先に結論:卵巣腫瘍茎捻転とは
- 卵巣(多くはある程度の大きさがある腫瘍や嚢胞、特に成熟嚢胞性奇形腫)が根元でねじれて血流が途絶える病気で、若い女性の突然の下腹部痛の重要な原因です。妊娠中や子どもにも起こります
- 放置すると卵巣が壊死するため、緊急手術(ねじれを戻す・摘出)が必要です。ねじれたり戻ったりして、痛みが波のようにくり返すこともあります
- 超音波・CT・MRIでは、ねじれた茎の渦巻き(whirlpool sign)、子宮が患側に引き寄せられる、卵巣・腫瘍のむくみや造影不良、出血(T1強調像で白い縁)が手がかりです
- CTは診断の手がかりになります(感度0.74〜0.95の報告、Wattar 2021)が、造影されていても捻転は否定できません。腫瘍のない正常の卵巣がねじれることもあり、特に子どもで起こります(Rha 2002)。その場合は腫大した卵巣の辺縁に小さな卵胞が並ぶのが手がかりです(Dawood 2021)
※突然の強い下腹部痛・吐き気があるときは、すぐに受診してください。
卵巣腫瘍茎捻転(ovarian torsion)
| ■疫学 |
|
| ■症状 | 急性腹症(激烈な腹痛)。捻転が徐々に起こり、軽度の下腹部痛が寛解と増悪を繰り返して慢性に経過する例もあり。 |
| ■検査 | CA125やCA19-9など腫瘍マーカーが上昇することがある。
成熟嚢胞性奇形腫では、捻転のあった群でCA125・CA19-9が、捻転のない群より高かったと報告されています(Wang 2017)。 |
| ■診断 | エコー、CT、MRI |
| ■治療 | 外科的治療 |
軸捻転による血行動態
- 初期には卵巣間膜捻転により、静脈がうっ滞するが早期には動脈血は保たれる。子宮の患側偏位や、拡張した血管構造が患側に認められる。
- その後、腫瘤は静脈うっ滞と動脈からの血流流入によってうっ血状態となり、壁は偏心性もしくは全周性に浮腫性肥厚を呈する。静脈閉塞により出血性梗塞をきたす。
- さらに浮腫、うっ血が進行すると動脈からの血流も遮断され造影/増強効果の欠如を認める。※腫瘤は出血性梗塞を生じ、腫瘤の辺縁や内部に出血を反映した、CTでの高吸収域やMRIのT1強調像で高信号域が認められることがある。
卵巣腫瘍捻転の画像所見
- 血管と卵管の渦巻状変化(whirl-pool sign)と卵管壁の肥厚が特異的な所見とされている1)。文献1)のMRI研究では、whirlpool signと卵管の10mmを超える肥厚が、付属器捻転と独立して関連する所見でした。なお、超音波所見の18研究のメタアナリシスでは、whirlpool signは感度65%・特異度91%、卵巣ドプラ血流の低下・消失は感度53%・特異度95%であり、特異度は高いが感度は中等度にとどまる。そのため血流が保たれていても捻転は否定できない。
- 腫瘤から子宮に向かう突出(protrusion)やその近傍の拡張した血管。
- 支持組織の短縮による子宮の病側への偏位。
- 造影効果の欠如。充実性腫瘍の場合にはわかりやすいが、嚢胞性腫瘍の場合には造影効果の有無は壁や隔壁のみでしか判断できないため、丁寧に読影する。
- 腫瘍内や嚢胞内への出血。
- T1WIでhigh intensity rim(出血性梗塞を示唆)。
- 正常卵巣実質の浮腫性変化:massive ovarian edema→静脈性のうっ滞。
卵巣捻転のCT所見チェックリスト(単純CT・造影CT)
| 所見 | CTでの見え方 |
|---|---|
| 子宮の患側偏位 | 子宮がねじれた卵巣の側へ引き寄せられる |
| 茎(血管茎・卵管)の肥厚と渦巻き | 腫瘤と子宮の間に太くなった索状構造。whirl sign(渦巻き)を伴うことがある |
| 卵管の肥厚 | 腫瘤に向かって収束する太い管状構造 |
| 嚢胞壁の肥厚 | ねじれた嚢胞の壁が滑らかに厚くなる。10mmを超える偏心性の肥厚は出血性梗塞を示唆 |
| 卵巣の腫大と辺縁の卵胞 | むくんで大きくなった卵巣が正中寄りに移動し、卵胞が辺縁に並ぶ |
| 出血 | 単純CTで卵管・腫瘤内・腹腔内の高吸収域 |
| 造影不良 | 造影CTで充実部分や肥厚した壁が造影されない(梗塞を示唆) |
| 腹水・周囲の炎症 | 骨盤内の液体貯留、脂肪織の濃度上昇 |
この表はRha 2002、Dawood 2021の記載をもとにまとめました。43人の付属器捻転と年齢・腫瘤をそろえた対照の比較では、CTで太くなった茎+whirl sign・子宮の偏位などの付随所見の組み合わせが最もよく捻転を見分けました(AUC 0.86・0.85、Lee 2018)。単純CTでも子宮の偏位・茎の肥厚・出血(高吸収)は評価できますが、血流の評価には造影が必要です。
正常卵巣・卵巣嚢腫はCTでどう見える?
- 正常の卵巣:子宮の左右、骨盤の側壁寄り(内腸骨動静脈の近く)にあります。閉経前では、内部に小さな卵胞が水に近い低吸収の粒として見えることがあります。閉経後は小さく、CTでははっきりしないこともあります。
- 成熟嚢胞性奇形腫:脂肪(マイナスのCT値)や石灰化(歯や骨)を含むのが特徴で、CTで診断しやすい腫瘍です。捻転の原因として最も多い腫瘍です。
- 子宮内膜症性嚢胞(チョコレート嚢胞):古い血液を含むため、水よりやや高い吸収値を示すことがあります。
- 機能性嚢胞・漿液性嚢胞:壁の薄い、水に近い吸収値の嚢胞です。
- 充実部分や厚い隔壁がある腫瘤:悪性の可能性も含めてMRIでの精査を考えます。
正常卵巣の茎捻転
- 基礎疾患のない正常の卵巣も茎捻転をきたしうる。
- 正常卵巣が可逆的に不全捻転を繰り返すと腫大する。これをmassive ovarian edemaといい、腫大した卵巣は水分の増加を反映してT2強調像で高信号となる。
症例 30歳代女性


右卵巣は腫大し、T2WIにて淡い高信号を呈している。
辺縁部には拡張した既存の卵胞の配列あり。T1WIではやや高信号、造影にて造影効果あり。
massive ovarian edemaを疑う所見です。
腫瘍のない卵巣(正常卵巣)の捻転:画像のポイント
捻転の原因になる腫瘍や嚢胞がなくても、卵巣はねじれます。腫瘍が見当たらないことが、診断を遅らせる原因になります。
| 所見 | 内容 |
|---|---|
| 卵巣の腫大と正中への移動 | むくんで大きくなった卵巣が正中側に寄る(Dawood 2021) |
| 辺縁に並ぶ小さな卵胞 | 卵胞が辺縁に押しやられ、真珠のネックレスのように並ぶ(Dawood 2021) |
| 子宮の偏位 | 子宮がねじれた卵巣の側に引き寄せられる(Dawood 2021) |
| 経過が長いとき | 卵巣が充実性の腫瘤のように見え、内部に低エコーと高エコーが混ざる |
腫瘍のない正常付属器の捻転を手術で確認した12人(14回)の超音波の検討では、捻転した卵巣の断面積の中央値は18.1cm²で、反対側の4.3cm²よりも大きく、9回は卵巣の辺縁に多数の小さな卵胞が並び、5回は充実性の腫瘤のように見えました。痛みが24時間未満の6回では充実性の腫瘤のような見え方はなく、24時間を超えた8回のうち5回がその見え方でした(Smorgick 2008)。
似た画像を示すものとして、出血性卵巣嚢胞の破裂、massive ovarian edema、卵巣過剰刺激、変性した子宮筋腫が挙げられます(Dawood 2021)。
婦人科の急性腹症でCTしかないときの見方
救急では、婦人科に紹介される前に内科・外科が最初に診察し、CTだけを撮ることがよくあります。捻転が最初から疑われていないときにCTやMRIが撮られることがあり、画像が診断と治療を早める役割を持つと整理されています(Dawood 2021)。また、腹痛の原因として消化管などが疑われてCTを撮ったときに、思いがけず婦人科の原因がわかることもあります(Dick 2025)。
- 子宮の位置:左右どちらかに引き寄せられていないか。
- 卵巣・腫瘤と子宮のあいだ:太くなった茎や卵管、渦巻き(whirl sign)がないか。
- 卵巣の大きさと辺縁:腫大していないか、辺縁に小さな卵胞が並んでいないか。
- 出血・造影不良:腫瘤や卵管に高吸収域がないか、造影CTで壁や充実部分が造影されるか。
- 腹水・周囲の炎症:骨盤内に液体が溜まっていないか。
43人の付属器捻転と対照のCTの比較では、子宮の患側への偏位と、太くなった茎に付随所見(whirl sign・navel sign)を伴う組み合わせが有意でした(Lee 2018)。CTの感度は0.74〜0.95と報告されていますが、メタアナリシスができるほどの研究数がなく、第一選択は超音波です(Wattar 2021)。CTで疑ったら、早めに婦人科医へ連絡し、超音波やMRIで確認します。若い女性の突然の下腹部痛では、検査結果を待たずに受診してください。
卵巣捻転の画像でよくある疑問(Q&A)
Q. 造影CTで卵巣が造影されていれば、捻転は否定できますか?
A. いいえ。捻転の初期は静脈のうっ滞が主で、動脈の血流は保たれます。超音波のメタアナリシスでも、ドプラ血流の低下・消失の感度は53%にとどまりました(Garde 2023)。血流があっても、子宮の偏位や茎の肥厚があれば捻転を疑います。
Q. 妊娠中に卵巣捻転が疑われたら?
A. 妊娠中も捻転は起こります。まず超音波で評価し、超音波で決めきれないときはMRIが第2の検査として勧められています(Dick 2025)。突然の強い下腹部痛や吐き気があれば、すぐに受診してください。
Q. 腫瘍も嚢胞もない卵巣でも捻転しますか?
A. します。腫瘍や嚢胞を伴うことが多いものの、正常な卵巣もねじれ、特に子どもで起こるとされています(Rha 2002)。腫大した卵巣の辺縁に小さな卵胞が並ぶ像が手がかりです(Dawood 2021)。
関連記事:遊走胆嚢(移動性胆嚢)と胆嚢捻転症のCT画像所見|Gross分類とwhirl sign
あわせて読みたい:傍卵巣嚢胞とは?卵巣嚢胞との見分け方(同側卵巣が別に見えるか)と茎捻転・境界悪性
参考文献
- Dawood MT, Naik M, Bharwani N, et al. Adnexal Torsion: Review of Radiologic Appearances. Radiographics. 2021;41(2):609-624. PubMed
- Béranger-Gibert S, Sakly H, Ballester M, et al. Diagnostic Value of MR Imaging in the Diagnosis of Adnexal Torsion. Radiology. 2016;279(2):461-70. PubMed
- Hibbard LT. Adnexal torsion. Am J Obstet Gynecol. 1985;152(4):456-61. PubMed
- Rha SE, Byun JY, Jung SE, et al. CT and MR imaging features of adnexal torsion. Radiographics. 2002;22(2):283-94. PubMed
- Garde I, Paredes C, Ventura L, et al. Diagnostic accuracy of ultrasound signs for detecting adnexal torsion: systematic review and meta-analysis. Ultrasound Obstet Gynecol. 2023;61(3):310-324. PubMed
- Wattar B, Rimmer M, Rogozinska E, et al. Accuracy of imaging modalities for adnexal torsion: a systematic review and meta-analysis. BJOG. 2021;128(1):37-44. PubMed
- Lee MS, Moon MH, Woo H, et al. CT findings of adnexal torsion: A matched case-control study. PLoS One. 2018;13(7):e0200190. PubMed
- Wang YQ, Xia WT, Wang F, et al. Use of cancer antigen 125, cancer antigen 19-9, and the neutrophil-to-lymphocyte ratio to diagnose mature cystic teratoma with torsion. Int J Gynaecol Obstet. 2017;137(3):332-337. PubMed
- Smorgick N, Maymon R, Mendelovic S, et al. Torsion of normal adnexa in postmenarcheal women: can ultrasound indicate an ischemic process? Ultrasound Obstet Gynecol. 2008;31(3):338-341. PubMed
- Dick EA, Blanco A, De La Hoz Polo M, et al. ESR Essentials: Gynaecological causes of acute pelvic pain in women: a primer for emergent evaluation-practice recommendations by the European Society of Emergency Radiology. Eur Radiol. 2025;35(11):6682-6695. PubMed
画像診断を無料で学べるコンテンツ

腹部画像診断を症例で学ぶ
4日に1回、朝6時に症例が届き、実際に画像をスクロールして読影する講座です。90症例以上・1年以上続く講座で、医師・医学生・放射線技師・看護師など10,000名以上が参加中です。
講座に参加する(無料) →

私信です。腹部CTみても 婦人科領域は ごめんなさいで過ごしてきました。これが子宮・これが卵巣という目で見たことはなかったです。これ子宮だろうなはありましたが。大きな子宮筋腫とか。今後少し確認する努力はしたいです。
急性腹症発祥での婦人科疾患。
読影に自信も無く、自身の簡易読影と
遠隔【とある大学病院】に出しています。
自身診断で、捻転、部分破裂疑い症例が
大体、奇形腫です、捻転、悪性化ありませんと
危機感ない返信返ってきます。
婦人科は画像診断にかかわらず、臨床診断で
オペしてくれてるので、手遅れ症例は無いですが、卵巣捻転、部分破裂は読影者による
差がありすぎではと思ってます
経験をつむしか無いですかね?