchi 2016)。
ADCについては、同じ研究で全体の平均・最小ADCに有意差はなく、G2・G3の子宮体癌と比べると癌肉腫の平均ADCのほうが高い値でした。悪性度が高いのにADCが比較的高いのは、壊死や上皮性嚢胞成分による不均一さを反映すると考察されています(Takeuchi 2016)。
子宮体癌との見分け方
| 研究 | 対象 | 癌肉腫を示唆した所見 |
|---|---|---|
| Kamishima 2017 | 癌肉腫26例 vs 体部癌26例(検証群15例 vs 30例) | 単純MRI:不均一性、T2強調像の主な信号、T1強調像の高信号域。造影MRI:T1高信号域、造影欠損域の割合、造影の程度 |
| Chen 2024 | 癌肉腫17例 vs 類内膜癌34例 | 高齢・閉経後、腫瘍が大きい、嚢胞変性・壊死・出血、T2で不均一、ADCが高い、造影が強い |
Kamishima 2017の予測モデルは、検証群で単純MRIモデルの感度/特異度が87%/73%と87%/70%(読影者2人)、造影MRIモデルが87%/70%でした。Chen 2024では、最大ADC・動脈相と静脈相の最大相対造影値を組み合わせるとAUC 0.997でしたが、少数例の単施設研究です。
まとめると、体癌にしては大きく不均一で、壊死・出血がありながら強く染まる部分があるときに癌肉腫を考えます。
子宮腺肉腫とは
腺肉腫は肉腫性の間質と良性の上皮からなる二相性のまれな悪性腫瘍です。肉腫成分は多くが低異型度ですが、肉腫成分が腫瘍体積の25%を超える肉腫成分過剰増殖(sarcomatous overgrowth:SO)は約10%にみられ、高異型度でふるまいが悪くなります。SOのないⅠ期の5年全生存は最大80%程度とされます(Ulrich 2018)。
腺肉腫のMRI所見
自施設5例と文献25例、計30例をまとめた系統的レビューでは次のとおりでした(Morikawa 2025)。
| 項目 | 結果 |
|---|---|
| 年齢(中央値) | 48.5歳(9〜79歳) |
| 主訴 | 異常出血 96.7% |
| 部位 | 子宮体部 93.1%、内膜が主座 96.6% |
| 形 | ポリープ状 90.0%、頸管への突出 80.8% |
| 嚢胞・出血 | 嚢胞 96.5%、出血 84.6% |
| T2強調像(筋層比) | 高信号 51.7%、中間信号 48.3% |
| 造影・ADC | 全例が不均一に造影、平均ADC 1.05×10⁻³ mm²/s |
| 大きさ(平均最大径) | 9.3cm |
このレビューではSOが55.2%と多く、報告されやすい症例に偏っている可能性があります。
内膜ポリープとの見分け方
腺肉腫11例と3cm以上の内膜ポリープ20例を比べた多施設研究では、腺肉腫のほうが腫瘍体積が大きく、嚢胞が大きく(中央値17.7mm vs 6.7mm)、肉眼的出血(11例中9例 vs 20例中1例)と拡散強調像の高信号(11例中10例 vs 20例中4例)が多く、ADCが低い値でした(中央値961.5 vs 1222.3×10⁻⁶ mm²/s)。一方、SOの有無はどの画像所見でも区別できませんでした(Harada 2025)。
内膜ポリープの典型像は子宮内膜ポリープ・子宮内膜増殖症のMRI画像診断にまとめています。大きなポリープ状病変に大きめの嚢胞・出血・拡散制限がそろうときは腺肉腫を鑑別に挙げます。
症例 40歳代女性 子宮癌肉腫(子宮内反を伴う)

引用:Radiopaedia(Uterine inversion – endometrial carcinosarcoma)
子宮底部から生じた分葉状の腫瘤が、内反した子宮とともに腟の中へ押し出され、腟を大きく広げています。腫瘤はT2強調像で中間的な信号で、この症例では拡散制限と不均一な造影効果がありました。生検で子宮内膜の癌肉腫と診断されています。
症例 70歳代女性 子宮肉腫(腺肉腫の解説付き症例)

引用:Radiopaedia(Uterine sarcoma)
子宮内腔に境界のはっきりした腫瘤があり、T2強調像で中間的な信号の中に小さな高信号(嚢胞状)の部分が散らばっています。症例ページでは子宮肉腫とされ、解説は子宮腺肉腫について書かれています。腫瘤の大部分に拡散制限があり、骨盤内のリンパ節腫大も指摘されています。
心配な場合とそうでない場合
- より注意したい:閉経後の出血で、大きく不均一な内膜腫瘤に強く染まる部分や壊死がある(癌肉腫)。頸管へ突出する大きなポリープ状腫瘤に嚢胞・出血・拡散制限がある(腺肉腫)。
- 比較的落ち着いて見られる:小さく均一な内膜ポリープで、拡散制限や出血が目立たない。
平滑筋肉腫や内膜間質肉腫など筋層から生じる肉腫は子宮肉腫(子宮平滑筋肉腫)のMRI画像診断を参照してください。
次にすること
内膜病変は内膜の組織検査で診断されることが多いものの、腺肉腫や癌肉腫の肉腫成分は採取部位によって拾われないことがあります。画像で疑う理由をレポートに具体的に書いておくと、婦人科での検査・手術計画に役立ちます。方針は主治医に相談してください。
よくある疑問(Q&A)
Q1. 癌肉腫は「肉腫」なのに体癌の仲間なのですか?
はい。単一クローンから生じた脱分化した癌と考えられ、子宮体癌の高リスク型として扱われます(Denschlag 2018)。
Q2. 癌肉腫と腺肉腫は名前が似ていますが同じものですか?
違います。癌肉腫は上皮成分も悪性ですが、腺肉腫の上皮は良性で、悪性なのは間質成分です(Ulrich 2018)。
Q3. ADCが高ければ癌肉腫は否定できますか?
いいえ。癌肉腫は壊死や嚢胞成分のためADCが比較的高く出ることがあり、ADCだけで悪性度を判断しないことが大切です(Takeuchi 2016)。
あわせて読みたい:子宮の稀な腫瘍まとめ
参考文献
- Denschlag D, Ulrich UA. Uterine Carcinosarcomas – Diagnosis and Management. Oncol Res Treat. 2018;41(11):675-679. PubMed
- Takeuchi M, Matsuzaki K, Harada M. Carcinosarcoma of the uterus: MRI findings including diffusion-weighted imaging and MR spectroscopy. Acta Radiol. 2016;57(10):1277-84. PubMed
- Kamishima Y, Takeuchi M, Kawai T, et al. A predictive diagnostic model using multiparametric MRI for differentiating uterine carcinosarcoma from carcinoma of the uterine corpus. Jpn J Radiol. 2017;35(8):472-483. PubMed
- Chen X, Guo Q, Chen X, et al. Clinical and multiparametric MRI features for differentiating uterine carcinosarcoma from endometrioid adenocarcinoma. BMC Med Imaging. 2024;24(1):48. PubMed
- Ulrich UA, Denschlag D. Uterine Adenosarcoma. Oncol Res Treat. 2018;41(11):693-696. PubMed
- Morikawa K, Baba A, Matsushima S, et al. Magnetic resonance imaging features of uterine adenosarcoma: case series and systematic review. Abdom Radiol (NY). 2025;50(7):3313-3326. PubMed
- Harada K, Kurata Y, Himoto Y, et al. Differentiating uterine adenosarcoma from endometrial polyps: MRI imaging features. Abdom Radiol (NY). 2025;50(11):5394-5404. PubMed
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