先に結論:多発性骨髄腫の画像
- 多発性骨髄腫は、骨髄の形質細胞(抗体をつくる細胞)ががん化する血液のがんで、骨の痛み・骨折、貧血、腎機能の低下、高カルシウム血症などを起こします。中高年に多い病気です
- 画像では、頭蓋骨・背骨・骨盤・肋骨などに打ち抜いたような丸い骨の抜け(punched-out lesion)が多発し、年齢の割に強い骨粗鬆症や圧迫骨折だけのこともあります。骨シンチでは集積しにくいのが特徴です
- 骨粗鬆症の圧迫骨折に見える骨髄腫もあります。ほかの椎体にまだら状の低信号、椎弓根・後方成分の侵されや傍脊椎の軟部腫瘤があれば、骨粗鬆症だけと決めずに血液検査を考えます(下の「圧迫骨折に見える骨髄腫」)
- 打ち抜き像の鑑別には、骨転移・副甲状腺機能亢進症や頭蓋骨の正常構造などがあります
- 現在は全身の骨病変の検索に、レントゲン全身撮影より全身低線量CTが推奨され、MRI(骨髄病変)やFDG-PET/CTも治療開始の判断や効果判定に使われます
※原因のわからない腰痛・骨折、貧血や腎機能の低下を指摘されたときは、医療機関で相談してください。
多発性骨髄腫(MM:multiple myeloma)とは?
- 骨髄における形質細胞の単クローン性の腫瘍性増殖を本態とし、50歳以上の中高年に好発。
- 成人になっても造血髄が残存する脊椎、骨盤骨、肋骨、胸骨などの躯幹骨に好発。
- 骨髄腫で見られる骨変化は、腫瘍細胞から分泌されるRANKL・MIP-1αなどによる破骨細胞の活性化と、DKK1などによる骨形成の抑制が大きく関与する(旧来は破骨細胞活性化因子:OAFと呼ばれた)。
- ▶複数の骨→多発性骨髄腫(MM)
- ▶一カ所に局在→単発性形質細胞腫(solitary plasmacytoma)
多発性骨髄腫の画像所見
- 椎体の圧迫骨折が高頻度に見られる。
- 年齢に比し骨皮質の菲薄化が強く、骨濃度の低下が目立つ場合は、骨髄腫の可能性を疑う必要がある
- 進行すると、多発性の打抜き像(punched out lesion)、地図状の骨破壊像、膨隆性腫瘤像、骨外軟部腫瘤などの多彩な溶骨性の骨病変が認められる。
- 骨皮質を骨髄側から侵蝕して菲薄化させ、病的骨折を起こしやすい。
- 脊椎では、骨転移は椎弓根を好んで侵すが、骨髄腫では赤色髄に乏しい椎弓根が保たれることが多い。
- CTは、単純X線写真では検出できない骨梁や骨皮質の微細な骨病変を鮮明に描出することができ、特に脊椎ではMPR矢状断像が有用である。
- MRIのT1強調像で低信号、T2強調像およびSTIR像で高信号を示す病変として認められる。全身低線量CTは従来の全身骨単純X線撮影より骨病変の検出感度が高く、初期評価の第一選択となっている。一方、MRIは骨髄浸潤の評価のゴールドスタンダードで、特に早期病変の検出に優れ、PET/CTは治療効果判定や髄外病変の評価に有用である。治療効果判定では、全身拡散強調MRIはMY-RADS(Myeloma Response Assessment and Diagnosis System)で反応を5段階(RAC1〜5)に分類し、FDG-PET/CTはDeauvilleスコアを用いるIMPeTUs基準で判定する。FDG-PET/CTは髄外病変検出の基準とされる一方、びまん性病変の検出は全身拡散強調MRIの方が感度が高い。
圧迫骨折に見える骨髄腫:骨粗鬆症の骨折との見分け方
多発性骨髄腫は、最初は「高齢者の圧迫骨折」「骨粗鬆症」として見つかることがあります。MRIでは、椎体の骨折だけでなく、ほかの椎体や骨盤の骨髄の信号を一緒に見ることが大切です。
| 見るところ | 骨粗鬆症の圧迫骨折に多い | 骨髄腫・悪性を疑う |
|---|---|---|
| 骨折した椎体の信号 | 帯状(band-like)の異常信号、液体を思わせる信号(fluid sign) | 骨髄が全体的に置き換わっている |
| ほかの椎体 | 治りかけの古い骨折がある | 骨折していない椎体にも、骨折と無関係な病変(まだら状の低信号など)がある |
| 椎体の周り | 後方の骨縁は局所的に突出(retropulsion)する程度 | 椎弓根・後方成分への浸潤、傍脊椎や硬膜外の腫瘤 |
- 良性と悪性の圧迫骨折をMRIで比べた31研究(1,685人)のまとめでは、悪性を示す所見のオッズ比が、ほかの特徴のない椎体病変(55)、傍脊椎の腫瘤(33)、後方成分の侵される所見(28)、椎弓根の侵される所見(24)、骨折椎体の骨髄がすべて置き換わる所見(19)、硬膜外腫瘤(13)でした。逆に良性を示す所見は、治癒した良性骨折の併存(0.006)、fluid sign(0.08)、後方骨縁の局所的突出(0.08)、帯状の信号(0.07)でした(Thawait 2012)。
- 骨髄腫は、症状が乏しく単純X線の骨検索で異常のない人でも、脊椎MRIで半数(38人中19人)に骨髄浸潤がありました。パターンはびまん型5人、まだら型(variegated)9人、限局型5人で、MRIが異常な人は治療開始までの中央値が16か月、正常な人は43か月でした(Moulopoulos 1995)。「まだら状の低信号」は、このまだら型にあたります。
- 骨粗鬆症が原因と思われた圧迫骨折の椎体形成術で生検した78人のうち、3人(3.8%)に未診断の悪性腫瘍が見つかり、2人が多発性骨髄腫でした(Muijs 2009)。
骨髄腫のMRIでは、T1強調像で低信号、T2強調像・STIRで高信号という信号の特徴に加え、椎体全体が置き換わる(びまん型)、限局性の病変が散在する、まだら状に見える(variegated)といった分布があります。
punched-out lesion(打ち抜き像)とその鑑別
周囲に骨硬化(白い縁取り)をほとんど伴わず、パンチで打ち抜いたように境界がはっきりした丸い骨の抜けをpunched-out lesion(パンチドアウト・リージョン)といいます。頭蓋骨に大小の丸い透亮像が多発するのが多発性骨髄腫の典型ですが、次の病気でも似た像になります。
| 鑑別 | 見分けるポイント |
|---|---|
| 溶骨性骨転移 | 原発のがんがある。椎体では椎弓根を侵しやすく、骨シンチで集積することが多い |
| 副甲状腺機能亢進症(褐色腫) | 高カルシウム血症。頭蓋骨のごま塩状の骨吸収、骨膜下骨吸収 |
| ランゲルハンス細胞組織球症 | 小児・若年者に多い。頭蓋骨では辺縁が二重に見える(beveled edge) |
| 頭蓋骨の正常構造 | くも膜顆粒・静脈湖など。典型的な場所にあり、周囲の骨破壊がない |
症例 60歳代女性 多発性骨髄腫

頭部CTのスカウト画像において頭蓋骨に多数の溶骨性病変あり。
punched out lesionを疑う所見です。

CTでは多数の(→以外の部位にも)溶骨性病変あり。
腹部CTの骨条件です。

椎体及び骨盤骨に多数の溶骨性病変を認めています。
多発性骨髄腫による病変を疑う所見です。
症例 60歳代男性

後頭骨右側に骨の抜けあり。
打抜き像を疑う所見。手術された結果、多発性骨髄腫であった。
多発性骨髄腫の画像でよくある疑問(Q&A)
Q. なぜ骨シンチで写りにくいのですか?
A. 骨シンチは骨をつくる細胞(骨芽細胞)の働きに集まる薬を使いますが、骨髄腫では骨をつくる働きが抑えられるため、骨が壊れていても集積しにくいことがあります。
Q. 打ち抜き像があれば多発性骨髄腫ですか?
A. 上の表の病気でも似た像になるため、血液・尿のM蛋白や骨髄検査とあわせて診断します。
Q. 高齢者の圧迫骨折が、多発性骨髄腫のこともありますか?
A. あります。骨粗鬆症が原因と思われた圧迫骨折で椎体形成術のときに生検した78人のうち、3人(3.8%)に未診断の悪性腫瘍があり、2人は多発性骨髄腫でした(Muijs 2009)。MRIでほかの椎体にまだら状の病変がある、椎弓根や後方成分が侵されているといったときは、血液・尿の検査も考えます。
Q. 症状がなくても、MRIで異常が見つかりますか?
A. 症状が乏しく単純X線の骨検索で異常がなかった骨髄腫の人でも、脊椎MRIで半数に骨髄浸潤がありました(Moulopoulos 1995)。単純X線だけで骨病変がないと決めないことが大切です。背中の痛みが続く、貧血や腎機能の低下を指摘されたといった場合は、医療機関に相談してください。
あわせて読みたい:POEMS症候群とは?症状・診断基準と画像所見
参考文献
- Hillengass J, Usmani S, Rajkumar SV, et al. International myeloma working group consensus recommendations on imaging in monoclonal plasma cell disorders. Lancet Oncol. 2019;20(6):e302-e312. PubMed
- Rajkumar SV, Dimopoulos MA, Palumbo A, et al. International Myeloma Working Group updated criteria for the diagnosis of multiple myeloma. Lancet Oncol. 2014;15(12):e538-e548. PubMed
- Virk J, Hillengass J. Imaging in multiple myeloma. Presse Med. 2025;54(1):104263. PubMed
- Ormond Filho AG, Carneiro BC, Pastore D, et al. Whole-Body Imaging of Multiple Myeloma: Diagnostic Criteria. Radiographics. 2019;39(4):1077-1097. PubMed
- Jiménez-Vázquez M, Paternain A, García-Velloso MJ, et al. Multiple Myeloma: Morphofunctional Treatment Response Evaluation with Whole-Body Diffusion-weighted MRI and FDG PET/CT. Radiographics. 2026;46(3):e250082. PubMed
- Thawait SK, Marcus MA, Morrison WB, et al. Research synthesis: what is the diagnostic performance of magnetic resonance imaging to discriminate benign from malignant vertebral compression fractures? Systematic review and meta-analysis. Spine (Phila Pa 1976). 2012;37(12):E736-44. PubMed
- Moulopoulos LA, Dimopoulos MA, Smith TL, et al. Prognostic significance of magnetic resonance imaging in patients with asymptomatic multiple myeloma. J Clin Oncol. 1995;13(1):251-6. PubMed
- Muijs SP, Akkermans PA, van Erkel AR, et al. The value of routinely performing a bone biopsy during percutaneous vertebroplasty in treatment of osteoporotic vertebral compression fractures. Spine (Phila Pa 1976). 2009;34(22):2395-9. PubMed
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