「肺水腫ってどんなレントゲン画像になるの?」
「心不全ってどんなレントゲン所見があるの?」
「CTでは?」
肺水腫の胸部レントゲン画像やCT画像所見については、肺炎などの他疾患との鑑別が難しいことが臨床の現場では多々あります。
- 肺炎か?
- 心不全(による肺水腫)か?
しばしば鑑別できないこともありますし、併発していることもあります。
そこで今回は特徴的な肺水腫のレントゲン・CT画像所見をおさらいして、少しでもこれらを鑑別ができるようになり、診断に近づけるようにしていきましょう。
先に結論:肺水腫・心不全のレントゲン/CT所見は「水のたまる順番」で考える
| 段階(肺動脈楔入圧の目安) | 主な所見 |
|---|---|
| ①肺うっ血(血流の再分布) | 心拡大、上肺の血管が太く見える |
| ②間質性肺水腫(約20〜25mmHg) | Kerley線(小葉間隔壁の肥厚)、気管支周囲の壁肥厚(peribronchial cuffing)、胸水、葉間の胸水(vanishing tumor) |
| ③肺胞性肺水腫(さらに上昇) | 肺門を中心とした左右対称の影(蝶形陰影=butterfly shadow)、すりガラス影〜浸潤影 |
肺うっ血の初期には、上肺の血管が下肺と同じかそれ以上に太く見える(肺血管陰影の増強=cephalization)ことや、大動脈弓のすぐ上の縦隔の幅(vascular pedicle)が広がることがヒントになります(Barile 2020)。
心不全の肺水腫は左右対称・肺門側優位で、心拡大と胸水を伴うことが多いのが、肺炎(片側・まだら)との違いの手がかりです。ただし両者は合併することも多く、BNPや心エコー、喀痰検査など症状・検査と合わせて判断します。※息苦しさやむくみが急に悪化したときは、すぐに受診してください。
肺水腫の胸部レントゲン、CT画像所見は?
比べるために、まずは正常な胸部X線を見てみましょう。心不全では、心臓の輪郭(とくに左心室)が外側に広がり、心臓の影が大きくなります。

まず、肺水腫が起こった時に胸部レントゲンや胸部CTではどのような画像所見を呈するのかをチェックしましょう。
肺水腫の場合、画像による変化では主に以下のことが起こります。
- 心拡大
- 肺血流の再分布
- 間質性肺水腫
- 肺胞性肺水腫
の4つです。
と言われてもピンとこないかもしれませんが、以下に説明していくので大丈夫です。
これらの結果、(これらが全て見られた場合)以下のような図のレントゲン所見となります。

これらは同時に見られることもありますし、原因などによりどれか一つしか見られない場合もあります。
ではこれを1つひとつ見ていきましょう。
心拡大
まず、心原性の場合、心拡大(左房、左室)をきたすことがあります。

症例 胸部レントゲン

肺血流の再分布
また、心不全の場合、肺血流の再分布が起こります。
どういうことかというと、下の図のように左心不全になると、肺の静脈圧が上がり、肺静脈が拡張し、静水圧が上昇し、肺うっ血となります。
さらにその前の肺動脈も拡張してきます。
すると、普段拡張しない上肺の肺動脈も拡張してきます。

レントゲンやCT画像では、
- 上肺野の血管陰影が増強、上肺野=下肺野、上肺野>下肺野となる。
- CTでは、左房圧上昇による肺静脈の拡張を認める。
ようになります。

正常ならば、下肺野の血管だけが目立つのですが、血流の再分布が起こると、上肺野の血管が目立つようになります。
症例 胸部レントゲン

間質性肺水腫
毛細血管から水が溢れてくると、まずは間質に水が溜まります。
その後、さらに溢れると肺胞に水が溜まります。

間質に水が溜まった状態を間質性肺水腫と言います。
間質性肺水腫か、より進行した肺胞性肺水腫かの境は、肺動脈楔入圧(PAWP)により分けることができます。
すなわち、
- 肺動脈楔入圧(PAWP) 20-25mmHg前後→間質性肺水腫(Barile 2020)
- 肺動脈楔入圧(PAWP) さらに上昇→肺胞性肺水腫
となります。
間質性肺水腫の画像所見としては、
- 小葉間隔壁肥厚→レントゲンではKerley’s line
- 胸膜肥厚→胸膜下水腫
- 気管支周囲間質肥厚→レントゲンではperibronchial cuffing
- 葉間胸水→レントゲンではvanishing tumor
- 胸水→レントゲンではCp-angleの鈍化
が挙げられます。
いわゆる広義間質が肥厚する所見がみられます。

胸部CTでも特に薄いスライス(thin slice)で見ると
- 肺静脈の拡張
- 気管支周囲間質肥厚
- 小葉間隔壁の肥厚
と言った構造までもよく見えます。
症例 胸部CT

近年のCT装置では非常に細かい構造まで見えます。
症例 胸部レントゲン

major fissure沿いに葉間胸水を両側に認めています。
これをvanishing tumorと言います。
vanishing tumor(バニッシング チューモア)は日本語訳すると「消える腫瘤」となります。
これは葉間の胸水のことを示します。
レントゲンでは腫瘤のように見えますが、胸水ですので、治療により消失することからこのように呼ばれます。
肺胞性肺水腫
間質に水が溢れても、なおも溢れる場合、今度は肺胞に水が溢れてきます。
これを肺胞性肺水腫と言います。
肺胞性肺水腫となると、胸部レントゲン画像やCT画像では、
- 蝶形陰影(butterfly shadow(バタフライシャドウ)):肺門部に認めるコンソリデーション
- 中枢側優位にすりガラス影やコンソリデーション
が見られるようになります。

「ちょうちょ(バタフライ)」がいるかのようなレントゲン像になります。
症例 胸部CT

CTではすりガラス影に加えて、浸潤影を認めるようになります。
この症例では、すりガラス影〜浸潤影が出現しており、間質性肺水腫→肺胞性肺水腫へと移行していることがわかります。
症例 胸部CT

両側広範に浸潤影を認めています。
ただし、分布は中枢側に優位で末梢はspareされていることがわかります。
この分布も肺水腫に特徴的です。胸部X線で心原性・腎不全(体液過剰)・透過性亢進型の肺水腫を見分けるには、肺血流の分布、浮腫の分布、血管茎(vascular pedicle)の幅の3点が主な手がかりで、これらに注目すると86〜89%の精度で原因を推定できたと報告されています。
最後に
ややこしい肺水腫の画像ですが、肺に水があふれるとどのような所見を示すのかをあらかじめ知っておくことで、
「これは左右対称であり、分布などから肺水腫、肺うっ血ぽい」
「これは偏在性であり、陰影の特徴から肺炎ぽい」
というよりどちらに近い陰影であるかを予想することができるようになります。ぜひ参考にしてください。ただし、あくまで症状などありきで画像であり、もちろん画像のみで判断してはNGです。実際、急性非代償性心不全で救急外来から入院した85,376例の登録研究では、約5人に1人(18.7%)は胸部X線でうっ血の所見がありませんでした。胸部X線でうっ血がなくても、心不全は否定できません。
最後に:心不全と肺炎の鑑別のポイント
心不全と肺炎は症状もレントゲンやCT所見が非常に似ることがあります。
| 心不全による肺水腫 | 肺炎 | |
|---|---|---|
| 分布 | 両側・左右対称、肺門側(中枢側)優位 | 片側や一部の肺葉・区域に偏ることが多い |
| 心臓の大きさ | 心拡大を伴うことが多い | 心拡大はないことが多い |
| 血管 | 上肺の血管が太い(再分布)、CTで肺静脈の拡張 | 血管の変化は目立たない |
| 間質の所見 | Kerley線、気管支周囲の壁肥厚、小葉間隔壁の肥厚 | 目立たないことが多い |
| 胸水 | 両側に出やすい、葉間胸水(vanishing tumor) | ないか、病変側に少量 |
| 治療後の変化 | 利尿などで数日のうちに改善しやすい | 改善に時間がかかる |
CTでは、肺水腫は小葉間隔壁の肥厚やすりガラス影が両側に広がり、胸水を伴いやすいのに対し、肺炎は区域性の浸潤影や気管支透亮像(air bronchogram)が目立つことが多いです。なお、同じ両側の影でも、ARDS(急性呼吸窮迫症候群)では心拡大や大量の胸水を伴わないことが多く、心原性の肺水腫との区別に役立ちます(Barile 2020)。
また症状や、心音、頸静脈怒張、下腿浮腫、BNP高値などで心不全を疑い診断することは可能ですが、それは肺炎の合併を否定することになりません。肺炎と心不全はしばしば合併します。
肺水腫・心不全のレントゲンでよくある疑問(Q&A)
Q. 肺水腫と胸水はレントゲンでどう違いますか?
肺水腫は肺の中(間質や肺胞)に水がたまった状態で、肺門側に広がる淡い影やKerley線として見えます。胸水は肺の外側(胸膜腔)にたまった水で、立位のレントゲンでは肋骨横隔膜角(CP angle)が鈍くなり、下から上へ向かって白くなります。心不全では両方が同時に見られることがよくあります。
Q. 「肺血管陰影増強」とはどういう意味ですか?
ふだんは目立たない上肺の血管が太く見える状態で、肺うっ血(血流の再分布)の早い段階のサインです。上肺の静脈が下肺の静脈と同じかそれ以上の太さに見えるときに判断します(Barile 2020)。
Q. バタフライシャドウ(蝶形陰影)は心不全だけで見られますか?
心原性の肺胞性肺水腫が代表ですが、溺水などでも肺門周囲の影として見られることがあります(Gluecker 1999)。分布だけで決めず、心拡大や胸水、症状・検査と合わせて判断します。
Q. レントゲンが正常なら心不全ではないと言えますか?
言えません。上で紹介したように、救急で入院した急性心不全でもレントゲンでうっ血が見えないことがあります(Collins 2006)。
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参考文献
- Gluecker T, Capasso P, Schnyder P, et al. Clinical and radiologic features of pulmonary edema. Radiographics. 1999;19(6):1507-1531. PubMed
- Milne EN, Pistolesi M, Miniati M, et al. The radiologic distinction of cardiogenic and noncardiogenic edema. AJR Am J Roentgenol. 1985;144(5):879-894. PubMed
- Collins SP, Lindsell CJ, Storrow AB, et al. Prevalence of negative chest radiography results in the emergency department patient with decompensated heart failure. Ann Emerg Med. 2006;47(1):13-8. PubMed
- Barile M. Pulmonary Edema: A Pictorial Review of Imaging Manifestations and Current Understanding of Mechanisms of Disease. Eur J Radiol Open. 2020;7:100274. PubMed
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中々、肺うつ血の胸部レントゲンが読めなくて、勉強の必要性を感じております。